高齢者の介護には費用がかかることも多く、コスト負担の大きさに困ってしまう人は少なくありません。少しでも介護費の負担を抑えるには、介護保険制度を上手に活用することが大切です。
介護保険制度を利用することで、介護サービス利用時にかかる費用の自己負担分を抑えられます。制度の概要や特徴などを知り、介護費の負担を賢く軽減させましょう。
社会全体で支え合う介護保険制度とは
そもそも介護保険制度とはどのようなものなのか、制度の概要から把握しておきましょう。介護保険制度は介護が必要な人を社会全体で支えるための制度であり、介護度に応じた上限額までは、介護費用の多くを市区町村から給付してもらえる制度です。
つまり、介護にかかる費用負担を軽減することができ、より安価で介護サービスを受けられます。年金生活に入ると、収入が減っている中で、介護サービス利用の必要性が増えたりすることから、これらの人を支援するために介護保険制度があると理解しましょう。
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介護保険制度の仕組みについて
介護サービスを利用した際の費用負担は、利用者、つまり介護保険に加入している被保険者は1~3割負担で済みます。これは残りの7~9割の金額は市区町村が負担しているからであり、公的介護保険の給付範囲内であれば、実際にかかった費用よりも個人の負担額はかなり抑えられているのが現実です。
介護保険制度を持続させるには財源が必要であり、これは介護保険に加入している人が支払う保険料と、税金の2つでまかなわれています。保険料と税金の2つを軸に資金を活用することで、介護保険制度は運営されています。
被保険者となるのは満40歳から
介護保険制度の被保険者となるのは、満40歳以上の国民全員です。満40歳の誕生日の前日から介護保険に加入することになり、それ以降は亡くなるまで保険料の支払い義務が生じます。例えば7月2日が誕生日なら、7月1日から保険料の支払いがスタートし、7月分の保険料を支払うことになります。
しかし、7月1日が誕生日だと、6月30日から保険料の支払いが必要になり、6月分から納付がスタートしている点には注意しましょう。法律的には、誕生日の前日に1歳年を重ねることになっているからです。介護保険の被保険者となり、保険料の支払いが必要となるのは満40歳ですが、制度を利用して介護保険のサービスを受けるには、他にも条件があるためチェックが必要です。
65歳以上は第1号被保険者
年齢が65歳以上になると、介護保険の第1号被保険者となります。第1号被保険者で、かつ要支援または要介護の人は介護保険を適用した介護サービスが利用できます。そのため、介護保険によって費用負担を軽減できるのは、これらの条件を満たした人であると考えましょう。
要支援は1・2、要介護は1~5のいずれかに該当しているなら介護保険は利用できますが、該当する心身状態でも申請していないと適用対象外となるため注意が必要です。
40歳~64歳までは第2号被保険者
満40歳から被保険者となる介護保険制度は、制度加入時には第2号被保険者となります。40歳から64歳までは第2号被保険者となり、これは介護保険を適用したサービスの適用対象者ではないため、注意しなければなりません。
つまり、第2号被保険者は保険料を支払っているものの、介護保険を適用したサービスは利用できないと考えましょう。ただし、第2号被保険者であっても、特定の疾病によって支援や介護が必要と認定されている場合は、65歳以下でも介護保険の適用が可能です。特定の疾病とは、次のものがあげられます。
- 末期がん
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 多系統萎縮症
- アルツハイマー病
- 脳血管性認知症
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- ウェルナー症候群など
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性網膜症
- 脳出血
- 脳梗塞
- 進行性核上性麻ひ
- 大脳皮質基底核変性症
- パーキンソン病
- 閉塞性動脈硬化症
- 関節リウマチ
- 肺気腫
- 慢性気管支炎
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
第2号被保険者の場合も、介護保険を適用させるには要支援や要介護の認定が必要であるため、特定の疾病に該当する人は申請をしましょう。
そのほか介護保険料を支払うタイミングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
介護保険サービスを利用して受けられるもの
介護保険制度を利用することで、さまざまな介護サービスが受けられます。代表的なサービスとしては、次の3つがあげられます。
- 施設サービス
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
これらのサービスは介護保険の対象となるため。少ない自己負担で介護サービスの利用が可能です。
施設サービス
施設に入居することで、日常生活の介助や食事の提供、レクリエーションなどのサービスが受けられます。これが施設サービスであり、介護保険施設に該当するものとしては、主に次の4つがあげられます。
- 特養(特別養護老人ホーム)
- 老健(介護老人保健施設)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
施設の利用料金は介護保険の適用となるため、少ない自己負担でサービスの利用が可能です。ただし、デイサービスの短期宿泊サービス(お泊まりデイサービス)のように、一部介護保険の適用対象外となることもあるため注意しなければなりません。
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居宅サービス
自宅で介護をする場合は、居宅サービスを利用することがおすすめです。自宅で利用できるサービスとしては、次の3つがあげられます。
- 訪問サービス
- 通所サービス
- 短期入所サービス
訪問サービスは、自宅にいながら介護が受けられるサービスです。在宅介護をする際には、家族だけでは負担が大きくなってしまうため、訪問サービスを利用することがおすすめです。
通所サービスはデイケアやデイサービスがあげられます。通所施設では日常生活の介助だけではなく、リハビリなども受けられるため、心身機能の向上や維持も期待できます。
居宅介護には、短期間の入所サービスが含まれることは覚えておきましょう。長期のものは施設サービスがありますが、ショートステイの場合は居宅介護となります。
介護保険の適用となるリハビリについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
地域密着型サービス
その地域に住んでいる人が利用できる、地域密着型のサービスも介護保険の適用が受けられます。地域密着型のサービスは施設への入居や、在宅介護時に利用できるサービスなどさまざまなものがあり、施設サービスと居宅サービスの両方が該当すると考えましょう。
介護保険サービスを利用するまでの流れ
実際に介護保険を利用する際には、どのような手順を踏むのかを知っておきましょう。
- 申請
- 認定調査
- 審査・判定
- 認定・通知
これら4つのステップで、介護保険のサービスが利用できます。要介護度の認定に不満がある場合には、「不服の申し立て」や「区分変更の申請」がおこなえます。
要介護認定の申請
まずは要介護の認定を受けるため、市区町村の窓口で申請を行います。申請をすると、市区町村の職員やケアマネージャーが訪問調査を行い、その結果や医師からの意見書などを参考にして、コンピュータによる一次審査が行われます。
その後審査会による二次審査を行い、認定が決定すると申請から30日以内に通知が届き、ここから介護保険の利用が可能です。利用できるサービスは、認定を受けた要介護度によって異なります。
結果が要支援1か2だった場合
認定審査の結果、要支援1や2となった場合は、地域包括支援センターに連絡して、ケアマネージャーに今後の介護予防プランの相談をしましょう。要支援1から2では、介護予防のサービスが受けられるため、ケアマネージャーに相談してケアプランを作成してもらい、今後利用するサービスを決めていきます。
結果が要介護1以上だった場合
認定審査の結果が要介護度1以上の場合は、各種介護サービスが利用できます。居宅サービスを利用するには、地域包括支援センターのケアマネージャーに相談して、ケアプランを作成してもらいましょう。
施設サービスの場合は、その施設と直接連絡を取って、施設のケアマネージャーにケアプランを作成してもらいます。どちらの場合もまずはケアマネージャーに相談し、ケアプランを作成してもらってから、介護サービスの利用開始となる点は共通しています。
結果が非該当(自立)だった場合
認定審査を受けても、支援や要介護が不要と判断されることもあり、これは非該当、自立といった認定になります。非該当で自立が可能だと判定された場合は、介護保険が適用できません。
しかし、市区町村が実施している日常生活の支援事業などは利用できるため、サポートが必要な場合は、市区町村の役場で相談してみましょう。
利用者の自己負担割合について
介護保険が適用になると、少ない自己負担で介護サービスを利用できます。自己負担の割合は所得によって異なり、1~3割です。所得が多いほど、自己負担割合は多くなると考えましょう。また、介護保険を利用した場合でも、利用額には上限が決められているため、これも把握しておくことが大切です。
1ヶ月間の利用限度額
介護保険の1ヶ月の利用限度額は、要支援度や要介護度によって異なります。要介護度が重いほど、利用できる限度額は高くなります。例として、居宅サービスを利用した場合の限度額を見ていきましょう。
要介護度 | 支給限度額 | 自己負担割合1割 | 自己負担割合2割 | 自己負担割合3割 |
---|---|---|---|---|
要支援度1 | 5万320円 | 5,032円 | 1万64円 | 1万5,096円 |
要支援度2 | 10万5,310円 | 1万531円 | 2万1,062円 | 3万1,593円 |
要介護度1 | 16万7,650円 | 1万6,765円 | 3万3,530円 | 5万295円 |
要介護度2 | 19万7,050円 | 1万9,705円 | 3万9,410円 | 5万9,115円 |
要介護度3 | 27万480円 | 2万7,048円 | 5万4,096円 | 8万1,144円 |
要介護度4 | 30万9,380円 | 3万938円 | 6万1,876円 | 9万2,814円 |
要介護度5 | 36万2,170円 | 3万6,217円 | 7万2,434円 | 10万8,651円 |
介護施設(特定施設入居者生活介護の認定を受けている施設)を利用する場合は、自己負担額は定額となっているため、これも覚えておきましょう。基本的には要介護度が高いほど、支給限度額は高くなりますが、その分自己負担する金額も高くなります。
高額介護(介護予防)サービス費
利用した介護サービス料が高額になった場合は、高額介護サービス費という制度を利用して、上限額を超えた部分の費用を、後から支給してもらえます。これを利用するには市区町村の役場で申請が必要であるため、市区町村の窓口や、担当のケアマネージャーなどに相談しておくことがおすすめです。
負担限度額認定
介護施設での入居サービスを利用している場合は、収入や所有している資産に応じて、「補足給付」という名称の軽減措置が受けられ、施設の居住費や食費などの負担を軽減できます。負担限度額認定証制度は、収入が低い人が第1段階、収入が多い人は第4段階に該当し、それぞれで軽減できる負担額が異なります。
負担段階 | 従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | 食費 |
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 490円 | 0円 | 820円 | 490円 | 300円 |
第2段階 | 490円 | 370円 | 820円 | 490円 | 390円 |
第3段階① | 1310円 | 370円 | 1310円 | 1310円 | 1000円 |
第3段階② | 1,310円 | 370円 | 1,310円 | 1,310円 | 1300円 |
第4段階 | 負担限度額なし | 負担限度額なし | 負担限度額なし | 負担限度額なし | 負担限度額なし |
第4段階は補足給付(軽減措置)がなく、いわゆる定価となる利用料金を支払うことになります。
負担限度額認定証制度について更に詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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介護保険制度実施の歴史
介護保険制度についての理解を深めるには、この制度がどのような歴史背景で制定されたのかを知っておくことも大切です。日本では1960年代に老人福祉政策がスタートし、このときの高齢化率は5.7%です。2000年に介護保険法が制定され、このときの高齢化率は17.3%です。
つまり、高齢化率の上昇に応じて、介護保険制度が制定されたという背景があります。日本は社会全体で高齢化が進行しており、今後もさらに高齢化率は高くなる予測であることも覚えておきましょう。
介護保険制度の見直しは3年ごとに行われている
介護保険制度は制定されてから、そのままになっているわけではなく、3年ごとに見直しが行われています。実際に2018年には財政悪化を改善するために、自己負担割合が変更されています。
2018年以前では対象者の全員が1割負担で介護サービスを利用できていましたが、制度の見直しによって所得に応じて1割負担ではなく、2割や3割に引き上げられていることは覚えておきましょう。
つまり、今後の高齢化率の上昇次第では、自己負担割合がさらに上昇する可能性もあります。社会全体の高齢者数や財政状況などによっては、自己負担割合が増える見込みは高いでしょう。
地域包括ケアシステムの構築が進められている
地域での介護促進を図るために、地域包括ケアシステムの構築が進められていることも、日本の介護制度の特徴です。これは高齢者が住み慣れた土地で自立した生活を送れるようにサポートするためのものです。
地域で高齢者の介護を促進するシステムの構築によって、地域密着での介護が促進されており、これによって高齢者が老後の生活を快適に送りやすくなるでしょう。
手続きや審査などの工程も多いがその分メリットもたくさんある
介護保険制度を利用するには、認定審査を受けたり、保険適用のサービスを探したりと、保険適用までの工程は多いです。しかし、その分金銭的な負担を大幅に減らせるといったメリットはあり、これによって介護にかかるコストを大幅に削減できます。
介護は長期間化することも多く、高額なコストがかかってしまうことも少なくありません。経済的な問題が負担となることもあるため、家庭内の負担を軽減するためにも、介護保険の制度は上手に活用しましょう。