老人ホーム入居相談をしたくても「どんな窓口がある?」「どんなサポートしてくれる?」といった疑問をお持ちの方は多いでしょう。
自宅での介護が難しくなってきた方には、安心して預けられる老人ホームを見つけたいですよね。
しかし検討段階や状況によって適した窓口が異なるため、各窓口の特徴を押さえたうえでの相談が大切です。
本記事では、老人ホームの入居相談に最適な窓口を徹底解説します。相談前に必要な準備から入居までの流れも紹介するので、納得のいく老人ホームを見つけるための参考にしてください。
老人ホームの入居相談とは?
老人ホームの入居相談とは専門の窓口で本人の健康状態や経済状況を伝え、入居先を紹介してもらうサービスです。
紹介だけでなく、見学の付き添いや契約手続きのサポートまでしてくれるケースもあります。
公的機関から民間のサービスまで、専門の相談窓口は豊富です。公的機関の場合は、介護に関する相談にも対応してくれます。
【検討段階別】老人ホーム入居に関する最適な相談先5つ
老人ホームへの入居を本格的に検討している場合は、以下5つの窓口が最適です。
- 必要な制度の手続きがまだなら「市町村の福祉課」
- 介護・老後についての困り事なら「地域包括支援センター」
- 代わりに施設を探してもらいたいなら「老人ホーム紹介センター」
- 担当のケアマネジャーがいるなら「ケアマネジャー」
- 気になる施設の詳しい情報を知りたいなら「老人ホームの相談窓口」
介護の悩みをもう少し気軽に相談したい方は、【老人ホーム】入れるべきか迷うときに利用できる相談先をご覧ください。
必要な制度の手続きがまだなら「市区町村の福祉課」
次のような場合には、市区町村の福祉課に相談するとよいです。
- 初めての介護で右も左もわからない
- 介護制度の手続きをしていない
市区町村の福祉課は、地域の社会福祉に関する業務を担当しています。
老人ホームへの入居相談のほかに、介護に関する支援相談にも対応してくれる機関です。介護認定を受けたり、介護保険制度の利用申請をしたりするための手続きを行う機関でもあります。
制度の面でもサポートしてくれるため、介護に必要な手続きができていない方はまず市区町村の福祉課に相談しましょう。
市区町村によって「高齢福祉課」「介護福祉課」など名称が異なるので、どこが相談窓口かわからないときにはお住まいの自治体に確認してみるとよいです。
介護・老後についての困り事なら「地域包括支援センター」
地域包括支援センターは地域の高齢者からの相談をはじめ、高齢者を包括的に支援するために作られた施設で高齢者総合相談センターとも呼ばれています。
社会福祉士・ケアマネジャー・保健師など、さまざまな観点からサポートできるのが特徴です。
令和3年4月末時点では、全国に5,270ヵ所設置されています。老人ホームの入居相談以外に、日常的な介護の相談にも利用できます。
参照元:地域包括ケアシステム|厚生労働省
関連記事:地域包括支援センターの役割とは?業務内容や活用法をわかりやすく解説!
代わりに施設を探してもらいたいなら「老人ホーム紹介センター」
老人ホーム紹介センターでは、Webサイトのお問い合わせフォームもしくは電話にて相談可能です。
施設や業界の知識に詳しい専門スタッフがサポートしてくれるため、有益な情報を得られるでしょう。
施設紹介だけでなく、施設の見学・契約時のフォローもしてもらえます。そのため、入居を前向きに考え本格的に施設を探したいと思っている方に最適です。
担当のケアマネジャーがいるなら「ケアマネジャー」
担当のケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーに相談をしましょう。
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは、要介護者や要支援者の方に介護プランを作成したり、事業者との連携を図ってくれたりする人です。
国家資格が必要な職種で、介護保険に精通しています。担当ケアマネジャーなら、本人の健康状態と経済環境を理解しているため詳細を説明する手間が省けるはずです。専任の担当者なら、親身になって相談に乗ってくれるでしょう。
気になる施設の詳しい情報を知りたいなら「老人ホームの相談窓口」
老人ホームの候補がある方は、その施設へ直接問い合わせて相談する方法もあります。
老人ホームのホームページにあるお問い合わせフォームもしくは電話にて連絡を行い、施設について詳しい話が聞きたい旨を伝えましょう。
老人ホームには入居に関するさまざまな相談に対応してくれる「入居相談員」と呼ばれるスタッフがいます。
施設の特徴を説明するだけでなく、実際に施設見学時の案内もしてくれます。ほとんどの老人ホームでは見学を受け付けているので、実際の様子や雰囲気をつかむためにも入居前には直接見学をするとよいです。
施設見学時には入居相談員の対応に注目しつつ、施設の雰囲気が本人に合うかどうかよく確認しましょう。
老人ホーム探しの前に必要な5つの準備
老人ホームを検討する前に、以下に挙げる5つの準備が必要です。
- 本人の健康状態を整理する
- 入居期間やタイミングを検討する
- 予算の上限を設定する
- 本人のために必要なサービス内容を考える
- 立地を検討する
情報を整理しておけば、意見の食い違いによる家族間のトラブルを防げます。5つの情報を順番に整理していき、入居相談前の準備を整えましょう。
準備1.本人の健康状態を整理する
入居できる条件は、老人ホームによって異なります。そのため、まずは本人の状態を整理しましょう。最低限、以下の内容を明確にしておくとよいです。
- 年齢
- 要介護度
- 認知症の有無
- 医療ケアの有無
ここで、施設の種類別に入居条件をまとめました。本人の状態と照らし合わせて、気になっている施設へ入れるかどうか見極めましょう。
施設の種類 | 要介護度(入居条件) | 医療行為の充実度 | 認知症の受け入れ |
特別養護老人ホーム | 要介護3~5以上 | △ | ◎ |
---|---|---|---|
老人保健施設 | 要介護1以上 | 〇 | ◎ |
介護療養型医療施設 | 要介護1以上 | 〇 | ◎ |
介護医療院 | 要介護1以上 | 〇 | ◎ |
グループホーム | 要支援2以上 | △ | ◎ |
介護付き有料老人ホーム | 要支援1以上 | △ | 〇 |
住宅型有料老人ホーム | 自立~中度 | △ | △ |
サービス付き高齢者向け住宅 | 自立~中度 | 施設による | △ |
ケアハウス | 自立~中度 | △ | △ |
老人ホームに入居できる年齢は、原則60歳〜65歳です。ただし60歳未満で入居できるケースもあるので、気になる施設がある方は施設側に入居可能な年齢を直接聞いてみるとよいでしょう。
準備2.入居期間やタイミングを検討する
入居期間やどの入居時期によって、対応可能な施設は異なります。事前に入居できる施設の種類に目星をつけておきましょう。例えば本人の最期のときまで対応してほしい場合には、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームが有力な選択肢になります。
厚生労働省の調査によると、2016年における平均寿命と健康寿命の差は男性約10年・女性は約12年となっています。単純に考えると平均寿命と健康寿命の差が介護を必要とする期間となるので、施設への入居期間や入居のタイミングを考える参考にしてください。
参照元:『平均寿命と健康寿命-eヘルスネット』
準備3.予算の上限を設定する
入居期間を加味したうえで、費用の見積もりをしましょう。施設によっては入居一時金が必要になる場合もあるため、入居一時金と月額費用の予算上限をわけて考えておくとよいです。介護付き有料老人ホームの場合は入居一時金が0円〜数千万円、月額料金は10万円~30万円ほどかかるのが一般的となっています。予算は幅をもたせておくと心の余裕がうまれるので、上限額に加えてどこまでプラスで支払えるかも考えておくとよいでしょう。
準備4.本人のために必要なサービス内容を考える
本人が快適な生活を送るためには健康状態に合った施設かどうかだけでなく、食事・レクリエーション・野外活動の有無といったサービス内容も考慮する必要があります。食事は行事や季節にあったものが提供されているのか、施設外の方との交流はあるのかなど本人が充実した毎日を送れるよう、サービス内容はよく確認しておきましょう。また、本人が好きな娯楽の面も配慮した施設探しをしてあげるとよいです。
準備5.立地を検討する
高齢者の多くが、住み慣れた地域にある老人ホームへの入居を希望されます。しかし、必ずしも近くに条件の合う施設があるとは限りません。そのため、近くに希望条件に合う施設がない場合にどこまでなら離れていても許せるかなど検討可能な範囲をあらかじめ決めておくことが大切です。また家族が定期的に訪問するのであれば、交通の便がよい場所かどうかも併せて確認するとよいでしょう。
老人ホームの入居相談から入居までの6つの手順
ここで、相談から入居までの6つの手順を紹介します。
- 手順1.窓口に相談する
- 手順2.気になる施設のパンフレットをもらう
- 手順3.実際に施設を見学する
- 手順4.本人に体験入居してもらう
- 手順5.契約手続きを行う
- 手順6.入居
事前に入居相談の流れがわかっていると、スムーズに老人ホーム探しができるはずです。相談前に、上記の手順を押さえておきましょう。
手順1.窓口に相談する
相談する窓口を決めたら、まずは窓口に電話やメールなどで連絡を入れましょう。窓口によって対応の方法は異なりますが、基本的に希望条件を伝えると本人に合う施設を提案してくれます。
民間の老人ホーム紹介センターの場合は、すぐに施設探しへうつるため初めの段階で本人の状況や希望条件などを具体的に聞かれるはずです。先に紹介した準備を行っておき、スムーズに質問の受け答えができるようにしておきましょう。
手順2.気になる施設のパンフレットをもらう
窓口に直接出向いて相談した場合には、施設のパンフレットをもらえるケースが多いです。問い合わせフォームや電話などで相談した場合には、気になる施設のホームページから資料請求しましょう。施設によっては入居まで数カ月かかるケースもあるため、資料の取り寄せを省き先に見学予約する人も多いようです。
手順3.実際に施設を見学する
施設見学の際には、雰囲気や環境をしっかり見ておきましょう。可能ならスタッフが入居者と接している様子や、レクリエーションなども見学するとよいです。普段の様子がわかると、安心して家族を預けられる場所かどうかを判断する有力な材料になります。事前に資料をもらっていない場合でも見学時にもらえるので、施設の方へ依頼してみましょう。
手順4.本人に体験入居してもらう
ある程度気になる施設がしぼれてきたら、施設に体験入居を依頼しましょう。体験入居の期間は施設によって異なり、数日〜1か月と幅広いです。費用の相場は、1泊あたり約5,000円〜1万5,000円程度となっています。施設で実際の生活を本人に体験してもらい、快適に過ごせる施設かどうか見極めましょう。
手順5.契約手続きを行う
本人に合った施設が決まったら、契約に移ります。契約時に必要な書類は施設によって異なりますが、主に以下のものを必要とするケースが多いです。
- 印鑑
- 印鑑証明
- 連帯保証人/身元引受人の印鑑
- 連帯保証人/身元引受人の印鑑の印鑑証明
- 戸籍謄本
- 住民票
印鑑証明や戸籍謄本などは平日の限られた時間で取りに行く必要があるため、先に必要な書類を施設側に聞いておくと慌てずに書類の準備を進められます。契約前に入居審査や面談がある施設も存在しているようです。そのため、施設見学の際など事前に契約時に必要なことを確認しておくとよいかもしれません。
手順6.入居
契約手続きが済んだら、いよいよ入居です。入居の際には、衣類や日用品などを持参する必要があります。部屋にトイレがある場合、トイレットペーパーは個人で用意が必要なケースもあるので、不足がないよう必要なものは事前によく確認しておきましょう。
施設側から提示されていなくても、個別に必要なものがあるのなら準備して持っていきます。鏡やくしなど、身だしなみを整えるアイテムも併せて用意するとよいでしょう。
【老人ホーム】入れるべきか迷うときに利用できる相談先
介護が始まると「老人ホームへ入居させないといけないのかな」などと考える方は多いはずです。しかし、入居に迷っている方や初めての介護でどうすればよいか分からず困っている方もいるのではないでしょうか。老人ホームへの入居はまだ早いと思っているのであれば、介護の悩みを気軽に相談できる窓口で聞いてもらうのも一つの手です。
ここでは、気軽に相談できる公的な窓口を紹介します。先に紹介した「地域包括支援センター」や「市町村の福祉課」は、気軽な相談先としても利用できるので以下の相談先と併せて利用してみるとよいでしょう。
入院・通院中なら「医療ソーシャルワーカー」
本人が病気やケガで入院もしくは通院しているのなら、医療ソーシャルワーカーへ相談するとよいでしょう。医療ソーシャルワーカーは病院に在籍しており、病気やケガの相談から介護に関する相談まで幅広く受け付けています。医療ソーシャルワーカーに相談したい場合は、かかりつけ医に相談するか直接病院へ問い合わせてください。
身近なサポートなら「民生委員」
民生委員とはお住まいの地域ごとにいる、厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員です。地域の社会福祉に関する相談・援助活動を行っており、地域の人に相談する感覚で気軽に利用できます。
民生委員へ相談したい場合には、まずお住まいの市区町村の福祉課に連絡を入れましょう。福祉課に連絡を入れれば、そこから担当の民生委員を紹介してもらえます。
老人ホームの相談先は検討段階に合わせて選ぼう
老人ホームの入居相談は、検討段階によって最適な相談先が異なります。前向きに入居を検討しているのであれば、複数の施設を紹介してくれる民間の老人ホームセンターへ相談するとよいです。
施設への入居はまだ早いのではないかと思う方は、民生委員や医療ソーシャルワーカーなどへ相談すると的確なサポートやアドバイスをもらえるでしょう。家族間の意見の食い違いや入居後のトラブルを防ぐためにも、自身の状況に合った窓口を利用してください。
老人ホームの相談に関するよくある質問
Q.老人ホームに入居させるか迷っている場合は、どこに相談したらよいですか?
A.老人ホームへの入居を少しでも視野にいれているのであれば、市区町村の福祉課、地域包括支援センターへの相談が最適です。もう少し気軽に介護に関する悩みを相談したい場合は、医療ソーシャルワーカーや民生委員に話してみるとよいでしょう。担当のケアマネジャーがいるのなら、その方に相談するとよいです。
Q.代わりに老人ホームを探してくれる相談先はありますか?
A.民間の老人ホーム紹介センターでは、希望条件に沿った複数の施設を紹介してくれます。仕事や家庭の事情で自分で施設について調べる時間をとれない方は、利用してみるとよいでしょう。