高齢者が利用できる施設として老人ホームがありますが、これにはさまざまなタイプがあります。そのため、どのような特徴があるのかは正しく把握しておく必要があり、サービス内容や費用、利用までの流れなども理解しておくことが大切です。
老人ホームの中でも、住宅型有料老人ホームとはどのような施設なのか、また他のタイプの老人ホームとの違いは何かを知り、施設選びに役立てましょう。
住宅型有料老人ホームとは
まずは住宅型有料老人ホームについて、基本的な知識を身につけましょう。施設を知るうえでは特徴を把握したり、利用できる対象者を把握したりすることが大切です。どのような特徴があるのか、いかなる人が利用できるのかを知り、住宅型有料老人ホームの基本を押さえていきましょう。
特徴
住宅型有料老人ホームの特徴的なポイントは、次の2つがあげられます。
- 必要なサービスを組み合わせることができる
- 食事は個別対応
受けられるサービスの幅が広いことや、柔軟性の高さが住宅型有料老人ホームの大きな特徴です。
必要なサービスを組み合わせることができる
住宅型有料老人ホームは基本的に生活援助サービスであり、介護や医療などのサービスは付属していません。しかし、外部サービスを利用することで、介護や医療のケアも受けられます。
つまり、利用者の状況に応じてサービスを追加することができ、必要なものを組み合わせることで、その人に適したケアを受けられる点が特徴です。自立していて健康的な生活が送れる人なら介護や医療の外部サービスは利用せず、必要になったときだけ利用するといった使い分けができます。
食事は個別対応
入居サービスである住宅型有料老人ホームでは、食事の提供も行われています。食事は利用者ごとに個別の対応となっており、その人に合った食事ができる点も特徴の1つです。
例えば、飲み込む力が弱まった人は柔らかく食べやすい食事が選べて、個人ごとに食べる楽しみを得やすいでしょう。また、外食をするイベントが設けられていたり、入居者の家族と一緒に食事ができたりするなど、食に関するイベントが豊富な点も住宅型有料老人ホームの特徴といえます。
食べることは栄養状態の維持や改善だけではなく、生きがいを持つことやコミュニケーションを取ることも目的の内です。利用者に合わせた食事ができることで、心身ともに健康を目指しやすいことは、住宅型有料老人ホームの魅力といえます。
利用できる対象者
施設によって利用できる対象者は異なりますが、幅広い状態の人を受け入れていることが住宅型有料老人ホームの特徴です。自立した生活が送れる高齢者はもちろん、軽度なら要介護者を受け入れていることもあります。
また、年齢の要件も施設によって異なり、65歳以上とすることもあれば、60歳以上としていることもあります。さらに40歳から64歳までの人でも、特定の疾病によって軽度の要介護認定を受けていると、入居できることもあるため、施設ごとの入居条件は事前に確認しておきましょう。
幅広い人を受け入れている住宅型有料老人ホームですが、認知症ではない、感染症などの疾患がないなど、特定の条件を定めている施設もあります。施設ごとに条件が異なるからこそ、複数の施設を比較して、どこに入居するかを決めることが大切です。
住宅型有料老人ホームと介護付き有料老人ホームとの比較
老人ホームには複数のタイプがあるため、この違いも把握しておくことが大切です。住宅型有料老人ホームの以外では、介護付き有料老人ホームがあります。それぞれでどのような違いがあるのかを比較して、どちらがより利用者に合っているかを考えましょう。
介護付き有料老人ホームとは
有料老人ホームの中でも、「特定施設入居者生活介護」に指定されているものが、介護付き有料老人ホームです。住宅型と同様に高齢者が入居し、共同生活を送る施設という点は共通していますが、その名の通り介護サービスが付随していることが大きな特徴です。
介護サービスの有無
住宅型と介護付きを比較すると、介護サービスの有無といった違いが見えてきます。簡単にいえば介護付きは介護サービスありの老人ホーム、住宅型は介護サービスなしの老人ホームです。そのため、介護を必要とする高齢者の場合は、介護付き有料老人ホームを選んだほうが良いでしょう。
介護サービスが付随していることで、要支援や要介護者の入居も可能であり、住宅型よりも包括的なサポートが受けられます。
ただし、住宅型でも必要に応じて外部の事業者と契約することで、介護サービスを受けることは可能です。施設が提供するサービスとして介護が含まれるかどうかが、住宅型と介護付きの大きな違いといえます。
費用の比較
それぞれのタイプで費用を比較すると、介護保険が適用できるかどうかという違いがあります。介護付き有料老人ホームでは、介護サービスが提供されているため保険の適用が可能です。そのため、所得に応じて1~3割の自己負担でサービスを利用できます。
対して住宅型の場合は、利用するサービスの内容によっては、保険の適用外となり、全額自己負担しなければならないことがあります。
また、保険適用サービスでも費用が高額となり、限度額を超えた部分が全額自己負担となることもあるため注意が必要です。外部のサービス事業者と契約する場合は、その介護サービスについては保険が適用できますが、施設のサービスとしては適用外になるものが多いことは理解しておきましょう。
入居期間の比較
どちらのタイプでも入居期間は特に決められておらず、終身で利用することも可能です。ただし、住宅型の場合は、要介護となったりや要介護度が高くなった理すると、退去を求められることもあるため注意しなければなりません。
特に自立した高齢者をメインに受け入れている施設では、要介護となった時点で退去しなければならない場合があります。介護付きの場合は要介護1~5の人まで幅広く受け入れているため、途中で要介護の区分が上がったとしても、継続して利用が可能です。
両方とも終身で利用はできますが、住宅型は外部サービスで介護が可能な範囲内においてのみ、住み続けられることは理解しておきましょう。
住宅型有料老人ホームの費用とメリット・デメリット
実際に施設を利用するなら、費用面についての理解を深めておくことも大切です。住宅型有料老人ホームは、費用面でもメリットとデメリットがあります。
どのような費用がかかるのかはもちろん、メリットとデメリットの両方を把握して、コストを正しく理解しておきましょう。
費用
まずは、施設の利用にかかる費用について見ていきましょう。住宅型有料老人ホームでかかる費用は、次の2つにわけられます。
- 初期費用
- 月額利用料
これら2つを合計したものが、施設を利用する際にかかる費用の総額です。
初期費用
入居時には初期費用の支払いが必要な場合があり、これは費用の名目や金額が施設によって異なります。例えば、月額利用料の不払いが起きた場合に対応するために、事前に保証金を支払うこともあれば、入居一時金という名目で支払うこともあります。
入居一時金は償却費用として扱われ、いわば今後かかる月額利用料を先払いするものです。そのため、入居一時金が高いとしても、その分月額利用料が安くなることもあります。また、保証金や入居一時金が不要な施設もありますが、この場合は月額利用料が高額になることもあるため、この点には注意しましょう。
施設によって初期費用の金額は異なりますが、0円で済むこともあれば数千万円や1億円以上の高額な費用がかかることもあります。
月額利用料
施設に入居した後は、入居している期間に応じて月額利用料がかかります。月額利用料も施設によって異なりますが、大まかな内訳は次の通りです。
- 居住費
- 介護サービス費
- 食費
- 水道光熱費
- 日常生活費
居住費は施設を利用するための家賃となり、毎月支払いが必要です。施設によっては居住費に管理費が含まれている場合と、別途支払いが必要な場合があるため、この点には注意しましょう。介護サービス費は利用した分のみ支払うことになりますが、自己負担額は所得によって異なります。
所得が高い人は3割負担、低所得者は1割負担となります。食費は1食ごとに費用がかかるケースと、1日単位で計算される場合があり、これも施設によって異なるため確認が必要です。施設の利用にかかった水道光熱費も利用者負担となることが多いですが、場合によっては居住費に含めて計算されることもあります。
日常生活費はおむつ代や理美容の代金、娯楽費などがあり、これらは利用した分を実費精算することになります。
メリット
住宅型有料老人ホームを利用するメリットとしては、次の3つがあげられます。
- 生活の活力になる
- サービスの自由度が高い
- 介護付き有料老人ホームよりも基本料金が安い
レクリエーションが豊富に実施されている住宅型では、さまざまなイベントに取り組むことで、生活の活力となることが多いです。また、レクリエーションでは身体機能の向上や維持を目指すことも目的となっており、心身ともに健康を目指しやすいことも住宅型有料老人ホームのメリットです。
さまざまなサービスを組み合わせて利用できる住宅型は、サービスの自由度が高いこともメリットといえます。利用者の状態に合わせて利用するサービスを選べるため、幅広い人が利用できることも魅力です。
合計の費用で考えると、介護付きよりも住宅型のほうが高くなることもありますが、基本料金だけで見ると住宅型のほうが安いです。そのため、利用するサービスを限定するなら、安価で利用できることもあります。
デメリット
住宅型にはメリットだけではなく、デメリットもあります。デメリットとしては、次の2つがあげられます。
- 介護度が上がると退去の必要がある
- 利用するサービス次第で費用が高くなる
基本的には、自立した高齢者が利用する住宅型有料老人ホームは、要介護度が上がると退去を求められることがあります。外部の介護サービスだけでは対応しきれない場合は、介護サービスが充実した施設への移動が必要となり、次の利用先を探しておかなければならない点はデメリットです。
また、外部のサービス事業者を利用する場合は、その頻度によって費用が高くなってしまうことがあります。他にも住宅型では別料金となるサービスもあり、これを利用する場合もコストが高額になってしまう可能性があるため注意しなければなりません。
基本料金自体は介護付きよりも安いですが、充実したサービスを受けようと思うと、住宅型のほうが高額になるケースがあることは理解しておきましょう。
住宅型有料老人ホームの利用方法
実際に施設を利用する際に備えて、どのような手順で入居するのかを知っておきましょう。また、どの施設に入居するかも重要であるため、選び方も把握しておく必要があります。施設の選び方と入居の手順を知っておくことで、スムーズに老人ホームを利用できます。
選び方のポイント
入居する施設を選ぶ際には、次の2点をチェックしておきましょう。
- 注意点
- 見学や体験入居
これらを確認して施設を選ぶことで、より利用者に合った住宅型有料老人ホームが選べます。
注意点
利用する施設を選ぶ際には、提供されているサービスの内容を確認することはもちろん、経営状態の見極めや運営している企業の情報もチェックしておきましょう。サービスの内容が利用者にとって不十分なものだと、入居してから不便を感じやすいため注意が必要です。
また、経営状態が悪いと倒産してしまい、行き場を失ってしまうこともあるため、この点も気をつけなければなりません。施設を運営している企業の確認も重要であり、経営が安定しているかどうかはもちろん、業界で長く活躍しているか、新規参入かなども見ておきましょう。
新規参入の場合は、介護サービスのノウハウがまだ整っていないこともあるため、すでに業界で活躍している企業があるなら、そこが運営する施設を選ぶことが無難です。
見学・体験入居もやってみよう
入居予定の施設はできる限り見学したり、可能なら体験入居したりすることがおすすめです。実際に施設の様子を見ておくことで、生活しやすい環境か、また雰囲気が良いかなどもわかります。
見学や体験入居の際には、入居者の状況やスタッフの様子なども見ておきましょう。入居者が生き生きしている施設や、スタッフが元気良く働いている施設なら信頼度は高く、利用がおすすめといえます。
利用までの流れ
実際に施設を利用するには、入居したい施設に連絡し、入居の申し込みをしましょう。入居の際には申込書や住民票、健康診断書などの書類が必要であるため、これらも用意しておくことが大切です。
必要書類を提出した後、施設の担当者と面談をし、その後入居となります。どの施設を利用するかで迷うときは、地域包括支援センターでケアマネージャーに相談してみることもおすすめです。
介護の専門知識を持ったケアマネージャーに相談することで、施設の紹介を受けたり、利用までの手順を教えてもらえたりします。
住宅型有料老人ホームは人気の施設
健康な高齢者が利用する住宅型有料老人ホームは人気の施設ですが、全員におすすめできるわけではありません。介護や医療ケアが必要な人は介護付きなど別のタイプがおすすめであり、人によって適した施設は異なります。
住宅型有料老人ホームが利用者に合っているかどうか、特徴や費用などから判断して、最適なサービスを受けられる施設を見つけましょう。