介護保険サービスを利用するのに必要な認定に要介護認定がありますが、実は介護度が上がった時や認定内容に納得できない場合は区分変更申請を行うことが出来ます。
区分変更申請をすることによって介護保険サービスを以前よりも高い頻度で利用することが出来るようになるなどのメリットがあります。
そこで本記事では、介護保険の区分変更を行うタイミングから区分変更が認められない場合、申請の流れから注意点まで網羅的に解説していきます。
介護保険の区分変更を行うタイミング
介護保険の区分変更を行うタイミングとしては以下のケースが考えられます。
- ケガや病気などによって介護の必要性が上がった時
- 認定内容に納得がいっていない時
- 介護費用を少なくしたい時
それぞれのタイミングについて解説していきます。
ケガや病気などによって介護の必要性が上がった時
介護保険の区分変更を行うタイミングとして最も多いのがケガや病気などによって介護の必要性が上がった時と言えるでしょう。
要介護認定の有効期間は新規申請の場合は原則6か月間となっていますが、申請者の状態が安定又は不安定な場合は介護認定審査会の判断によって3カ月から12カ月の範囲内で設定される場合があります。
ただし、ケアがや病気などによって介護の必要性が一気に上がった場合は有効期間内で後ほど解説する流れに沿って申請することで区分変更の申請をすることが出来ます。
区分変更によって介護度が上がった場合は、要介護度ごとに設定されている単位数が上がるためその中でより多くの介護保険サービスを利用することが出来ます。ケガや病気でより多くの介護が必要となった場合は区分変更のタイミングとして最適なタイミングと言えるでしょう。
認定内容に納得がいっていない時
介護保険の区分変更を行うタイミングとして次に多いのは認定内容に納得がいっていない時と言えるでしょう。
要介護認定の認定調査では訪問調査員による調査が行われますが、場合によっては本人が普段できないことをたまたまできてしまったり、あるいはできないことを見栄を張って「できる」と言ってしまった場合などに本来の介護度よりも低く出てしまうことがあります。
要介護認定で認定内容に納得がいかない場合は、都道府県ごとに設置されている介護保険審査会に対して不服申し立てを行うことが出来ますが、結果が出るまでに数カ月間かかることも少なくありません。
そこで、不服申し立てではなく区分変更として認定調査をもう一度行ってもらうということも少なくないのです。したがって、介護保険の区分変更を行うタイミングとして認定内容に納得がいっていない時が挙げられるでしょう。
介護費用を少なくしたい時
介護保険の区分変更を行うタイミングとして最後に挙げられるのは、介護費用を安くしたいというタイミングです。
というのも、在宅介護で居宅介護サービスでは介護費用の上限額が増えるだけですが、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険施設を利用している場合は介護費用は要介護認定の段階ごとに設定されています。
したがって、以前認定を受けた介護度よりも状態が回復してきた場合などでは要介護認定の区分変更をすることによって費用を安くできる場合もあります。
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入院中に介護保険の区分変更を行うタイミング
入院中に介護保険の区分変更を行うタイミングとしては以下の3つです。
- 身体状態が安定している時
- 退院のめどがついた時
- 自治体によって定められたタイミング
それぞれについて詳しく説明していきます。
身体状態が安定している時
入院中に介護保険の区分変更を行うタイミングとしてまず挙げられるのは身体状態が安定している時と言えるでしょう。
というのも、要介護認定の際は訪問調査員による認定調査がありますが、認定調査の際は本人に話を聞いたり実際に日常生活動作をしたりするなどのチェック項目があります。
そのため、入院中に身体状態が安定していない場合は要介護認定の区分変更を行うタイミングとしては適していないと言えるでしょう。
退院のめどがついた時
入院中に介護保険の区分変更を行うタイミングとして挙げられるのは退院のめどがついた時です。
というのも、介護保険と医療保険は併用して利用することはできないので、入院中は介護保険が適用されることはありません。したがって、退院のめどが立ち介護保険を利用するタイミングを把握できて初めて申請手続きを進める必要があります。
介護認定には申請から結果が通知されるまでに約30日間かかるので、退院の1カ月から1カ月半前をめどに申請を行いましょう。
自治体によって定められたタイミング
入院中に介護保険の区分変更を行う場合は、自治体によってどのようなタイミングが適切かホームページや窓口で確認できる場合があります。
例えば、東京都中野区の場合では「疾病状況等の不安定さにより、3~6ヶ月以上安定して持続する介助量をはかることが困難だと予想される場合、認定調査を受けられません。」との記載がホームページにある他、以下のケースに該当している場合は担当のケアマネージャーや地域包括支援センターに相談するように示されています。(出典:東京都中野区「要介護・要支援認定Q&A(よくある質問)」)
- 入院前後、手術前後、急性期のリハビリ中の場合
- 退院予定が未定で今後の生活・サービス利用の方向性が決まっていない
- ICU(集中治療室)に居る、または感染性の疾病が排菌している場合
自治体によっても基準が異なる場合がありますので、上記のタイミングに加えて入院している方が住んでいるエリアではどのようになっているか自治体に問い合わせてみましょう。
介護保険の区分変更が認められないタイミング
介護保険の区分変更には変更が認められないタイミングがあります。自治体によって基準は若干異なりますが、例えば兵庫県神戸市の場合は以下のような場合で変更申請が却下されるとしています。
却下されるタイミング | 却下される例 |
---|---|
元の認定の要介護(要支援)状態区分から変更がないと判定された場合 | 要介護3(申請理由:関係なし)⇒判定:要介護3 |
非該当と判定された場合 | 要支援2(申請理由:関係なし)⇒判定:非該当 |
要介護者からの状態の重度化等(※)を申請理由とする変更申請で、要支援と判定された場合 | 要介護1(申請理由:重度化等)⇒判定:要支援2 |
要支援者からの状態の軽度化を申請理由とする変更申請で、要介護と判定された場合 | 要支援2(申請理由:軽度化)⇒判定:要介護1 |
※重度化等=状態の軽度化と読み取れる内容以外のもの
(出典:兵庫県神戸市「変更申請についての注意事項」)
自治体によっても判定基準は異なりますが、認定調査を行っても上記のようなケースにおいては区分変更が認められないので注意して申請するようにしましょう。
逆に、変更申請が認定されるケースとしては以下のような場合があります。
認定されるタイミング | 認定される例 |
---|---|
要介護者からの状態の重度化等(※)を申請理由とする変更申請で、要介護のより軽度の区分に変更になる。 | 要介護3(申請理由:関係なし)⇒判定:要介護4 |
要介護3(申請理由:関係なし)⇒判定:要介護2 | |
要支援者からの状態の重度化等(※)を申請理由とする変更申請で、要支援2から要支援1に変更になる。 | 要支援2(申請理由:関係なし)⇒判定:要支援1 |
要支援2(申請理由:重度化等)⇒判定:要介護1 | |
要介護者からの状態の軽度化を申請理由とする変更申請で、要介護から要支援に変更になる。 | 要介護1(申請理由:軽度化)⇒判定:要支援2 |
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介護保険の区分変更をする際の流れ
介護保険の区分変更を行う際は以下の流れで進んでいきます。
- アセスメントによって区分変更の必要性をすり合わせる
- 必要書類を記入し、窓口に提出する
- 訪問調査
- 一次判定
- 二次判定
- 要介護認定の通知
- ケアプランの作成
それぞれのステップごとの概要について説明していきます。
アセスメントによって区分変更の必要性をすり合わせる
介護保険の区分変更をする際は、先ずケアマネージャーと面談を行い現在利用者が必要としているサービスや生活に支障をきたしていることなどをアセスメント(評価)する必要があります。
アセスメントを行う際は、ケアマネージャーによって判断基準がぶれることをさけるために厚生労働省によって定められている「課題分析標準項目」に沿って進められます。
(出典:厚生労働省「課題分析標準項目」)
厚生労働省によって定められている上の項目を満たしている場合は以下で解説するような申請に必要な書類を用意・記載して進めます。
必要書類を記入し、窓口に提出する
介護保険の区分変更申請の2つ目のステップとしては申請書類の提出があります。区分変更申請に必要な書類は以下の5種類となります。
- 介護保険要介護認定・要支援認定等申請書
└書類は自治体の窓口やホームページからダウンロードすることが出来ます - 介護保険被保険者証
- 医療保険被保険者証のコピー(特定疾病と認められた第二号被保険者のみ)
- 窓口に来所する方の本人確認書類(どちらか1点)
- 写真付きの公的身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、住基カード、障碍者手帳など)いずれか一点
- 写真無の公的身分証明書(介護保険被保険者証、医療保険被保険者証、介護保険負担割合証)いずれか2点
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
また、本人以外が申請する場合は「委任状」「印鑑」「代理人の身元を確認することが出来るもの」が必要となることに注意しましょう。
主治医から意見書をもらう
介護保険の区分変更申請の3つ目のステップとしては、主治医からの意見書の提出です。というのも、区分変更申請の中でも認定調査の流れとしては以下の図のように主治医の意見書をもとに判断を下すことが一般的です。
したがって、かかりつけ医がいる場合は市区町村の依頼をもとに主治医に意見書を作成してもらい医、これを提示して要介護認定の判断材料としてもらいましょう。
主治医やかかりつけ医がいないという場合は市区町村による紹介を受けて、医師の診断を受けます。
訪問調査
介護保険の区分変更申請の4つ目のステップは訪問調査です。訪問調査では、市区町村の担当者やケアマネージャーが自宅や入院先を訪問して申請者本人の心身の状態を確認したり、生活状況・家族構成などの聞き取り調査を実施します。
要介護認定ではその人に対してどの程度の介護が必要かについて以下の5つの項目から判断されます。以下の項目ごとに、「この人であればそれぞれの介護についてどのくらい時間を要するか」という「要介護認定基準時間」を自動的に算出し、要介護度の認定がなされます。
分類 | 内容 |
---|---|
直接的生活介助 | 入浴、排泄、食事等の介護 |
間接的介助 | 洗濯、掃除等の家事援助 |
問題行動関連行為 | 徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等 |
機能訓練関連行為 | 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練 |
医療関連行為 | 輸液の管理、上則の処置等の診療の補助 |
認定調査員による訪問調査では上の5つの情報を総合して要介護認定の審査は行われるため、必要な情報は漏れなく伝えておくようにしましょう。特に認知症の場合はどの程度進行が進んでいるのか、実際の生活においていかなる支障をきたしているのかなども、細かく伝えておかなければなりません。
一次判定
介護保険の区分変更申請の5つ目のステップは、医師による意見書や訪問調査によって得た情報を調査する一次判定です。ここでは申請者や代理申請者は特にやるべきことはありません。
認定調査員による訪問調査と主治医意見書などのデータをもとに、約3,500人に対して行った「1分間タイムスタディ・データ」から要介護度を推計します。「1分間タイムスタディ・データ」については厚生労働省より以下のように説明されています。
要介護度判定は「どれ位、介護サービスを行う必要があるか」を判断するものですから、これを正確に行うために介護老人福祉施設や介護療養型医療施設等の施設に入所・入院されている3,500人の高齢者について、48時間にわたり、どのような介護サービス(お世話)がどれ位の時間にわたって行われたかを調べました(この結果を「1分間タイムスタディ・データ」と呼んでいます。)。(厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」より抜粋)
「1分間タイムスタディ・データ」の中から調査された方と最も近い方を探し出して、要介護度を推計します。推計は、5分野(直接生活介助、間接生活介助、BPSD関連行為、機能訓練関連行為、医療関連行為)から要介護認定介護時間を算出し、その時間と認知症加算の合計をもとにして介護度を判定します。
要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
---|---|
要支援2要介護1 | 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態 |
二次判定
介護保険の区分変更申請の6つ目のステップは介護認定審査会による二次判定です。
一次判定の結果や主治医の意見書などを参考にして、介護認定審査会(保健医療福祉の学識経験者5名程度で構成)で2次判定が行われます。
これは介護はもちろん、保険や医療、福祉などの各分野の専門家が集まっている審査を行うことが特徴です。2次判定の結果で支援や介護が必要と判断されると、要支援または要介護の認定が下ります。
要介護認定の通知
介護保険の区分変更申請の7つ目のステップは、要介護認定結果の通知です。認定結果は「申請日から30日以内に利用者に通知する」という決まりがあるので、1カ月以内には認定結果が届きます、
認定結果は「非該当(自立)」「要支援1~2」「要介護1~5」のいずれかとなっており、要介護度が明記された結果通知書と、被保険者証が届きます。認定ごとの体の状態については以下の一覧表のとおりです。
介護度の段階 | 状態 |
要介護1 | 立ち上がりや歩行が不安定日常生活において部分的に介護が必要 |
要介護2 | 立ち上がりや歩行が自分でできないことが多い日常生活全般に部分的な介助が必要 |
要介護3 | 立ち上がりや歩行が自分では困難日常生活全般に全介助が必要
認知症の症状により日常生活に影響がある状態 |
要介護4 | 立ち上がりや歩行が自力ではほとんどできない食事などの日常生活が介護がないと行えない
理解力の低下により意思疎通がやや難しい状態 |
要介護5 | 寝たきりの状態日常生活全般ですべて介助が必要
理解力の低下が進み意思疎通が困難な状態 |
要介護認定の結果に納得できない場合は、市区町村役場の介護保険課の、認定審査係の担当者に結果についての相談をしましょう。どのような理由でその認定結果になったのか、理由を確認したり、要支援度や要介護度を上げられないかなどの相談をしたりすることがおすすめです。
介護保険の区分変更のタイミングを見極めよう
ここまで介護保険の区分変更のタイミングについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
デイサービスやショートステイ、介護保険施設を利用している場合区分変更によって介護度が上がると費用も高くなります。そのため、区分変更申請をする場合は慎重にタイミングについて吟味する必要があります。
介護をする家族やケアマネージャーとも相談しながら、タイミングについて吟味して進めていきましょう。
介護保険の区分変更を行うタイミングとしては以下のケースが考えられます。①ケガや病気などによって介護の必要性が上がった時 ②認定内容に納得がいっていない時 ③介護費用を少なくしたい時詳しくはこちらをご覧ください。
入院中に介護保険の区分変更を行うタイミングとしては以下の3つです。①身体状態が安定している時 ②退院のめどがついた時 ③自治体によって定められたタイミング詳しくはこちらをご覧ください。