老化が進行すると日常生活の動作が難しくなることもあり、支援や介護が必要となることもあります。この際に、どの程度のサポートを必要とするのかを判断する指標として、介護認定という制度があります。
介護認定制度がどのようなものなのかを知り、ここで判断される要介護度や要支援度についての理解を深めておくことが大切です。介護認定制度についての基本的な理解を深め、認定を受けた人の状態やいかなるサポートを必要とするのかなどを知っておきましょう。
要介護認定について
そもそも要介護認定とは何かについて、基本的な理解を深めておきましょう。日本では介護保険制度が導入されており、これを利用するには要介護や要支援などの認定を受ける必要があります。
要介護や要支援は、日常生活を送るうえでどの程度のサポートを必要とするのかを示すものであり、介護の必要度合いと考えて良いでしょう。満40歳以上の人は介護保険への加入が義務づけられており、40歳の誕生日の前日から介護保険料を支払います。
支払われた介護保険料は、介護サービスを利用する際に使用されており、保険を適用することで少ない自己負担でさまざまなサービスを利用できます。介護保険は利用できる条件が決まっており、適用対象は要支援や要介護の認定を受けている、かつ65歳以上の人です。
つまり、要介護認定は介護の必要度合いを示すだけではなく、介護保険を適用したサービス利用の可否を判断する基準として用いられる場合もあることは理解しておきましょう。
要支援と要介護の違いを理解しよう
介護の必要度合いを示す介護認定ですが、要支援と要介護では状態が異なります。それぞれ生活をする上でサポートを必要とすること自体は共通していますが、どこまでなら自分で行えるのかが違うと考えましょう。
要支援と要介護ではどのように状態が異なるのか、それぞれの段階別の違いも含めて知っておくことが大切です。
自立について
介護認定の申請をしたからといって、必ずしも要支援や要介護と認定されるわけではありません。状態によっては非該当、つまり自立可能と判断されることもあります。
介護認定における自立の状態とは、歩くことや起き上がること、その他日常の動作全般を自分で行える状態とされています。また、必要な薬を正しく飲む、電話を適切に使用するなど、正常な判断能力があることも、自立の要件です。
要支援について
介護認定の中でも要支援はサポートの必要性が、それほど高くはありません。要支援は日常生活におけるほとんどの動作が自分で可能とされており、一部の動きに他者からのサポートを必要とする状態を指します。
完全に自立しているわけではないものの、大抵のことは自分1人でできるという人が、要支援に該当すると考えましょう。また、要支援は介護予防が必要な状態とも考えられており、介護保険を利用して介護予防サービスの利用が可能です。
要支援1~2の状態
要支援は段階が要支援1と要支援2にわけられており、それぞれで特徴が異なります。要支援1は、ほとんどのことを自分1人でできる状態であり、一部の動作のみサポートを必要とします。例えば、食事や入浴などは問題なくできるものの、掃除が1人ではできずサポートを必要とするなどの状態が要支援1程度です。
要支援2は、要支援1の人よりもサポートを必要としており、一部動作について介護が必要な状態を指しています。また、介護予防サービスを利用することで、心身機能の維持や向上など、現状の維持改善が見込める状態です。
要介護について
要支援よりも多くのサポートを必要とする状態が、要介護です。要介護と認められる人は、日常的な基本動作が自分1人では行えず、介護が必要な状態にあると考えましょう。
簡単な支援ではなく、介護が必要という点が要支援とは異なるため、この点は押さえておくことが大切です。また、要介護度は1~5に分けられており、これらに認定されることで介護保険を適用した介護サービスが受けられます。
介護予防サービスではなく、介護サービスでも保険の適用が可能となるため、利用するサービスの選択肢は増えるでしょう。
要介護1~5の状態
要介護度は1から5まであり、それぞれで状態が異なります。
介護度の段階 | 状態 |
要介護1 |
立ち上がりや歩行が不安定 日常生活において部分的に介護が必要 |
要介護2 |
立ち上がりや歩行が自分でできないことが多い 日常生活全般に部分的な介助が必要 |
要介護3 |
立ち上がりや歩行が自分では困難 日常生活全般に全介助が必要 認知症の症状により日常生活に影響がある状態 |
要介護4 |
立ち上がりや歩行が自力ではほとんどできない 食事などの日常生活が介護がないと行えない 理解力の低下により意思疎通がやや難しい状態 |
要介護5 |
寝たきりの状態 日常生活全般ですべて介助が必要 理解力の低下が進み意思疎通が困難な状態 |
数字が大きくなるほど介護の必要度合いは高くなり、認定者の心身の状態も悪化していると考えましょう。
混同してしまいがちな要支援2と要介護1の違い
要支援2と要介護1は似た状態と思われがちですが、細かいポイントは異なります。要支援と要介護をわけるポイントとしては、認知症の進行度合いがあげられます。認知症の度合いが進行しているほど、介護サポートが必要と判断されるため、要介護1と認定されやすいです。
対して認知機能の低下などがほとんど見られず、介護予防によって対処可能と判断されたなら要支援2となることが多いでしょう。また、対象者の状態の安定性を見て、要支援にするか要介護にするかを決める場合もあります。
介護認定は一定期間ごとに再評価します。そのため、現時点では介護が必須とは限らない場合でも、将来的に介護が必要かもしれないと判断されることもあるでしょう。この場合は、一時的に要支援2と認定され、再評価の際に要介護1へと変更されることが多いです。
受けられるサービスも介護度によって決められている
介護認定を受けることで、介護保険を適用してサービスを利用できます。しかし、利用できるサービスは要支援度や要介護度によって決められています。状態ごとにどのようなサービスが利用できるのかは、詳細まで把握しておくことが大切です。
要支援の場合
要支援1~2の場合だと、介護サービスの利用の可否は次の通りです。
サービス | 利用の可否 |
訪問介護 | 利用可能 |
訪問入浴 | 利用可能 |
訪問看護 | 利用可能 |
訪問リハビリテーション | 利用可能 |
夜間対応型訪問介護 | 利用不可 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 利用不可 |
デイサービス | 利用可能 |
デイケア | 利用可能 |
地域密着型通所介護 | 利用可能 |
認知症対応型通所介護 | 利用可能 |
小規模多機能型居宅介護 | 利用可能 |
看護小規模多機能型居宅介護 | 利用不可 |
短期入所生活介護 | 利用可能 |
短期入所療養介護 | 利用可能 |
介護老人福祉施設 | 利用不可 |
介護老人保健施設 | 利用不可 |
介護療養型医療施設 | 利用不可 |
介護医療院 | 利用不可 |
認知症対応型共同生活介護 | 要支援2から利用可能 |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | 利用不可 |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 利用可能 |
福祉用具貸与 | 介護度によって貸与できない用具がある |
特定福祉用具販売 | 利用可能 |
住宅改修費の支給 | 利用可能 |
一部要支援1では利用できず、要支援2の場合のみ利用可能なサービスもあるため、この点は注意が必要です。
要介護の場合
要介護認定を受けた場合に利用できる介護サービスは、次の通りです。
サービス | 利用の可否 |
訪問介護 | 利用可能 |
訪問入浴 | 利用可能 |
訪問看護 | 利用可能 |
訪問リハビリテーション | 利用可能 |
夜間対応型訪問介護 | 利用可能 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 利用可能 |
デイサービス | 利用可能 |
デイケア | 利用可能 |
地域密着型通所介護 | 利用可能 |
認知症対応型通所介護 | 利用可能 |
小規模多機能型居宅介護 | 利用可能 |
看護小規模多機能型居宅介護 | 利用可能 |
短期入所生活介護 | 利用可能 |
短期入所療養介護 | 利用可能 |
介護老人福祉施設 | 原則要介護3から利用可能 |
介護老人保健施設 | 利用可能 |
介護療養型医療施設 | 利用可能 |
介護医療院 | 利用可能 |
認知症対応型共同生活介護 | 利用可能 |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | 利用可能 |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 利用可能 |
福祉用具貸与 | 介護度によって貸与できない用具がある |
特定福祉用具販売 | 利用可能 |
住宅改修費の支給 | 利用可能 |
基本的にはすべてのサービスが利用可能ですが、介護老人福祉施設のように、原則要介護3以上とされているものもあります。
要介護認定の申請方法
要支援や要介護などの認定を受けるには、申請が必要です。要支援などに該当する状態でも、申請をしなければ認定は受けられず、介護予防や介護サービスを受けられないため、注意しなければなりません。介護保険を利用し、適切な介護サービスを利用するためにも、介護認定の申請方法は知っておきましょう。
申請時に必要なもの
申請時には認定申請書と印鑑、健康保険被保険者証や介護保険被保険者証が必要です。認定申請書は市区町村の役場で受け取るか、自治体のホームページなどからもダウンロードできます。40歳以上64歳以下の人は健康保険被保険者証が必要であり、65歳以上の人は介護保険被保険者証を申請時に使用します。
また、申請の際には主治医からの意見書も必要となりますが、申請書に医師の名前や医療機関の名称、連絡先などを記載することで、市区町村から依頼がいき、意見書を作成してもらうことが可能です。
主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師から診察を受け、申請書に医師の名前や医療機関の名称、連絡先などを記載すると、同様に意見書を作成してもらえます。
申請する場所
介護認定の申請は、申請者本人が住んでいる市区町村役場の窓口にて行います。介護認定は地域ごとに受けるものであり、住んでいるエリアとは別の市区町村の役場では、対応してもらえません。申請者が住んでいるエリアを管轄している役場に行き、窓口で申請書を含めた必要書類を提出して、認定を受けましょう。
要介護認定までの流れ
市区町村の役場で介護認定の申請を行うと、市区町村の職員やケアマネージャーなどが、自宅に訪問調査に来ます。
この際に申請者の状態や家族構成、生活環境などを確認し、この結果と医師の意見書などをもとにして、コンピュータが1次判定を行います。その後、審査会によって2次判定が行われ、ここで要支援や要介護度が決定すると考えましょう。
結果通知
介護認定は申請から大体30日以内で、結果が通知されます。申請から結果の通知までにかかる期間は地域によって異なりますが、目安として30日程度と考えておくと良いでしょう。
有効期限や更新について
介護認定には有効期限があり、新規認定の場合は原則6ヶ月となっています。ただし、市区町村で期間の変更が必要と判断した場合は、3~12ヶ月の間で期限が決められることもあるため、注意しましょう。
また、更新をした後の有効期限は12ヶ月となります。介護認定は更新しないと介護保険が適用できなくなったり、介護サービス自体が利用できなくなったりするため、必ず期限内に更新しなければなりません。
不服申し立てもできる
認定された要支援度や要介護度が想定より低い、あるいは自立と認定されたなど、結果に不服がある場合は申し立てを行うことも可能です。介護保険審査会に不服申し立てをすることで、再判定を行ってもらえるため、場合によっては介護認定の結果が変わることもあります。
また、要介護度が認定されているものより上がったと判断した場合などは、区分変更申請を行いますが、これは不服申し立ての方法として使われることも多いです。通知された結果で確定するとは限らないため、認定結果に納得できないなら、不服申し立てをしておくと良いでしょう。
介護予防サービスを利用するには
要支援の認定を受けた人は、介護予防サービスの利用が可能です。介護予防サービスを利用するには、近くの地域包括支援センターと連絡を取り、ケアマネージャーに介護予防のケアプランを作成してもらいましょう。
このプランをもとに、利用する介護予防サービスや事業者を見つけます。最適なサービス事業者を見つけたなら契約し、サービスの利用開始となります。
介護保険サービスを利用するには
要介護に認定された場合は、介護保険サービスの利用が可能です。介護保険サービスは、自宅で利用するものと、施設に入居するものがあります。それぞれでサービス利用の方法が若干異なるため、この違いを把握しておきましょう。
自宅で利用したい
自宅で介護保険サービスを利用する場合は、居宅介護の支援事業者を探しましょう。この際には、地域包括支援センターを利用しケアマネージャーに相談することがおすすめです。
ケアマネージャーにケアプランを作成してもらい、サービス事業者と契約を結んで、サービスの利用開始となります。
介護施設で利用したい
介護施設を利用する場合は、利用したい施設と直接連絡を取り、入居の相談をします。施設には施設ケアマネージャーがいるため、この人に相談して、ケアプランを作成してもらいましょう。その後、施設と契約し、サービスの利用を開始します。
介護保険サービス利用には要介護認定が必須
介護保険のサービスを利用するには、介護認定を受けなければなりません。これには要支援や要介護があり、どちらに該当するかによって、またどの程度の段階かによって受けられるサービスは異なります。
そのため、要介護度に応じた利用可能なサービスを知っておくことが大切です。段階ごとの違いを正しく理解し、要介護認定をスムーズに受けて、介護保険のサービスを利用しましょう。