介護老人保健施設(老健)に入所を検討している方や入所している方の中には、「介護老人保健施設(老健)にずっと入所することはできるのか」など長期入所について疑問を感じている方も少なくないと思います。
老健は在宅復帰を目的としている公的施設で、特別養護老人ホームよりも看護師の配置数が多い他、100名に対して1名以上の常勤医師の配置、理学療法士等のリハビリスタッフをはじめ、介護支援専門員、支援相談員、栄養士、薬剤師が配置されています。
特養の待機者を受け入れることもある介護老人保健施設(老健)ですが、長期入所することは可能なのでしょうか。本記事では、介護老人保健施設(老健)で長期入所はできるのか、長期入所ができない場合はどのような選択肢があるのかなどについて解説していきます。
介護老人保健施設(老健)は長期入所できる?
まず最初に、「老健には長期入所することができるのか」について解説していきます。
原則として3~6か月の短期間の入所
介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰と在宅療養支援を行うための施設のため、リハビリテーションを提供し、心身機能の維持・改善の役割を担っています。したがって、介護老人保健施設では3~6か月ごとに退所審査が行われるので在宅復帰可能と判断された場合は原則として退所することが施設から求められます。
3~6か月で退所を求められる理由としては、老健が、「在宅復帰・在宅支援」をする施設であることがあげられます。老健でリハビリをして自宅へ復帰、特養の入居順番を待つなどの、中間的な位置づけで利用されています。
要するに、次の行先を決めなければなりません。また、平成24年度の介護老人保健施設(老健)の介護報酬の改定※によって在宅復帰率やベッドの回転率が高い施設に対してより多くの介護報酬が振り込まれる仕組みへと変わってきたことも影響しています。言い換えると、早期に入所者を退去させ、利用者の回転率を高めることによって施設にお金が加算される仕組みになっているので、施設側から早く退所するよう促されるのです。(※参考:社保審-介護給付費分科会 参考資料2「介護老人保健施設」)
具体的には、「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」という加算の創設によって、平均在所日数やベッドの回転率が高い施設には報酬が振り込まれることになっている他、「在宅強化型介護老人保健施設(老健)」として認定されるとより高い報酬が振り込まれるなどの制度があるのです。
したがって、介護老人保健施設(老健)は介護報酬制度の観点から原則3~6か月の退所判断にて退所が可能であると判断された場合は、退所を促す仕組みになっているのです。
平均在所期間は281日
介護老人保健施設(老健)は原則3~6か月で退所になることが多いのですが、調査によると実際の在所期間は平均して281日間であることがわかっています。(出典:厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」)
理由として考えられるのは、介護老人保健施設(老健)は医療型ショートステイ(短期入所療養介護)も利用できることから、連続して利用することで日数を増やしていることが考えられます。
また、地方の介護老人保健施設(老健)は空室があることも多くその場合は、そのまま入所してもらったほうが老健としては利用料が得られるということも考えられます。したがって、介護老人保健施設(老健)は3~6か月間の入所という施設が多いのですが、地域特性なども含めると、実情としては平均して281日(約9カ月)入所していることがわかっています。
長期入所させる老健には減算も
老健は3~6か月間の入所であるのに対して平均して約9カ月間入所という結果でした。その理由として医療型ショートステイ(短期入所療養介護)を利用していることも前述したとおりです。介護保険内での連続利用可能日数は、最長で30日です。
基本的には、短期入所療養介護は、介護する方の負担を軽減するためのサービスであり、さまざまな理由で在宅での介護が一時的に難しくなった場合に利用できるものです。目的が異なる利用も増えていることから、ショートステイを連続して利用している施設に対しては「減算」という形で報酬を少なくするという措置をとることが検討されていたのです。
ここからは、特別養護老人ホームなどで提供される短期入所生活介護についても少し触れておきます。老健に短期入所生活介護事業所を併設しているケースもあるので、このデータも参考にしてください。
厚生労働省の社保審-介護給付費分科会資料によると、利用者のうち31日以上連続してショートステイを利用している人は8.6%となっています。
以下の画像(出典:https://gemmed.ghc-j.com/?p=35122)を見ると、利用日数が31日以上の場合の主な目的としては「特養入所までの待機場所として」が89.2%となっており、仕方がない側面もありそうです。
現在は、長期利用を減らすために31日目はショートステイの費用を1日分利用者が自費で支払うことでリセットされ、32日以降も連続で利用できる制度になっています。これも本来の目的からは外れるため、市区町村に「短期入所サービス長期利用届出書」を提出して認めてもらう必要があります。自費発生させたくないのであれば、自宅等に一旦戻ること等も必要になります
以上より、介護老人保健施設(老健)の入所期間は3~6か月となっていますが、特養への入居待ち時間としてショートステイを連続利用することによって長期入所する場合も少なくないのが現状です。
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介護老人保健施設(老健)に長期入所できない時の対処法
介護老人保健施設(老健)は医療型ショートステイ(短期入所療養介護)を連続して利用することで長期入所することも制度的にはできなくはありませんが、都心部で空室が常にない施設となると職員から退所を促されるのが一般的です。
介護老人保健施設(老健)に長期入所することが出来ないと分かった場合はどうすればよいのでしょうか。ここでは老健に長期入所できない場合の対処法についてまとめていきます。
在宅介護を行う
老健に長期入所できない場合の対処法の一つ目は在宅介護を検討することです。
家族の介護が必要になったとき、選択肢の一つとなるのが自宅で面倒をみる「在宅介護」です。在宅介護に必要な準備を確認していきます。最初に介護の基礎的な知識をインターネットや書籍、雑誌などで確認し情報を集めておきましょう。
また、家族だけで介護を抱え込まず、介護保険制度も活用しましょう。まずは、管轄の地域包括支援センターに相談することもおすすめします。介護保険サービスを利用するには、ケアマネージャーとともにケアプランを作成する必要があります。ケアプランとは訪問介護やデイサービスを週に何回利用するのかなど、介護の方針を確認、共有するための計画書となります。
また、手すりやスロープの設置など住環境の整備が必要となったり、車いすや介護ベッドなどの福祉用具をレンタルするなどの準備が必要な場合もあります。
介護老人保健施設(老健)に長期入所できず在宅で介護を行うのであれば早めから準備をするようにしましょう。
施設に入居する
介護老人保健施設(老健)に長期入所できない場合の二つ目の選択肢は他の施設に入居することです。
介護施設に入居するには施設の絞り込みから見学、場合によって体験入居をしてみる必要があるので最低で1~2カ月くらい準備にかかるのが一般的です。特に特別養護老人ホームなどの公的な施設で人気のある施設の場合は入居待ちになることも一般的なので、早めに申し込んでおく必要があります。
他にも人気の施設であれば入居待ちが発生していることもあり、満室の場合も想定して早めから準備をしておく必要があるのも事実です。
以上より老健に長期入所することが出来ない場合に施設に入居する場合は早めからどの施設にするのかなど準備をしておくことが重要となります。
介護老人保健施設(老健)に長期入所できない場合に入れる施設
最後に、介護老人保健施設(老健)に長期入所できない場合に施設に入ることを考えた際に、入居の選択肢となる施設種別について紹介していきます。本章では以下の3つの施設種別について紹介していきます。
- 特別養護老人ホーム
- 介護医療院
- 介護付き有料老人ホーム
それぞれの施設について紹介していきます。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは要介護3以上の方が入居の対象となる介護施設で、公的施設と呼ばれる施設です。国や地方自治体から補助金を得て運営している施設であるため比較的費用安価であることが特徴です。
特別養護老人ホームは費用が安いことや終身に渡って利用することが出来ることから人気が高く、施設によっては入居待ちがあることも一般的です。ただし、都心ではなく地方部であれば緊急時は入居待ちなく1~2カ月(入居手続きにかかる期間)で入れる場合も少なくないので、立地にこだわりが無い場合は地方の特別養護老人ホームも選択肢に入れて探してみましょう。
介護医療院
介護医療院とは、特別養護老人ホームと同じように介護保険施設の1形態であり食事や排せつ、入浴などの介護サービスと胃ろうや経管栄養などの専門的な医療ケアを両方受けることが出来る施設です。
介護医療院にはⅠ型と呼ばれる要介護高齢者で重篤な身体疾患がある方や身体合併症がある認知症高齢者の方を受け入れているタイプと、Ⅰ型に比べて容体が安定した人で介護老人保健施設と同等の介護・医療ケアを必要としている方を対象としたⅡ型の施設があります。
特養と同じように公的施設であるため、後程紹介する介護付き有料老人ホームと比較して費用が安価で、退院後も医療ケアが必要な可能性がある方は入所の選択肢に入れましょう。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは民間の老人ホームで、特養や老健、介護医療院と同様に24時間体制で介護士が常駐し食事や入浴、排せつなどの生活介助を受けることが出来る施設です。
施設によっても異なりますが、基本的には重度の医療ケアを必要としている方の受け入れはしておらず、軽度の医療ケアを必要としている方にのみ対応している施設となります。
民間施設のため公的施設と比較して費用が高いのが特徴で、高い施設では入居一時金として数千万円から数億円、月額費用としては15~50万円程度費用が掛かることが一般的です。
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介護老人保健施設(老健)の長期入所のまとめ
ここまで介護老人保健施設(老健)に長期入所できるかどうかについて解説していきました。厚生労働省の調査によると平均281日かかるとされていますが、医療型ショートステイ(短期入所療養介護)の連続利用で31日以上入所している方も少ないのが現状です。2021年度改定により、31日目に利用者の自費負担(10割負担)が発生しますが、逆にお金さえ払えば長期利用可能ということになります。
また、介護老人保健施設(老健)に長期入所できない場合は在宅介護や他の施設への入居によって対処することが一般的です。
施設によって介護度による受け入れ対応が異なるので、施設に入居する場合は特別養護老人ホームや介護医療院、介護付き有料老人ホームなどを選択肢に入れて探しましょう。
そのほか介護老人保健施設(老健)について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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介護老人保健施設(老健)にずっと入所することはできません。というのも、在宅復帰・在宅療養をすることを目的とした施設であるため、3~6か月ごとに退所審査が行われ在宅復帰可能と判断された場合は退所しなくてはならないからです。詳しくはこちらをご覧ください。
老健に長期入所できない場合の対処法は、在宅介護や老健以外の施設へ入所することが挙げられます。介護老人保健施設(老健)は医療型ショートステイ(短期入所療養介護)を連続して利用することで長期入所することも制度的にはできなくはありませんが、都心部で空室が常にない施設となると職員から退所を促されるのが一般的です。詳しくはこちらをご覧ください。