高齢者の献立を作る際のポイントや作り方のコツ
高齢者に合う食事とは

高齢者の献立を作る際のポイントや作り方のコツ<br>高齢者に合う食事とは

高齢者に合う食事とはどんなものでしょうか。今回は、高齢者の食事の献立を作るコツについてご紹介します。

石井 香代子 教授
福山大学 生命工学部 健康栄養科学科
管理栄養士、教員
日本給食経営管理学会、日本調理科学会、日本栄養改善学会ほか
岡山県立大学大学院 保健福祉学部研究科 栄養学専攻 修士課程修了
瀬戸内短期大学 食物栄養学科准教授(2002₋2008年3月)
福山大学 生命工学部 健康(生命)栄養科学科(2008年4月ー現在に至る)
病院勤務経験から、糖尿病と栄養、給食経営管理と介護食製造などを研究テーマとして実験・研究を行っている。

 

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【介護食の背景】

人は老いていくと、身体構成成分の変化等に伴い機能低下を招き、徐々に食事が摂れなくなっていきます。動物も同様で、歯が無くなる・減る、消化酵素の分泌量が減って食べ物が消化しにくくなる、活動量も減り、おなかが空かず食欲不振から食事量が減る。特に摂食・嚥下機能の低下、つまり食物を噛んで飲込む力が弱くなると、一挙に栄養摂取不良となり、フレイルから低栄養状態へと進展し、最後は易感染症など外界への防御機能低下から死を招きます。これを栄養の負のスパイラルと呼ばれています。

日本の総人口は2020年の1億2,615万人から、 2070年には8,700万人に減少、65歳以上人口割合は2020年の28.6% から一貫して上昇し、2070年には38.7%へと増加(2023年厚生労働省)と推計されています。このように高齢者人口の伸びは、摂食・嚥下機能低下の高齢者も含んでおり、「食べること」への配慮は最重要項目の1つと考えられ、高齢期の健やかな老いには栄養は欠かせません。一方、現時点で摂食・嚥下に何らかの問題を含んでいる方々へ「介護食」は、機能低下の状態に合せて提供されています

【介護食の概要】

介護食とはどのようなものでしょうか。人の摂食・嚥下は一連の動きから成り立っています。➀食物の認知期、②口への取り込み期、③咀嚼と食塊の形成期、④口から咽頭への送込み期、⑤咽頭から食道期です。この流れのどこかが不良でも、上手く食ベ物を取入れることができません。また、食品は栄養成分とともに硬さ、凝集性、付着性の物性と言う性質を持っており、食べ易さにも関係しています。介護食では、調理品の物性を対象者の摂食・嚥下能力に合せて作る・調整する必要があります。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2021では、7つのカテゴリーに分類して、喫食者の食べられる状態に合せた物性を推奨しています。具体的にはプリン・ゼリーのような均質な軟らかさの食品から、キサーペースト状~形の残る舌で潰せる硬さ~軟飯・全粥までとなっています。加えて、とろみを付けて食品のまとまり易さ(凝集性)や喉ごしも検討します。このように食べる側への確認と食品の物性のマッチングが重要です。

【実際の調理上の注意点・工夫点】

まずはとにかく軟らかく煮熟することです。噛めないからと刻む場合がありますが、嚥下に問題がある場合、硬い物を刻んでも上手く飲み込めず返って誤嚥する可能性があります。軟らかく煮た物を潰したり、刻んだり、ミキサーに掛けて均質にします。必要があれば凝固剤を加えて、ドロドロ状態から固形にする場合もあります。

ここで誤嚥しやすい食品を紹介します。水状でサラサラしたのもの(水、お茶、ジュース、味噌汁)、繊維状のもの(たけのこ、ごぼう、もやし、ぼそぼそした魚など)、スポンジ状のもの(食パン、カステラ、凍り豆腐)、かまぼこ状のもの(かまぼこ、竹輪)、口腔内に貼り付き易いもの(干しのり、わかめ、菜っ葉、ウエハース)、のどに詰まりやすい種実類(大豆、ゴマ、ピーナッツ)、酸味が強くむせやすいもの(オレンジジュース、梅干)。食事に際しては、1.見た目にもきれいで食欲が湧き、おいしいものにする、2.誤嚥しやすい食べ物に気をつける、3.エネルギー、栄養素、水分が必要量を摂れるようにする、4.誤嚥しない姿勢で、ゆっくり、少しずつ食べさせ、最後に水分をとって咽頭部に貯留した食物を良く洗い流すようにする、⒌愛情と敬意のこもった介助をするという食べることを大切にする姿勢です。

また、「口から食べる意義」は、①食器の色、噛む音(聴覚)、②食器の色や形、食べ物の彩りや形をみる(視覚)、③食べ物の匂いを嗅ぐ(嗅覚)、④食べ物のテクスチャー、温度などに手、口唇、口腔でふれる、咀しゃくする(触覚)と五感を総動員します。また、食べさせる人とのふれあいとして、語りかける声を聞く(聴覚)、顔や姿を見る(視覚)、人の匂いがする(嗅覚)、手や体に触れる(触覚)、そして食事の場のふれあいがあり、音楽を聴く・人と話す(聴覚)、食卓でのテーブルウェアの色やデザインを見る(視覚)、食事の場の醸し出す匂いにふれる(嗅覚)等です。

最後に食事は生きる楽しみでもありますので、楽しく美味しくを心掛け、介護食では安全にも配慮して、死ぬ間際まで自分の手で好物の食べ物を摂れたら何より幸せでしょう。

 

◆参考文献

  • ソフトダイエット「介護食」 宇野文平 第一出版
  • 嚥下食ピラミッドによる嚥下レシピ125 江頭文江ほか 医歯薬出版
  • 介護食ハンドブック 第2版 手嶋登志子ほか 医歯薬出版
  • 第13回病院歯科介護研究会総会・学術講演会抄録集(2010年10月)
  • 簡単・おいしい介護食 基礎知識とレシピ200 内藤初枝 第一出版
  • Logemann 摂食・嚥下障害 Jeri A.Logemann 医歯薬出版
  • 摂食・嚥下のメカニズム 解剖・生理編(CD-ROM) 井出吉信 医歯薬出版
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会2021嚥下食分類から
  • 応用栄養学、第11版、医歯薬出版

 

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