特別養護老人ホーム(以下、特養と記載)とは、常時介護が必要で自宅での生活が困難な高齢者を対象とした公的な介護施設です。
入所対象は要介護3以上かつ、原則65歳以上の方と定められています。日常生活の介護や機能訓練などの支援を受けながら、長期的に生活できる点が特徴です。
しかし、特養を理解している方の割合は少ないのが現状です。【ケアスル 介護 独自調査レポート 2026】にて特養に対する認知度を調査した結果、全体の約7割が特養を詳しく知りませんでした。

そこで本記事では、特養の概要や入居条件、メリット・デメリット、他の施設との違いなどについて詳しく解説していきます。
特別養護老人ホーム(特養)とは?

特別養護老人ホーム(特養)とは、在宅での生活が難しくなった要介護の高齢者を受け入れている公的な介護保険施設です。
特養の提供サービスは、食事・入浴・排泄の介助や生活支援、リハビリ、レクリエーションとなっており、全体の約73%の施設で看取りの対応をしています。
※厚生労働省「施設、在宅での看取りの状況に関するデータ」
特養の医療対応について、業界のプロである菅原さんにお話を伺いました。


ただし、重度の認知症や手のかかる方が多いため、レクリエーションなどの生活の質に関するケアまでは手が回らないという現状も一部で見られます。
【入居条件編】特養とは?

特養は終身にわたる利用を前提としているため、寝たきりの方の受け入れも可能です。ただし、看護師の24時間体制での配置は義務付けられていないため、常時の医療的な処置が必要な方の入所は難しい場合があります。
特定疾病とは、加齢に伴って発症しやすいと国が定めた16種類の疾病です。がん末期、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳血管疾患、糖尿病の合併症などが当てはまります。特定疾病の詳細な区分・診断基準は、申込先の自治体や施設への確認が必要です。
また、後程ご紹介しますが特養は他の施設と比べて費用が安いといった理由から、大抵は待ちが発生している状況です。入居条件を満たしていてもすぐに入れない可能性が高いためご注意ください。




【サービス編】特養とは?
特養では、介護サービスを中心に、生活支援・医療ケア・レクリエーションまで幅広いサービスを受けられます。
主なサービスは以下の通りです。
リハビリテーションは、身体機能の維持・回復を目的に実施されますが、介護老人保健施設(老健)と比べると、専門職による集中的なリハビリの機会は少ない傾向があります。医療ケアは、インスリン注射・痰の吸引・経管栄養など多くの医療行為に対応する一方、24時間体制での看護師配置は義務付けられていないため、夜間に医療的な処置が必要な場合の対応可否は施設ごとに異なります。食事は1日3食提供され、入所者の状態に応じてソフト食やきざみ食など形態を調整できます。レクリエーションの内容も、手芸・書道・ボードゲーム・脳トレなど施設によって幅があります。。

【体制編】特養とは?
特養の人員配置は、介護職員・看護職員が入所者3人に対し1人以上という基準を中心に、職種ごとに配置基準が定められています。
厚生労働省令「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」で、生活を支えるために必要な職種と人数が定められているためです。
生活相談員・介護支援専門員は入所者100人に対し1人以上、栄養士・機能訓練指導員は1人以上の配置が義務付けられています。
生活相談員や機能訓練指導員は、業務に支障がない範囲で他の職務と兼務できるため、実際の常勤者数は施設ごとに異なります。
ユニット型特養では、上記の基準に加えてユニットごとに職員を配置する必要があるため、従来型よりも手厚い体制がとられる一方、1人あたりが担当する人数は少なくなります。
また、人員配置基準はあくまで最低限の基準であり、実際の配置人数やシフト体制は、施設の見学や質問などで確認する必要があります。
看護師であり様々な介護施設で高齢者ケアに携わってきた菅原さんにお話を伺いました。

【間取りタイプ】特養とは?
特養の間取りには、ユニット型個室・従来型個室・多床室・ユニット型個室的多床室の4つのタイプがあります。
生活の単位や職員の配置方法が異なり費用にも差が出るため、それぞれどのようなものなのか知っておきましょう。
月額費用の目安は、最も安い多床室で約9万円、最も高いユニット型個室で約13万円です。
ユニット型個室
ユニット型個室は、10人程度を1つの生活単位(ユニット)とする完全個室型の居室です。
入所者はそれぞれ個室で過ごしながら、食事やレクリエーションの時間はユニットごとのリビング・ダイニングで共同生活を送ります。ユニットケアの考え方にもとづき、担当スタッフが同じ入所者に継続的に関わるため、プライバシーを保ちながら個別性の高いケアを受けやすい点が特徴です。
一方で、居住費が個室分だけ高くなり、月額費用は4タイプの中で最も高くなります。

入居者さんの数が少ないとはいえ、「1対8」のように少ない職員数での配置になるため、大きなフロアで対応する従来型の施設と比べると、職員の動き方として難しい面がありますね。

従来型個室
従来型個室は、個室でありながら大規模フロアで運営される居室タイプです。
プライバシーはユニット型個室と同様に確保できますが、生活の単位を細かく区切らないため、フロア全体を大人数のスタッフで担当する従来型の運営体制がとられます。
居住費はユニット型より抑えられており、月額費用は約10万円〜10.5万円が目安です。個室のプライバシーと費用のバランスを取りたい場合に選ばれる傾向があります。
多床室
多床室は、1部屋をカーテンなどで仕切って4人程度が共有する居室です。
病院の大部屋のような構造で、居住費が低く抑えられるため、4タイプの中で最も安く入所できます。ワンフロアでの生活となるため、職員が少ない人数でも入所者の様子を把握しやすく、レクリエーションなどの活動を行いやすい面があります。一方で、同室者との距離が近く、プライバシーの確保は他のタイプより難しくなります。

ユニット型個室的多床室
ユニット型個室的多床室は、従来の多床室を改装し、個室に近いプライバシーを確保した居室です。
もとは4人程度で利用する多床室だった部屋を、間仕切りなどで改装しているケースがほとんどです。従来の多床室よりも他人の視線が気になりにくい一方、壁でしっかり区切られた完全個室ではないため、音や気配が伝わりやすく、プライバシーが完全に守られるわけではありません。
月額費用は約11.7万円〜12.1万円が目安で、個室と多床室の中間に位置します。
・費用を抑えたい場合は多床室、プライバシーを重視する場合はユニット型個室が候補になります
・同じ「個室」でも、ユニット型か従来型かで職員の関わり方が異なります
【費用編】特養とは?

特養は公的施設であるため入居一時金がかからず、月額費用の目安は多床室/個室で約4.4万円〜12万円、ユニット型個室で約6.8万円〜15万円です。
居室タイプや、入所する本人を含む世帯の所得・預貯金の状況に応じた軽減制度があるため、こちらの金額はあくまもで目安としてご覧ください。

特養の費用について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

費用シミュレーター
- 1ヶ月ご利用料金(30日を基準とした概算)
- 0円
- 1日あたり(①+②+③)
- 0円
- ①介護保険自己負担額
- 0円
- ②食費
- 0円
- ③居住費
- 0円
※ 1単位10円として計算しています。
※ 加算項目は含まれていません。
※ 日数や端数の処理によって誤差が出ることがございます。
※ 出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」「利用者負担の軽減について」
【メリットデメリット編】特養とは?
特養のメリット・デメリットについて解説します。
特養のメリット

特養のメリットとしては以下の3つがあります。
- 費用が安い
- 終身にわたって利用できる
- 24時間体制で介護を受けられる
まず、特養のメリットとして毎月の自己負担が抑えられる点が挙げられます。民間施設と異なり入居一時金が不要であることや、日常生活費などを除いて施設サービスに対する支払いの自己負担額には医療費控除が適用されるためです。
また、特養は原則として終身に渡って利用できるのもメリットです。長期入所を前提としているので、入所期間に限りがありません。高度な医療ケアが必要になった場合や他の入所者に対して迷惑をかける可能性が高くなってきた場合を除いて、他の介護施設に移る必要が無い点もメリットと言えるでしょう。
さらに、厚生労働省の基準に基づいて介護スタッフが24時間体制で常駐しているため、要介護度が高い場合でも安心して入所できます。介護職員の配置基準は入所者3人に対して1人が義務付けられており、施設によっては多くの人員を配置していることもあるので、入所前に確認してみましょう。
特養のデメリット

特養のデメリットは以下の2つです。
- 入所待ちが発生することもある
- 医療体制が整っていない場合がある
利用希望者が多い特養は、申請しても入所待ちとなることも少なくありません。そのため、申請する場合は入所待ちの期間も考慮しておくことが大切です。待機期間の間は別の施設を利用するなど、代替案も考えておきましょう。
また、特養では上述したように看護師が24時間体制で配置されていません。そのため、夜間、特別な医療ケアが必要な場合は十分な医療体制が整っていない場合があります。
したがって、常時医療ケアが必要な方は特養以外の施設の検討が必要です。
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【違い編】特養とは?
特養とその他施設では、主に目的や入所期間、費用やサービス内容などが異なります。
本章では、
- 介護老人保健施設との違い
- 特養との違い
を解説していきます。
介護老人保健施設(老健)との違い
介護老人保健施設(老健)と特養は、目的や入所期間が大きく異なります。
特養は「生活の場」としての役割が強く、長期入所が可能です。原則要介護3以上が対象ですが、全国の申込者数は20万人に上り、うち8万人が在宅で待機しているなど、入所難易度が高いのが現状です。費用は安価ですが、医療体制に限りがある施設も存在します。
対する老健は「在宅復帰」を目的としたリハビリ施設です。医師や看護師の配置が手厚い一方、入所期間は原則3〜6ヶ月程度に限定されます。
長期入所なら特養、リハビリや在宅復帰が目的なら老健など、目的に応じた選択が大切です。


有料老人ホームとの違い
特養と民間の「有料老人ホーム」の主な違いは、入所条件と費用、そしてサービス内容です。特養は、原則65歳以上かつ要介護3以上が対象で、公的施設のため費用が安く抑えられています。
一方、有料老人ホームは費用は高めですが、自立や要支援の状態でも入所でき、比較的待機期間が短い傾向にあります。
また、特養が生活支援を中心とするのに対し、有料老人ホームはリハビリや手厚い医療連携など、施設ごとに特色あるサービスを提供している点が特徴です。施設選びの際は、予算と優先したいサービスで見極めることも重要です。

【口コミ】特養に入居した人の声
本章では、実際に特養に入居した方々の声を紹介します。
男性:80代後半:要介護4
【良かった点】
年金内で賄える料金設定
【残念だった点】
外科がないため緊急時の対応が不便
内科的には病院もあるので任せてます!
ただ外科がないので、転んで突然呼び出されるのは分かっててもちょっと困るけど、毎月報告や今後の方針の電話をくれます。
女性:90代後半:要介護4
【良かった点】
亡くなるまで献身的な介護と医療を受けた
【残念だった点】
入居費用が家族にとって大きな負担
祖母が亡くなる最後の最後まで献身的に介護と医療を施してもらったことに対し、ただただ感謝している。
女性:80代後半:要介護3
【良かった点】
自宅から車で8分以内で面会しやすい
【残念だった点】
大部屋でプライバシーが確保しづらい
大部屋のためプライバシーの点では仕方がないが、職員皆さんがフレンドリーであるので、こちらも接しやすいと思います。
女性:90代後半:要介護5
【良かった点】
自宅から徒歩圏内で四季を感じられる
【残念だった点】
個室料金が高く感じる場合がある
個室と介護度によって差はあるのはしょうがないと思うがもう少し安ければと思うことがある。
特別養護老人ホームに入居した方の口コミでは、年金内で賄える料金設定や、最期まで献身的な介護・医療を受けられる点などが高く評価されています。
一方で、外科対応がなく緊急時に不安があることや、大部屋でのプライバシー確保の難しさ、個室料金の高さなどを課題に挙げる声も見られました。
全体として、安心感のあるケア体制が評価されつつも、費用や設備面に改善を求める意見があることがうかがえます。
【待機期間編】特養とは
特養の待機期間は数ヶ月~1年以上がひとつの目安です。
ただし、地域の状況や施設ごとの空き状況、本人の要介護度や緊急性によって大きく異なるため、一概には言えません。都市部では1年以上待つケースもあれば、地方では比較的早く入所できる場合もあります。
また、厚生労働省の令和7年度調査によると、特養に入所を申し込んでいる要介護3以上の方は全国で約20.6万人に上ります。内訳は要介護3が約8.7万人、要介護4が約7.6万人、要介護5が約4.3万人です。このうち、約8.6万人は在宅で生活しながら入所を待っています。
要介護者3以上の入所希望者を、都道府県別にまとめたデータは以下の通りです。
出展:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」
なお、入所希望者は前回調査時よりも約5万人減少しており、全国で施設の整備が進んだことや、在宅介護サービスが充実したことが主な理由と考えられています。
特養の入居待期期間中の対応
特養への入所を希望している場合の待機期間中の過ごし方について、現場と運営の両面から10年弱、数多くの家族に寄り添ってきた和田さんにお話を伺いました。

また、系列のデイサービスがある場合は、あらかじめ利用しておくのも有効です。職員の雰囲気やサービスの細かな内容を事前に確認できるため、入所後のミスマッチを防ぐことにつながります。
万が一、ショートステイやデイサービスを利用してみて「合わない」と感じた場合は、その特養への入所を再検討しましょう。
特養に入所を決めている場合は待機期間を有効に活用し、納得のいく施設選びを進めることが大切です。
【流れ編】特養とは?
特養への入所は、①申し込み→②審査・順番待ち→③入居前面談・契約という3つのステップで進みます。
- ステップ1:申し込み
- ステップ2:審査・順番待ち
- ステップ3:入居前面談・契約
各ステップについて詳しくご紹介します。

ステップ1:申し込み
特養に入所するためには、入所申込書と必要書類を施設に提出することから始まります。
・入所申込書
・重要事項説明書
・介護認定調査票のコピー
・健康診断書
・戸籍謄本
・住民票
・印鑑証明書
・身元引受書 など
申込書は施設のホームページからダウンロードするほか、郵送や施設への訪問でも入手できます。特養は「申し込み順に入所が決まる」わけではないため、複数の施設に同時に申し込むことも可能です。
ただし、必要書類は施設によって異なる場合があるため、事前に何が必要か確認しておきましょう。

ステップ2:審査・順番待ち
提出した書類をもとに施設が審査を行い、要介護度の重さや介護者の状況などを点数化して優先順位を決定します。
点数の基準は自治体や施設によって異なりますが、要介護度の重さ、在宅での介護サービス利用率、介護者の有無などを踏まえて総合的に判定される点は共通しています。
判定は月1回程度の入所判定会議で見直され、優先順位に変動があれば施設から状況の通知が届きます。多くの場合、待機期間1年以上です。
ステップ3:入居前面談・契約
入所の順番が近づくと、入居前面談を経て契約書を締結して入居となります。
契約から入居までの期間は施設によって差があるため、荷物の準備や家族の調整は、面談の段階から進めておくとスムーズです。
まとめ
特養は、原則65歳以上・要介護3以上の方を対象とした公的な介護施設です。介護職員・看護職員が入所者3人に対し1人以上配置される体制のもと、食事・入浴・排せつの介助から医療ケア、レクリエーションまで幅広いサービスを受けられます。
間取りはユニット型個室・従来型個室・多床室・ユニット型個室的多床室の4タイプがあり、プライバシーと費用のバランスで選び方が変わります。費用は月額4.4万円〜15万円が目安で、所得・預貯金の状況に応じた軽減制度も利用できます。
一方で、全国の待機者数は約20.6万人にのぼり、入所までに数ヶ月〜1年以上かかることも珍しくありません。入居条件を満たしていても、すぐに入所できるとは限らないため、早めの情報収集と申し込みが、入所までの期間を左右します。
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