「親の介護をしながらこのまま仕事を続けられるのか」――そう感じているあなたへ。
結論から言うと、退職は最終手段です。
日本では年間約10万人(出典:総務省「令和4年就業構造基本調査」)が介護を理由に仕事を辞めていますが、退職した方の多くが後に「辞めなければよかった」と後悔しています。
退職は取り消せません。
再就職後の年収は男性で約4割・女性で約5割( 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」参照)も下がり、介護が終わった後もキャリアと収入を取り戻すことは容易ではありません。
この記事では、実際に退職して後悔した方・仕事と介護を両立し続けた方のインタビューをもとに、退職のメリット・デメリット・退職前に試みるべきこと・使える制度・サービスをすべて解説します。
親の介護で退職を決める前に知っておくべきメリット・デメリット
退職を選ぶ前に、退職後の現実を知っておく必要があります。
退職を決める前に、メリットとデメリットを事実として整理することが重要です。
多くの場合、退職しなくても状況を改善できる方法があります。
親の介護による退職のメリット
「辞めてよかった」と感じる方に共通するのは、退職前に生活費・介護費用の見通しを立てていたことです。
【インタビュー情報】
・お名前:佐藤さん(仮名)
・性別:女性
・年齢:58歳
・職業:元会社員(正規職員)
・状況:90歳超の父を在宅介護中。仕事・介護・娘の出産サポートが重なり退職を決断
佐藤さん:「退職してからデイサービスの送り出しが自分でできるようになって、職員さんとも話せるようになりました。
父の歩き方がゆっくりになってきたことや、物忘れが増えてきたことにも気づいて、ケアマネージャーさんに相談できるようになったのは大きかったです。
働いていたときは、そこまで気が回りませんでした。」
・退職後の生活費・介護費用の見通しが立っていること
・配偶者・兄弟など、家族全体での役割分担が決まっていること
・「介護が終わった後の自分の人生」についても考えておくこと
親の介護による退職のデメリット
退職にはメリットがある一方で、取り消しのきかないリスクが伴います。
「辞めて後悔した」と感じる方の多くは、収入・キャリア・人間関係への影響を、退職前に具体的に想定できていませんでした。
特に深刻なのが、デメリット①②が同時に発生するケースです。
収入がなくなることで家庭内の発言力が下がり、介護の苦労を誰にも相談できない状況に陥ることがあります。
実際にこの状況を体験した方の声を紹介します。
【インタビュー情報】
・お名前:姫乃さん(仮名)
・性別:女性
・年齢:40代
・職業:ネイリスト(自宅サロン)+障害者施設パート(退職前・週2〜3)
・状況:父(78歳)が転倒をきっかけに要介護3〜4の状態に。育児・仕事・介護の三重苦が続いたことで退職を決断
姫乃さん:「収入がなくなったことで、なんか昭和の初期の家族に戻ったみたいな感じになってしまって。美容院行きたいなって言ったら、夫に『今働いてないのに行けるの?』ってさらっと言われたんです。子供の塾代は私が出してたので、それが1番大変でした。貯金を切り崩してでも続けたかったけど、旦那に頼まないといけなくなるのが嫌で、本当にしんどかったです。」
だからこそ、退職を決断する前に、後述する会社の制度・介護サービスを先に試してください。
退職はいつでもできますが、一度辞めたキャリアと収入は簡単には戻りません。
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【体験談】親の介護で退職し、「後悔している」人の話
退職に後悔している方の多くは、「収入がなくなることの影響」を甘く見ていたと語ります。
お金の問題は、介護の大変さとは別のストレスを生み出します。
特に、配偶者がいる場合は夫婦間の関係にも影響が出ることがあります。
事例:「家庭内での立場はなくなり、精神的負担が大きくなった」
父親の介護をきっかけに退職した姫乃さん
【インタビュー情報】
・お名前:姫乃さん
・性別:女性
・年齢:40代
・職業:ネイリスト(自宅サロン)+障害者施設パート(退職前)
・状況:父(78歳)が転倒をきっかけに要介護3〜4の状態になり退職。中学1年の息子の育児と介護が重なった
姫乃さん:1番後悔しているのは、介護認定が出るまでの1ヶ月半の間、自費でもヘルパーさんを早めに入れて、父に他人を受け入れることに慣れさせておけばよかったということです。身体の介護よりも、気持ちの方がしんどかった。父は施設もヘルパーも嫌だと言うし、夫には働いてないのにと言われる。1人で全部抱え込む状況が続いて、本当に気持ちがしんどかったです。
「昭和初期のような家族に─」(もっと読む)
■ 夕方まで元気にジム通いしていた父が、翌朝突然動けなくなった
2年半前、父が自宅でつまずき転倒して。翌朝まったく動けなくなっており救急搬送しました。原因が不明のまま入院。30年以上前の頭部への衝撃が原因で脳内に液体がたまっており、転倒の衝撃で運動機能が一時的に止まったと判明したんです。
前日までスポーツジムに通っていたくらい元気だったんです。だから、まったく準備ができていなかった。
■ 介護認定が出るまでの1ヶ月半──サービスが一切使えなかった
転倒直後に市役所へ相談しましたが、「介護認定が出ない限りサービスは使えない」と言われ、申請から認定まで1ヶ月半かかりました。その間、使えたのは自費の介護タクシー(往復3万円程度)のみ。訪問介護もデイサービスも使えないまま、私1人で対応する日々が続きました。
夜中も2時間おきにトイレに呼ばれるんです。朝起こしてトイレに連れて行って、息子を駅まで送って、昼ご飯を食べさせに仕事の合間に帰って、また仕事に行って。それを毎日繰り返していました。
この状況が限界になり、障害者施設のパートを退職しました。
■ 収入が減って、家庭内の「立場」が変わってしまった
生活費は夫の収入で成り立っており、父の年金・貯金もしっかりあったため、介護費用そのものには困りませんでした。ただ、自分の収入がなくなったことで、家庭内での関係性が変わっていきました。
夫が『働いてないのに美容院行けるの?』とさらっと言うようになって。今までは自分で出せたお金が、夫に頼まないといけなくなる。これまで子供の塾代は私が払っていたがそれも払えなくなり、塾通いを反対する夫にお金を出してもらうまでが大変でした。昭和の初期の家族に戻ったみたいな感じになってしまって。」
身体の介護より、気持ちの方がしんどかった。父は施設もヘルパーも嫌だと言うし、夫にも何か言われる。1人で全部抱え込む状況が一番つらかったです。
■ あの1ヶ月半に自費でヘルパーを入れていれば──最大の後悔
1番後悔しているのは、介護認定が出るまでの1ヶ月半に、自費でもヘルパーさんを入れて、父に他人を受け入れることに早めに慣れさせておけばよかったということです。認定が出てからヘルパーを頼もうとしても、もう父は嫌だって言うから。最初から他人に慣れていれば、全部が違っていたと思います。
■ これから突然介護が始まった方へ
同じ状況の方に伝えたいことは、自分だけでしなきゃと思わないでほしいということです。身体の介護よりも気持ちの消耗の方が大きい。兄弟がいるなら遠くてもいいから声をかけて、実際に動けない人にはお金で誰かに助けてもらい、自分を大事にする形を考えてほしいです。
・退職後、毎月の生活費と介護費用はどこから出すか具体的に答えられるか?
・配偶者・兄弟など家族との役割分担・金銭的な合意は取れているか?
・介護が終わった後(5年後・10年後)の自分の生活をイメージできているか?
介護退職前に、会社に申請できる制度6つ
退職を考える前に、法律で定められた会社の制度を使い切ることが先決です。
介護休業・介護休暇・労働時間の制限を組み合わせれば、仕事を辞めずに介護と両立できるケースも多くあります。
①介護休業
介護休業は、要介護状態の家族1人につき最大93日・3回まで分割して取得できる制度です。
一括で取るより分割して使うほうが、長期にわたる介護に対応しやすくなります。
介護休業は「介護のための準備期間」として位置づけられています。
ケアマネジャーの手配・施設探し・サービス開始の調整に充てる制度であり、「介護のために丸ごと休む」ためのものではありません。
休業中に外部サービスの体制を整えることが重要です。
②介護休暇
介護休暇は、年間5日(対象家族が2人以上なら年10日)取得できるスポット対応向けの短期休暇です。
1日または半日単位で取れるため、通院付き添いや急な呼び出しに対応できます。
・自社の就業規則を確認すると、法定より日数が多い場合がある
③短時間勤務等の措置
介護のために、1日の所定労働時間を6時間に短縮することを会社に申し出ることができます。
フレックスタイム制・始業終業時刻の繰上げ下げなども選択肢に含まれます。
・3種類の措置のうちどれを利用するかは労働者が選べる(会社が一方的に決めることはできない)
④所定外労働の制限(残業免除)
「残業できないから辞めるしかない」は誤りです。
所定外労働の制限を申し出ることで、定時を超える残業を完全に免除できます。
⑤時間外労働の制限
所定外労働の制限とは別に、法定時間外労働を月24時間・年150時間以内に抑える制度があります。
残業ゼロまでは難しい職種でも、上限を設けることで介護との両立がしやすくなります。
⑥深夜業の制限
深夜(午後10時〜翌午前5時)の勤務について、免除を請求できる制度があります。
夜間に介護が必要な場合や、深夜勤務が多い職種の方に特に重要です。
番外:会社の制度が使いにくい環境にいる方へ
法律で権利が保障されていても、「申請しにくい雰囲気」「上司が認めてくれない」という現実がある職場も存在します。
そのような場合の対処法を整理します。
介護退職前に試した方がよいこと
退職を決める前に、制度利用に併せて「介護サービスの活用」「職場での対策」「家族との連携」という3方向から対処を試みてください。
介護サービスの活用
仕事中の「親の居場所と安全」を確保することが、両立の大前提です。
介護サービスを使えば、日中に親を1人にせず仕事を続けられます。
まだ介護保険サービスを使っていない方は、今すぐ手続きを始めてください。
①訪問介護
ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・排泄などの身体介護や、掃除・洗濯・料理などの生活援助を行います。
仕事中に自宅でのケアを代行してもらえるため、日中に親を1人にする不安を減らせます。
②デイサービス(通所介護)
日中に施設へ通い、食事・入浴・レクリエーションなどのサービスを受けます。
「仕事中に親が安全な場所にいる」という状態をつくれるのが最大のメリットです。
職場からの呼び出しを心配しながら仕事をする状況を解消できます。
③ショートステイ(短期入所生活介護)
数日〜数週間、施設に泊まりながら介護サービスを受けます。
仕事の繁忙期・出張・急な残業が必要なときに活用することで、「介護があるから残業できない」という状況を改善できます。
④ケアマネジャーへの相談
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護サービス計画(ケアプラン)を無料で作成してくれる専門職です。
どのサービスをどう組み合わせるかを一緒に考えてくれるため、まず相談することが介護サービス活用の第一歩です。
・地域包括支援センター(65歳以上の親の初回相談はここへ)
・居宅介護支援事業所(要介護認定後の担当ケアマネ探しはここへ)
・ケアプランの作成・サービス調整はすべて無料

職場・キャリア面での対策
介護サービスの体制が整っても、職場の理解がなければ両立は難しくなります。
「介護していることを隠す」のではなく、早めに職場に共有することが両立の鍵です。
①上司・人事への早期相談
介護が始まったら、できるだけ早く上司または人事に状況を共有してください。
早期に伝えることで、業務調整・制度利用・人員配置の選択肢が広がります。
限界になってから相談すると、退職しか選択肢が残らなくなるケースがあります。
・「辞めたい」ではなく「続けながら介護したい」という意思を最初に伝える
・介護の状況(頻度・必要なサポート内容)を具体的に説明する
・希望する働き方(時短・テレワーク・異動など)をあわせて提案する
②職種・部署の異動希望
残業が多い・出張が多い・夜勤がある部署にいる場合、介護と両立しやすい職種・部署への異動を申し出ることができます。
育児・介護休業法では、会社は介護中の労働者への配慮措置を講じる努力義務を負っています。
③仕事の可視化・引継ぎ準備
自分が急に休んでも業務が回るよう、業務マニュアルや引継ぎ体制を整えておくことが、介護による急な対応を可能にします。
「自分がいないと仕事が回らない」という状況が、休みを取りにくくする最大の原因になります。
④転職
現職での制度利用や環境改善が難しい場合、収入を維持しながら働き方を変える「転職」は、退職よりも現実的な選択肢です。
テレワーク可・フレックス制度あり・介護休業取得実績ありの会社を軸に検討してください。
・テレワーク・フレックスタイム制度の有無
・介護休業・介護休暇の取得実績(制度があっても使われていない会社もある)
・面接時に「介護中であること」を伝えて反応を見る
⑤副業・フリーランス化
時間の融通が利く働き方への移行も選択肢の一つです。
収入源を複数持つことで、介護期間中の経済的リスクを分散できます。
完全フリーランスへの移行が難しい場合でも、副業から始めることで徐々に収入の柱を増やせます。
家族・周囲との連携
介護を1人で抱えることが、退職の引き金になるケースは多くあります。
仕事を続けながら介護を続けるには、家族・地域・専門機関との連携が不可欠です。
①兄弟姉妹や親族で介護の役割分担を明確化
介護は「近くに住んでいる人が担う」という暗黙の了解が生まれやすいですが、「誰が何をするか」を話し合いで明文化することで、特定の人への負担集中を防げます。
遠方の兄弟・姉妹には、金銭的サポートや情報収集、月1回の帰省などで協力してもらうよう依頼してください。
・近くに住む人:日常的なケア・通院付き添い
・遠方に住む人:介護費用の一部負担・緊急時の帰省
・経済的に余裕がある人:介護サービス費用の補助
②介護者どうしのコミュニティ・支援団体の活用
同じ境遇の介護者と情報共有・精神的サポートを受けられる場が各地にあります。
孤独な介護が続くと精神的に消耗し、退職の判断に追い込まれるケースがあります。
「介護者サロン」「認知症カフェ」などを活用し、一人で抱え込まない環境をつくってください。
③地域包括支援センターに相談
地域包括支援センターは、介護全般を無料で相談できる公的機関です。
ケアマネジャーの紹介・介護保険の申請サポート・地域のサービス情報提供など、介護の入口として活用できます。
市区町村に必ず1か所以上設置されています。
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要介護度別|外部サービスの組み合わせと両立モデルケース
会社の制度だけでは限界があります。
介護保険サービス(ヘルパー・デイサービス・ショートステイなど)を組み合わせることで、仕事を続けながら在宅介護が可能になります。
ショートステイ(短期入所生活介護)とは、親を数日〜数週間、施設に泊まってもらえるサービスです。
「親に申し訳ない」と感じる方も多いですが、介護者が倒れれば在宅介護自体が成り立たなくなります。

【体験談】退職せず、試行錯誤で両親の介護と正社員を両立した人の話
子育て中(小学生・中学生)に父(要介護4・入院中)と母(要介護1・認知症)の2人同時介護が重なった、いわゆる「トリプルケア」の状況で就業を継続している長谷川さん(仮名)の事例です。
「退職しかない」と追い詰められた状況から、地域包括支援センターへの相談でサービス体制が整い、子育てと仕事と介護の3つを両立できるようになりました。
【インタビュー情報】
・性別:女性
・年齢:40代
・職業:正社員(在宅勤務あり)
・子供:小学生・中学生(複数)
・きょうだい:一人っ子
・状況:子育て中に父(要介護4・入院中・特養待ち)と母(要介護1・認知症)の2人を同時に介護しながら就業継続中
長谷川さん:地域包括支援センターに行ったのがきっかけで、ケアマネジャーさんがついてくれて、ヘルパーは週7日、リハビリは週2日、宅配弁当、そしてショートステイと、サービスをフルに組み合わせてもらえました。子供たちもお金のかかる時期ですし、収入が途絶えたら家庭が立ち行かなくなる。仕事はやっぱり続けた方がいいと強く思います。
「親の前で泣いた日も─」(もっと読む)
■ 子育て・仕事・介護が同時に重なった日々
子供たちが小学生・中学生の時期に、父の転倒・入院と母の体調不良が重なりました。きょうだいはおらず、頼れる人がいない中で、育ち盛りの子供の世話、正社員の仕事、そして両親2人の介護を1人で抱える状態になったんです。子供達の親でもあり、仕事もあり、でも年老いた両親の面倒をみないといけない状況に、これからどうしたら良いのだろうと途方に暮れて、両親の前で泣いた日もありました。最もしんどかった時期は毎日高速で往復2時間かけて実家に日帰りし、それが1週間続いたこともありました。
■ 転機となった地域包括支援センターへの相談
ネットで調べて地域包括支援センターに相談しに行ったことが転機になりました。ケアマネジャーがつき、介護認定を取り直しながらサービスを整備していき、ヘルパー週7日・リハビリ週2日・宅配弁当・ショートステイをフルに組み合わせた体制ができあがりました。現在は母が平日5日間ショートステイを利用し、土日に私が実家に戻って一緒に過ごすという形で安定しています。誰かしらの目が入っているというだけで、私もちょっと安心して生活ができました。
■ 見守りサービスが繋いだ、地域のネットワーク
地域包括支援センターへの相談時に、市の見守りサービスへの登録も案内してもらいました。登録したことで民生委員さんの定期的な訪問が始まり、自分では気づけなかった実家の状況を教えてもらえる人ができました。
民生委員さんから「お母さんが別の曜日にゴミ出しをしていて、近所の方からクレームが来ている」と知らされたのも、そのつながりがあったからこそでした。すぐに市の無料ごみ収集サービスを申し込み、ごみの仕分けはヘルパーさんに対応してもらうことで問題が解決しました。見守りサービスに登録するだけで、こんなに地域のネットワークが広がるとは思っていなかったです。
■ サービスが整って、子供や夫との時間が戻ってきた
サービスを導入してから最も変わったのは「メリハリができたこと」です。介護もしながら、自分の家族、子供たちと主人との生活も大事に過ごせるようになりました。ショートステイで母が施設にいる時間を使って、大好きな音楽フェスに行けたときは本当にうれしかったです。「また好きなアーティストのライブに行けたらいいな」という楽しみが、しんどい時も頑張れる原動力になっています。
■ 退職を踏みとどまった理由──子供の将来と両親の生活を守るため
両親の介護が必要になったとき、退職も少し迷いましたが、すぐに「ない」と判断しました。「子供たちも小学生・中学生でお金のかかる時期ですし、両親も年金暮らしで先が見えない状況なので、私からある程度援助が必要になると思うと、やっぱりやめられないと思いました。収入を守ることが、自分だけでなく子供たちと両親全員を支えることだと感じたんです。
■「相談できる人が多くいることが大事」──1人で抱えないためにできること
一番大事なのは、相談できる人を多く持つことだと思います。ケアマネジャー、ヘルパー、民生委員、そして職場の同僚にも同じく介護中の人が何人かいて、「最近どう?」と話せる関係があることが息抜きになっています。自分1人じゃないんだなって、相談できる人がいっぱいいるというのがすごくありがたいんです。
・最初の一歩は「地域包括支援センター」への相談。ケアマネジャーをつけてもらうことがすべての起点になる
・見守りサービスに登録すると民生委員と繋がれる。自分が知らない実家の状況を教えてもらえる「目」が増える
・サービスは1つではなく複数を組み合わせる。ヘルパー・デイ・ショートステイで「介護者の空き時間」を設計する
・在宅勤務・フレックスタイムを活用し、通院介助・急な呼び出しへの対応コストを下げる
・職場・ケアマネ・民生委員・同じ立場の同僚など「相談できる人」を複数持つことが精神的な支えになる
介護で退職する人が使える制度と相談先
退職を選んだ後も、お金・キャリア・精神面のそれぞれに使える制度と相談先があります。
退職直後に何も手を打たないと、経済的な消耗と孤立が同時に進みます。
退職が決まったら、まずこの3つの軸で動いてください。
金銭面|退職後に使える給付・軽減制度
介護を理由に退職した場合、「特定理由離職者」として認定されると、雇用保険の失業給付における3ヶ月の給付制限が免除される場合があります。
退職したらすぐにハローワークへ行き、介護退職であることを申告してください。申告しないと、通常の自己都合退職と同じ扱いになります。
加えて、国民健康保険料・国民年金の負担軽減制度も合わせて申請することで、退職直後の支出を抑えられます。
①退職後14日以内に市区町村窓口で国民健康保険への切り替え手続きを行う
②ハローワークに介護退職であることを申告し、「特定理由離職者」の認定を受ける
③国民年金の免除・猶予申請を年金事務所に行う(退職後、所得が下がったタイミングで申請)
キャリア面|退職後の状況に応じてできること
「介護が終わったら再就職すればいい」という考えは、準備なしでは成立しません。
失業給付を受けながら、介護の合間でできることからスキルと選択肢を広げることが重要です。
・退職後すぐにハローワークへ登録し、特定理由離職者の認定を受ける
・失業給付の受給期間中に、受講できるハロートレーニングを調べておく
・在宅可・短時間可の求人を「介護中の自分でも働ける条件」として把握しておく
精神面|心の健康を保つ方法と相談先
退職して介護に専念するほど、介護者自身が孤立・燃え尽きに陥るリスクが高まります。
「仕事をしていないのだから頑張れるはず」という思い込みが、無理をさせ続けます。
介護は感情労働です。
1人で抱え込まずに相談することが介護を続けるための行動です。
「相談するほどのことではない」と感じる段階が、最も相談するべきタイミングです。
身近な人に話せない場合は、匿名で話せる電話相談から始めることで構いません。
・眠れない・食欲がない・涙が出る:心療内科・精神科へ。早期受診が回復を早める
・誰とも話していない・外に出ていない:地域包括や家族介護者交流会へ。1人でも行ける
・親に怒鳴ってしまう・消えてしまいたいと思う:こころの健康相談ダイヤルへ。匿名で話せる
まとめ
仕事と介護の両立は簡単ではありません。
それでも退職は、選択肢を使い切った後の最後の手段であるべきです。
退職して後悔した方に共通するのは、「使える選択肢を知らないまま、追い詰められて決断した」ことです。
介護は突然始まります。
しかし、準備と知識があれば、退職せずに乗り越えられるケースは多くあります。
・介護休業・介護休暇・残業免除の申請を会社に伝えたか?
・ケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成したか?
・デイサービス・訪問介護・ショートステイを組み合わせて試したか?
・兄弟姉妹や家族と介護の役割分担について話し合ったか?
・退職後の毎月の生活費と介護費用の見通しが立っているか?
これらをすべて試したうえで、それでも退職が必要だと判断した場合は、退職後に使える給付・制度・相談先を把握した状態で決断してください。
上記「介護で退職する人が使える制度と相談先」を参考にしてください。