「施設に入れてしまって申し訳なかった」「もっとよく調べてから選べばよかった」――施設入居を決断した後も、こうした後悔を感じる家族は少なくありません。ケアスル 介護の独自調査では、施設入居を経験した方の51%が、入居後に何らかの後悔を抱えていることが明らかになりました。
後悔の内容は、施設に入れることになった「状況」によって大きく異なります。介護の選択に完全な正解はなく、どのような状況で決断しても後悔は生まれやすいものです。
- 在宅介護が限界になって施設に入れた場合
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急な病気・骨折・入院から流れで施設に入れた場合
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親が拒否している、あるいは意志を確認できていない状態のまま施設に入れた場合
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家族間で意見がわれながら施設に入れた場合
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本人が自ら希望して施設入居した場合
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本人と家族が合意のうえで施設入居した場合
本記事では、上記6つの入居パターンごとの後悔傾向をデータで詳しく解説したうえで、後悔への向き合い方・予防策・起きてしまったあとの対処法まで網羅します。後悔の種類を「物理的に解決できるもの」と「心の整理が必要なもの」に分けて整理しているため、自分に合ったアプローチを見つけやすくなっています。これから施設入居を検討している方にも、すでに入居後に後悔を感じている方も参考にしていただければと思います。
親を施設に入れた後悔-「状況別」後悔の種類と割合
施設入居後の後悔は、入居に至った「状況」によって内容が大きく異なります。ケアスル 介護の独自調査では施設入居を経験した方の51%が後悔を経験しており、以下6つの状況別にその内訳を解説します。
在宅介護が限界になって施設に入れた場合の後悔
在宅介護が限界になって施設入居を決断した場合、最も多い後悔は「罪悪感・見捨てた感覚」(33.3%)です。疲弊しきった状態での決断が、入居後に「逃げてしまった」という感覚を生みやすくします。

後悔① 罪悪感・見捨てた感覚(33.3%)
在宅介護の疲弊・限界が長く続いた末の決断であるため、「やっと楽になれる」という安堵と「親を捨てた」という罪悪感が同時に生まれやすいです。入居後に冷静さを取り戻した際、改めて後悔が押し寄せるケースが多くみられます。
後悔② 本人の意思を確認できなかった申し訳なさ(19.5%)
限界状況では、親への十分な説明や合意形成に時間をかけられないまま入居が決まることが少なくありません。「ちゃんと話し合えばよかった」という後悔につながります。
後悔③ 面会が義務感になった(12.3%)
「施設に入れてしまったのだから、せめて面会には行かなければ」という義務感が生まれやすく、面会がプレッシャーに変わるケースがあります。
・入居を決めた当時、親への説明は十分にできていたか
・「限界だったから仕方ない」と自分を責めすぎていないか
・面会を「義務」と感じ始めていないか
急な病気・骨折・入院から流れで施設に入れた場合の後悔
急な病気や骨折・入院をきっかけに施設入居へ流れた場合も、「罪悪感・見捨てた感覚」が最多(26.8%)です。次いで「面会が義務感になった」(16.6%)が他の状況より高く、準備なしに入居が決まった後ろめたさが面会への重圧として現れます。

後悔① 罪悪感・見捨てた感覚(26.8%)
入院中に施設の空きを探し、退院と同時に入居するケースでは「病院から直接施設へ」という流れが「家族が受け入れを拒否した」ように映ることがあります。本人・家族ともに心の準備が整わないまま決断が下されるため、後から「もっと別の方法があったのでは」という後悔が生まれやすいです。
後悔② 面会が義務感になった(16.6%)
緊急入居であったことへの後ろめたさから、「面会でフォローしなければ」という義務感が強まります。この状況では面会が義務感に変わった割合が他の状況より高い傾向があります。
後悔③ 本人の意思を確認できなかった申し訳なさ(13.9%)
緊急時には本人の意識・判断力が十分でないこともあり、意思確認ができないまま手続きが進んだケースが多くみられます。
・緊急入居でじっくり施設を選べなかったと感じていないか
・入院中に本人の意思確認ができていたか
・「流れで決まってしまった」という感覚が後悔の根底にないか
親が拒否している、あるいは意志を確認できていない状態のまま施設に入れた後悔
親に拒否されていた、または意思確認ができないまま入居を決めた場合、「本人の意思を確認できなかった申し訳なさ」が25.0%と最多になります。他の状況では「罪悪感」が1位ですが、この状況だけは「申し訳なさ」が逆転して最多になる点が特徴的です。

後悔① 本人の意思を確認できなかった申し訳なさ(25.0%)
「施設には絶対入りたくない」と言っていた親を入居させた場合や、認知症の進行などで意思確認ができなかった場合、入居後も「あれでよかったのか」という問いが消えにくいです。この後悔は解決策よりも「心の整理」が必要なタイプです。
後悔② 罪悪感・見捨てた感覚(14.7%)
親が拒否していた状況では、強引に入居を進めたことへの罪悪感も重なります。「もっとゆっくり説得すればよかった」「別の方法を探せばよかった」「騙して連れて行ってしまった」という思いが後からついてきます。
後悔③ 面会が義務感になった(13.8%)
嫌がっていた親を入れた経緯から、面会が「詫びを入れる行為」のように感じられ、義務感に変わりやすい傾向があります。
家族間で意見がわれながら施設に入れた場合の後悔
家族間で意見が割れたまま入居を決断した場合、「意思確認できなかった申し訳なさ」(26.4%)と「罪悪感」(23.6%)がほぼ同率で上位に並びます。家族間の対立に気を取られた結果、親本人の意思確認が後回しになったケースが多くみられます。

後悔① 本人の意思を確認できなかった申し訳なさ(26.4%)
「施設に入れる・入れない」と家族間でぶつかり合っている間、親本人の意向を聞く機会を逃したと感じる方が多いです。家族の対立が親の声を遠ざける構造が生まれやすいといえます。
後悔② 罪悪感・見捨てた感覚(23.6%)
反対した家族メンバーへの申し訳なさと、親への罪悪感が複合的に生まれます。「自分が強引に推し進めてしまった」という責任感を抱えやすい状況です。
後悔③ 面会が義務感になった(10.0%)
意見対立の経緯から、各家族が「せめて自分だけでも面会に行かなければ」という個別の義務感を抱えやすくなります。
・入居を決める際、親本人の意見を家族全員で聞く機会があったか
・反対した家族メンバーへの罪悪感が今も残っていないか
・今からでも家族間で後悔を話し合える関係性があるか
本人が自ら希望して施設入居した場合の後悔
本人が自ら施設入居を希望したケースでも、「罪悪感・見捨てた感覚」が26.7%と最多です。本人の希望を叶えたはずなのに罪悪感が残るのは矛盾しているように見えますが、「もっと自宅でみてあげられたのでは」という思いが後から生まれるケースが多くみられます。

後悔① 罪悪感・見捨てた感覚(26.7%)
親が「迷惑をかけたくない」という気持ちから入居を希望することは少なくありません。その言葉を受け入れた家族が後になって「あの言葉を鵜呑みにしてよかったのか」「もっと引き止めるべきだったのでは」と感じるケースが多くみられます。
後悔② 面会が義務感になった(18.1%)
本人の意思を尊重して入居した分、「ちゃんと会いに行かないと申し訳ない」という義務感が他の状況より高い傾向があります。
後悔③ 本人の意思を確認できなかった申し訳なさ(12.9%)
「希望して入ったのだから意思は確認できている」と思いがちですが、入居後に「本当はどう感じていたのか」を深く聞けなかったという後悔が生まれることがあります。
・「迷惑をかけたくない」という言葉の裏にある本人の気持ちを聞けていたか
・本人の希望を叶えたことを、自分自身が肯定できているか
・面会が義務感になっていないか
本人と家族が合意のうえで施設入居した場合の後悔
本人と家族が十分に合意したうえで施設入居した場合も、「罪悪感」が27.5%と最多です。さらに「入居後の関わり方への後悔」(12.8%)が6状況中で最も高く、合意による安心感が入居後の関わりを薄れさせてしまうケースが多くみられます。

後悔① 罪悪感・見捨てた感覚(27.5%)
論理的な合意と感情は別物です。「正しい決断をした」という確信があっても、「寂しさ」や「申し訳なさ」は別のレイヤーで湧き上がってきます。合意入居でも罪悪感が残ることは珍しくありません。
後悔② 入居後の関わり方への後悔(12.8%)
合意入居で「うまく解決できた」という安心感が、入居後の面会・関わりの頻度を下げてしまうことが多くみられます。「もっと足を運べばよかった」という後悔は、合意していた状況だからこそ生まれやすいといえます。
後悔③ 費用・制度を把握しておけばよかった(10.1%)
計画的に入居を進めた状況でも費用・制度への理解が不十分だったという後悔が6状況中で最高です。合意段階では費用の詳細まで把握できていないことが多いため、事前に費用計算を行っておくことが有効です。
・合意後、入居してから面会・関わりの頻度は下がっていないか
・入居前に費用・制度の詳細まで把握できていたか
・合意していても罪悪感が残る場合は、感情の整理が必要なサインと捉える
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後悔してでも親を施設にいれるべき?
結論から言うと、以下の状況に当てはまる場合は、後悔を恐れて先送りにするより施設入居を検討することを推奨します。
・介護をしている家族の体力・精神・経済が限界に近づいている
・本人の安全を自宅で確保するのが難しくなっている(転倒・徘徊・服薬管理など)
・緊急時の対応が家族だけでは難しくなっている
先送りにした場合、後悔よりも深刻な問題につながることがあります。
ただし、施設に入れることを決断しても、後悔は生まれます。1章のデータが示すとおり、本人が望んで施設に入った場合や本人と家族が合意のうえで入居した場合でも罪悪感を感じています。

ただし、後悔のすべてが避けられないわけではありません。後悔には「行動で減らせるもの」と「心の整理が必要なもの」の2種類があります。次の章「後悔への予防策・対処法」では、後悔を種類別に整理したうえで、それぞれの具体的な解消法を解説します。
親を施設に入れた後悔の予防策と対処法
施設入居後の後悔は、「物理的な解決策・予防策がある後悔」と「物理的な解決策・予防法がない後悔」の2種類に分けられます。物理的な後悔は今日からでも行動で対処できます。一方、精神的な後悔は解決策を探すほど苦しくなることもあるため、感情と向き合うことを優先することが有効です。
物理的な対処法がある後悔
以下の後悔は、事前の準備または入居後の行動によって状況を改善できます。「もう遅い」と感じる場合でも、今日から動くことで後悔の大部分は軽減できます。
後悔1. もっと早く専門家に相談して、介護認定などを進めておけばよかった
「まだ大丈夫」と思っているうちに状態が急変し、選択肢が狭まってから動き始めるケースが多いです。「まだ早い」と感じたときが、動き出しのサインです。
後悔2. 元気なうちに親の希望を聞いておけばよかった
先送りしているうちに認知症や急病が進み、本人の希望を聞けなくなるケースが多いです。切り出し方を工夫するだけで、「介護の話」は格段に進めやすくなります。
後悔3. 家族間(きょうだい・夫婦)でちゃんと話し合っておけばよかった
「近くにいる自分が自然と全部引き受けた」「遠方のきょうだいは何もしない」という形が多いです。感情が絡む家族の話し合いには、第三者を必ず入れることが有効です。
後悔4. もっと施設を幅広く比較して選べばよかった
「退院期限に急かされた」「1施設しか見なかった」「見学で何を聞けばいいかわからなかった」という3パターンが多いです。3〜5施設を見学すると「普通の施設」の感覚がつかめ、良し悪しの判断ができるようになります。
後悔5. 施設を選ぶときにきちんと判断軸を持ち、そこが自分にとって正しいか検討すればよかった
「どの施設も同じくらい良く見えた」「よくわからないまま決めた」という場合、判断軸を事前に持っていないことが原因です。特に、見学時に「お金については聞きづらく、あとから予想以上の金額を請求された」というケースが多いです。見学前に優先順位を書き出し、チェックリストとして持参することで、施設比較の精度が大幅に上がります。
後悔6. 費用や使える制度について、もっと把握しておけばよかった
「制度を知らなかった」ではなく、「知っていたのに申請できなかった」というケースが多いです。申請が煩雑なため途中で諦めることが一因であり、解決策は「仕組みを最初に作ること」と「申請を一人でやらないこと」です。
後悔7. 入居後もっと頻繁に・丁寧に関わればよかった
入居直後1〜2か月が最重要期間です。この時期の面会頻度と施設スタッフとの関係構築が、その後の親の施設生活の質と家族の後悔の大きさに直結します。
・地域包括支援センターへの相談、または要介護認定を取得済み
・親の介護に関する希望(費用含む)を聞いた、または記録している
・家族間で役割分担・費用負担・面会頻度を書面で決めている
・3〜5施設を比較したうえで入居を決めた
・高額介護サービス費・負担限度額認定制度を申請・確認済み
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物理的な対処法がない後悔
以下の後悔は、行動や解決策を探してもすぐには解消されません。解決策を求めるほど苦しくなることもあります。「正しかったか・間違いだったか」の判断を保留し、感情をそのまま受け入れる姿勢から始めることが大切です。
後悔1. 親を施設に「任せた・預けた」ことへの罪悪感、見捨てた感覚
「施設に入れた=見捨てた・手を抜いた」という等式が頭から離れないことで生じます。入居後3か月が罪悪感のピーク。その後薄れていくケースが大半です。今回のアンケートでも後悔をしたと答えた60%以上の人が、「介護に正解はないため、仕方ないと思えるようになった」と答えています。「今がピーク」と知っておくだけで少し楽になります。

① 入居後3か月が罪悪感のピーク。「今がいちばんつらい時期」と知っておくだけで楽になれる
② 親の食事量・肌ツヤ・表情の変化を自分の目で確認する(改善が見えると罪悪感が薄れる)
③ 施設スタッフに「最近楽しそうにしていた瞬間」を定期的に聞く
④ 施設の家族会・介護者の集まりに参加する。「同じ気持ちだった」という言葉が一番の薬になる
⑤ 自分の介護負担を家族やケアマネから客観的にみてもらう(「まだやれる」と思っていても、周囲からは十分すぎる頑張りに見えることが多い)
後悔2. 親が嫌がっていたのに入れた・本人の意思を確認できなかった、という申し訳なさ
「嫌がっていたのに入れた」「騙した」「意思確認できなかった」という3パターンがあります。ただし、「嫌がっていた=本人にとって悪かった」は必ずしも一致しません。入居直後の拒否は「施設への拒否」より「環境変化への拒否」であることが多く、1〜3か月で慣れていくケースが大半です。
① 入居直後の拒否は「環境変化への拒否」が多い。1〜3か月で慣れることがほとんど。結果を見届けてから判断する
② 「騙して連れていった」場合でも、入居後に繰り返し丁寧に「なぜここにいるか」を説明し続けることで関係は修復できる
③ 認知症が進んだ後では誰も意思確認できない。できなかったことを責めても答えは出ない
④ 「本人が望んでいたこと」より「今の本人にとって安全・快適か」に軸足を移していく
⑤ 意思確認できるタイミングを逃した経験を次世代に伝える(同じ後悔を繰り返さない)
後悔3. 面会が義務感になった、または親との残り時間の少なさを感じる寂しさ
「面会が義務感になった」と「残り時間の少なさに気づいた」という2つが合わさっています。義務感で行くことにも意味があります。行かないと罪悪感が積み上がる一方なので、「義務感でも行く自分」を責めないことが出発点です。
① 「様子を見に行く」から「一緒に何かをする」に変えると義務感が薄れる(昔の写真を見る・好きな音楽をかける・散歩する)
② 義務感で行くことにも意味がある。親にとって「来てくれた」事実が伝わる
③ 月1回2時間より月2〜3回30分の方が親は喜ぶことが多い
④ 「残り時間を計算して焦る」より「今日の面会で何をするか」にフォーカスする
後悔4. 入居後に親が急に変わってしまい、親を施設に入れなければよかったという後悔
「施設に入れてから急に変わった」という変化の多くは、「環境変化のショック(転入ショック)」が原因です。見知らぬ場所・見知らぬスタッフ・慣れない日課に急に置かれることで、入居前は見せなかった行動が現れることがあります。認知症がある場合は特に環境変化に敏感で、急に無気力になる・混乱する・食事を拒否するといった変化が起きやすくなります。多くは1〜3か月の「適応期間」を経て落ち着いていきます。
① まず施設スタッフに「いつ頃から・具体的にどう変わったか」を詳しく確認する(変化の原因を特定することが最初のステップ)
② 見慣れた物(家で使っていた写真・毛布・好きな音楽)を部屋に持ち込み、安心できる環境をつくるよう施設に依頼する
③ 入居後1〜2か月は面会頻度を上げる。短くても「来てくれた」事実を積み重ねることで、施設が「安全な場所」だと感じやすくなる
④ 認知症がある場合は主治医に「入居後の行動・心理症状(BPSD)への対応」を相談する(薬の調整が有効なこともある)
まとめ
施設入居後の後悔は、入居に至った状況によって内容が大きく異なります。どの選択であっても後悔はゼロにならないが、「予防できる後悔」と「避けられない後悔」を区別することで、入居前後の備えが変わります。
上の表を見ると、「施設に任せた罪悪感」は6つの状況すべてで2割以上が回答している。本人が希望して入居した場合も、家族全員が合意したうえで入居した場合でも、罪悪感を抱える家族は少なくないため、これは施設入居という選択肢の問題ではなく、家族であるかぎり生まれる感情と捉えることが大切です。
本記事のポイントを3点に整理します。
・後悔の内容は「入居に至った状況」によって異なる。状況に応じた対策を取ることが後悔を減らす第一歩です。
・「防げる後悔」(施設選び・費用把握・本人の意思確認など)は、元気なうちの行動で大幅に減らせます。
・「防げない後悔」(罪悪感・寂しさ)は、入居後の関わり方と心の準備で和らげることができます。入居後3か月がひとつの節目です。