「親の介護が必要になったが、親にも自分にもお金がない…」という悩みを抱える方は少なくありません。
そこで本記事では、そもそも介護にいくらお金がかかるのかについて整理していきます。
お金がないときに使える11の制度・支援策無料や無料で利用できる相談できる窓口もご紹介しておりますので、介護について経済的に不安な方の希望となれば幸いです。

親の介護にかかるお金はいくら必要?
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」(2024年度)によると、親の介護にかかるお金は平均して9.0万円となっています。

出典:介護にはどれくらいの費用・期間がかかる? | 公益財団法人 生命保険文化センター
ただし、実際にいくらかかるかは個々の状況によるところが大きいです。
とくに、家で介護する場合(在宅介護)と老人ホームなどの施設で介護する場合(施設介護)で費用は大きく異なります。
本章では、在宅介護と施設介護にそれぞれの場合においてかかる費用について、全国調査のデータをもとにご紹介していきます。
在宅介護にかかるお金
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」(2024年度)によると、介護費用の月額平均は在宅で5.3万円となっています。

出典:介護にはどれくらいの費用・期間がかかる? | 公益財団法人 生命保険文化センター
介護保険の区分支給限度額の範囲内でサービスを利用すれば、自己負担は原則1割(所得に応じて2割・3割)です。同調査でも、在宅介護の自己負担を月3万円未満に抑えられている家庭が多いことが分かります。
ただし、限度額を超えてサービスを利用した分は全額自己負担です。ケアマネジャーと相談しながら、限度額内でケアプランを組むことが費用を抑える基本になります。
月々の費用とは別に、介護を始める段階でまとまった支出が発生する点にも備えが必要です。同調査では、住宅改造や介護用ベッドの購入などにかかった一時的な費用は平均47.2万円となっています。
手すりの設置や段差解消などの住宅改修には介護保険の住宅改修費支給(上限20万円・自己負担1~3割)が使えるため、初期費用を抑えたい場合はケアマネジャーに相談してから工事を行うようにしましょう。
・介護保険サービスの自己負担以外に、おむつ代・食費・光熱費などの生活費が別途かかります
・住宅改修や介護ベッドの購入など、介護開始時の一時的な費用は平均47.2万円かかります(生命保険文化センター調べ)
・区分支給限度額を超えたサービス利用分は全額自己負担になります
施設介護にかかるお金
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」(2024年度)によると、施設介護の月額費用は平均13.8万円です。

出典:介護にはどれくらいの費用・期間がかかる? | 公益財団法人 生命保険文化センター
なお、施設介護では介護サービス費の自己負担に加えて、在宅介護では発生しない居住費・食費が毎月かかります。
施設介護における月額費用の内訳は、主に以下5つです。
月額平均13.8万円の負担が続くと、1年間で約166万円、3年間では約500万円に達します。
親の年金収入だけで賄えない場合は、特別養護老人ホームなどの公的施設を選ぶ、後述する特定入所者介護サービス費(食費・居住費の軽減)や高額介護サービス費を申請するなど、費用を抑える工夫や制度の活用が必要です。
なお、公的施設は所得に応じた軽減制度あり民間施設より月額費用を抑えやすい一方、基本的には入居待ちが発生しています。
施設介護の費用について、ケアマネージャーであり社会福祉士でもある桐島さんにお話を伺いました。


10万円で入れる老人ホームなんて本当に少ないので、いくらまで出せるかを聞いた上で予算に合った施設を探します。
ただ、施設が公にしている利用料金も、我々のような紹介業者に任せてもらえれば「15万円までしか出せないならそれで収まるようにします」といったように、交渉次第で金額を調整してもらえることもあります。
月額費用だけで判断せず、入居一時金・日常生活費の実費を含めた総額の見積もりを施設に依頼して比較してください。
親の介護のお金がないときに使える制度・工夫一覧
親の介護のお金がないときは、公的な負担軽減制度や工夫によって自己負担を大きく減らせます。
主な制度は以下の11です。
- 高額介護サービス費支給制度
- 特定入所者介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 医療費控除
- 生活福祉資金貸付制度
- 介護保険負担限度額認定証の制度
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
- 自治体独自の支援
- 生活保護
- 世帯分離
- リバースモーゲージ
各制度・工夫について詳しくご紹介していきます。
高額介護サービス費支給制度
高額介護サービス費支給制度は、1か月の介護サービス自己負担額が上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。
所得区分ごとの負担上限額(月額)は、以下の通りとなります。
申請先は親が住んでいる市区町村の介護保険窓口です。
支給対象になると市区町村から通知が届き、一度申請すれば2回目以降は登録した口座に自動的に振り込まれます。
住民税非課税世帯であれば月の自己負担上限は24,600円となり、課税世帯の44,400円と比べて年間で約24万円の差になります。
特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費は、介護保険施設の食費・居住費が所得に応じた負担限度額まで軽減される制度です。
食費・居住費は介護保険の対象外で全額自己負担が原則ですが、低所得の方には負担限度額が設けられています。
たとえば第1段階に該当する方が特別養護老人ホームの多床室に入所した場合、居住費の負担限度額は0円、食費は日額300円まで軽減されます。
対象施設は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院で、ショートステイの食費・滞在費も軽減対象です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は対象外となるためご注意ください。
部屋のタイプ・段階ごとの最新の負担限度額は、厚生労働省のページで確認しておきましょう。
高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度は、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の医療保険と介護保険の自己負担合計が基準額を超えた場合に、超えた分が支給される制度です。
70歳以上の方の年間基準額は、以下の通りとなります。
高額療養費・高額介護サービス費が「月単位」の軽減であるのに対し、合算療養費制度は「年単位」で世帯の負担を軽減する仕組みです。
親が医療と介護の両方を利用している場合に該当しやすく、月単位の上限内に収まっていても年間合計で基準額を超えていれば支給対象になります。
申請先は親が加入している医療保険の窓口(後期高齢者医療制度の場合は市区町村)です。
医療費控除
医療費控除を使うと、介護サービスの自己負担額の一部を所得から差し引き、所得税・住民税を減らせます。
控除額は「支払った医療費-保険金などの補填額-10万円(総所得200万円未満の場合は総所得の5%)」で、上限は200万円です。
介護費用のうち医療費控除の対象になる主な範囲は、以下をご覧ください。
- 特別養護老人ホーム:介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1
- 介護老人保健施設、介護医療院:介護費・食費・居住費の自己負担額の全額
- 在宅介護:訪問看護・訪問リハビリテーションなどの医療系サービスと、医療系サービスと併せて利用する訪問介護(生活援助中心型を除く)・デイサービスなど
おむつ代も、医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば対象になります。
控除を受けるには、介護費用を負担した家族が確定申告を行う必要があるのでご注意ください。施設や事業者が発行する領収書に医療費控除の対象額が記載されているため、領収書は必ず保管しておきましょう。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯・高齢者世帯などを対象に、無利子または低利でお金を借りられる公的な貸付制度です。
都道府県の社会福祉協議会が実施し、窓口は市区町村の社会福祉協議会です。
介護に使えるのは「福祉費」で、介護サービスを受けるための費用や住宅改修費などに充てられます。
銀行のカードローンなどと比べて利子負担が小さいため、年金支給月までのつなぎや一時的な出費に対応する手段として利用できます。
貸付には審査があり申し込みから貸付までに時間がかかるため、必要な場合は早めに相談しておきましょう。
介護保険負担限度額認定証の制度
介護保険負担限度額認定証は、特定入所者介護サービス費による食費・居住費の軽減を受けるために必要な認定証です。
市区町村に申請し、所得と資産の要件を満たすと交付されます。所得要件に加えて、以下の預貯金等の資産要件があります。
申請には、申請書のほかに本人と配偶者の預貯金通帳の写しなどが必要です。
認定証の有効期間は毎年8月1日から翌年7月31日までで、継続して軽減を受けるには毎年の更新申請が必要です。
交付された認定証は入所する施設に提示することで、食費・居住費が負担限度額まで軽減されます。
施設入所やショートステイの利用を検討し始めた段階で、市区町村の介護保険窓口に申請してください。
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度は、生計が困難な方の介護サービス自己負担を原則4分の1軽減する制度です。
老齢福祉年金受給者は2分の1軽減されます。社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームや訪問介護などが対象です。
主な対象要件は以下の通りです。
- 世帯全員が住民税非課税であること
- 年間収入が単身世帯で150万円以下(世帯員が1人増えるごとに50万円を加算)
- 預貯金等が単身世帯で350万円以下(世帯員が1人増えるごとに100万円を加算)
- 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと
- 負担能力のある親族等に扶養されていないこと
- 介護保険料を滞納していないこと
軽減の対象は介護サービス費の自己負担分のほか、食費・居住費(滞在費)・宿泊費となります。
自治体独自の支援
市区町村や都道府県は、介護保険とは別に独自の介護費用助成を実施している場合があります。
お住まいの自治体の制度を確認するだけで、申請できる支援が見つかる可能性があります。
自治体独自の支援の例は以下のとおりです。
- 紙おむつの現物支給や購入費の助成
- 家族介護慰労金(在宅で介護する家族への給付金)
- 介護用品の購入助成、寝具の丸洗いサービス
- 住宅改修費の介護保険への上乗せ助成
- サービス付き高齢者向け住宅の家賃補助(最大40,000円)
制度の名称・金額・対象要件は自治体ごとに異なります。
市区町村の介護保険課または高齢福祉課の窓口、自治体の公式サイトで「介護 助成」と検索して確認してみましょう。
後述する地域包括支援センターでも、利用できる自治体独自の支援をまとめて案内してもらえます。
生活保護
生活保護を受給すると、介護費用は「介護扶助」として支給され、自己負担は実質0円になります。
医療費も「医療扶助」の対象です。預貯金や資産を活用しても収入が国の定める最低生活費に満たない場合に受給できます。
ケアスル 介護 の独自調査では、施設探しの相談者のうち6.8%が生活保護を受給中または申請予定であり、生活保護を受けながら老人ホームに入居する事例は珍しくありません。
生活保護受給者は、特別養護老人ホームなどの公的施設のほか、生活保護に対応した住宅型有料老人ホームなどの民間施設にも入居できます。申請先は親の住所地を管轄する福祉事務所です。
介護における生活保護の申請について、看護師であり様々な介護施設で高齢者ケアに携わってきた菅原さんにお話を伺いました。


生活保護になれば医療費や介護の自己負担分も無料になるため、実質17〜18万円ほどの生活費と同等になり、施設案内は非常にしやすいんです。一番困るのは、年金が11万〜13万円などで生活保護の基準をギリギリ超えていて、かつ貯蓄がない方ですね。
・持ち家や預貯金などの資産は原則として活用(売却・取り崩し)が先に求められます
・生活保護の基準額は地域により異なります
・入居一時金が必要な施設には原則として入居できません

世帯分離
世帯分離とは、同居したまま住民票の世帯を親と子で分け、介護費用の負担段階を親自身の所得だけで判定させる方法です。
子の所得が世帯に合算されなくなるため、親が住民税非課税であれば負担軽減の対象に入りやすくなります。
世帯分離によって軽減される可能性があるのは以下の費用です。
- 高額介護サービス費の負担上限額(課税世帯44,400円→非課税世帯24,600円など)
- 特定入所者介護サービス費(食費・居住費の軽減)の対象判定
- 介護保険料の所得段階
- 後期高齢者医療保険料
手続きは市区町村の住民窓口で行い、世帯変更届を提出します。親と子で家計が別であることが前提です。

リバースモーゲージ
リバースモーゲージは、親が自宅に住み続けたまま自宅を担保にお金を借り、亡くなった後に自宅を売却して一括返済する仕組みです。
収入が少なくても持ち家がある場合に、介護費用を捻出する手段になります。
自宅を手放さずに毎月の資金を確保できる一方、長生きするほど借入総額が増える、不動産価値の下落で融資が打ち切られる場合がある点がリスクです。
・契約には推定相続人(子など)の同意が求められる場合が多く、家族で事前に話し合いが必要です
・自宅は最終的に売却されるため、相続財産として残せません
・マンションは対象外となる商品・制度が多いため、事前に確認が必要です
親の介護でお金に困ったときの相談先
親の介護でお金に困ったときは、地域包括支援センター・市役所の福祉課・ケアマネジャーの3つの窓口に相談してください。
介護費用の軽減制度は申請しなければ適用されず、どの窓口も無料で利用できるためです。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の生活・介護に関する無料の総合相談窓口です。介護のお金に困ったとき、まだケアマネジャーがいない段階では地域包括支援センターに最初に相談してください。
地域包括支援センターは市区町村が設置し、おおむね中学校区に1か所を目安に配置されています。社会福祉士・保健師・主任ケアマネジャーなどの専門職が在籍しており、相談内容に応じて以下の対応を受けられます。
- 利用できる負担軽減制度や自治体独自の支援の案内
- 要介護認定の申請支援
- ケアマネジャーや福祉事務所など適切な窓口への橋渡し
親が遠方に住んでいる場合は、親の住所地を管轄するセンターが窓口になるので覚えておきましょう。
市役所の福祉課
市役所の福祉課(介護保険課・高齢福祉課)は、高額介護サービス費や負担限度額認定証など、負担軽減制度の申請を直接受け付ける窓口です。
制度の適用可否をその場で確認できるため、お金の悩みを具体的に解決できます。
市役所の福祉課で相談・申請できる主な内容は以下のとおりです。
- 高額介護サービス費の申請
- 介護保険負担限度額認定証の申請
- 介護保険料の減免相談
- 自治体独自の助成制度(紙おむつ支給・家族介護慰労金など)の案内
- 生活保護の相談窓口(福祉事務所)への取り次ぎ要介護認定の申請支援
- ケアマネジャーや福祉事務所など適切な窓口への橋渡し
自治体独自の支援は公式サイトにも掲載されていますが、手続きやもらえる金額についての取り決めが複雑なことも多いです。
そのため、窓口で「介護費用の負担を減らせる制度をすべて教えてほしい」と尋ねる方法が確実です。
ケアスル 介護 のケアアドバイザーとして多くの施設選びをサポートしてきた前北さんにお話を伺いました。

自治体ごとに使える制度が結構違うので、自分で調べた上で一度確認してみるのが一番早いと思います。
ケアマネジャー
すでに介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに「毎月いくらまでなら払えるか」を具体的に伝えて、予算内に収まるケアプランへの見直しを依頼してください。ケアマネジャーへの相談に追加費用はかかりません。
ケアマネジャーは介護保険制度と地域のサービス事情に精通しており、費用面では以下の対応ができます。
- 区分支給限度額の範囲内でのサービスの組み直し
- 自己負担の少ないサービス(総合事業・インフォーマルサービスなど)への切り替え提案
- 高額介護サービス費や負担限度額認定など、使える制度の案内と申請のサポート
- 施設入所を検討する場合の費用に合った施設の情報提供
お金の事情を伝えないままにすると、支払い能力を超えたケアプランが続き、サービスの利用控えや滞納につながります。
家計の状況は遠慮せずに共有しておきましょう。
お金がなくても親の介護を続けた人の体験談
親の介護とお金の問題に直面すると、「サービスを頼むお金がない」「自分の生活や老後資金はどうなるのか」と、出口の見えない不安を抱えてしまう方は少なくありません。
ここでは、実際にお金がない状態で親の介護に直面し、限界を経験しながらも状況を打開した2名の方のリアルな体験談をご紹介します。
・ケース①:月10万円の収入で治療費も月10万円。留学資金を切り崩し、ヘルパーも頼めず自分が倒れるまで抱え込んだ佐藤さん(仮名)
・ケース②:親の年金も貯金もなく、姉妹で生活費を出し合う日々。老後資金を切り崩す不安から「生活保護」で救われた林さん(仮名)
ケース①:月10万の収入で治療費も月10万。留学資金を切り崩し、ヘルパーも頼めず自分が倒れるまで抱え込みました

・実施日:2026年4月
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:佐藤さん(仮名)
・性別:女性
・年齢:33歳
・職業:会社員
・居住地:東京都
・状況:佐藤さんは27歳のとき、当時65歳だった母親に乳がんが見つかり、大学院を休学してつきっきりの介護を始める。収入はアルバイト代のみで、病院代だけで月10万円前後が数か月続き、留学資金を切り崩して介護を続けた。
経済的に余裕がなく、一人っ子の私が介護を担うしかなかった
佐藤さん:私が27歳の時、当時65歳だった母に乳がんが見つかりました。私は大学院の博士課程に在籍していて、ちょうど博士論文を書く時期だったのですが、母の体力が手術と治療でどんどん落ちてしまい、精神的にもふさぎ込んでしまったため、大学院を休学してつきっきりで介護をすることになりました。我が家は経済的に余裕がなく、父もパートを掛け持ちして家にほとんどいなかったので、一人っ子の私がメインで介護を担うしかなかったんです。
病院代だけで月10万円。ヘルパーに頼るお金の余裕は全くなかった
佐藤さん:当時、私の収入はオンラインの非常勤講師のアルバイト代だけで、月に10万円程度しかありませんでした。高額療養費制度は利用したものの、病院代だけで月に10万円前後が数ヶ月間かかり、留学のために頑張って貯めていた貯金をどんどん切り崩していく状況が続いていたんです。
できればヘルパーさんなどのサービスに頼りたかったのですが、そんなお金の余裕は全くなく、自分ひとりで抱え込むしかなかったんです。
激務と介護の両立の末に救急搬送。「あと1日遅かったら死んでいた」
佐藤さん:その後、母の乳がんが良くなりかけたタイミングで、家計のために私は出版社に就職しました。
しかし、入社して1年ほどで今度は母に大腸がんが見つかってしまったんです。出版社の仕事は激務で、帰宅してからも寝たきりに近い母の食事の用意やトイレ、お風呂の介助などをしていました。お金がないためケアマネージャーさんなどの公的支援を調べる気持ちの余裕すらなく、現実逃避するように過ごしていました。
佐藤さん:その結果、過労と仕事中のトイレの我慢などが重なって、私自身が「腎膿瘍」という病気で倒れ、救急搬送されてしまったんです。
医師からは「あと1日遅かったら死んでいた」と言われ、そこで初めて自分の限界に気づきました。
無理をして自分が倒れては元も子もない。頼れる人にすべて吐き出すべきだった
佐藤さん:お金がないとお金のかかるサービスを最初から諦めてしまいがちですが、私のように無理をして自分が倒れてしまっては元も子もありません。
今振り返ると、平気だと思っていても突然限界は来るので、頼れる人にすべてを吐き出して相談すべきだったと痛感しています。
ケース②:親の年金も貯金もなく、姉妹で生活費を出し合う日々。老後資金を切り崩す不安から救ってくれたのは「生活保護」でした
・実施日:2026年4月
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:林さん(仮名)
・性別:女性
・職業:会社員
・年齢:51歳
・居住地:兵庫県
・状況:林さんは、母親が83〜84歳の頃に足腰が弱り、介護が始まる。母親の貯金が底をついたこと、同居して介護を担っていた長女が介護うつになり、施設入所を決断。
母の貯金が底をつき、3姉妹で毎月1万円ずつ出し合った
林さん:母が83〜84歳くらいの時に足腰が弱り、介護が始まりました。
当初は母の年金でなんとか生活できていたのですが、だんだんと母の貯金が底をついてしまい、私たち3姉妹で毎月1万円ずつ出し合って、姉の家で在宅介護を続けていました。
林さん:私には子どもはいませんが、コロナ禍で母を病院に連れて行くためのカーシェア代などで月に数万円飛んでいくこともあり、自分の老後資金を貯金できない期間が長く続きました。
「自分が働けなくなった時に母の生活費を出せるのだろうか」という将来への不安と、自分たちの貯金を切り崩していく金銭的な葛藤が常にありました。
長女が介護うつに。母の安全と姉の負担軽減のため施設入所を決断した
林さん:そんな中、無理をして同居介護を続けていた長女が、介護うつになってしまったんです。私がメインで動くことになり、母の安全と姉の負担軽減のために施設入所を決断しました。
しかし、母にはお金がありません。そこで、知識が豊富で親切なケアマネージャーさんに、親の年金や貯金がないことを包み隠さず相談しました。
すると、「生活保護の枠がある施設を探しましょう」とアドバイスをくれたんです。
ケアマネジャーと施設長が市役所に同行。生活保護で介護付き老人ホームに入居できた
林さん:最終的に、ケアマネージャーさんと、見学に行った施設の施設長さんが市役所へ同行して生活保護費の給付について交渉までしてくださり、母は生活保護を受給しながら介護付き老人ホームに入居することができました。
林さん:生活保護を受けられたことで、私たち姉妹が毎月お金を出し合う必要もなくなり、本当に金銭的にも精神的にも救われました。
介護うつだった姉も、今では母と外食に行けるくらいに回復しています。
国の制度は「困っている」と自分から言いに行かないと教えてもらえない
林さん:国の制度は自分から「困っている」と言いに行かないと教えてもらえません。
親のお金を当てにせず、また見栄を張らずに、お金がないなら公的機関や周りの人に恥ずかしがらずに相談することが、介護を乗り切るための一番の秘訣だと実感しています。
そもそも親の介護費用は誰が負担する?
親の介護費用は、親自身の年金・貯蓄で賄うことが原則となります。介護費用は、介護を受ける本人の生活費だからです。
子には親に対する扶養義務がありますが、求められるのは自分の生活を維持したうえで余力がある場合にとどまります。
自分の貯蓄や老後資金を取り崩してまで親の介護費用を負担し続けると、体験談でご紹介した方のように将来への不安を抱え込むことになります。
親の資産で足りない分は、子が無理に補うのではなく制度や工夫で補うという順番で考えてください。
また、介護費用の負担をめぐっては、兄弟姉妹間のトラブルが起こりがちです。トラブルを防ぐには、親の年金額・貯蓄などの資産を介護が始まる前に把握し、誰がいくら負担するか・誰が介護を担うかを兄弟姉妹で話し合って明確にしておくことがとても大切になります。
・介護費用は親の口座から直接支払う形にすると、負担の偏りと使途への疑念を防げます
・子が立て替えた費用は、領収書と記録を残して兄弟姉妹間で共有してください
・負担割合で揉めた場合は、家庭裁判所の調停で扶養の分担を決める方法もあります
きょうだい間における介護費用の負担割合や、兄弟姉妹間のトラブルを防ぐ具体的な方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ
親の介護にかかる費用は、生命保険文化センターの調査(2024年度)で、在宅介護が月額平均5.3万円、施設介護が月額平均13.8万円です。
お金がない場合でも、高額介護サービス費・特定入所者介護サービス費・生活保護など、申請すれば負担を減らせる制度は複数あります。
・介護費用は親の年金・貯蓄で賄うことが原則で、子が生活を犠牲にして負担する必要はありません
・高額介護サービス費や負担限度額認定など、所得に応じた軽減制度は申請しなければ適用されません
・世帯分離・生活保護・リバースモーゲージなど、家計の状況に応じた選択肢があります
・困ったときは地域包括支援センター・市役所の福祉課・ケアマネジャーに無料で相談できます
介護費用の工面で活用すべき公的制度は、自分から「困っている」と相談しなければ案内されません。介護者である家族が倒れる前に、本記事で紹介した制度と相談先を活用してください。
費用を抑えられる施設への入居を検討する場合は、ケアスル 介護 のケアアドバイザーが予算に合った施設探しを無料でサポートしておりますので、ぜひご活用ください。