作業記憶を利用した生活行為が作用する脳の働き

作業記憶を利用した生活行為が作用する脳の働き

私達が毎日行っている生活行為は脳と身体の運動に繋がっています。生活行為には目的と意味があり、感情や知的面にも影響を及ぼしています。情報を処理しつつ一時的に必要な事柄を保持する作業記憶を意識的に生活行為に取り入れてみましょう。脳と身体の調和が益々向上できる脳と身体の体操になります。生活行為に独自の脳と身体の体操を是非意識して毎日実践してください。

杉原 勝美 作業療法学専攻長・教授
四條畷学園大学 リハビリテーション学部 作業療法学専攻
作業療法士
日本作業療法士協会 日本作業療法士連盟 大阪府作業療法士会
神戸大学大学院医学系研究科保健学専攻前期課程修了(保健学修士)、神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科 医療リハビリテーション学専攻 博士後期課程修了(医療リハビリテーション学博士)、四條畷学園大学リハビリテーション学部教授 研究領域は高齢者と作業、ワーキングメモリ、作業遂行、認知処理。
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生活行為とは

生活行為とは、作業療法士協会1)では「人が生活していく上で営まれる生活全般の行為」と定義しています。個人の活動で毎日意識して行うこと、何気なく自然のままに行っている行為も含めて、食事、調理、洗面、入浴、排泄、買い物、趣味活動など幅広くあります。人が生きていく上で営まれる365日24時間連続する生活全般の行為を指し、作業療法では「作業」とも言います。普段、「生活行為(作業)を実践している」などと自分で意識することは少ないのですが、どの行為にも目的があり個人にとって意味を持つ行為です。単に行為のみを行って身体だけを動かしているだけではなく、生活行為の達成により「楽しい、嬉しい、元気が出た、ほっとした、もっと楽にしてみよう」など多様な感情や知的面にも作用するので多面的で豊かな意味を兼ね備えています。

意味のある生活行為とは

老いると楽しさや嬉しさの快の感情のみではなく、生活行為の達成に満足できず歯がゆさや不達成感など不快な感情も出現します。でも不快な感情は、行為の達成への自己目標に変化できるのです。生活行為の改善や工夫に繋がったり、「何もせず閉じこもっていては駄目だわ」と望みを求めて出かける場所を作ったり、そこで他者と出会ったりもします。生活行為によって自身で考える身体能力や感情面だけではなく、人と場所と時間がつながる2)生活行為へと拡大します。生活行為の遂行が「自分らしさ」を表現できる機会となり、健康を感じ取れることも定着したら自身にとって意味のある生活行為へと変化します。「来客があるから掃除をする」「友人と食事をする」「外出するからおしゃれをする」など目的が明確で意味のある生活行為は、各人の脳と身体の運動にも繋がっています。

作業記憶(ワーキングメモリ)とは

意味のある生活行為にも、脳と身体を同時に使う生活行為があります。例えば、「友人と歩きながらお喋りをする」、「電話で相手の話を聞きながらメモを速やかにとる」などです。情報を取り入れながら別の内容を同時に行います。もっと高度になると、「今から図書館に行き本を返却する前に、郵便局で振り込み手続きをおこない、文具屋で筆ペンを買ってから図書館に行き、本を新たに借りてその帰りにお豆腐を買って自宅に戻る」など異なる複数の行為を有効的かつ計画的にプランニングをする事や実行プランを脳の引き出しから取り出して順番に処理していくような行為です。これらのように目標に向かって情報を処理しつつ一時的に必要な事柄を保持する働きを実行している3)のが作業記憶(ワーキングメモリ)と言い脳の前頭前野背外側(DLPFC)が担っています。

生活行為で作業記憶を利用した脳と身体の体操

脳と身体の調和が低下すると生活行為に弊害が生じます。言い換えれば、脳と身体の調和がとれた生活行為は作業記憶を利用した「脳の体操」になります。特別なことをしなくても普段の生活行為で下記のように「脳の体操」ができます。「掃除をしながら川柳を作る」「散歩中に廃材などを見かけたら再利用法を想像して歩く」「衣替えの片づけをしながら来年のおしゃれを考える」「バスの乗車中に車窓から見える他車のナンバープレートで足し算や引き算、ナンバーの逆唱をおこないながら手をグーパーする」と計算しながら握力の強化にもつながります。

楽しく前向きに実践

最後に作業記憶を利用した生活行為は、前向きに楽しく行うことで脳と身体の調和が益々向上する「脳の体操」になります。自身で達成感が得られる生活行為がいきいきとした生活にもつながります。自分が前向きに楽しくできそうな脳と身体の体操を生活行為で是非意識して実践してください。

 

【参考・引用文献】
1)一般社団法人日本作業療法士協会:作業療法関連用語集改訂版第2版.http:/www.jaot.or.jp/sciens/gakujutsu.htmi
2)吉川ひろみ:作業の意味を考えるための枠組みの開発.作業科学研究3:20-28,2009
3)芋坂満里子:脳のメモ帳ワーキングメモリ.新曜社,2011
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