「もし自分の親や家族が認知症になったらどうしよう」「もしかしたら認知症なのでは?」と大切な家族が認知症になったら不安な気持ちになるでしょう。
認知症は脳の病気や障がいなどが原因で認知機能が低下した状態をいいます。
日常生活にも支障をきたすことがありますが、認知症について理解し、適切な対応をすることで症状の進行を穏やかにし本人や周囲のご家族も穏やかに過ごすこともできます。
ここでは家族が認知症となった際に生じる問題点や具体的なサポート体制、家族との向き合い方について解説します。実際に家族が認知症となった際に具体的なサポートを活用でき、とるべき対応が分かります。ぜひ最後までご覧になり、参考にしてください。
【物忘れとは違う】認知症とは?
そもそも認知症とはどのような病気なのでしょうか。厚生労働省によると「脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」と定義されています。
引用:『厚生労働省 認知症|心の病気を知る』
ここでは認知症について具体的に解説します。以下の通りです。
- 認知症と物忘れの違い
- 認知症の2つの症状
- 認知症の人にやってはいけない対応
- 生活習慣を見直し認知症を予防
認知症の症状や予防する方法などについてそれぞれ解説します。
認知症と加齢にともなう物忘れの違い
認知症は加齢にともなう物忘れとは異なります。
認知症は脳の病気や障がいが原因であるのに対して、物忘れは老化によるものです。物忘れは40〜50代頃から実感し始め、年齢を重ねると共に誰でも起こり得ます。
しかし、はじめのうちは認知症や物忘れの区別がつきにくく、一見すると同じような症状が出ているかもしれません。大きな違いは、忘れた事実の自覚があるかないかという点です。具体的な例は以下の通りです。
- 認知症:朝食をとったこと自体を覚えていない。
- 物忘れ:朝食をとったことは覚えているが、何を食べたのか思い出せない。
認知症は出来事そのものを忘れてしまい、さらには忘れた事実の自覚がありません。物忘れは、出来事の一部を思い出せませんが、第三者が「朝食はごはんと卵焼き、味噌汁を食べたじゃない」などと言うとすぐに思い出せます。
認知症の2つの症状
認知症には大きく分けて、「中核症状」と「行動・心理症状」の2つの症状があります。以下にそれぞれの症状について紹介します。中核症状の具体的な症状は、以下の通りです。
- 数分前・数時間前に話した内容や出来事自体を忘れる
- 同じことを繰り返し聞く
- 家族や親しい友人の名前が思い出せなくなる
- 今日が「何月、何日、何曜日」かわからなくなる
- 駅から自宅までの道など通い慣れた道で迷う
- お金の管理ができなくなる
- 掃除や洗濯などの家事ができなくなる
認知症になると、記憶障害や理解力や判断力の低下、日付や曜日がわからなくなる見当識障害などの中核症状が現れます。
行動・心理症状の具体的な症状は、以下の通りです。
- 一人になると極度に怖がったり、不安を感じたりする
- 趣味や好きな物に関心を示さなくなる
- 「そこに誰かいる!」と誰もいないのに主張する
- 「お金を盗ったな!」と事実ではないのに強く疑う
このような症状がみられる場合は認知症の可能性があります。
認知症の方に避けたい対応
認知症の方に対して、できるだけ避けたい対応は、以下の通りです。
- 「何で〇〇したの!」と叱りつける
- 「〇〇してはダメでしょ!」と頭ごなしに怒鳴る
- 「〇〇しなさい!」と命令する
- 「〇〇しないと〇〇させないよ!」と強制する
- 「どうしてそれもできないの?」と子ども扱いする
- 「家から出ちゃダメ!」と行動を制限する
- 「どうせできないから何もしないで!」と役割を取り上げる
- 何もさせない
認知症の方は、実際の出来事ややり取りなどは忘れてしまっても、その時の感情は忘れません。
また、常に混乱や不安、ストレスにさらされており、ネガティブな感情はいつまでも残ります。認知症症状の安定のためには、本人に苦痛やストレスをかけない関わりが大切です。
生活習慣を見直し認知症を予防
認知症を予防するための明確な方法は、現在でも分かっていません。
しかし、近年の研究などによると、認知症には生活を取り巻く環境による影響が大きく関わっていることが分かっています。発症には、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病との関連があります。
そのため、生活習慣を見直すと認知症を予防できるのです。具体的には以下の通りです。
- バランスのよい食事をとる
- 定期的な運動をする
- 良質な睡眠をとる
生活習慣を見直すと脳の状態を良好に保てます。さらに、これらの習慣を実践すると認知症を予防できます。
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認知症介護にまつわる3つの課題
認知症の症状は緩和できますが、明確な治療方法がありません。そのため、認知症を一度発症すると、認知症家族だけではなく、介護を担う家族も長期的に関わっていかなければなりません。家族が認知症を発症するといくつかの問題が生じます。問題点は以下の通りです。
- 介護疲れ
- 家族関係の悪化
- 孤立しやすい
それぞれの課題について具体的に解説します。
介護疲れ
介護疲れは誰にでも起こりうる問題です。
認知症の方が生活していくには周囲のサポートが必要不可欠です。サポート役は家族が担うケースが少なくありません。時には移動の介助や入浴の介助、夜間のトイレの介助などを行う必要が出てくることもあります。
昼夜逆転や不眠、暴言・暴力、徘徊などの認知症の周辺症状が強く出ている場合は、サポートしている家族が疲労困憊し、共倒れしかねない状況に陥ることも珍しくありません。
家族関係の悪化
認知症を患った最初の頃は、本人も認知症である事実を認めたくないという想いがあります。サポート役を担う家認も同様に家族が認知症である事実を受け入れられない場合があります。
そのため、「どう接していいのか分からない」「忘れてばかりだからついつい怒ってしまう」「できないから全部やってしまう」など感じてしまう方もいるでしょう。
また、普段は落ち着いて対応できていても、介護をする家族の体調が優れないときには余裕を持った対応ができなくなります。
このような状況が続くと、家族関係が悪化してしまう可能性があります。
孤立しやすい
介護と仕事の両立は心身に負担を強います。総務省の調査によると介護をしている方は約628万人。そのうち約6割の約346万人が仕事を継続している。しかし、高齢化の進展に伴い介護離職の人数は増加傾向で過去1年間に9.9万人が離職している」との結果が出ています。
親が認知症になったことを周囲に話しづらいため、一人で抱えてこみ、仕事と介護の両立が難しくなってしまうこともあります。
【認知症では?】家族が認知症と感じたら
「もしかして家族が認知症では?」と感じた際には、適切に対応しなければなりません。対応の方法は以下の通りです。
- 医療機関の受診
- 公的な相談窓口への相談
- サポートについて検討
適切に対応できなければ認知症の症状が進行したり、必要なサポートが受けられなかったりする可能性があります。具体的な対応方法について解説します。
医療機関の受診
まずは、医療機関の受診が大切です。家族が認知症なのか、それとも加齢による物忘れなのか、診断を受けることがなければ適切な治療やケアを受けるための最初の一歩です。
また、急性硬膜下血腫や脳出血など、認知症と同様の症状がありながら、早期に治療しなければ生命にかかわる病気があるため、医療機関の受診が大切です。
公的な相談窓口へ相談
公的な相談窓口への相談が大切です。
認知症家族が居住している地域包括支援センターに相談すると、適切なサポートを受けられます。地域包括支援センターは、中学校区程度の範囲に一つずつあり、高齢者の暮らしを地域で支援する公的な機関です。社会福祉士や主任ケアマネジャー、保健師といった有資格者が在籍しています。サポートだけではなく、認知症の症状や対応、家族の不安や悩みなどさまざまな相談にも乗ってくれるでしょう。
「公益財団法人 認知症の人と家族の会」への電話相談も有効な手段の一つと言えます。無料で利用でき相談に乗ってくれ、適切な情報をもらえます。
サポートについて検討
誰が、どのように支えていくのか具体的なサポートについて検討が大切です。長期的な視点を持っておかなければなりません。
しかし、ここで注意したいのは認知症家族を支えるのを一人に任せてはいけない点です。認知症の方は、家族の支援がなければ生活できません。そのため、介護の負担を一人に任せると、身体的、精神的な負担が大きくなり介護疲れの状況に陥ってしまいます。認知症家族の方も、介護をする家族の方も生活が立ち行かなくなってしまいます。
介護負担の分散が大切であるため、家族間で協力し、社会的な資源を利用しながら認知症の方をサポートしていく体制が重要です。
【介護の場】認知症家族の介護について
認知症を発症すると徐々に症状が進んでいきます。進行の速度は人それぞれですが、症状の後期には寝たきり状態となり、日常生活全般に介護を要する場合もあります。認知症家族を介護していく場は以下の通りです。
- 在宅での介護
- 介護施設での介護
在宅での介護、または介護施設での介護、いずれを選択した場合でも注意点があります。ここで詳しく解説します。
在宅での介護
「施設には入所せずに、できる限り自宅での生活を続けたい」「可能な限り私がケアをして支えたい」と考える方もいるでしょう。本人の希望や認知症家族の意向で在宅での介護を継続する方もいます。
ここで注意したい点は、すべてを自力で、家族だけで介護しようと頑張り過ぎないことです。「両親や親族は私が介護しなければならない」と思い込み、ストレスが溜まってしまいます。
認知症家族の介護は負担が大きいです。認知症家族の方が体調を崩してしまうと、認知症の方が生活できなくなってしまいます。
そのため、介護保険サービスを利用し負担を軽減しなければなりません。訪問看護や訪問介護、訪問入浴などさまざまなサービスがあります。地域包括支援センターやケアマネジャーなどの関係機関と相談しながら、支援を受けるサービスの選択が大切です。
介護施設での介護
「施設で専門的なケアを受けたい」「家族だけでは認知症の方をサポートできない」など、さまざまな事情で介護施設での介護を選択する方もいるでしょう。認知症の方でも受け入れ可能な介護施設は以下の通りです。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護付き有料老人ホーム
- グループホーム
- 介護医療院
介護施設に入所すると認知症家族の負担を大きく減らせます。介護施設には公的施設・民間施設があります。それぞれの介護施設によって提供しているサービス、利用料金が異なるため注意が必要です。さらには、介護施設に入所するためには、それぞれの施設で一定の条件があります。一度確認して、どの施設であれば入所できるのか把握しなければなりません。
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施設への入居を検討しているという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護なら、見学予約から日程調整まで無料で代行しているためスムーズな施設探しが可能です。
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認知症の方との向き合い方は
認知症の方をサポートしていくためには、症状によっては昼夜問わず介護をしなければならないなど負担が大きいです。ストレスも溜まり、関係性が悪化してしまう可能性があります。認知症家族の方は、どのように向き合っていけばいいのでしょうか。認知症家族との正しい向き合い方は以下の通りです。
- 認知症の正しい知識を持つ
- 公的な支援を利用する
- 介護経験者へ相談する
- 家族の会へ参加する
これら4つの方法で認知症家族と向き合うと互いの関係性を保て、介護の負担を軽減できます。ここで詳しく解説します。
認知症について知る
認知症について正しい知識を持つことが大切です。「もしかして認知症では?」と疑問を持った段階や認知症を発症したばかりの頃は本人だけではなく、家族も認知症を発症した事実を受け入れられません。
そのため、医療機関の受診を控えたり、外出をしなくなったりなど間違った方法で接してしまいます。
また、症状の進行に伴い、これまでできていた日常生活動作ができなくなってしまいます。例えば以下の通りです。
- トイレに行けなくなり失禁してしまう
- 最寄りの駅まで行けなくなり、家に帰れなくなってしまう
- 自分でご飯を食べれなくなってしまう
このような症状が出現すると、家族はその都度驚いたり、目を背けたくなったりします。
認知症について正しい知識を持たなければ、介護する家族の身体的にも精神的にも負担が大きくなり、認知症家族に余裕を持って関われません。また、対応によっては認知症の症状を進行させてしまう可能性もあります。
そのため、認知症についてできるだけ理解し、、適切なサポートを心掛けていきましょう。
公的な支援を利用する
認知症介護は家族だけでやりきろうとしないことも大切です。
自宅で介護を続ける場合、介護施設での介護を選択する場合でも、介護保険サービスや自治体の高齢者支援制度など公的な支援を利用することによって得られるメリットは、以下の通りです。
- 介護をする家族の負担を軽減できる
- 必要なサポートを受けられる
- 専門家による質の高いサービスを受けられる
- 費用負担が軽減できる
介護を担う家族の負担を軽減できるだけではなく、認知症家族が適切なサポート、質の高いサービスを受けられるなどのメリットがあります。
そのため、医療機関で認知症であると診断されてから、可能な限り早い段階で公的な支援の利用を検討しましょう。
介護経験者へ相談する
介護経験者への相談も認知症のある家族と向き合う有効な手段の一つと言えます。特に介護を始めたばかりの頃は「分からない」「どうしよう」と不安ばかりで悩む機会も多いでしょう。
周囲に介護経験者がいれば、どのように介護に直面した直後の不安や混乱を乗り越えたかを聞くことで気持ちが楽になるかもしれません。もっとも、介護経験者のアドバイスがすべて役に立つとは限りません。症状やシチュエーションは個人差も大きく、気持ちや悩みを分かってもらえないこともあります。経験者の意見に振り回されすぎるのは禁物です。気が合わないと思ったらすみやかに距離をとることも大切です。
家族の会へ参加する
仕事の仲間や友人に認知症家族を介護している方が少なく、悩みを共有するのは難しい場合もあります。
そんなとき、「認知症の人と家族の会」への参加するという手もあります。認知症の家族の会は、同じ境遇で、同じ悩みを持った方ばかりが集まっています。定期的に集まり、連絡を取り合ったり、悩みを共有したりすると精神的な負担を軽減されることもあります。
会によって雰囲気やメンバー構成が異なるため、自分にあったコミュニティを探してみましょう。新しい場所にでかけ、知らない人と話す気力がわかないときは、無理に動かず、ゆっくり心身を休めることを優先することも大切です。
居住している自治体によっては、家族の会を紹介してくれる場合もあるため、直接自治体に行ったり、ホームページなどを確認したりしてみましょう。
認知症について理解を深めながら、公的支援を活用し、認知症家族と向き合おう
認知症家族を支えていくためには家族の存在は不可欠です。しかし、家族だけの対応では、身体的にも精神的にも負担が大きく難しいです。認知症について正しく理解していなければ、適切なサポートを受けられない可能性があります。
認知症について正しく理解し、公的なサービスを活用しながら認知症家族を支えていきましょう。
お住いの市区町村でも紹介してくれます。また、ホームページにも情報が載っています。分からないことがあれば市区町村の窓口で尋ねてみてください。詳しくはこちらをご覧ください。
本人が出来る家事や役割を見守りやサポートを受けながら継続することで、認知症の症状の進行を緩やかにし出来る限り自立した生活を続けられるよう支援しています。特別養護老人ホームでは、認知症が進行しても出来る限り本人の習慣や希望に沿いながら生活出来るよう生活全般の介護、サポートを受けられます。詳しくはこちらをご覧ください。