「日によってできることにムラがある」
「さっき話したことは忘れているのに、新聞の内容はちゃんと理解している」
できること、できないことにムラや波がある高齢者の症状は、「まだら認知症」かもしれません。
この記事では、まだら認知症の特徴や、家族の関わり方のポイント、予防する方法について解説します。
まだら認知症について理解を深め、家族みんなの生活をより良いものにしましょう。
まだら認知症とは?
「まだら認知症」とは、名前のとおり認知症の症状が「まだら」に現れることです。
認知症には、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などの種類がありますが、まだら認知症は特定の病気の名前ではなく、認知症の症状を表す言葉の1つです。
- タイミングによって症状の波が大きい
- 物忘れはあるけど、理解力や判断力は低下していない
- 今日できなかったことが翌日はできたり、できなくなったりする
上記のように症状にムラがあり、ひどいときもあれば、良くなるときもあります。
そのため、「疲れているだけ」「理解力はあるから認知症じゃない」と家族からも軽視されがちで、認知症であることを見過ごすリスクがあります。
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まだら認知症の症状は
まだら認知症の症状は持続的でなく、1日の中でも部分的に表れるのが特徴です。
時折見せる症状やチグハグな様子が、周囲を混乱させる原因になります。
主な症状は下記の2つになります。
短期記憶の低下
認知症の方は、短期記憶が低下します。
短期記憶の低下とは、「昨日食べたメニューを忘れる」のではなく、「さっき食べたことそのものを忘れる」といった直前の記憶が定着しないことをいいます。
まだら認知症に特徴的なのは、短期記憶が低下して物忘れが激しくなっても、理解力や判断力は低下しない点でしょう。
- 数分前に話したことを忘れてしまうが、難しい専門書を読める
- 財布を片づけた場所を忘れるが、銀行の手続きは問題なく行える
上記のように、物忘れはあっても思考力は保たれているため、一見すると認知症と分かりづらい点があります。
同じことができたり、できなかったり
まだら認知症は、「朝にできなかったことが夕方はできるが、翌日にはまたできなくなる」など、症状が大きく変動する特徴があります。
また、同じ内容のことでも、タイミングによって全くできなかったりスムーズにできたり、できることできないことの落差が大きいのも特徴です。
一方、アルツハイマー型認知症による症状であれば進行する一方で、基本的に良くなることはありません。
まだら認知症に原因はあるのか?
まだら認知症は症状が出たり出なかったりと、波があることが分かりました。
ここから原因に関連して解説します。
脳へのダメージ
まだら認知症は、「血管性認知症」という疾患によって起こる症状の1つです。
血管性認知症とは、脳の血管がつまったり破れたりして脳に酸素や栄養が届かず、脳にダメージを負うことで起こる認知症のことです。
脳は部位が細かく分かれており、部位によってつかさどる機能が異なります。
脳血管障害によってダメージを受けた部位は、つかさどる機能は低下します。一方、ダメージを受けなかった部位の機能は保たれます。
そのため、「数分前に話したことを忘れてしまう(記憶力)」一方で、「難しい専門書を読める(読解力)」という症状が起こるのです。
血流の変化
血圧は、寒暖差や時間帯、活動状況などによって変化します。
まだら認知症の症状は、血圧が下がり脳への血流が低下するタイミングで顕著に現れます。
寒いところから暖かい部屋へ移動したとき、起床直後、食後、脱水が起こっているときなどが血圧が下がるタイミングです。
なお、血管性認知症(まだら認知症)以外のタイプでも、血流の変化によって現れる症状が変化する場合があります。
自律神経
自律神経とは、内臓の働きや代謝、体温などの調整を行う神経のことです。
「交感神経(活動的なときに働く神経)」と「副交感神経(休むときに働く神経)」があり、自律神経が乱れると意識の覚醒や血圧の調整がうまくいかず、認知症の症状が一時的に悪化することがあります。
レビー小体型認知症やパーキンソン症状を併発した血管性認知症では、特に自律神経のバランス調整が難しいため、まだら状に症状が起こりやすくなるでしょう。
体調不良のため
認知症の症状と体調不良は関連する場合があります。
例えば物忘れの多かった方が、便秘が治ったとたん認知症の症状も軽減するというエピソードは珍しくありません。
ここで注意したいのが、認知症の方は自身の体調を把握したり、体調不良を周りに伝えることが苦手ということです。
周囲の方が「体調はよいか」「不快なことはなさそうか」と、認知症の方の体調に気を配りましょう。
まだら認知症の方との接し方
まだら認知症の方への関わりで念頭に入れておきたいことは、本人も混乱し苦しみや不安を抱えていることです。
では、周囲は認知症の方とどう接すればいいのでしょうか。
接し方のポイントについて解説するので、理解を深め、お互いが良い関係を保てる関わり方をしていきましょう。
コミュニケーションを大切に
コミュニケーションを大切にするのは、介護の基本です。
認知症の方は、日々変化する自分の状態に戸惑い、できていたことができなくなる度に自信をなくしています。
そんな中で、家族など周りの方が「理解したい」「あなたの味方になりたい」という姿勢で接してくれると、認知症の方の心の支えになることでしょう。
認知症の方は、自分のことを把握したり表現したりする力が衰えていきます。
周りの方は、認知症の方の気持ちを引き出せるようなコミュニケーションを心がけましょう。
絶対にNGな言葉
認知症の方へ絶対に言ってはいけない言葉は次の3種類です。
- 命令する言葉:「早くして」「黙ってて」
- 責める言葉:「いい加減にして」「また失敗した」
- 認知症を指摘する言葉:「ほら忘れてる」「何度言えば分かるの?」
まだら認知症の方は、自身の状態に戸惑い、不安や悲しみ、苦しみを抱えています。
そんな時に周囲から自分の尊厳が損なわれるような言葉を投げかけられると、周囲との信頼関係が崩れるだけでなく、症状の悪化を招く場合もあります。
家族の方も、「もとの姿」を知っているため、認知症を患った現在の状態を受け入れられず、ついきつい言葉かけになってしまうかもしれません。
しかし、きつい言葉を発したところで認知症の方には「なぜ叱られているのか」ということの理解自体が難しいことがあるのです。
そればかりでなく、「理不尽に怒られた」というマイナスの感情と不信感だけが残ってしまうため、周囲はなるべく温かく肯定的な態度で接するようにしましょう。
機能低下を理解する
認知症を発症することで、物の位置や使い方が分からなくなることだけでなく、家族を認識できなくなることさえあります。
特に、まだら認知症では症状に波があるため、本人が混乱して自責の念を抱くことになりかねません。
周囲は認知症による機能低下を理解し、「どうサポートするか」という視点で関わっていくと良いでしょう。
ポイントは「機能低下した部分を回復させる」のではなく、「今残っている能力に合わせる」という姿勢です。
本人のペースに合わせて
認知症になると、理解をしたり行動したりするスピードが遅くなります。
まだら認知症ではそれに加えて、症状の変動もあります。
周囲の焦りから、急かすような態度をとっても全くの逆効果です。
焦りやイライラは、認知症の悪化を招いてしまうため、本人のペースに合わせてリラックスした生活になるよう心がけましょう。
また、高齢の方は聴力も低下しているため、伝わりやすいよう「ゆっくり」「低めの声で」「身振りも交えて」話すことも効果的ですよ。
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まだら認知症はどんな方に起こる症状か
まだら認知症は、認知症の症状の1つとお伝えしました。
実は、まだら認知症が起こりやすい疾患があります。
次から詳しく解説していきます。
血管性認知症
血管性認知症は、因果関係がとても深い疾患です。
脳の血管がつまったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)することを脳血管障害といい、「血管性認知症」は脳血管障害の後遺症として起こる認知症のことを指します。
脳血管性認知症は認知症の種類としては、アルツハイマー型認知症に次ぐ第2位の患者数(約20%)を占め、男性の方に多いのが特徴です。
脳血管障害が起こった部位によって認知症の出方が異なり、これがまだら認知症の特徴である「症状のムラ」を引き起こします。
ラクナ梗塞
ラクナ梗塞も、まだら認知症との因果関係があると言われています。
ラクナ梗塞とは、脳梗塞の病型の一つで、脳の深い部分にある細い血管が詰まって起こるものをいいます。
細い血管が詰まるだけなので、軽度の場合は障害が少なく治療が必要ないことも多いです。
しかし、ラクナ梗塞の部位が増えてくると脳へ与えるダメージが増え、まだら認知症を引き起こす場合があります。
まだら認知症の予防を心がける
まだら認知症を予防するポイントは、いくつかあります。
普段の生活の問題点はなかなか自分では気づきにくいため、いい生活習慣を続けられるよう周囲のサポートも重要です。
高血圧には注意
高血圧は心疾患、腎疾患など様々な疾患を引き起こすといわれていますが、中でも発症リスクを上昇させてしまうのは、まだら認知症の原因となる脳血管障害(脳卒中)です。
高血圧は動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化が進行して脳の血管の一部が詰まると脳梗塞になります。
対処法としては、塩分控えめの食事を心がけ、血圧の上昇を防ぎましょう。
なお、日本人の食塩摂取目標量は男性で7.5g/日、女性で6.5g/日です。
また、カリウムには塩分の吸収を抑えナトリウムの排出を助ける作用があります。
カリウムの豊富な生野菜や果物も意識して摂取しましょう。(腎疾患の方はカリウムの摂り過ぎが腎臓へ負担がかかると言われているので除きます)
食生活とお酒
まだら認知症を防ぐためには、バランスのとれた食生活を意識しましょう。
パンや麺類、お菓子などからの糖質の摂りすぎに注意し、適正なカロリー摂取を目指します。
糖質の過剰摂取は血管を脆くし、脳血管障害のリスクを上昇させるためです。
また、カルシウム摂取量が多いと脳梗塞や脳出血の発症リスクが低下するというレポートがあります。
「酒は百薬の長」と言う言葉がありますが、飲みすぎは厳禁です。
アルコールは高血圧を招くだけでなく、「1日平均3合以上(日本酒換算)のアルコールを摂取する方は脳卒中になりやすい」という報告があります。
適切な食事と飲酒を心がけましょう。
適度な運動
適度な運動は血圧や血糖値を低下させ、血管へのダメージを予防し、ひいてはまだら認知症の予防につながります。
ウォーキングやラジオ体操など、軽く息が上がる程度の運動を週3、4日行いましょう。
有酸素運動はストレス解消やリフレッシュになり、認知機能の維持にも効果的です。
ただし、身体的負荷が強すぎる運動は控え、持病があり運動制限をうけている場合は医師の指示に従いましょう。
体調の変化を記録する
高齢の方の場合は、家族から見た変化を記録しておくのが有効な手段です
日々の体調の変化を記録することで、異常の早期発見に努めましょう。
まだら認知症は、大きな疾患に伴って起こる場合だけでなく、ラクナ梗塞のように無症状の小さな梗塞が積み重なって発症する場合もあります。
認知症は早期に受診・治療すれば進行を遅らせることが可能なケースもあり、日々の記録をつけて客観的に「いつもと違う」状態に気づけるようにしましょう。
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まだら認知症は家族の理解が必要
まだら認知症について解説していきました。
まだら認知症は、症状に波があり落差も大きいことから、本人や周囲の混乱を招きお互いが疲弊してしまうケースが多く見受けられます。
また、認知症と気づきにくく初期対応が遅れるリスクもあります。
まずは、初期症状を知り予防に努めること、発症した場合は速やかに医療機関を受診しサポートを受けることで、認知症の方と家族の暮らしが変わります。
どのような場面でも、家族を始めとした周囲の理解は欠かせません。
まだら認知症について理解を深め、家族みんなの生活が維持できるよう行動していきましょう。
「まだら認知症」とは、名前のとおり認知症の症状が「まだら」に現れることです。タイミングによって症状の波が大きかったりするため、「疲れているだけ」「理解力はあるから認知症じゃない」と家族からも軽視されがちで、認知症であることを見過ごすリスクがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
まだら認知症の症状は持続的でなく、1日の中でも部分的に表れるのが特徴です。時折見せる症状やチグハグな様子が、周囲を混乱させる原因になります。例えば短期記憶の低下で、「昨日食べたメニューを忘れる」のではなく、「さっき食べたことそのものを忘れる」といったことがあります。詳しくはこちらをご覧ください。