たくさんの選択肢があるなかで、一体どんな施設が『良い施設』なのかと不安を抱える人は少なくありません。
「良い介護施設」の定義は、ご本人の身体状態やご家族の状況によって一人ひとり異なります。すべての人にとって100点満点の正解となる施設はありません。
本記事ではその前提を踏まえた上で、介護業界の最前線で活躍するプロフェッショナルの方に対してのインタビューを基に、それぞれの視点から、「良い介護施設とは何か」「見学時に具体的にどこをチェックすべきか」を解説していきます。
プロが考える「良い介護施設」とは?
良い介護施設を探す際、「客観的に見て100点満点の完璧な施設」を見つけるのは非常に困難です。
大本章では、介護の最前線で活躍する4名のプロに「本当に良い介護施設とはどのような施設か」について、それぞれの専門的な視点から詳しく伺いました。
専門家4名が語る「良い介護施設」の条件
「信頼できる施設長が現場をしっかり統括している施設」

・お名前:前北 栞里(まえきた しおり)
・役職:ケアスル 介護 ケアアドバイザー部門マネージャー
・経歴・実績:2022年よりケアアドバイザーとして従事し、累計4,200件以上の相談実績を持つ。2025年にマネージャーに就任。ご家族の老人ホーム・介護施設探しからご入居までのサポートを最前線で行っている。
インタビュアー:数多くの施設を見てきた中で、前北さんが考える「良い介護施設」の基準とは何でしょうか?
前北さん:施設長がちゃんとしている人かどうかは良い施設のポイントです。なぜなら入居後に何かトラブルがあったり、リクエストをしたりする際の窓口であり、現場のスタッフを統括しているのも施設長だからです。挨拶などの基本的な接遇が浸透しているかどうかも、施設長の教育方針が反映される部分ですね。
前北さん:大前提として、良い施設選びの土台は「予算」になります。そこから「本当に必要な条件」を1〜2個に絞って追加していくことが重要です。あわせて見学時にたまたま掃除が行き届いていなかったり、重度の入居者を見かけたりしただけで「ここには合わない」と即座に判断して選択肢から外してしまうのは非常にもったいないとも感じています。目に見える一部分だけで判断せず、施設全体を統括するリーダーが信頼できるかどうかという視点を大切にしてみてください。
「入居者の具体的なニーズと提供サービスが合致している施設」

・お名前:菅原 一央(すがわら かずひろ)
・役職:株式会社ナースビジョン 取締役 / 一般社団法人OWL 理事
・経歴・実績:看護師。精神科や脳神経外科などの急性期病院を経て、介護老人保健施設(老健)の副師長や訪問看護ステーションの管理者を歴任。現在は介護施設紹介のほか、訪問看護ステーションの運営や現場の業務改善支援など、看護・介護環境の構築に幅広く携わっている。
インタビュアー:医療・看護の視点から見て、菅原さんはどのような施設が「良い施設」だとお考えですか?
菅原さん:一言で言えば、「利用者のニーズと提供サービスが合致している施設」ですね。元気な人には趣味活動やイベント、寝たきりの人には褥瘡(床ずれ)予防やおむつ交換の頻度など、ご本人の身体状態によって求めるニーズは全く異なります。
菅原さん:例えば「10分に1回トイレに行きたい」といった個別の要望に対して、「訪問介護(1対1)」や「小規模多機能」など、施設が提供している介護サービスの形態がしっかり合致しているかを見極めることが重要です。また、施設の介護力とは別に、入居者の状態や予算だけでなく、個人の生活歴や性格、家族が何を施設に求めているかを深く理解しようと努める担当者(施設長や相談員、ケアマネージャーなど)がいるかどうかも、良い施設を見分ける大きなポイントになります。
「将来の退去条件や費用を包み隠さず明確に説明してくれる施設」

・お名前:桐島 慎治(きりしま しんじ)
・役職:株式会社ケアリサーチ 代表取締役
・経歴・実績:社会福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)。デイサービス管理者や介護付有料老人ホームの施設長を歴任後、2018年に独立。現在は中立的な立場から、累計数多くの施設提案や見学同行を行い、地域住民向けセミナーの講師としても活動している。
インタビュアー:ケアプランを作成する立場として、桐島さんが考える良い施設選びのポイントを教えてください。
桐島さん:お金の話を曖昧にせず、将来のリスクまで誠実に説明してくれる施設こそが、本当の意味で「良い施設」だといえます。なぜなら入居後に「こんなはずじゃなかった」と早期退去になるのを防ぐことにつながるからです。
桐島さん:基本料金(家賃・食費など)だけで判断せず、介護保険の自己負担分や医療費、日用品代などが別途いくらかかるのかを確認し、将来的に介護度が上がった際の費用シミュレーションを行っておくことも必要ですね。設備からサービスまで「すべてが揃っている施設」は、当然ながら費用も高額になります。そのため、「何を最も優先するか」という優先順位をしっかりつけ、最終的には施設長の話を聞いて、その施設の介護方針に納得できるかを確認することが大切です。
「完璧ではなくとも、自分たちの『譲れない条件』を満たしている施設」

・お名前:和田 孝(わだ たかし)
・役職:合同会社オフィスWAD 代表
・経歴・実績:大学卒業後、介護の専門学校を経て現場で10年弱従事。複数の施設で管理職を歴任後に独立。現在は高齢者施設の紹介業や、障害福祉における相談支援事業所の運営を行い、現場・管理・紹介という多角的な視点から介護・福祉の支援を行っている。
インタビュアー:実際に施設を運営されていたご経験から、和田さんは「良い施設」をどのように定義されますか?
和田さん:まず大前提として、「100点満点の完璧な施設はない」と理解することが出発点です。すべてを満たそうとするのではなく、「ここだけは絶対に譲れない」というポイントを明確にした上で、ある程度の妥協を受け入れつつ、プロの意見も取り入れながら比較検討するのが最善の道だとアドバイスしています。その中から自分に合っていると感じている施設が良い施設になるのかなと思います。
和田さん:特に住宅型有料老人ホームなどでは、介護保険外のサービス(洗濯代など)が細かく設定されている場合があるため、入居前に何にいくらかかるのかを確認することが重要です。また、グループホームなどでは、他にどのような方が入居しているかを確認しておくことが、生活スタイルの違いによるトラブルを避けるために大切ですね。
ピッタリの施設を提案します
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プロが推奨する「良い介護施設」の3つのチェックポイント
見学に行く際、「具体的に施設のどこを見ればいいのだろう?」と疑問に思う方も少なくありません。
本章では、「良い介護施設」かどうかを見分けるチェックポイントを解説します。
良い介護施設を見極めるための確認しておきたいチェックポイント
施設内の清掃状況をチェックする
見学時に最も重視すべきポイントの一つが、「施設内の清掃が隅々まで行き届いているか」という点です。
・職員の配置人数に余裕があるか
・スタッフの観察力(ケアの細やかさ)が高いか
・入居者の小さな変化に気づける環境か
床の隅やトイレ、手すりの裏など、見落としがちな場所が綺麗に保たれている施設は、スタッフが細部まで目を配れている証拠です。
清掃状況の良し悪しは、そのまま入居者へのケアの質に直結します。
掃除が行き届いていない施設は、職員の人数が不足していたり、余裕がなかったりする可能性が高いため注意が必要です。
「退去条件」と「医療の対応限界」をチェックする
施設選びにでは、「どのような状態になったら退去しなければならないか」を事前に把握しておくことも大切です。
とくに、たん吸引や胃ろうといった「医療的ケアの増加」、他入居者への暴力や暴言などの「認知症による迷惑行為」、一定期間を超える「長期入院」などは、主な退去要件になりやすいため注意が必要です。
また、見学時には「医療面でどこまで対応できるのか」を直接確認することで、将来の退去トラブルを未然に防げます。
老人ホームごとに対応できる範囲は異なるため、必ず確認しておきましょう。
スタッフの「認知症入居者への接し方」を観察する
スタッフが認知症の入居者に対してどのような表情や話し方で接しているかを見学時に観察することも大切です。
子ども扱いするような言葉遣いやタメ口になっていないか、車椅子の方にしゃがんで目線を合わせているかなど、入居者の行動を迷惑がらずにどう関わってくれるかを確認するとよいでしょう。
案内担当者だけでなく、現場スタッフの自然な動きを見ることで、施設全体のケアの質や雰囲気がわかります。
ピッタリの施設を提案します
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良い介護施設を選ぶために譲れない条件を決めてみよう
良い施設選びは「自分たちにとっての譲れない条件」を明確にすることが大切です。
あれもこれもと条件を求めすぎるとキリがないため、本当に必要なものを1〜2個に絞って追加していくのがコツになります。
譲れない条件で確認したい8項目
料金・費用(予算)
施設選びにおいて、すべての土台となるのが「料金・費用(予算)」です。
「自然豊かな場所がいい」「土いじりがしたい」といった理想があっても、最終的には予算が合わずに見直すケースがほとんどだからです。
・本人の「月の年金収入」を把握する
・本人の預貯金を取り崩せる月額を計算する
・家族が「毎月いくら持ち出し(支払い)できるか」の限界ラインを決める
予算は必ず「月額ベース」でシビアに計算しましょう。
予算にかなり余裕がある方はめずらしいため、まずは予算をクリアしていることを大前提であるという考え方を大切にしましょう。
月額料金以外に介護保険外のサービスが細かく設定されている場合があるため、入居前に何にいくらかかるのかを確認してください。
また、月額費用ギリギリで予算を組むのではなく、不測の事態に備えて月数万円の余裕を持っておくべきです。

医療体制の充実度・退去条件
医療体制と退去条件の確認は、入居後に「こんなはずじゃなかった」という後悔や早期退去(二度手間)を防ぐために大切です。
施設によって対応できる医療行為の範囲は異なります。
「どのような状態になったら退去しなければならないのか」「医療面でどこまで対応可能なのか」を契約前に必ず確認してください。
長期入院や高度な医療ケアが必要になった場合には退去を求められるケースがあるため注意が必要です。
他の入居者の様子
他の入居者の様子は、入居後の生活の質に直結します。
・要介護度の割合(自立の方が多いか、重度の方が多いか)
・男女比や年齢層
・共有スペースでの過ごし方(交流が活発か、静かか)
認知症の進行度合いや性格、生活リズムは人それぞれ異なります。

スタッフの雰囲気・対応
スタッフの質は、日々のケアの質を左右する重要な判断基準です。
スタッフの離職率が低い施設は、労働環境が整っており、心に余裕を持ったケアが提供されている傾向にあります。
見学時には、スタッフの言葉遣いや利用者への接し方、スタッフ間のコミュニケーションの様子を必ず確認してください。
入居者に認知症の症状がある場合は、認知症の方への接し方も確認しておくと入居後のイメージができるでしょう。
介護施設の立地
施設に何度か足を運ぶ場合や、緊急時にスムーズに対応するためにも介護施設の立地も問題ないか確認しましょう。
・自宅や職場から無理なく通える距離か(片道1時間以内など)
・公共交通機関でのアクセスは良好か
・周辺にスーパーや病院、公園などの施設があるか
自宅や職場から通いやすい距離にある施設を選ぶと、面会へのハードルが下がります。
ご家族が無理なく通える範囲を目安に検討してください。
また、周辺の環境もあわせて確認し、落ち着いて生活できる場所かを判断するとよいでしょう。
介護施設の設備
施設の設備環境は、ご本人の身体状況に合った生活を送るための基盤になります。
車椅子を利用している場合は、バリアフリー状況などを確認すると安心です。
また、リハビリを重視したい場合は、専用の機能訓練室やリハビリ機器が充実しているかどうかを確認しましょう。
生活の自由度
生活の自由度は、ご本人がストレスなく生活を送るために大切です。
施設によって、外出や外泊の可否、面会時間のルール、食事の時間の柔軟性などは異なります。
介護度が低い場合などは自宅で送ってきた生活リズムや趣味を、施設に入居した後もどの程度継続できるかを確認しておくと安心です。面会時間が柔軟な施設であれば、ご家族も気軽に訪問しやすくなります。
また、お酒やタバコなどの嗜好品に関するルールも施設ごとに定められているため、事前の確認が必要です。

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良い介護施設についてのまとめ
介護施設探しを始めると、「一体どこを選ぶのが正解なのだろう?」と不安を抱えてしまうことも多いと思います。
しかし、「客観的に見て100点満点の完璧な施設」は存在しないことを前提に立つことが大切です。
良い介護施設を見つけるための考え方として、予算を土台にし、「これだけは絶対に譲れない」という条件を1〜2個プラスして優先順位をつけて合っている施設を探すことが大切です。
焦らず、ご家族でしっかりと優先順位を話し合いながら、あなたにとっての「一番良い施設」を見つけてください。