• 認知症
  • 【公開日】2022-10-18
  • 【更新日】2023-04-21

異食をする理由とは?危険性や対処法も併せて解説

異食をする理由とは?危険性や対処法も併せて解説

高齢者の中には、本来食べない、食べられない物を食べてしまう「異食」を行う方が居ます。

異食は命に関わる場合もあるため、異食を行う方に対してはいつも目が離せず大変な思いをしている方も居るかもしれません。

そもそも、高齢者はなぜ異食をするのでしょうか。

本記事では、なぜ異食をしてしまうのか、理由や対策などについて解説していきます。

現在、高齢者の介護をしており、異食について悩んでいる方必見です。

東京都健康長寿医療センター 脳神経内科 部長
監修岩田 淳
所有資格:総合内科専門医,日本内科学会認定医,日本神経学会認定神経内科専門医・指導医.日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医,日本認知症学会専門医・指導医
専門分野:脳神経内科
職業: 医師
出身組織: 東京大学大学院医学系研究科

東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に従事。早期段階のAD、レビー小体型認知症の診療が専門。2020年4年より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。詳しくはこちら

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異食とは

そもそも異食とは、食べ物ではない物を口に運んでしまう行為を指します。

目についた物、手に触れた物を口に入れてしまうリスクが高い為、異食をする方の介護をする場合は24時間の見守りが必要です。

異食でよく食べてしまう物は以下が挙げられます。

  • ティッシュ
  • 薬が入っている袋やパッケージ
  • 落ちているゴミやほこり
  • 観葉植物
  • 服のボタンや飾り
  • 乾電池やボタン電池
  • おむつや排泄物
  • タバコ
  • 洗剤類 など

上記の中でも、特に電池や洗剤類、タバコなどは命に関わる可能性があります。

24時間目が離せず、もし異食をしてしまった場合は救急搬送してもらうなど、適格で迅速な対応が必要です。

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異食をする理由

高齢者が異食をしてしまう理由はさまざまです。

  • 食べ物だと勘違い
  • 食事だと勘違い
  • お腹が空いている
  • 不安やストレスを紛らわそうとしている

まずは「なぜ異食をしてしまうのか」理由を見つけるようにしてください。なぜなら、異食をしてしまう理由がわかれば、対処できる場合があるからです。

異食は食べてしまう物やタイミングに決まりがある場合が多いです。そのため、異食の理由を見つけられると異食対策もやりやすくなります。

食べ物だと勘違い

認知症の中核症状の一つでもある「失認」という症状が該当します。

見た物体を知っていたとしても、その物体が食べ物なのかそうでない物なのかといった知識と結びつかない状態です。

そのため、食べ物ではない物を見ても食べ物ではないと認識できず、口に入れた際にも、高齢者が味覚や触覚といった感覚も鈍くなっています。

また、口に入れたあとでも「食べ物ではない」と認識できず、吐き出さずに飲み込んでしまいます。

食事だと勘違い

もし、いつも異食をするタイミングが食事をしている席や時間の場合、食事と勘違いしている可能性があります。

いつも何かを食べている場所や時間だからこそ、その場にある物は食べ物だと思い込んで何でも口に運んでしまっている状態です。

食事と勘違いしている場合、物=食べ物と間違った認識をしているわけではありません。

今は食べる時間だからと食事をしているつもりになっている可能性があります。

お腹が空いている

特に認知症などで脳機能が低下してしまっている方に多いです。

満腹感を感じにくくなり常に空腹を感じている場合や、認知症からくる脳の疲れなどを回復させるために、何かを食べようとしているかもしれません。

本能的な空腹を満たすため、目についた物を何でも口にしてしまいます。

不安やストレスを紛らわそうとしている

私達でも、不安やストレスを感じた時に何か甘い物を食べたい、タバコを吸いたくなる方は多いです。

認知症ではない方が不安やストレスを感じたら、何かを食べて発散する方も多いでしょう。

それは、食べ物などを正しく認識できているためです。

しかし、認知症が進んでいると食べ物を正しく認識できなくなっている場合があります。

そうなると、食べ物に似た形の物、目についた物を異食してしまいます。

異食が危険な理由

異食が危険とされる理由は主に以下の4つです。

  • 窒息する
  • 中毒症状が出る
  • 食道や内臓を傷つける

異食をしてしまった場合は、まずは飲み込ませてはいけません。できるだけ吐き出させるようにしてください。

この時、高齢者の口の中に指を突っ込み、異食した物を取り出そうとする方がいますが、口に指を突っ込むと、噛みつかれてしまう可能性があります。

出来るだけ自分で口から出してもらうように促しましょう。

もし、飲み込んでしまった場合は、できるだけ「何を」「どれくらい」飲み込んでしまったのかを調べてください。

そして、何を飲み込んだのか、どれくらい飲み込んだのかわからない場合、体調に問題がなくても必ず病院を受診するようにしましょう。

今は問題がなくても、時間の経過とともに症状が出る可能性があります。

異食を見つけた場合、つい本人を怒ってしまうかもしれませんが、控えましょう。

異食は危険ですが、本人が怒られストレスを感じてしまうと、ストレスを紛らわすように異食をしてしまいます。

できるだけ落ち着いた口調で「異食は危険だ」と話をするように心がけてください。

窒息する可能性がある

特にティッシュやビニールなどを異食した場合、のどや気管に張り付いてしまい窒息する可能性があります。

それだけではなく、高齢化すると物を飲み込む嚥下力が弱くなっている場合が多いです。

若年者であれば異食しても飲み込めるボタンなどでも、上手く飲み込めず窒息につながります。

また、おむつの中身などは濡れる前は小さくても、唾液などの水分を吸収して膨らみます。はじめは小さいのでのどに引っかかっていても、元気かもしれません。

しかし、時間が経てば膨らみ喉や気管を塞ぎ窒息する可能性は十分にあります。

仮に異食した物が小さくても決して安心してはいけません。

中毒症状が出る可能性がある

異食した物によっては中毒症状が出てしまう物があります。

どの家庭でも置いてある、洗濯洗用剤や食器用洗剤は異食すると中毒症状が出る可能性があり、無理に吐き出させてしまうと食道の粘膜を傷つけてしまう危険もあります。

また、今までタバコを吸っていた方であれば、タバコを吸う感覚でタバコを食べてしまう可能性があります。

タバコは吸っても害があると言われてますが、食べるとより危険です。

成人の場合2〜3本のタバコで致死量となります。

しかし、高齢者など体が弱っている方であれば2〜3本以下でも致死量になる可能性は十分にあります。

タバコに含まれているニコチンが中毒症状を引き起こす原因です。タバコの中でも特にニコチン含有量の多いタバコであれば、少ない本数で中毒になります。

もし、タバコを異食した場合、水分を飲ませるとニコチンが水に溶け、吸収が早まってしまうので絶対に飲ませないでください。

そして、中毒症状が出る可能性がある物を異食した場合、できるだけ早く救急車を呼び、何をどれくらい異食したのかを伝えてください。

食道や内臓を傷つける可能性がある

ボタン電池やガラス片などは見た目が飴玉にも似ているため、異食されやすい物です。

また、薬が入っているPTP包装シート(錠剤などをプラスチックとアルミで挟んだ物)も食事の場にある場合が多く異食されやすいです。

ボタン電池などの電池類は飲み込んでしまっても、多くの場合は便として排出されます。

しかし、内蔵内で引っかかってしまった場合は以下のような症状が出ます。

  • 潰瘍や消化管穿孔
  • 食道や胃の粘膜などの腐食(火傷のような症状)
  • 胃に穿孔(穴があく)

電池類を異食した場合、「何事もなく排泄されるかも」と考えるのは危険です。できるだけ早く病院で受診してください。

ガラス片やPTP包装シートなどは、飲み込む際に口内や食道などに傷を作ってしまうかもしれません。こちらも異食を確認したら、できるだけ早く病院に受診する必要があります。

異食をさせないための対処法

高齢者の異食を防ぐためには、見守りはもちろん大切ですが、一日中行動を見張り続けるのは不可能です。

そのため、日々の対策も大切です。

  • 異食しそうなものをまわりに置かない
  • 食事回数を増やす
  • 生活のリズムをつかむ
  • ストレスや不安を解消する
  • 医師などに相談する

まずはできる対策から始めていきましょう。

異食しそうなものをまわりに置かない

異食させないための対処法として、まずは手の届く、目に入る範囲に異食できそうな物はできるだけ置かないようにしてください。

特に寝室など高齢者の方のプライベートの空間では、仮に異食をしていたとしても何が無くなっているのか判別しにくいです。

異食に気づかない可能性も十分にあります。

中毒症状を起こす可能性のある物はまず手の届かない場所に置かない方がいいでしょう。ティッシュなどどうしても必要な物は置きっぱなしにするのではなく、戸棚の中などにしまい目につかないようにします。

お菓子などの食べ物を置く際には、包み紙ごと食べてしまう可能性があるので、食べる時に包み紙を外して渡すようにしましょう。

服についたボタンや装飾も異食する可能性が高い物です。

できるだけボタンやとれてしまうような装飾がついている服は避けるようにしてください。

食事回数を増やす

お腹が空いたと認識してしまい、異食をする場合があります。その場合は食事の回数を増やすようにしましょう。

ただ、空腹だと認識していても食べ過ぎは肥満やほかの病気になるかもしれません。

全体では今までの食事量と同じになるように、1回の食事量を減らし回数を増やしてください。

もし、食事を嫌がるのであれば、食事の間におやつを入れるのも有効的な対処法です。

一緒におやつなどを食べ、話をするとストレスや不安の解消にもつながるため異食が無くなるかもしれません。

生活のリズムをつかむ

食後は必ず歯磨きをするなどの、「食後は必ずこれをする」といった習慣を身につける方法です。

これをすればもう食事は終わりといった感覚が身につくため、異食が減る可能性があります。

また、おむつや排便した物を食べる場合は、どのタイミングで排便をしているのかを観察してください。

おむつの中に便がある状態をできるだけ短くして、きれいな状態を保ちます。

そうすると、排便した物を異食するタイミングが無くなったり、おしりの気持ち悪さからおむつを異食してしまったりする可能性を下げられます。

ストレスや不安を解消する

認知症などを患っている方の介護は、ストレスがかかる場合が多いです。しかし、同じくらい認知症の方もストレスや不安を感じています。

否定や怒られることは誰であってもストレスや不安を感じてしまいます。

頭ごなしに否定したり、怒ったりはせず、歩み寄る姿勢をみせ安心してもらうのも大切です。

認知症の方とどのように関わるのかを見直してください。ストレスや不安が減ると異食も無くなる可能性があります。

医師などに相談する

どうしても異食をする原因がわからない、異食をやめてくれないのであれば、一度医師やケアマネージャーなどの専門職の方に相談してください。

異食の原因がわからず、イライラとした状態で認知症の方と接してしまうと、ストレスを感じ異食がひどくなる可能性があります。

一度専門職の方の意見を聞き、異食の原因を推測し、辞めてもらうにはどうしたらいいのかなどを相談するといいでしょう。

異食していないかの見守りが負担になっているのであれば、ショートステイでデイサービスなどを利用して休憩時間を作る工夫も必要です。

介護サービスの利用は介護をしている方のストレス解消にもなります。

それにともなって認知症の方との接し方が変わり、異食が減るかもしれません。

まとめ|異食を見つけたら落ち着いて対処を

もしも、異食を発見した場合、怒ったり責めたりはしないようにしてください。

まずは何を異食したのか、飲み込んだのか、まだ口の中にあるのかなどを落ち着いて確認しましょう。

口の中に異食した物が残っている場合、口から出す必要があります。

この時、指を突っ込むと噛みつかれる可能性があるので注意してください

できるだけ、自身で吐き出してくれるようにおやつなどを見せ誘導します。

仮に飲み込んでしまった場合は、何をどれくらい飲み込んだのかを確認し、飲み込んだ物によってはすぐに救急車を呼びましょう。

体調面に問題が無くても、時間が経てば何か症状が出てくるかもしれません。

救急車を呼ぶほどでは無くても、できるだけ早く病院を受診し、本当に大丈夫なのか確認してもらってください。

異食をさせないための対処法も今回紹介しました。

どうしても異食の理由がわからない、見守りに限界を感じるのであれば、すぐに専門職の方の意見を聞くといいでしょう。

介護をする方のストレスやイラつきは、私達が思っている以上に介護をしている方に伝わります。

ストレスや不安も異食の原因の一つです。

まずは自分が余裕を持てるように心がけましょう。

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異食に関するよくある質問

Q,異食ってなんですか?

A,食べ物ではない物を口に運んでしまう行為です。

目についた物、手に触れた物は何でも口に入れてしまう可能性があり、異食をする方の介護をする場合は目が離せません。

Q,もし異食を発見したらどうすればいいですか?

A,まずは何を異食したのかを把握してください。

中毒症状などが出るような危険物だった場合はすぐに救急車を呼んでください。

元気そうであれば、安心するのではなく、早めに病院を受診して本当に大丈夫なのか確認してもらいましょう。

そのほか認知症について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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