認知症になると、いろいろなことを忘れてしまったり、物の管理が苦手になったりして日常生活へ支障がでてきます。
そのため、大切な物の管理は家族の協力が必要になりますが、一番気になるのが「お金」の管理ではないでしょうか。
本記事では、認知症とわかったときのお金の管理方法やお金にまつわる起こりやすいトラブルについて解説します。
親が認知症になってしまうとお金の管理が難しくなる
認知症になると、認知症特有の症状によって今まで普通にできていた日常的な作業や動作ができなくなります。物忘れが激しくなったために同じ作業を何度も繰り返してしまったり、感情のコントロールがうまくできなくなって家族や周囲の人との人間関係のトラブルが起きてしまったりします。
認知症になると記憶を長時間保持できなくなるため、買い物などに行っても自分がお金を使った記憶がなくなったりお金の勘定ができなくなったりします。そのため、自分が持っているお金の管理が難しくなってしまい、詐欺や散財などのお金にまつわるいろいろなトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。
とはいえ、親が認知症になってしまったからといって、親が持っている全財産を管理するのは現実的ではありません。認知症が進行すると家族の存在すら忘れてしまうため、大切なお金を盗まれたと勘違いしてしまい、通報されたり法的な手続きを行われたりするケースもあります。
トラブルを避けつつ大切なお金を管理するコツがあるので、ここからは認知症になってしまった親のお金の管理について解説していきます。
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認知症の方に起こりやすいお金にまつわるトラブル
親が認知症になると、周囲の人間を認識できなくなります。家族という身近な人間ですら信用できなくなるので、人に対しての認知力の低下がお金にまつわるトラブルを招いてしまうのです。
親が認知症になったときに、お金絡みでどんなトラブルが起きやすいのか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは認知症の方に起こりやすいお金にまつわるトラブルについて解説します。
1.お金の管理ができなくなる
認知症になってしまうと記憶を長期的に保持できなくなるため、すこし前まで行っていた作業や動作をすぐに忘れてしまいます。そういった症状が原因で、買い物に行って何度も同じものを買ってしまったり、振り込め詐欺などに巻き込まれやすくなったりしてしまいます。
さらに、預金通帳にはお金を引き出したり引き落としたりした取引履歴が残っていても、記憶を保持できないので自分がお金を引き出したのか、使ったのかも覚えられません。
認知症になると不安な気持ちやネガティブな気持ちが強くなりコントロールできなくなるため、疑心暗鬼になって家族に対して疑いの目を向けます。
特に認知症がある程度進行している方は、家族の存在すら忘れてしまうので、相手が自分の大切なお金を使い込んだうえに奪おうとする危険な人物だと思ってしまいます。そのため、お金はすべて家族が使い込んだと思ってしまう方もいらっしゃるのです。
お金の管理ができなくなった結果、家族との関係性の崩壊を招き、周囲の人間関係にも悪影響を及ぼしてしまいます。認知症になるとお金にまつわるトラブルが起きやすくなるのは、こういった背景があります。
2.親族であってもお金を盗られたと疑ってしまう
認知症の方は、家族などの周囲の人間との関係性を忘れてしまった場合、自分の財布からお金が無くなっている状態に気づくと、まずはいつも自分のすぐそばにいる家族を疑います。
大切な親から疑いの目を向けられて罵声を浴びせられた方は、精神的に大きなストレスを感じてしまいます。
親からの疑いを避けるために無理にお金を取り上げてしまう方もいますが、それによって認知症の方がさらに強いストレスや不安感を感じて感情の起伏が激しくなってしまうこともありません。
さらには認知症が悪化してしまうリスクもあるので、お金の管理が難しいと感じてしまうのです。
3.悪徳商法や詐欺に騙されやすくなる
高齢者を狙った悪徳詐欺の被害は、情報化社会として進化した現代においても多く報告されています。詐欺の手口は非常に巧妙で、健常者であっても騙されてしまうほどの手口なので、記憶を保持できずに周囲の人間を正常に認識できなくなっている認知症の方が、自分の力だけで詐欺被害を防ぐのは難しいのが現状です。
認知症が進行すると家族の名前を忘れてしまう場合もあり、その状態で「オレだけど」などと曖昧な一人称を連呼されると、電話をしている相手が自分が覚えている人間なのだと認識してしまいます。
その状態で何度もすりこまれると、それが事実であると認識してしまい、さらに詐欺師は高齢者が周囲の人間に相談できないように迅速な対応を強要します。結果、普段であれば騙されないような悪徳詐欺に騙されやすくなってしまうのです。
4.金銭的な問題で家族や親族とトラブルになることも
親が認知症になると、家族や親族などで親のお金や財産を管理しなければいけません。事前にしっかりと親族間で管理するお金の内訳を相談していればトラブルにつながる危険性は低いのですが、きちんと親族に相談せずに一人がお金をすべて管理してしまうと金銭的なトラブルにつながります。
親族はお金を管理している人が親の財産を勝手に使い込んでいると思い込んでしまい、親族間で金銭をめぐって裁判沙汰や警察沙汰などのトラブルに発展するケースが多いのです。
親のお金を管理していると、支払いなどでどうしてもお金を引き出さなければいけないときがあります。そういった場合には、親族間でのトラブルを回避するためにも、支払いをした明細や証明書を保管しておき、いざというときに備えましょう。
親のお金を管理していると、少なからず一度や二度は周囲の人間とトラブルが起きる可能性は高いです。事前にトラブルが起きないように対処するのは大切ですが、トラブルが起きた場合を想定して保険をかけておく姿勢がとても大切です。
認知症の方がお金のトラブルを回避するための方法
親の認知症が進行するにつれて、金銭的なトラブルが起きるリスクは高くなります。実際に親が認知症になったことをきっかけにトラブルが起きたケースが多く報告されていて、いずれも近しい存在の人が巻き込まれるケースが多いです。
ここまでは認知症の方に起こりやすいお金にまつわるトラブルについて解説しましたが、「じゃあそういったトラブルを回避するためにはどうしたらいいの?」と疑問に思った方もいるはずです。
そんな方のために、ここからは認知症の方がお金のトラブルを回避するための方法について解説します。
1.お金を管理する方をあらかじめ決めておく
親が認知症になってしまったら、まずはじめに親族間で協議を行いましょう。だれがどれだけの割合でお金を管理するのか、どういった支払いを担当するのかを事前に決めておきます。
お金の管理方法については、経済的な状況や世帯構成によっていろいろなパターンがありますが、誰か一人がお金を管理するのであれば代表者を決めておきましょう。また、お金の流れをほかの人間が確認できるようなシステムを作るのも一つの方法です。
お金の動きを透明化して支払額を明確化しておけば、周囲の人間から疑いの目を向けられる可能性は低くなります。
お金を管理する方がどうしても決まらない場合には、弁護士を代表者として選任できる後見人制度もあります。後見人制度は、親の財産を管理するうえでとても重要な制度なので、詳しくは後述していきます。
2.認知症の方から財布や口座通帳などを無理に取り上げない
認知症の人は健常者よりも不安感やストレスを常時抱えているので、無理にお金を取り上げてしまうと過度なストレスにより症状が悪化してしまうかもしれません。また、お金を取り上げられた高齢者は、自分の意思や意見を聞いてもらえずに自尊心を傷つけられたと感じてしまいます。
認知症の高齢者は、自尊心やプライドを傷つけられると、例えその相手が自分の子どもや親族であっても遠ざけようとします。そうなってしまうと、今後必要な介護や日常の世話にも影響を及ぼす可能性もあるのです。
金銭的な問題は特にナイーブなので、すこしでも高齢者の自尊心やプライドを傷つけないように対応しましょう。例えば、認知症の方が財布を見つけられずに自分が疑われたとしても、財布がある場所に自然に誘導するのが効果的です。
そのほかにも、お金がなくなっていると追及されたら、使ったお金の明細や領収書を渡し、使った金額と照らし合わせてあげれば安心します。
お金や財布を無理に取り上げるのではなく、自然な流れでお金の管理を任せてもらえるように誘導すると心がけましょう。
3.家族信託を利用する
家族信託とは、高齢者の方が将来的に自身の財産を管理できなくなった場合に備えて、事前に家族や親族などの特定の人間に財産の管理や処分を任せる財産の管理方法です。
財産の管理方法として最も認知されているのは遺書ですが、遺書の次に幅広く財産の管理を託せる方法です。また、財産を管理する相手が自分の家族なので、財産を管理する手数料や手続きの手間がかからないといったメリットがあります。
財産を管理する方法としては、後見人制度もとても有効な方法です。ですが、毎年裁判所への報告義務があったり、生前贈与などの税金対策が難しかったりといったデメリットがあります。
ですが、家族信託は単純に財産の管理を信頼できる家族に任せる方法なので、複雑な手続きや定期的な報告義務は発生せず、遺書と同等の効力を発揮できるので活用しやすい方法といえるでしょう。
後見人制度を活用する
後見人制度とは、認知症や精神疾患などが原因で財産の管理に関して正常な判断が難しくなった方に代わり、法的な手続きによって選任された後見人が財産の管理や処分を行う制度です。
後見人制度は2種類あり、財産の持ち主の健康状態に応じて手続き可能な制度が異なります。
認知症や精神疾患などが進行しており、すでに判断能力が不十分な場合には、家庭裁判所に選任された後見人等が財産を管理する「法定後見」が適用されます。
一方、認知症や精神疾患が認められず、本人に十分な判断能力があるうちに将来への備えとして後見人等となる人を自ら事前に決めておくならば「任意後見」が活用しやすいです。
法定後見については、財産の元の持ち主がどれくらいの判断能力を有しているかによって「後見」「補佐」「補助」の3つのレベルに分けられます。どのレベルに当てはまるかも家庭裁判所が決定し、レベルに応じて管理できる財産の範囲に制限があります。
任意後見は、判断能力が十分な状態で財産の後見人を選定するので、認知症に対する不安や将来的な健康に対する不安がある方は、早めに任意後見を行いましょう。
手続きの流れ
後見制度の手続きの流れは以下のとおりです。
まずは家族、四親等内の親族のうちの誰かを「申立人」として、家庭裁判所に「後見開始申立」の手続きを行います。
次に、家庭裁判所が申立人・本人・後見人候補の調査や親族の意向確認などを行います。鑑定や調査が終了したら家庭裁判所により後見制度開始の審判と後見人の選任を行い、確定です。
後見人が確定したら申立人、本人、後見人となった方に書面で通知をし、法務局に後見登記をして終了です。
利用する際の注意点
後見人制度を利用する注意点は以下のとおりです。
- 後見人等は行った職務の内容を毎年あるいは随時に家庭裁判所に報告する義務がある
- 弁護士や司法書士など家族以外が後見人等に選任されても異議申立てができない
- いったん後見人等がつくと、家族の意向で後見人等を交代、除外できない
- 財産の管理は後見人等の権限となり、家族や本人の意向が反映されにくい
- 申立人が希望した方が必ず後見人になれるわけではない
- 後見人等には報酬を払う必要がある
この点を加味したうえで、後見人制度を活用したほうが、家族の関係性が良好になるのかなども含めて検討していきましょう。
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まとめ
認知症になると、周囲の人間が認識できるときと認識できないときがあり、お金のトラブルが起こりやすくなります。
また、これまで育ててもらったあるいは親切にしてくれた親とのお金のトラブルは家族や親族にとってもよいものではありません。
あらかじめ後見人制度を利用したり、財産の管理者を決めておいたりすればお金の管理にまつわるトラブルを回避できます。親が認知症になったあとのお金の管理に困っているという方は、今回ご紹介した内容をぜひ参考にしてください。
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