介護が必要になった際の相談窓口は?段階や目的に合わせて解説

介護が必要になった際の相談窓口は?段階や目的に合わせて解説

「自分や身近な人の介護が必要になったけど誰に相談したらいいかわからない」その際に相談ができる窓口を段階や目的に合わせて詳しく解説します。

本多勇 教授
武蔵野大学 通信教育部 人間科学科 社会福祉専攻
社会福祉士・保育士・公認心理師
日本社会福祉学会・日本高齢者虐待防止学会 ほか
専修大学文学部人文学科卒業、東洋大学大学院社会学研究科社会福祉専攻修了。国際医療福祉大学(助手)、社会福祉法人徳心会、医療法人社団充会介護老人保健施設太郎 (支援相談員・相談室長)を経て、2011年から現職。NPO全国抑制廃止研究会の活動にも参加。現在、介護老人保健施設太郎にて非常勤(支援相談員)勤務も継続中。
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「介護」が必要になる、ということ

「介護」は、共通の定義があるようですが、実は確定的な定義のない曖昧な言葉です。便宜的に定義を設定するとすれば、介護とは「日常生活上の動作を自分の力だけでは難しい状況の際に、他者のサポートを得て行うこと」と言えます。

介護が「生活上の動作」に関わるということは、具体的には、食事、排泄、入浴だけでなく、衣食住に関わる環境整備・掃除、整容、歯磨き・口腔ケア、移動(室内や外出)なども含められる、ということです。生活上の動作を、自分だけの能力で難しくなった際に、他者に手伝ってもらうこと、と言えます。

生活上の動作の局面を簡単な単語で表していますが、それぞれの動作には様々複雑なことが含まれています。

「食事」には、食材を手に入れる・買い物に行く、調理する、盛り付ける、盛り付けた料理を食べる、片付けるなど、が一連の動作として整理できます。

「排せつ」には、トイレやそれに代わるポータブルトイレ、おむつなどに排せつする、汚れをきれいにする(ペーパーで拭く、温水洗浄する)、下着を脱着する、排泄物を処理する(水洗するなど)、が整理できます。

「入浴」には、お風呂やシャワーの準備をする、適切な温度のお湯で流す、石鹸やシャンプーなどで洗身する、タオルなどで拭く、着替える、お風呂やシャワーの後処理や掃除をする、などが動作としてあります。

「環境整備」は、掃除(ほうきや掃除機、雑巾がけなど)や家具の配置の修正、整理整頓等があります。

「整容」は、洗顔や整髪、髭剃りなど身だしなみを整えることだけでなく、歯磨き等口腔ケアも含まれます。衣服(下着や上着)を手に入れて整えたり、洗濯したりすることも生活上の大事なことです。

また、生活においては、自宅内の居室間や、自宅から外出し目的地に「移動」することも重要なことです。

これらの動作のうちの一部が、何らかの理由で、それまでよりも上手くできなくなったとしても、すなわち(家族以外の)他者の世話・手伝いを必要としたり、求めたりすることはなさそうです。本人や家族なりに工夫をする、ということが最初の段階と考えられます。

一時的な工夫をしている間に状況が回復したり、工夫によって他者の助けを必要としない状況が維持されたりすることがありそうです。つまり、「介護が必要」となっただけでは、すなわち「誰かに相談する」ということにならないことがある、ということです。家族内でなんとか工夫して、ある程度しのげることもあるかもしれません。もちろん人によって、家族以外の親戚や近隣の知人・友人に助けを求める場合もあるでしょう。

○「介護」とは・・・介護保険法第1条(抜粋)

「~加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する(者等)」

介護保険法第7条(抜粋)

「この法律において「要介護状態」とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要介護状態区分」という。)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く。)をいう。」

介護のことで「相談」するということ

「相談」は、比較的日常的な行為です。一般的な用語としての「相談」は、「どう対応したらよいか、他者に意見を訊く、他者と意見交換する」という意味合いがあります。家族内の夫婦同士や親子等で相談することはあります。病気や体力の衰え等によって、本人だけで難しくなってきた動作を、どのように工夫するか、ということです。場合によっては別居の家族が一時的に本人と仮に同居・宿泊して対応する、というようなことも方法がとられることがあります。

本人だけあるいは家族だけでの工夫で対応できない状況になってしまった場合は、専門職に「相談」する、という段階が来ることがあります。専門職が行う「相談」の対応を、「相談援助」ということがあります。

高齢者が介護サービスを利用しようとすると、基本的には「介護保険」制度でのサービスを利用する、ということになります。

○「相談援助」とは・・・社会福祉士及び介護福祉士法第2条より

「社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第四十七条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第七条及び第四十七条の二において「相談援助」という。)を業とする者をいう。」

(1)最初に「相談」する窓口・・・「地域包括支援センター」

介護保険制度を利用するためには、行政(市区町村)による「あなたは介護が必要だ」という認定である「要介護認定」を受ける必要があります。

まず相談するのは、「地域包括支援センター」が適しています。市区町村役所・役場の高齢者介護支援担当部署の窓口でも可能ですが、居住している地域には「地域包括支援センター」が設置されています。この地域包括支援センターは、おもに介護保険に関わる事項を中心に相談を受ける、行政のブランチ(支所)のような位置づけです。設置法人が、社会福祉法人や株式会社等でも、行政の管理の下で運営されています。

地域包括支援センターでは、行政(市区町村)への要介護認定の申請を受け付けています。また、介護に関わる一般的な相談や、介護保険制度利用に関する相談についても対応します。そのほか、要介護認定後の方々の介護予防ケアプランの作成、権利擁護・成年後見制度の相談、家族内の虐待予防の対応、認知症のある本人や家族の交流サロンの開催、地域サロン等の開催など、様々な事業や対応を行っています。

地域包括支援センターには、相談援助(ソーシャルワーク)の専門職としての「社会福祉士」、保健医療の専門職としての「保健師(ないしは看護師)」、ケアマネジメントの専門職としての「主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)」が配置されています。そのほか、「認知症地域支援推進員」や「生活支援コーディネーター(地域支えあい推進員)」が配置されている場合もあります。

住んでいる地域のどこに「地域包括支援センター」があるか分からない場合(行政により「安心センター」「総合センター」「支援センター」など別の名称の場合があります)は、行政に連絡して確認したり、地域にいる民生委員に確認したりするのが分かりやすいと言えます。また、行政区域(市区町村)内の福祉系施設に訊いても、「地域包括支援センター」について教えてくれるはずです。

地域包括支援センターでは、介護保険サービスの利用にあたって、その手続きの概略を教えてもらえるほか、その利用の調整をしてもらうこととなる「居宅介護支援事業所」を紹介してくれます。

(2)次に「相談」する窓口・・・「ケアマネジャー/居宅介護支援事業所」

介護保険サービスを利用するには、まず行政(市区町村)に要介護認定の申請を行います。申請に基づいて、行政の認定調査員による本人の心身状況についての訪問調査が行われ、医療機関(主治医)の「主治医意見書」の内容と合わせて「一次判定」が行われます。さらに介護認定審査会による「二次判定」会議により、行政による最終的な要介護度が認定されます。

要介護認定が決まるのにあわせて、自宅で介護保険サービスを使いながら生活を継続する場合は、「居宅介護支援事業所」のケアマネジャー(介護支援専門員)に相談します。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、要介護者本人や要支援者本人、その家族の心身の状況や生活に応じた相談を受けます。あわせて、サービス(訪問介護、デイサービスなど)を受けられるように介護サービス等の提供についての計画(ケアプラン)の作成、行政(市区町村)・サービス事業者・施設等との連絡調整を行います。

要介護度に応じた一月当たりの「サービス利用限度額」が決まっています。介護保険で7~9割部分が支給されるサービス全体の限度額です(自己負担は1~3割です)。ケアマネジャーは、その限度額を参考に(多くはその範囲内で)、サービスの利用意向と利用量を調整し、本人の利用意向に沿いながら、毎月・毎週のサービス内容を計画(ケアプラン)を作成します。要介護者本人や家族はケアプラン内容の同意確認のうえ、サービスを利用します。

(3)専門的な内容を「相談」するには・・・サービスの細かな内容は各事業所・施設へ

介護保険サービスには、さまざまな種類・種別があります。

サービス利用の形態によって、訪問介護(ホームヘルプ)や訪問介護、訪問リハビリなどの「訪問系」、通所介護(デイサービス)や通所リハビリ(デイケア)、などの「通所系」、ショートステイの「短期入所系」、福祉用具貸与や住宅改修、施設やグループホーム等への「入所系」などに整理されます。

サービス利用の形態によって、訪問介護(ホームヘルプ)や訪問介護、訪問リハビリなどの「訪問系」、通所介護(デイサービス)や通所リハビリ(デイケア)、小規模機能型事業所などの「通所系」、ショートステイの短期入所系」、施設やグループホーム等への「入所系」、その他福祉用具貸与や住宅改修などに整理されます。

どのサービスをどの程度利用するかの計画については、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に相談してください。

【介護保険サービスの種類】

①自宅で利用するサービス(訪問系) ②自宅から通って利用するサービス(通所系、短期入所系) ③生活環境を整えるためのサービス ④生活の場を自宅から移して利用するサービス(入所系) ⑤ケアマネジメント(計画作成と調整)
1.訪問介護(ホームヘルプ)

2.訪問看護

3.夜間対応型訪問介護

4.看護小規模多機能型居宅介護(旧・複合型サービス)

5.訪問入浴介護

6.訪問リハビリテーション

7.定期巡回・随時対応型訪問介護看護

8.居宅療養管理指導

1.通所介護(デイサービス)

2.認知症対応型通所介護

3.短期入所療養介護(ショートステイ)

4.小規模多機能型居宅介護

5.地域密着型通所介護(小規模デイサービス)

6.通所リハビリテーション(デイケア)

7.短期入所生活介護(ショートステイ)

1.福祉用具貸与

2.住宅改修

3.特定福祉用具販売

1.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

2.介護老人保健施設

3.特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホーム等)

4.認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)

5.地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

6.介護療養型医療施設

7.地域密着型特定施設入居者生活介護

8.介護医療院

1.居宅介護支援

2.介護予防支援

※施設サービス計画作成は、施設サービスの中に含まれています。

 実際に利用するサービス事業所・事業者・施設やその担当者には、サービスを契約・利用する前に、実際にお会いして、サービスの内容を確認する必要があります。

どのようなサービスの内容か、対応するスタッフはどのような体制か、利用料金(特に介護保険の加算内容や範囲外の自己負担部分)の詳細、万が一のリスクや保証について、等の重要事項説明を受けるとともに、利用者の気になることについて確認・相談を行います。その際、利用相談担当者やスタッフの雰囲気、通所系や短期入所系・入所系であれば施設の他利用者の表情や雰囲気等についても、確認しておくことが重要です。

介護サービスの利用は、生活の一時を過ごし、心身状態の維持や回復に関わることですので、不安をなるべく払拭し、信頼できるかどうか、も重要な要素です。完璧なサービスを提供する、ということよりも、多少の凹凸があったとしても誠実かつ前向きに、何よりも利用者本位の姿勢を持っていることが、サービス利用時の信頼感につながります。

(4)相談したい内容の領域に応じて「専門職」に相談してみる

社会福祉や医療の領域には、さまざまな資格(国家資格や学会等の認定資格)を持った専門職が働いています。利用する介護保険サービス事業所・施設に配属(勤務)している職種も異なっています。それぞれの施設で、どのような専門職が配置されているか確認してください。各施設・サービスの重要事項説明書にも記載があります。

専門職は保有資格によって、それぞれ専門領域の学問分野や守備範囲やアプローチが異なります。

病気(疾患)やその治療の方法や服用している薬の内容、療養上・生活上気を付けることなどは、おもに「医師(主治医)」「看護師」に相談を。医師にはさらに細かな専門領域(基本領域が19、サブスペシャルティ(準専門領域)が24)がありますので、ご確認を。薬に関する内容は「薬剤師」に相談するのも良いでしょう。

身体機能の訓練・リハビリテーションとその予後予測(見立て)はリハビリテーションの専門職「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」に相談を。理学療法士は運動療法や物理療法によるリハビリ、作業療法士は生活に関わる活動を通じたリハビリ、言語聴覚士は嚥下や発声・高次脳機能障害のリハビリ、がそれぞれ中心的な専門領域です。

食事の内容や量、栄養管理等については「管理栄養士」「栄養士」に相談を。

心理的なケア、対応方法については「公認心理師」「臨床心理士」に相談を。

食事や排せつ、入浴等に関する適切な介護の方法、介護に適する環境の整備等については、「介護福祉士」に相談を。

福祉用具に関する細かな内容については「福祉用具専門相談員」という資格を持っているスタッフに相談を。また、認知症に対するケアの知識や技術を持つ「認知症ケア専門士」を保有するスタッフもいる場合があります。

自宅や地域での生活を継続する上で、必要な社会資源(ネットワーク)の紹介や介護保険制度をふくめた社会福祉制度については、その基本的な知識を持つ「社会福祉士」「精神保健福祉士」に相談を。相談援助を行う専門職として法律にも規定されています。施設や事業所における相談員(生活相談員、支援相談員、医療相談員など)は、「ソーシャルワーカー」として地域の社会資源(ネットワーク)や他施設の専門職との連携もできます。

ほかにも様々な資格がありますので、スタッフに専門領域や得意分野を聞きながら、生活上・介護上、参考となる情報(方法やアイディア等)を教えてもらうことが良いでしょう。

(5)ソーシャルワーカーとケアマネジャーの違いについて

「ケアマネジャー(介護支援専門員)」は、ケア(介護)をマネージ(管理)する人という直訳の通り、主に介護保険制度のサービス調整を行う役割が中心的といえます。居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)には必ず配置されています。介護保険制度の専門家であるとともに、要介護者および家族の生活を支援します。

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、その資格取得のために必要な基礎資格が医療・リハビリから相談援助までの幅広い資格(※)が設定されているため、それぞれの専門領域を生かした支援を行うことができますが、一方「相談援助」がやや不得手なケアマネジャーもいるかもしれません。

(※医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、技師装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、柔道整復師、栄養士、精神保健福祉士)

一方「ソーシャルワーカー」は、要介護者のみならず社会における生活上の困難が生じた人の社会的な支援をサポートする職種です。多くは「社会福祉士」や「精神保健福祉士」など国家資格を持ち、社会に生活する人権を尊重する倫理を守り、社会福祉制度や支援に関わる基礎的な知識や技術を持っています。地域包括支援センターには社会福祉士は必ず配置されています。また、施設や事業所においては、相談員(生活相談員、支援相談員、医療相談員など)として配置されています。介護保険制度のサービスの範囲にとどまらない支援(相談援助)を行うことがあります。

専門職や専門機関・事業所・施設に、上手に「相談」を

専門職は、「魔法使い」ではありません。生活上の困難をすべて解決できるわけではありません。

要介護の本人や家族が、介護問題を抱えたその時よりも、より負担が少なくなるよう、そして良い状態に改善・回復するように、支援を行うことによって後押しをします。

本人や家族のみなさんが、ウェルビーイング(Well-being)の身体的・精神的・社会的に良い状態で、より良い生活となるために、信頼に基づいた良いパートナーシップのもと、上手に専門職に「相談」し、上手に専門職を活用してください。

参考

wamnet「介護支援専門員(ケアマネジャー)」(https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/fukushiworkguide/jobguidejobtype/jobguide_job07.html  )2023/12/25最終閲覧

一般社団法人日本専門医機構(https://jmsb.or.jp/ippan#an03 )2023/12/25最終閲覧

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