遠方に住む親の介護が必要になった際、今の生活や仕事を維持したままサポートする「遠距離介護」は、現代において多くの人が選択している現実的な介護の形です。
親の体調不良や物忘れに気づき始めたとき、「仕事を辞めて実家に帰るべきか」「離れたままで本当に親を支えられるのか」と、漠然とした不安や焦りを抱える方は多いのではないでしょうか。
しかし、介護が始まるからといって、同居や親の呼び寄せ、あるいは退職(介護離職)を選ぶことだけが正解ではありません。
事前の準備と周囲のサポートを適切に活用することで、離れていても親の暮らしを守ることは十分に可能です。
本記事では、遠距離介護のメリット・デメリットから、始める前にやっておくべき事前準備や帰省時の実践的なToDoリスト、そして遠距離介護を続ける方のリアルな体験談まで詳しく解説します。
まずは遠距離介護の全体像と進め方を正しく把握し、無理なく生活と介護を両立させるための第一歩を踏み出しましょう。
遠距離介護とは?
遠距離介護とは、実家を離れて暮らしている子どもが、離れた地域に住む親の介護を行うことを指します。
近年、40代〜50代の働き盛り世代において、「親の体調や物忘れが心配だが、今の仕事や生活を手放して地元に戻ることは難しい」という悩みを抱える方が増えています。
遠距離介護は、自分の仕事や生活基盤を維持しながら、親のサポートを行うための現実的な選択肢として注目されています。
親の介護が必要になったからといって、「同居」や「親の呼び寄せ」だけが正解ではありません。遠距離介護の全体像を把握し、制度やサービスを上手く活用することで、離れていても十分に親を支えることは可能です。
それぞれのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
遠距離介護のメリット
改めて、遠距離介護のメリットは以下の通りです。
遠距離介護の最大のメリットは、介護者自身の生活やキャリアを犠牲にせずに済むことです。実家に戻るための引っ越し費用や、退職・転職による収入減のリスクを回避し、経済的な安定を保ちながら親のサポートを続けることができます。
また、親にとっても「長年住み慣れた家や地域で暮らし続けられる」ことは大きな安心材料であり、環境変化による精神的な負担を減らすことができます。
さらに、同居による24時間体制の介護とは異なり、お互いに適度な距離感を保つことで介護うつなどの深刻なストレスを防ぎやすくなる点も、長期的に介護を続けるうえで非常に重要なポイントといえます。

・お名前:STさん
・性別:男性
・年齢:43歳
・職業:会社員(正社員)
・居住地:栃木県
当時の状況(クリックして開く)
STさん:
遠距離介護のメリットは、物理的にすぐ行けないからこそ、しょうがないと割り切りができることですね。
親から「手すりをつけてほしい」などの要望があっても、ある程度こちらの都合に合わせて自分が行ける日に対応するというペースで進められたのは良かった点です
遠距離介護のデメリット
遠距離介護のデメリットは以下の通りです。
一方で、離れているからこそ生じる課題もあります。最も直接的な負担となるのが、帰省時の交通費と移動にかかる時間です。介護が長期化すればするほど、これらの蓄積が家計や介護者の体力を圧迫する可能性があります。
また、日々の細かな様子を直接見られないため、「冷蔵庫の中に期限切れの食材が増えた」「同じ話を繰り返すようになった」といった認知症の初期症状や、健康状態の悪化に気づくのが遅れがちになる点にも注意が必要です。
いざという緊急時にすぐ駆けつけられないため、事前の備えや現地(地域)でのサポート体制をつくっておかなければなりません。
・お名前:HKさん
・性別:女性
・年齢:48歳
・職業:パート・アルバイト
・居住地:東京都
当時の状況(クリックして開く)
HKさん:
片道3時間かけて月に何度も通っていたのですが、最大のデメリットはやはり移動で体力が削られることです。
しかも、帰省した短い時間の中で、ケアマネジャーさんとの調整から両親の説得、家の片付けまで、すべてのタスクをこなさなければいけないプレッシャーが大きいです。
大事な話は電話ではうまくいかず、結局は直接会いに行ってその場の空気で進めないといけないのが本当にしんどかったですね
遠距離介護を始めるために準備しておくこと
遠距離介護を無理なく、そして長く続けるための最大の鍵は「事前の準備」にあります。
親が倒れてから慌てて動き出すと、十分な検討ができないまま退職や引っ越しといった大きな決断を迫られてしまう可能性があります。
現在の自分の生活を守りつつ親をサポートするために、介護が本格化する前から以下の準備を少しずつ進めておきましょう。
- まずは現地の地域包括支援センターやケアマネジャーに相談
- 親の今後の暮らしへの希望を確認しておく
- 親のできること・できないことを整理しておく
- 兄弟・親族間で役割分担をしておく
- 医療・持病・常備薬の情報を一箇所にまとめておく
- 重要書類の保管場所を共有しておく
- 実家の近所とコミュニケーションをとっておく
それぞれ詳しく解説していきます。
まずは現地の地域包括支援センターやケアマネジャーに相談
親の様子がおかしい、あるいは介護が必要かもしれないと感じたら、まずは親が住んでいる自治体の「地域包括支援センター」に相談しましょう。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを支える総合相談窓口であり、介護保険の申請手続きや利用できるサービスの案内などを行ってくれます。
遠方からの電話相談にも応じてくれるため、「まだ介護認定を受けていない」「何から手をつければいいか全くわからない」という段階でも遠慮なく頼ることが大切です。
認定後はケアマネジャーと連携し、遠距離でも無理のないケアプランを一緒に立ててもらいましょう。
親の今後の暮らしへの希望を確認しておく
親がまだ元気で意思疎通がスムーズにできるうちに「将来どのように暮らしたいか」を話し合っておくことが大切です。
例えば、以下の3つは遠距離介護を含めた今後の介護のやり方を左右する質問となります。
【今後の暮らしの希望で確認しておくべきこと】
- ギリギリまで今の実家で暮らしたいか
- 将来的には介護施設(有料老人ホームやケアハウスなど)への入居も考えているか
- 延命治療についての希望はあるか
こうしたデリケートな話題は、病気になってからでは聞き出しにくくなります。
帰省のタイミングなどで、お互いの本音と「現実的にどこまでサポートできるか(同居は難しいことなど)」をすり合わせておくと、その後の方向性が定まりやすくなります。
介護を経てお父様を看取った方へのインタビューでは本人と「どう過ごしたいか」について前もって話さなかったことに対する後悔を話してくれました。
・お名前:古川さん(仮名)
・性別:女性
・年齢:39歳
・職業:パート・アルバイト
・居住地:東京都
当時の状況(クリックして開く)
古川さん:
父が急に亡くなった時、親が「これからどう過ごしたかったのか」を、ちゃんと話せるうちに話し合っておけばよかったとすごく後悔しました。
その時にどうしたかったかをしっかり話し合って、じゃあこれくらいお金が必要だよね、という会話をしておくことが大切だと思います。
親のできること・できないことを整理しておく
親の日常生活において、「自力でできていること」と「手助けが必要になってきたこと」を客観的に洗い出しましょう。
たとえば、以下のようなポイントをチェックします。
【親の状態でチェックすべきポイント】
- 食事:買い物に行けているか、火を使った調理ができているか
- 清潔:お風呂にひとりで入れるか、掃除や洗濯ができているか
- 管理:金銭の管理ができているか、薬の飲み忘れはないか
できないことが明確になれば、「配食サービスを頼む」「週に2回は訪問介護で掃除を手伝ってもらう」など、ピンポイントで外部サービスを導入する手立てが見えてきます。
施設のケアマネジャーの方のお話では、遠方だと親の実際の状況が分からないために、介護が後手になっているケースが多いとのことです。
・お名前:MAさん
・性別:女性
・年齢:40歳
・職業:ケアマネジャー(12年)
・居住地:石川県
MAさん:
遠方に住んでいるご家族は、親の老いが現実の生活と結びついておらず、「うちの親はまだ何でもできる」と思い込んでいるケースが非常に多いように感じます。
離れているとできない姿が見えないため、今、親に何の手助けが必要でどういう状況なのかを、現実的に把握することが重要ですね。
兄弟・親族間で役割分担をしておく
兄弟姉妹がいる場合、介護の負担が誰か一人(特に独身者や時間の融通が利きそうな人)に偏らないようにすることがトラブル回避の鉄則です。
本格的な介護が始まる前に、それぞれの状況を共有し、役割を分担しておきましょう。
「長男は実家に帰省して力仕事や通院の付き添いをする」「金銭的な負担は兄弟で折半する」など、距離や仕事の状況に応じた現実的な分担を決めておくことで、家族間のしこりを防げます。
特に、兄弟が遠方にいる場合は負担が一人に偏りやすいです。
介護をしている方を対象としたインタビューでは、離れて暮らす兄弟は協力してくれず、実家の近くに住んでいる自分にばかり負担がかかってしまったケースもありました。
・お名前:中村さん(仮名)
・性別:女性
・年齢:48歳
・職業:会社員(正社員)
・居住地:東京都
当時の状況(クリックして開く)
中村さん:
遠方に住んでいる姉や音信不通の姉たちは、口だけは出してくるのに手もお金も一切出さないんです。
「実家の近くに残っているあなたがやって当然」という態度で、結局すべての負担を私一人が背負うことになり、本当に多大なストレスを感じました。
医療・持病・常備薬の情報を一箇所にまとめておく
離れて暮らしていると、親の持病や通院先の病院、普段飲んでいる薬を正確に把握できていないことがよくあります。
万が一、親が急に倒れて救急搬送された際、遠方の家族が電話で医療情報を医師に伝えなければならないケースも少なくありません。
かかりつけ医の連絡先、病歴、アレルギーの有無、お薬手帳のコピー(または写真)などをスマートフォンのメモ機能などに保存し、いつでも確認できるように一箇所にまとめておきましょう。
重要書類の保管場所を共有しておく
親の認知症が進行したり、急な入院が必要になったりした際、実家で重要書類を探し回るのは大変な労力を使います。
親の同意を得たうえで、以下の書類の保管場所を事前に確認・共有しておきましょう。
【保管場所を共有しておくべき重要書類】
- 健康保険証、介護保険被保険者証
- 年金手帳
- 預貯金通帳、銀行印
- 生命保険の証書
- 不動産の権利書
すべてを預かる必要はありませんが、「いざという時は仏壇の下の引き出しを見ればわかる」といったルールを家族間で共有しておくことが大切です。
弊社のケアアドバイザーである前北に話を聞きました。

そうすると、いざという時に情報不足で対応が遅れてしまうリスクがあるため、子世代がしっかり踏み込んで親の情報を把握しておくことがとても大切ですね。
不動産や権利関係の証書などは、亡くなってからの相続手続きなどでも確認するものです。
遠距離の場合は、できる限り早めに整理し保管しておくことで「そのままにした結果、どこにあるか分からない」という事態を防げます。

・お名前:鈴木さん(仮名)
・性別:男性
・年齢:37歳
・職業:会社員(正社員)
・居住地:愛知県
当時の状況(クリックして開く)
鈴木さん:
父が亡くなった後、家の権利書がどこにあるか全く分からず、相続の時に本当に苦労しました。
だからこそ、親としっかりコミュニケーションが取れて本人が話せるうちに、銀行口座の番号や携帯電話の解約方法、借金や土地などの財産・契約状況を控えておくべきだと強く思います。
実家の近所とコミュニケーションをとっておく
遠距離介護において、実家の近隣住民の方々は「現地での心強い見守り役」となってくれます。
帰省した際には、ご近所や町内会の方に手土産を持って挨拶に伺い、「遠方に住んでいるため、何か変わったことがあればご連絡いただけますと助かります」と伝えて連絡先を渡しておきましょう。
「郵便物が溜まっている」「夜中に徘徊しているようだ」といった、離れている家族が気づけないSOSをご近所さんが教えてくれることで、最悪の事態を防ぐことができます。
遠距離介護の経験がある方の中には「近所づきあいが身を助けることがあると実感した」というエピソードの話してくれました。
・お名前:古川さん(仮名)
・性別:女性
・年齢:39歳
・職業:パート・アルバイト
・居住地:東京都
当時の状況(クリックして開く)
古川さん:
母が徘徊してあちこちに行ってしまった際、近所の人が「あそこにいるよ」と教えてくれて、本当に助かりました。
日頃からの地域とのつながりやご近所さんとのコミュニケーションが、いざという時の大きな助けになると実感しました。
遠距離介護の帰省時ToDoリスト
遠距離介護における帰省は、単なる家族の団らんではなく、親の生活状態を直接確認できる貴重な機会です。
滞在できる時間は限られているため、「帰省したら必ずチェックすること」をリスト化しておくと、重要な変化を見落とさずに済みます。
帰省時にやる必要がある主なToDoは、以下の7つです。
【帰省時のToDoリストの例】
- 冷蔵庫の中身の確認と片付け
- 必要なものの買い出し
- 郵便物の確認と高額商品・詐欺のチェック
- 認知症の進行具合の確認
- 服薬状況の確認
- ケアマネジャーとの面談やスケジュール調整
- 近隣への挨拶
ここでは、帰省時に優先して行いたいToDoリストをご紹介します。
冷蔵庫の中身の確認と片付け
冷蔵庫は親の現在の生活能力を映す鏡です。帰省したら、まずは冷蔵庫の中を開けて以下をチェックしましょう。
【冷蔵庫の中身の確認ポイント】
- 消費期限・賞味期限切れの食材が放置されていないか
- 同じ食材(醤油や卵など)をいくつも重複して買っていないか
- 腐敗臭がしたり、カビが生えたりしているものはないか
同じものを何度も買ってしまうのは、記憶力の低下(認知症の初期症状)が疑われます。
また、傷んだ食材を食べて食中毒を起こす危険があるため、帰省のたびに不要なものを処分して庫内を清潔に保つようにしましょう。
看護師であり様々な介護施設で高齢者ケアに携わってきた菅原さんによると、冷蔵庫の状態は本人の状況の良し悪しを測るバロメーターになるといいます。


必要なものの買い出し
高齢になると、お米や飲料水、洗剤などの重い日用品を買いに行くのが困難になります。
帰省した際には、車を出すなどして次回の帰省までに必要となる重いものや日用品のストックをまとめて補充しておきましょう。
もし頻繁な帰省が難しい場合は、このタイミングで生協などの食材宅配サービスや、ネットスーパーの定期便の利用手続きを一緒に進めておくのもおすすめです。
郵便物の確認と高額商品・詐欺のチェック
テーブルの上やポストに郵便物が溜まっていないか確認します。
未開封の郵便物の中に、税金や公共料金の未納通知、重要な行政の手続き書類が紛れ込んでいることがあるため注意が必要です。
また、家の中に「見慣れない高額な健康器具」や「大量の健康食品」がないかもさりげなくチェックしましょう。
判断力が低下した高齢者を狙う悪徳商法や特殊詐欺の被害に遭っていないか、不審な契約書や領収書がないかを確認することも大切な役割です。
認知症の進行具合の確認
電話越しでは元気そうに話していても、直接会うと違和感に気づくことがあります。
会話の内容だけでなく、以下の生活の様子から認知症のサインがないかを確認しましょう。
【認知症の症状や進行具合を確認するときのポイント】
- 同じ話を何度も繰り返していないか
- 季節に合わない服を着ていたり、服に汚れやシミがついたままだったりしないか
- 入浴を面倒くさがるようになり、体臭がきつくなっていないか
- 以前はきれいだった部屋が散らかっていないか
身だしなみや部屋の整理整頓に対する無頓着さは、認知機能低下の重要なサインです。
気になる点があれば、早めにケアマネジャーや主治医に相談しましょう。
介護経験のある方を対象としたインタビューでは、遠距離の帰省時に会話の具合から認知症が出始めていないかチェックしていたという方もいらっしゃました。
・お名前:鈴木さん(仮名)
・性別:男性
・年齢:37歳
・職業:会社員(正社員)
・居住地:愛知県
当時の状況(クリックして開く)
鈴木さん:
東京から愛知の実家へ遠距離で関わっていた頃は、電話で様子を聞きつつ、長期休暇の際には必ず帰省するようにしていました。
その時に、「しっかりと会話ができているか』を確認して、認知症の予兆がないかを気にかけていましたね。
服薬状況の確認
持病がある場合、薬を正しく飲めているかの確認は命に関わります。
薬箱やお薬カレンダーを見て、大量の飲み残し(残薬)がないか、逆に飲みすぎていないかをチェックしてください。
もし管理が難しくなっているようであれば、薬局にお願いして「一包化(朝・昼・晩ごとに1回分ずつパックしてもらうこと)」してもらったり、訪問看護や訪問介護のサービスに服薬確認を組み込んでもらったりする対策が必要です。
ケアマネジャーとの面談やスケジュール調整
帰省のタイミングに合わせて、担当のケアマネジャーに面談の時間を取ってもらいましょう。
普段は電話やメールでのやり取りが中心になるため、直接顔を合わせて以下の情報共有を行います。
【ケアマネジャーとの面談におけるポイント】
- 現在の介護サービスの利用状況と親の様子の報告を受ける
- 今回の帰省で家族が気づいた「親の変化や困りごと」を伝える
- 必要に応じてケアプラン(介護計画)の見直しや書類へのサインを行う
ケアマネジャーとの良好な関係構築は、遠距離介護を成功させる上で最も重要です。日頃のサポートへの感謝も忘れずに伝えましょう。
近隣への挨拶
遠距離介護において、近隣住民の方々は強力なサポーターです。帰省した際には、無理のない範囲でご近所の方に手土産を持参し、ご挨拶に伺いましょう。
「いつも母を見守っていただきありがとうございます」「離れて暮らしているので、また何か変わったことがあれば教えてください」と感謝を伝え、引き続きのサポートをお願いしておくことで、いざという時のセーフティネットとなります。
遠距離介護で押さえておきたいサービスや制度
介護が必要になったとしても、離れたところに住んでいるとすぐに駆け付けるのが難しいため、心配はつきものです。だからこそ高齢者向けのサービスや制度を活用して、家族が安心して暮らせる環境にしておくのが重要となります。
介護者の負担を減らし安心して介護するために、便利なサービスの利用を検討してみましょう。
- 見守りサービス
- 介護保険サービス
- 各交通機関の割引制度
それぞれの特徴について詳しく解説します。
見守りサービス
今や見守りサービスは多種多様となっています。遠距離介護に便利な見守りサービスには、以下のようなものがあります。
- センサー型・カメラ型の見守り
- スマートフォンアプリによる見守り
- 見守り家電などIoT機器を活用した見守り
- 食事宅配型の見守り
- デイサービス・訪問介護などの見守り
見守り機器は価格も手ごろで取り入れやすく、リモコンに入れる電池や使用頻度の高いポットなど、高齢者でも使いやすいものが増えています。スマートフォンも、高齢者でも簡単に操作できるものが豊富に発売されていますので検討してもよいでしょう。
宅配型やデイサービス・訪問介護は、人と話ができるので社会との関わりが持て、高齢者の安心やストレス発散にも繋がります。自分の家族にあったサービスを探して取り入れてみてはいかがでしょうか。
どんなものを取り入れるか迷ったときには、ケアマネジャーに相談するのもよいですね。
介護保険サービス
介護保険サービスの中に「居宅介護サービス」があります。要介護・要支援の状態の方が、自宅にいながら受けられるサービスです。
居宅介護サービスの種類には、以下のようなものがあります。
- 自宅に訪問してもらうサービス
- 施設に通って受けられるサービス
- 一時的に施設に入所できるサービス
- 有料老人ホームなどに移り住んで利用するサービス
有料老人ホームでは、部屋が自宅とみなされるため居宅介護サービスに含まれます。通常であれば、限度額の範囲内でサービスを受け、料金の1割(所得により2~3割)の自己負担が必要です。
介護保険サービスは、要介護・要支援度によって利用料の限度額が設定されます。自分の親に必要なのはどのサービスなのか、ケアマネジャーに相談しながら決めるとよいでしょう。
各交通機関の割引制度
結論から申し上げますと、介護を目的に割引できる制度は実質ありません。しかし、各交通機関が色々な割引制度を展開しています。
遠距離介護をしているとネックになるのが、移動にかかる費用です。交通費を少しでも抑えるために、各交通機関で設けている割引制度を活用しましょう。
航空会社では「介護割引」を設定している会社もありますが、それぞれ利用期間や利用条件があり確認が必要です。また格安航空会社は、介護割引こそないものの費用を抑えられます。
新幹線やJR・バスには介護者に対する割引は用意されていません。ただし介助を必要とする方が利用する場合、「障害者手帳」や「療養手帳」を提示すれば付添人も一緒に割引になります。
種類が豊富にあるので、自分に合った割引サービスを活用することで、出費を少なくできます。
遠距離介護の体験談:往復6時間の移動で疲労困憊…。それでも「呼び寄せない」選択をした理由と早めの準備の大切さ
・実施日:2026年5月
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:HKさん
・状況:東京で夫と2人暮らしをしながら、埼玉の実家で暮らす要介護1の両親(父は認知症、母は物忘れあり)のサポートを行っている。
実家には兄が同居しているが、事情があり介護や金銭面での協力は得られない状態。
月に2〜3回、往復6時間かけて実家へ通い、現地でしかできないタスクを一人でこなす中で、心身ともに限界を感じた時期もあったそうです。
同居の兄は頼れず、東京から月2〜3回の帰省介護がスタート
インタビュアー:まずは、遠距離介護が始まったきっかけや、現在のご実家の状況について教えていただけますか?
HKさん:私の実家は埼玉で、父と母、それと同居している兄の3人暮らしです。両親は2人とも要介護1で、身体的には自立しているんですが、父は認知症、母も物忘れの症状があります。私は東京で夫と2人暮らしをしていて、月に2、3回、片道3時間弱(往復6時間)かけて実家に帰省してサポートしています。
HKさん:同居している兄は「まだ大丈夫」と言っていて、彼自身の悩みもあって介護には関われない・お金も出せない状態なので、私がメインで介護の手続きなどを引き受けています。ちなみに、交通費は私の自腹ですが、実家の介護費用は両親の年金から出してもらっています。
往復6時間の移動と山積みの現地タスク。メンタルが削られ仕事に影響も
インタビュアー:東京と埼玉の往復、しかもお一人でのサポートとなると、ご負担も大きいのではないでしょうか?遠距離介護で一番しんどいと感じるのはどのような部分ですか?
HKさん:遠距離介護で一番しんどいのは、やはり移動で体力が削られることです。帰省した短い時間の中で、ケアマネージャーさんとの調整や、玄関の鍵の紛失対策、冷蔵庫の片付けなど、現地でしかできないタスクが山積みなんです。
HKさん:大事な話は電話だとうまくいかないので、直接会いに行ってその場の空気で進めなければならず、月に6回通った時はメンタルがやられて仕事でミスが増え、本当にきつかったです。ただ、遠距離とはいえ同居の兄が家にいる時間は、万が一二人が倒れた時には救急車を呼んでもらえるという安心感はありますね。
親を呼び寄せない最大の理由は「親の地域の繋がり」を守るため
インタビュアー:ご自身のご自宅がある東京へ、ご両親を呼び寄せるという選択肢は考えなかったのでしょうか?
HKさん:両親を東京に呼び寄せるという選択肢は考えていません。まず家が狭いことや、夫が他人と住むのが得意ではないので折り合いが悪くなる心配があるからです。それに、夫の両親も要支援・要介護状態なので、親を呼び寄せたら「ダブルケア」になってしまい、私たち現役世代が追い詰められてしまう懸念があるんです。
HKさん:でも、呼び寄せない最大の理由は、母が地域の人とたくさん交流を持っていて、呼び寄せるとその交友関係や繋がりがすべてなくなってしまうからです。また、父は認知症なので、環境が変わることで混乱したり認知症が進んでしまったりする心配もあります。
帰省を続けたからこそ防げた詐欺。そして「もっと早く介入すべきだった」という後悔
インタビュアー:これまで遠距離介護を続けてきて、「やっておいてよかったこと」や、逆に「こうしておけばよかった」と後悔していることはありますか?
HKさん:遠距離介護をしていて「やっておいてよかった」と思うのは、帰省するのをやめなかったことですね。遠方への移動がしんどくて行きたくない時期もありましたが、帰省を続けたおかげで詐欺を未然に防げたり、高額な健康食品の購入を止めたりと、親の異変に気づくことができました。
HKさん:一方で後悔しているのは、父が認知症を発症した段階から、もっとがっつり私が介入しておけばよかったということです。当時は母が元気だったからと任せきりにしてしまったのですが、結果的に母に大きな負担がかかり、母自身のケアがおざなりになってしまいました。
インタビュアー:最後に、将来への備えや、これから遠距離介護を始める方へ向けてアドバイスをお願いします。
HKさん:将来、もし両親のどちらか一人になったり、母が入院したりしたら、父は一人では生活できないので、実家近くの無理のない範囲で施設を探さなければいけないと思っています。これから介護を始める方には、親が自分で財産管理できている元気なうちに、保険証券の場所を確認したり、家族信託など第三者を挟んで準備をしておくことを強くおすすめします。
遠距離介護の負担を軽減するには周囲の助けが大切
遠距離介護を無理なく成功させるためには、自分一人で抱え込まず周囲に協力してもらうのが大切です。遠距離介護をするうえで必要なポイントやサービス・制度を活用し、家族の生活を守ることができます。
家族の関係を密にし、周囲の助けを借りて上手に負担を減らしながら、家族みんなが笑顔で過ごせるようにしましょう。
Q1.遠距離介護の悩みはどうやって解決すればいいですか?
A1.まずはケアマネジャーに相談してみましょう。ご家族の現在の状態からケアプランを作成し、サポートしてくれます。
ケアマネジャーをこれから探すというときは、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターで相談してみましょう。
Q2.遠距離介護の帰省頻度はどれくらいにすべきですか?
A2.帰省の頻度は、ご自分の負担にならない程度でいいと思われます。
もし、ご家族の様子が気になるというのであれば、テレビ電話などを活用して連絡の回数を増やすなどの工夫をしてみましょう。
また地域の介護サービスなどを利用することで、ご家族が快適に生活できるでしょう。
詳しくは以下の記事をご覧ください。