高齢者の方が病院から退院する際には、自宅に戻るか、自宅での生活が難しい場合には介護施設に移行するということもあるでしょう。
現在では早期の退院を促されることもあるため、急に介護施設に移ることになった際には、何からすればいいのか、何に気を付ければいいか分からないといった不安や悩みもあるでしょう。
本記事では、病院から施設へ移る際にすべきことや、移る際の問題などについて解説していきます。
病院から施設に移ることになった際には、ぜひ参考にしてみてください。
病院から施設に移る際にすべきことやその流れ
病院から施設に移る際にすべきこと、その流れは以下の通りです。
- 病院のソーシャルワーカーに相談する
- 施設探しを始める
- 見学などを行い、入居先の施設を決定する
- 入居の手続きを行う
- 退院のタイミングで施設に入居する
それぞれのステップについて詳しく解説していきます。
1. 病院のソーシャルワーカーに相談する
施設への入居を決断したら、まずは病院のソーシャルワーカーに相談してみましょう。
ソーシャルワーカーとは、主に病院で、患者やそのご家族が抱えるさまざまな悩みや不安についての相談援助を行う職業を指します。
医療に関する専門知識はもちろん、福祉や介護などの業界にも精通しているため、施設への入居について分からないことは積極的に相談するといいでしょう。
業務上、施設入居に際しての多くの悩みや不安についての相談を受けいているため、それらの経験や知識から適切なアドバイスをしてくれるでしょう。
2. 施設探しを始める
ソーシャルワーカーへの相談などを経て施設探しの方向性が決まったら、実際に施設探しを行いましょう。
施設探しを行う方法としては、例として以下の方法が挙げられます。
- 地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する
- 施設紹介サイトを活用する
地域包括支援センターやケアマネジャーは、介護に関する悩みや不安についての相談援助も行っており、その一環として施設の紹介も行っています。ただ、紹介してもらえる施設は地域にある施設がメインとなるため、地域より外に範囲を広げて探す際には向かないかもしれません。
施設紹介サイトは、賃貸物件のサイトをイメージしてもらうと分かりやすいかと思いますが、介護施設の情報をまとめているサイトであり、費用や必要なサービス、立地といった希望条件から絞り込むことが可能です。また、見学の日程調整なども可能であるため、施設入居をスムーズに進めることができるでしょう。
3. 見学などを行い、入居先の施設を決定する
気になる施設が見つかった場合には見学を行い、施設を絞り込みましょう。
インターネットの情報や施設の資料などでもある程度の情報を得ることはできますが、見学をしなければ得られない情報は多くあります。
例えば、施設の雰囲気や職員の方の対応、食事の味、普段の生活など、見学をすることで実際の生活をより鮮明にイメージすることができるため、入居後のミスマッチを防ぐこともできるでしょう。
可能であれば、実際に入居される方も同行した方が好ましいですが、入院している際には外出許可が下りないこともあるため、その際はご家族の方が見学を行うようにしましょう。
4. 入居の手続きを行う
見学などを行い、入居する施設を決めたら、入居の手続きを行いましょう。
施設が定めている必要書類を提出から行い、施設長や施設職員の方との面談などを経て、施設への入居が認められたら、晴れて入居手続き完了となります。
なお、入居する施設や入居の日時などが決まった際には、必ず入院先のソーシャルワーカーの方などに報告しましょう。
5. 退院のタイミングで施設に入居する
入居の手続きや病院との連携を済ましたら、退院のタイミングで施設に入居しましょう。
病院から施設に移る際に起こりうる問題
病院から施設に移る際には、以下のような問題が起こることも考えられます。
- 高額な薬の処方が困難
- 日常的な医療ケアが必要な場合は受け入れが困難なケースも
それぞれの問題について詳しく解説していきます。
高額な薬の処方が困難
老健(介護老人保健施設)や介護医療院といった施設に移る場合には、高額な薬の処方が困難といった問題があります。
老健や介護医療院では、施設が提供するサービスのなかに一般的な医療処置が包括されていることから、入所中に必要と思われる日常管理的な医療にかかる費用は施設側が負担することになっています。
薬の処方もこれに含まれており、抗認知症剤や抗がん剤といった高額な薬の処方が必要な場合には、その費用の高さから施設側の負担が大きくなり、経営上の事情から処方が困難であるため入所を受け入れないというケースもあるのです。
このように、高額な薬が必要なケースでは、施設種類によっては薬の処方が難しいといった理由から入所の受け入れが困難なこともあるため、把握しておきましょう。
出典:公益社団法人 東京都医師会「高齢の入院患者が施設・在宅へ移行するときの問題点」
日常的に医療ケアが必要な場合は受け入れが困難なケースも
日常的に医療ケアが必要な場合は、入所の受け入れが困難な施設も存在します。
というのも、日常的な医療ケアが必要な場合は、医療ケアを提供可能な看護師や医師の配置が必要ですが、施設種類によって看護師を含む人員配置に関する規定が異なることから、看護師の配置が少ない施設では医療ケアを提供することが困難であるためです。
例えば、重度の要介護者の受け入れが可能な特養も、看護師の配置に関する規定が厳しくなく医療体制が十分とは言えないため、経管管理やストーマの管理、インシュリン注射といった医療行為が必要な場合には入所できないケースもあります。
また、看護師の配置数に問題はなくとも夜間帯の常駐体制がない場合には、夜間の医療行為を受けるのは難しいため、24時間体制の医療行為が必要な方は入所できない可能性が高いため、注意が必要です。
病院からの移行先の候補となる施設
病院からの移行先の候補となる施設としては、以下のような施設種類が挙げられます。
- 老健(介護老人保健施設)
- 介護医療院
- 特養(特別養護老人ホーム)
- 介護付き有料老人ホーム
それぞれの施設種類について詳しく解説していきます。
老健(介護老人保健施設)
老健とは、入院していた高齢者などが在宅復帰を目指す施設です。
在宅への復帰を目的としているため、身体介護や食事の提供はもちろん、専門的なリハビリを受けることができ、また公的な施設であることから、民間施設と比べ費用が安いという特徴を持ちます。
ただし、あくまでも在宅復帰を目的とした施設であるため、ずっと入所していることはできず、原則3~6か月で行われる退所審査にて、「在宅への復帰が可能」と判断された際には施設を退所する必要があります。
いずれは自宅で生活したいという場合には、老健への入所を検討するといいでしょう。
介護医療院
介護医療院は、要介護高齢者のための長期療養・生活のための施設です。
その役割から、身体介護や食事の提供といった生活に必要なサービスの提供はもちろん、長期療養を可能とする充実した医療体制が整備されているという特徴を持ちます。
また、それらの特徴以外にも、地域のボランティアの方がレクリエーションを行うなど、地域の人との交流や生活の場であることが重視されているという一面があります。
退院後も日常的な医療行為が必要な場合には、介護医療院への入所を検討してみるといいでしょう。
特養(特別養護老人ホーム)
特養とは、要介護3以上と比較的重度の要介護者を対象とした公的な介護施設であり、身体介護をはじめ、家事といった生活支援や食事の提供などの手厚いサービスを受けることが可能です。
また、公的な介護施設であることから費用が安いため、サービスの手厚さも相まって入所を希望する方が多く、入所待ちが発生しやすい傾向にあります。
ただ、特養はサービスが手厚く費用も安いですが、医療体制が十分ではない場合が多いことから、入所後に日常的な医療行為を受けるのは難しいと言えるでしょう。
病院からの退院後も医療行為が必要な場合は、入所を考える必要がありそうです。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームの1種であり、介護サービスの提供がある施設を差します。
介護付き有料老人ホームは、介護の手厚さはもちろん、看護師の配置や病院との連携などの医療体制が充実している施設も少なくないため、日常的な医療行為が必要な方でも入居することができるでしょう。
ただ、介護付きを含む有料老人ホームは民間施設であることから、老健や介護医療院といった公的施設よりも費用が高額になってしまう傾向にあるため、その点は注意が必要となります。
医療体制の充実度を重視する方であれば、退院後の入所を検討してみるといいでしょう。
まとめ
本記事では、病院から施設へ移る際にすべきことや移る際に起こり得る問題について解説してきました。
病院から施設へ移る際には、「高額な薬の処方が難しい」「必要な医療行為に対応できない」といった理由から、施設に入居することができない場合もあります。
本人に必要な薬や医療行為なども考慮し、適切な施設を選択するようにしましょう。
病院から施設へ移る際には、まずはソーシャルワーカーに相談するようにしましょう。ソーシャルワーカーは医療はもちろん、介護や福祉にも精通しているため、施設入居に関する悩みや不安を解消してくれるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
病院から施設へ移る際には、「高額な薬の処方が難しい」「必要な医療行為に対応できない」といった理由から、施設に入居できない場合もあるため注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。