親の介護におけるストレスの1つに配偶者との相互理解をあげられます。自分の親だから介護をして当然として、介護を一切手伝わない配偶者や、義親の介護をすべて負担させる配偶者などがいます。
介護そのものも精神的・肉体的に苦痛をともなうので、夫婦間の理解のなさで離婚を意識してしまう方も少なくありません。
この記事では介護離婚の現状とメリットとデメリットのほかに、介護離婚を防ぐ解決策を紹介しています。ぜひ参考にして親の介護を夫婦で理解し合って乗り越えましょう。
親の介護で離婚が増えている
近年熟年離婚が増加しているのをご存知でしょうか。
厚生労働省の令和4年度の「離婚に関する統計」によると、2002年をピークに離婚件数は減少している一方で離婚率は上昇しています。
離婚年齢は依然として20代が多いですが、40代~60代が増加しているのが分かります。
背景には女性の社会進出の影響だけではなく、介護を理由とした離婚があります。平均寿命が長い日本において、介護は先の見えない長い期間になることも珍しくありません。精神的、肉体的に苦痛をともなう介護は夫婦間でのすれ違いを発生させ、離婚に発展してしまう場合もあるのです。
親の介護による離婚を避けるためにも、介護施設の利用の検討をしましょう。ケアスル介護では全国約5万もの施設から、入居相談員がご本人様のニーズに合った施設をご紹介しています。
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親の介護で離婚する理由
親の介護でなぜ離婚に発展するのでしょうか。民間の生命保険会社の調査によると、親の介護の担い手について、男性は「配偶者」、女性は「自分」と答えている割合がもっとも高い結果となっています。
女性の社会進出が進んでいる一方で、女性が介護を担う割合が依然として多いのが実情です。
女性に「家事」「育児」「仕事」だけではなく、介護の負担までかかっています。加えて「親の介護の大変さを配偶者が理解しようとしない」という不満が蓄積していきます。
ほかにも義親との不仲や、配偶者側の兄弟等との関係性も介護離婚に至る理由としてあげられます。
ここからは介護離婚の理由としてあげられる以下の3つの理由についてそれぞれ解説します。
- 配偶者から理解が得られない
- 義親と仲が良くない
- もともと夫婦仲が破たんしていた
1. 配偶者から理解が得られない
介護離婚の理由として最も挙げられるのが、配偶者の理解が得られないケースです。「自分の親の介護に対する意見の相違」と「義親の介護に対する意見の相違」があります。
自分の親の介護に対するすれ違いとして、下記の例が挙げられます。
- 親の介護をするにあたって自宅に呼び寄せたいが、配偶者に同居を断られた
- 自分の親の介護をするために家事の手伝いをお願いしたら断られた
- 親の介護のために仕事を辞めたり、転職したりするのを否定された
義親の介護に対するすれ違いとしては、下記の例が挙げられます。
- 義親の介護をするように言われた
- 義親の介護のために同居を強行された
- 義親の介護に配偶者が専念したために無収入となった。または家事の負担が増えた
どちらも自分側の要求のみで、相手の立場や考えを無視し、そのための話し合いをしていない様子が垣間見えます。
一方的な押し付けで配偶者の理解が得られない状態での介護は、介護者のストレスになり、抑うつなど注意が必要です。
2. 義親と仲が良くない
嫁姑問題と言われているように、介護が始まる前から義親との折り合いが悪い方も多くいます。良く思っていない相手との介護は、より精神的苦痛が強く、うつの危険性が高まります。
そのストレスやうつの発症が離婚を決意するきっかけになります。
たとえ疎遠になっていたとしても、介護の責任は「直系の血族」である子どもが責任を負います。
義親と疎遠になりたくとも、介護の義務は配偶者にあるので、配偶者が介護を引き受けてしまったがためにトラブルになってしまう事例もあります。
義親と不仲の方は、介護が始まる前に介護をどう担っていくかの話し合いが重要です。
3. もともと夫婦仲が破たんしていた
熟年離婚が多い要因には介護のほかに、夫婦関係がすでに破たんしていた場合があります。理由は多々あり、性格の不一致や育児の方向性の違いといった些細な出来事から、不倫や借金などの離婚事由が挙げられます。女性の社会進出が進み、経済的に独立できる女性が増え、離婚まで至るのです。
離婚の手続きや引越しの億劫さから離婚に発展していなかったものが、親の介護をきっかけに離婚するケースもあります。すでに関係性が冷え切っているので、関係の再構築も難しいとされています。
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親の介護を理由に離婚できるか
親の介護がきっかけで離婚を希望した場合、離婚はできるのでしょうか。介護の義務は発生しないのか、自分が不義の離婚になるのか、慰謝料は発生するのかなど不安に感じることは多いです。
結婚をして家族になると、自分の親兄弟とも親族となります。親族関係になった以上は介護の義務も発生すると思う方が多くいます。
しかし、民法の定める介護における扶養義務は「直系の血族」となるので、配偶者に義親の介護をする義務はありません。
とはいえ、夫婦間には相互で扶助する義務があるので、親の介護で配偶者が金銭的・精神的肉体的に負担が掛かっているならば助ける必要があります。
ここからは介護を理由とした離婚が成立する場合について以下の解説をします。
- 条件が揃えば離婚できる
- 合意を得られなければ離婚が出来ないケースも
介護離婚を考えている方はまずは一読ください。
条件が揃えば離婚できる
離婚を希望した際に、どうしたら離婚ができるのでしょうか。離婚をするためには何点か条件があります。
- 夫婦双方の合意
- 離婚事由に該当する
二つの条件が揃えばすぐにでも離婚ができます。その際には財産分与の話や、子どもがいる場合は親権の話し合いが必須です。
例えば親の介護について夫婦間で相互理解がなく、お互いが離婚に応じた際はトラブルなく離婚できます。持ち家や車、親権について意見が別れる場合もありますが、その際は司法書士や弁護士を介すればいいでしょう。
介護にどちらかが合意しない場合でも、配偶者との介護への理解の差で苦痛に感じた場合は協議離婚を申し込めます。協議離婚は市区町村へ協議離婚の書面を提出します。協議離婚は時間がかかり、精神が疲弊してしまう場合もあるので注意が必要です。
双方の合意なくとも離婚事由に該当していれば離婚ができます。
離婚事由
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 一 配偶者に不貞な行為があったとき。 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 (民法770条より)
不倫や配偶者の重度の精神病などは離婚事由に該当しますが、介護意見の不一致による離婚は離婚事由には該当しません。
合意を得られなければ離婚ができないケースも
親の介護における意見の不一致による離婚は離婚事由に該当しないと解説しました。離婚事由に該当しない以上は、配偶者の同意が得られなければ離婚ができません。協議離婚で離婚への話し合いの場を設けられますが、100%離婚できるわけではありません。
なかには話し合いにも応じないケースもあります。その場合は裁判所に間を取り持ってもらう「離婚調停」を申し込む形になります。離婚調停に持ち込むと、家庭裁判所で話し合いが改めて設けられますが、離婚事由に該当しない場合はスムーズな離婚は難しくなります。
また、離婚事由が自分にある場合は離婚ができないパターンもあるので注意しましょう。
親の介護による離婚のメリット・デメリット
親の介護における意見の相違は精神的にとても辛いものです。しかし、離婚をして一時的にストレスから離れられるかもしれませんが、経済的困窮など辛い現実が待っているケースも多いです。ここからは親の介護による離婚のメリットとデメリットを紹介します。一度冷静になって、介護離婚によるメリットとデメリットをよく検討したうえで離婚をするか否か決めることをおすすめします。
もし離婚の意思が固い場合は、デメリットに対する対策を講じておくとよいでしょう。
ここからは以下のメリットとデメリットについて解説します。
- 精神的ストレスから解放されるメリット
- 金銭面や老後の不安があるデメリット
精神ストレスから解放されるメリット
介護を理由とした離婚での最大のメリットは、精神的ストレスから解放される点です。メリットについて「自分の親の介護を事由とした離婚」と「義親の介護を事由とした離婚」の2方面から紹介します。
- 自分の親の介護による離婚のメリット
離婚をすると、親の介護をリラックスして専念できます。配偶者の理解を得られない環境でのストレスから解放されます。
ストレスを感じながらの親の介護は、要介護状態の親にも悪影響です。介護をしてもらう罪悪感や、ストレスから認知症を含む介護状態が悪化してしまう可能性もあります。
- 義親の介護による離婚のメリット
義親の介護によるストレスから解放され、介護うつを回避できるメリットがあります。特にあまり仲が良くない義親の介護を一人で背負い込んだ場合、実の親と違い気を使ったり我慢を強いられる場面が多くなり、ストレスを溜め込み介護うつになる可能性があります。うつが悪化すると最悪自死に至ってしまうケースも。最悪のケースを避けられるメリットがあると言えるでしょう。
金銭面や老後の不安があるデメリット
介護では過度な精神的なストレスには十分注意が必要です。精神的なストレスを避けるために離婚はメリットが大きいといえるでしょう。
一方で介護による離婚のデメリットは何があるのでしょうか。
実は精神的なストレスを除けば介護離婚はデメリットの方が多いのです。配偶者がいなくなると一人で経済面から生活面まで支えなければならないからです。
ここでも「実の親の介護による離婚のデメリット」と「義親の介護による離婚のデメリット」について紹介します。
- 自分の親の介護による離婚のデメリット
離婚してしまうと親の介護とともに経済面や生活の家事もすべて自分で背負うことになります。経済面での負担は想像以上に大きく、こちらもうつの原因としてあげられています。離婚の際は経済的に独立できるように計画を立てましょう。
- 義親の介護による離婚のデメリット
義親の介護は配偶者にとっての義務ではありません。しかし、介護をしている家族の扶助義務は発生するので、場合によっては子どもの理解が得られない、非情だと思われてしまうなど、別のストレスがかかることもあります。
親の介護で離婚をしないために出来ること
介護離婚におけるメリットとデメリットを解説しましたが、理想は実親やや義親の介護での精神的苦痛を除いた上で介護離婚は避けたいものです。
ここからは介護離婚を回避するための以下のポイントを紹介します。
- 配偶者と親の介護について話し合う
- 親族と介護について協力関係を築く
- 介護サービスを利用する
- 介護施設への入所を検討する
配偶者と親の介護について話し合う
まず大事なのは、介護がはじまる前に夫婦間で親の介護について話し合っておくことです。話し合いもなくお互いに介護を押し付けたり、相談なく同居を強行してしまうと、関係性が修復不可能な程こじれてしまいます。話し合いの時にはしっかりと自分の意見を伝え、相手の意見にも耳を傾けましょう。また、話し合いの前に介護サービスや行政の支援策なども調べておくとお互いの妥協点や、解決策を見つけやすいでしょう。
親族と介護について協力関係を築く
介護を夫婦の間だけで解決するとなると、負担が集中し、どちらかに偏ってしまいがちです。介護は1人ではもちろん、2人でも負担が大きく、ストレスの蓄積や疲労から夫婦仲が険悪になります。自分たちの子どもや兄弟、親戚にも介護に協力してもらうことが重要です。
遠方に住んでおり、直接介護に協力を得られない場合は介護サービスを利用するための経済的援助を求めるのもよいのではないでしょうか。扶養の義務は「血族」となるので、援助をする義務があります。
介護サービスを利用する
デイサービスなどの通所介護や、訪問介護や訪問入浴などのサービスを上手に取り入れて介護の負担軽減に積極的に努めましょう。介護サービスにはほかにもショートステイや小規模多機能居宅介護などたくさんの種類があるので、まずはケアマネジャーに相談して、介護者のレスパイトのためのケアプランを立ててもらいましょう。
在宅介護を自分たちだけで完結するとなると、精神的・肉体的に負担がかかります。特に肉体面は子どもである自分たちも衰え始めている時期です。寝たきりの入浴介助や排泄介助はもちろん、認知症の汚物行為や誤飲、徘徊などの危険にも目を配らなければならず、疲労が蓄積してしまいます。
また、介護がはじまる年齢は働き盛りに多く、仕事量と介護の両立が出来ずに離職してしまう方もいます。その結果経済面での不安になり、介護者の介護うつにつながるケースもあります。
そのうえ、介護期間は数年、中には10年以上というケースもある長丁場で、長距離ランナーを目指さなくてはなりません。そのため介護サービスを使わずに介護をすることは非現実的です。どんなサービスがあるのかをしっかり情報収集をして臨みましょう。
介護施設への入所を検討する
介護施設への入所は介護者にも配偶者にも最も負担が少ない方法です。設備が整っており、専門スタッフも常駐しているので、要介護の方にとっても安心の環境とも言えます。
しかし、施設の中には費用が高額で、支払いが困難となって退所してしまう方もいます。年金でまかなえるとされている特別養護老人ホームや介護老人保健施設は、待機人数も多くなかなか入居出来ないのが現状です。
認知症の方専門のグループホームや、高度な医療ケアが受けられる介護医療院、充実した設備の有料老人ホームなど他にも施設の種類は豊富にあります。特徴も大きく違うので、まずは情報収集をして、施設見学もしてみましょう。
介護施設選びに迷ったらまずはケアスル介護に無料相談をおすすめします。ケアスル介護では施設見学の予約から日程調整まで無料で代行してくれます。
施設選びが初めてで不安な方も安心してぴったりの施設探しができます。
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親の介護による離婚は慎重にすすめよう
介護が理由で離婚を希望される方は、心的ストレスや肉体的な負担で疲弊しているのではないでしょうか。終わりの見えない介護はとても辛く、配偶者にも理解を得られなければ孤独も感じてしまいます。しかし、介護離婚にはデメリットも多いのが事実です。できるだけ介護離婚を回避できるよう、介護施設や支援策に頼ることを検討してみてください。
基本的には介護を理由とした離婚で慰謝料は請求できません。しかし、配偶者が自分の親の介護に非協力的であったり、介護を一方的に押し付ける、介護サービスを利用しないなどの家庭内暴力行為と認められる場合は慰謝料が請求できます。詳しくはこちらをご覧ください。
離婚調停を申し立てた方が自分ではなく配偶者である場合、可能性はゼロとはいえませんが限りなく低いでしょう。調停を申し込んだ時点で離婚への決意が固く、夫婦関係が破たんしている可能性が高いからです。しかし、調停を申し立てたのが自分である場合は再構築の希望はあります。しかし配偶者の親の介護を拒否して離婚調停を申請した事実には変わりません。夫婦間に溝が出来ている場合があり、最終的に離婚となる可能性もあります。詳しくはこちらをご覧ください。