• 認知症
  • 【公開日】2023-02-17
  • 【更新日】2023-02-16

認知症で忘れる順番は?一気に進む原因や進行を抑える対策も紹介

認知症で忘れる順番は?一気に進む原因や進行を抑える対策も紹介

認知症と診断された方の家族は、いつか自分のことも忘れてわからなくなってしまうのかと不安に感じているはずです。今後どのように記憶をなくしてしまうのか、家族が不安に思っているのではないでしょうか。

そこで本記事では、認知症と診断された方の家族に向けて、認知症で忘れる順番(認知症の進行によって障害される記憶の順番)を解説します。認知症が一気に進む原因や進行を抑えるための対策についても紹介していきますので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター
所有資格:日本内科学会総合内科専門医
専門分野:アレルギー、神経内科, 消化器内科, , 呼吸器内科, 総合内科など

米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。 主な研究内容・論文として「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」がある。 専門分野はアレルギー・膠原病内科, 神経内科, 消化器内科, 血液内科, 肝胆膵内科, 呼吸器内科, 総合内科, 感染症科, 循環器内科, 腎臓内科, 内分泌代謝科, 糖尿病内科, 内科など多岐に渡る。詳しくはこちら

所有資格:一般社団法人 薬機法医療法規格協会 薬機法医療法遵守広告代理店認証
専門分野:化粧品や健康食品における広告表現
職業: 薬機法管理者

2003年からヘルスケア情報サービス事業・治験支援事業を行っている企業にて、主にDTC広告の企画営業に携わる。 4年ほど企画営業を担当後、自社のヘルスケアサイトの運営、製薬会社・健康食品メーカーの記事広告の制作を行うが、この時に薬機法(薬事法)についての知識を学び、広告記事の精査を経験。 2017年退社。現在は臨床研究の支援を行う企業にて研究事務局支援に携わる。東京在住。 現在は本業の傍ら化粧品や健康食品の企業の広告等の薬機法チェックを行う。詳しくはこちら

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認知症の記憶障害で忘れる順番とは?

認知症の記憶障害で忘れる順番には、個人差が生じる可能性があります。本記事では、認知機能の一つである記憶が、認知症の進行によってどのような順番で障害が進むかについて紹介します。

障害される記憶の順番をまとめると次のとおりです(アルツハイマー型認知症の場合)。

  1. 近時記憶(エピソード記憶)
  2. 即時記憶
  3. 意味記憶(知識)
  4. 手続き記憶(技能)

それぞれの記憶がどのような機能を持っているのかについても、併せて確認していきましょう。

1. 近時記憶(エピソード記憶)

認知症の初期は、近時記憶(エピソード記憶)の障害が特に目立ちます。近時記憶とは、医学的には「刺激を数分から数日程度刺激を貯蔵して再生する機能」と説明されます。数日程度刺激を貯蔵するとあるため、通常は数分から数日で忘れる記憶といえるでしょう。また、近時記憶の内容は出来事(エピソード)である場合が多いため、出来事記憶(エピソード記憶)とも分類されます。

近時記憶(エピソード記憶)で記憶する出来事の具体例は次のとおりです。

  • 今朝、朝ごはんを食べか
  • 今日最初に電車に乗った駅
  • 5分前に誰かに話していた内容
  • 5分前に電話していた相手の名前
  • 財布や鍵などの物を置いた場所

いずれも通常は数分から数日間は覚えている出来事ですが、認知症になると思い出せないケースが増えてきます。

2. 即時記憶

認知症が進行すると、即時記憶が障害されます。即時記憶は刺激を数秒程度把持してすぐに再生する機能です。医師が「5、6、7、8、9」のように数字を順唱したり、「犬、猫、馬」などの単語を提示したりしたあと、間違いなく言えるかといったテストで評価できます。

即時記憶が障害されると、情報を十分に脳に入力できていません。そのため、「今何をしていたのか」「今何を話したのか」「何を話されたのか」を理解しにくくなります。今話していた内容を何回も聞くようになると、即時記憶が障害されていると評価できるかもしれません。

3. 遠隔記憶(エピソード記憶)

認知症が進行すると、遠隔記憶(エピソード記憶)も障害されます。遠隔記憶も近時記憶と同様に主に出来事(エピソード)を記憶する機能ですが、近時記憶よりも長い期間貯蔵して再生する機能です。

遠隔記憶は、例えば次のような出来事を記憶します。

  • 5年前に沖縄に旅行に行った
  • 10年前に子どもが亡くなった
  • 自分がどのような職業に就いていたか
  • 自分には子どもがいるか
  • 自分は結婚をしているか
  • 高校を卒業して東京の大学で4年間過ごした

障害は現在から近い順に障害されるのが一般的です。自分自身の人生史を近い順に忘れていくため、周囲の方からすると、認知症の方が昔の世界に戻っていっているように思える点が特徴といえます。

例えば、すでに亡くなった親族についても亡くなった事実を忘れてしまい、現在も生きているかのように認識している場合があります。さらには配偶者や子がいる事実も忘れてしまう場合があり、周囲の方はショックを受ける場合があるのです。

4. 意味記憶(知識)

アルツハイマー型認知症では、即時記憶や遠隔記憶が障害された頃に意味記憶も障害される場合があります。意味記憶とは、物や言葉の意味など「知識」に相当する記憶機能です。

次のような知識は意味記憶に分類されます。

  • 地球は1年で太陽のまわりを一周する
  • オタマジャクシは成長するとカエルになる
  • 季節は「春」「夏」「秋」「冬」の順番である
  • 日本の首都は東京

もっとも、上記の知識のうち一部は覚えている場合があります。「オタマジャクシは成長するとカエルになる」を例にとると、カエルのことはわかってもその前のオタマジャクシの名前が思い出せない場合があるのです。

意味記憶に障害を受けると、会話において「何だっけアレ、カエルが成長する前のやつ……」といったように、「アレ」とか「ソレ」などの指示語をよく使うようになります。

比較的進行していない場合には「オタマジャクシだよ」と返されると名前だけはわかるものの、さらに進行するとオタマジャクシの名前すら忘れ、何なのかわからなくなってしまいます。

5. 手続き記憶(技能)

認知症の進行や原因疾患によっては、手続き記憶(技能)も障害される場合があります。手続き記憶とは技能に関する記憶のことで、例を挙げると次のとおりです。

  • ブラインドタッチ
  • フリック入力
  • 自転車の乗り方
  • 泳ぎ方
  • 着替え方
  • 車の運転方法
  • 楽器の演奏方法
  • けん玉のコツ

からだで覚えるものと考えるとわかりやすいですが、実際には大まかな動きは大脳基底核、細かい動きの調整は小脳に記憶されています。

手続き記憶はこれまで紹介してきた記憶と比べて保たれます。そのため、日常生活を保つうえで重要な記憶です。

参照:『一般社団法人 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」

認知症の見当識障害で忘れる順番とは?

認知症では、紹介してきた記憶障害だけでなく、見当識障害でも時間や場所、人がわからなくなります。見当識とは、時間や場所、人などを把握し、総合的に判断して自身が置かれている現在の状況を認識・理解する能力です。例えば、「今日は月曜日だから病院に行かなければならない」と状況を認識するのも見当識といえます。

見当識障害で忘れる(わからなくなる)順番は、一般的に次のとおりです。

  1. 時間
  2. 場所

それぞれ具体的に確認していきましょう。

1. 時間

見当識障害では、一般的にまず時間がわからなくなってしまいます。具体的な例は次のとおりです。

  • 今日が何曜日かわからない
  • 今日が何月何日かわからない
  • 今、季節が何なのかわからない

今日が何曜日なのか、何日なのかは認知症でなくても他人に聞く場合があるでしょう。

ただし認知症の場合、例えば月曜日に外出する予定だったのにその予定を忘れてしまう場合があります。また、季節については季節に合った服装を選べないといった行動が生じます。

見当識を失ってしまわないためにも、ケアにあたる方が毎日一緒にカレンダーを見て見当識を刺激するのが重要です。日めくりカレンダーを利用するのもよいでしょう。規則正しい生活をするのも、見当識を保つために有効といえます。

2. 場所

時間の見当識障害に続き、場所の見当識障害が見られるようになります。場所の見当識障害は場所がわからなくなる障害であり、具体例は次のとおりです。

  • 通い慣れているはずのスーパーに行けなくなる・帰ってこられなくなる
  • 友人の家にいるのに自宅だと間違える
  • 病院にいるのに病院にいると認識できない
  • 家の中のトイレやお風呂の場所がわからない

場所の見当識障害は徘徊(ひとり歩き)につながるため、ケアにあたる方はできる限り目を離さないように注意しましょう。また、名前や連絡先がわかる持ち物を持たせるほか、地域の方に一人で歩いていたら連絡してほしいと伝えるのも対策の一つです。

3. 人

見当識障害が進行すると、人がわからなくなってしまいます。具体的には次のとおりです。

  • 人の名前がわからなくなる
  • 自分との関係がわからなくなる
  • 自分が誰なのかわからなくなる
  • 息子を孫だと勘違いする
  • 息子を夫だと勘違いする

人の見当識障害については、写真を見ながらその方と会話をするのがリハビリになるといわれています。ただし、わからなくなってしまうのが怖いために多くの質問をしたり、強めに質問を投げかけたりしてしまう場合もあるようです。

人がわからなくなるのは、想像以上の不安を本人に与えます。認知症の方に対してストレスにならないよう、本人のペースに合わせながら対応していきましょう。

認知症が一気に進む原因とは?

認知症は一般的に緩やかに進行すると考えられていますが、場合によっては一気に進んでしまうケースもあります。認知症が一気に進む原因として挙げられるのは次のとおりです。

  • 考えて行動する機会の減少
  • ストレス過多

基本的には、不安や自信喪失などがストレスにつながり、周辺症状(BPSD:行動・心理症状)が発症・悪化していきます。

周囲の方からすれば、認知症で「自分のことすらわからなくなってしまう」のは怖いかもしれません。紹介する内容を把握し、少しでも進行を抑えられるように意識してみるとよいでしょう。

考えて行動する機会の減少

考えて行動する機会が減少すると、自分自身が脳を刺激しながら考えて、判断する能力が衰えやすくなります。周囲の方がサポートをしすぎてしまうケースも、考えて行動する機会の減少につながります。

認知症が進行しても、手続き記憶(技能)は比較的保たれます。そのため、日常生活においても手続き記憶(技能)を活用できる何らかの役割を任せてみるのもよいでしょう。

ストレス過多

認知症の方は今まではできていた作業もできなくなるなど、ただでさえストレスを感じやすい状況にあります。長期的なストレスは血管を収縮させ、脳への血流が減少し大脳(海馬を含む)を萎縮させてしまい、認知症の進行につながります。ケアをする方が認知症の方の言動に対して無理に否定したり叱ったりすると、余計にストレスを与えてしまうため、配慮した対応を行わなければなりません。

認知症を進行させないための対策

それでは、認知症を進行させないためにはどうすればよいのでしょうか。認知症を治すための治療法は現在のところ確立していませんが、進行を抑えるためにできる対策はあります。

そこで、ここでは家庭でもできる非薬物療法を一部紹介します。

  • バランスのよい食生活
  • 円滑な人間関係を保つ
  • 役割を持ってもらう
  • 適度な運動習慣

ケアにあたる方は対策を知っておき、ぜひ実践してください。

バランスのよい食生活

まずは、たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンをバランスのよく含んだ食生活を心がけましょう

バランスのよい食生活をすると、脳に必要な栄養素を補えます。脳に必要な栄養素とは次のとおりです。青魚にはEPAやDHAが豊富に含まれています。

  • EPA
  • DHA
  • オメガ3脂肪酸
  • 葉酸
  • ビタミンA
  • ビタミンC
  • ビタミンE
  • ファイトケミカル
  • ミネラル

また、地中海食はアルツハイマー型のリスクを抑える効果も期待できるといわれています。一方で、塩分や糖分、マーガリンやショートニングの摂取は認知症の発症及び進行を早めると言われているため、控えるようにしましょう。

円滑な人間関係を保つ

認知症の進行によって、社交的であった方もふさぎ込んでしまう場合があります。地域や友人など、人とのつながりがなくなるとその分だけ脳への刺激が減り、認知症の進行を早めてしまうきっかけになりかねません。

そのため、円滑な人間関係を保ったり、より人と接する時間を確保したりするのもよいでしょう。明るいコミュニケーションによって、脳の機能低下を抑えられる可能性があります。

役割を持ってもらう

認知症の方をケアするにあたって、周囲の方が何もかもやってしまうのは控えるべきです。何もやらなくなってしまうと心身の機能が低下し、生活の質や充実度が低下してしまいます。

そのため、認知症の方には一定程度の役割を持ってもらうようにしましょう。例えば次のとおりです。

  • 入浴や更衣、調理、洗濯
  • 塗り絵や編み物
  • 運動機能

役割を持たせると継続して体を動かせるうえに、できることが増えれば本人の自信にもつながります。

適度な運動習慣

家の中に閉じこもってしまったり、寝たきりになったりするのは認知症が悪化する原因になってしまいます。運動機能が低下すると転倒や骨折にもつながるかもしれません。

そのため、運動機能を低下させないように適度な運動習慣が求められます。

  • 有酸素運動
  • 筋力強化訓練
  • 平衡感覚訓練

有酸素運動をすると血液の流れが良くなり、脳への血液流入も促進されます。週に2~4回、1日につき20~30分のウォーキングをするのが理想的とはされていますが、本人にとって無理のない範囲で運動習慣を付けるとよいでしょう。

認知症で忘れる順番を知ってできる限りの対策をしましょう

認知症で忘れる順番(障害される記憶の順番)は、数分前や数日前の出来事(エピソード)から始まり、進行に伴って過去を遡るように忘れていくのが一般的です。

そのうえで、時間(曜日・日付・季節)や場所、人の見当識障害も進んでいきます。

ただし、認知症で忘れる順番は認知症の原因となっている疾患(病気)やさまざまな要因が関係しています。障害される記憶の順番などは異なる可能性もあるため注意しておきましょう。

認知症を進行させないためには、バランスのよい食生活や円滑な人間関係、適度な運動習慣などが大切です。医師と相談しながら、適切な対処方法を実践する必要があります。

認知症に対する理解を深めつつ、医師と相談のうえできる限りの対策をしましょう。

認知症で忘れる順番は?

認知症の進行に伴い、数分前や数日前の出来事(エピソード)から忘れ、進行すると記憶が過去に遡るように近い順から忘れてしまうのが一般的です。周囲の方からすると、認知症の方が昔の世界に戻っていっているようにも思えます。さらに、記憶障害に引き続いて時間→場所→人の順で忘れる見当識障害が進むことも少なくありません。詳しくはこちらをご覧ください。

認知症が進行して忘れられてしまうのを避けたいです。対策はありますか?

医師と相談しながら治療を進めることになりますが、家庭でできることとしては、バランスのよい食生活をすること、円滑な人間関係を保つこと、役割を持ってもらうこと、適度な運動習慣を維持することなどが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。

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