• 認知症
  • 【公開日】2023-02-27
  • 【更新日】2023-03-28

認知症で一人暮らしても大丈夫?トラブルへの対処法とは?

認知症で一人暮らしても大丈夫?トラブルへの対処法とは?

近年では、高齢者の一人暮らし世帯も増加しつつあります。そんな中、認知症の家族が一人暮らしをしていたり、一人暮らしをしていた家族が認知症になったりするケースも少なくありません。

認知症になってしまった時、どのようなトラブルが考えられるのか、どのようなサービスを受けられるのか、悩む方も多くいることでしょう。

この記事では、認知症一人暮らしで起きやすいトラブル認知症の方を介護するうえで受けられるサービスなどを解説します。一人暮らしに限界を感じた時の対応法なども記載されているため、ぜひ最後までご覧ください。

医療ライター
専門分野:医療・介護系全般
職業: 医療ライター

大学卒業後、医療専門新聞社である株式会社薬事日報社に入社。 約13年間、新聞記者として厚生日比谷クラブを始めとする記者クラブに所属し、厚生労働省や日本医師会、日本薬剤師会、医療現場、大学、関連学会などを取材して歩く。 2013年にフリーランスの医療ライターとして独立。独立後は医療・介護現場を幅広く取材しつつ新聞や雑誌、書籍、ウェブサイトなどで執筆。 これまで取材してきた医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は500人を超える。主な執筆媒体は「プレジデント」「ドクターズマガジン」「マイナビメディカルサポネット」「We介護」など。 共著は「在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期」(世界文化社)。現在、自分自身も2人の娘を育てながら認知症の母を介護中。詳しくはこちら

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認知症の一人暮らしで起こる問題7つ

まわりに頼れる家族がいない、住み慣れた家から離れたくないなど、一人暮らしの理由はさまざまです。不安に感じるかもしれませんが、認知症の方であっても、一人暮らしはできます。認知症の方が、どのような想いでいるのか、一人暮らしを続けたいのかを確認し、気持ちを尊重していきましょう。

しかし、以下の問題が起こる可能性があるため、注意しなくてはいけません。

  • 火の不始末による火事が起こる
  • 薬の管理ができなくなる
  • 食生活が乱れて健康面に悪影響が出る
  • 金銭の管理ができなくなる
  • お手洗いでのトラブルが起きる
  • 外出時での危険性が高くなる
  • ご近所トラブルが起きてしまう

それぞれについて解説します。

火の不始末による火事が起こる

認知症になると、物忘れが多くなるため、火の不始末による火事が起きる可能性があります。寝タバコやガスコンロの消し忘れなどが代表的です。高齢者に多い火事の原因はタバコの不始末です。タバコは、健康面も考え、早くから禁煙を促しましょう。

しかし、タバコの禁煙は難しく、本人の力だけでは中々達成できません。そのような場合は、医師に禁煙を促してもらったり、民間企業の見守りサービスを利用したりしましょう。見守りサービスにはWebカメラで家族の様子を確認できるタイプもあります。

ガスコンロは、自動で消えるものを設置するなど工夫をしましょう。火災報知器を設置したり、難燃性のある絨毯やカーテンに変えたりするなど、環境面の支援も可能です。

参照:『公益社団法人 認知症の人と家族の会|No.29–火不始末で在宅が困難に-「先手を打つ」が有効

薬の管理ができなくなる

認知症になると、薬を飲んだかどうかわからなくなる方が多いです。必要な薬の飲み忘れや、過剰に飲む可能性があり、注意が必要です。

糖尿病や血圧に関する薬は、飲みすぎたり、飲み忘れたりすると、低血糖や意識障害を起こす危険性があります。万が一、倒れてしまった場合、一人暮らしだと救助が遅れるかもしれません。

薬の飲み忘れをしないために、薬用カレンダーを用意する方法があります。また、電話などで飲むタイミングを教えてあげる方法も効果的です。

食生活が乱れて健康面に悪影響が出る

認知症の方は、認知機能や意欲の低下によって、食生活が乱れてしまう可能性があります。一人暮らしだと食事を食べ忘れてしまったり、栄養が偏ってしまったりするケースも少なくはありません。栄養バランスが乱れると、認知症の症状が悪化する恐れがあるため注意が必要です。

また、食生活が乱れると、フレイルと呼ばれる心身の機能が低下した状態になる危険性もあります。フレイルを予防するためには、痩せすぎを防ぐ食事が重要です。タンパク質を中心にバランスのよい食事が取れるよう、サポートする必要があります。

金銭の管理ができなくなる

認知症の方は、判断力が低下するため、お金の管理が難しくなります。また、買い物自体はできても、月額で支払うものの管理や年金の管理などができない場合もあります。

そのほか、既に買ったものを再び購入したり、銀行で引き出す時にトラブルが起きたりするケースも多いです。銀行でトラブルが起きると、口座が凍結する場合もあるため注意しましょう。また、詐欺の被害に遭うケースも少なくはありません。

メモを用意して買い物をする方法や定期的に付き添って買い物に行く方法が効果的です。買い物前に、買うものリストを用意するのもよいでしょう。

お手洗いでのトラブルが起きる

認知症の症状により、排泄の失敗が増える可能性があります。例えば、部屋の中で粗相をしてしまったり、粗相したものに触れてしまったりと不衛生な行動を取ってしまうかもしれません。

身体機能の低下および記憶障害、見当識障害などが原因でこのような排泄障害が起こります。トイレ周辺の環境を整えたり、トイレの表示をわかりやすくしたりすると、うまく排泄できるかもしれません。

排泄はデリケートな話題です。本人の尊厳を守りながら、サポートする必要があります。

外出時での危険性が高くなる

認知症の方は、認知機能障害により、ふらっと出かける機会が増えます。外出時のトラブルが増え、迷子になってしまったり、うまく歩けず転んで怪我をしてしまったりする可能性があります

近所の方と協力関係を築けると、万が一の時に助けてもらえるかもしれません。また、「家にいるだろう時間帯」に電話をかけるなど、ちょっとしたサポートも大切です。

ご近所トラブルが起きてしまう

認知症の症状が見られる場合、ご近所の方とトラブルが起きてしまう恐れもあります

例えば、物盗られ妄想により近所の方を疑ったり、ゴミの日が分からず違う曜日に捨ててしまったりするかもしれません。また、大切な約束を忘れてしまったために、大きく揉めてしまう可能性もあります。

これらは、被害妄想、記憶の混乱、認知機能の低下などが原因で引き起こされます。

トラブルが起きてしまう前に、近所の方々に状況を予め説明することが大切です。また、地域包括支援センターや地域の民生委員に見守りをお願いしてもよいでしょう。

認知症で一人暮らしの方との向き合い方

認知症で一人暮らしをしている家族との向き合い方は、とても難しく、悩みがつきません。離れて暮らしていると、「どのように過ごしているのかわかりにくい」「どう対応したらよいのかわからない」と悩む方も多いでしょう。

認知症の方と向き合うには以下の3つが非常に重要です

  • 認知症についての正しい知識をもつ
  • 認知症に関する相談先を調べておく
  • 支援制度を調べておく

どうしてこれらが重要なのか、それぞれについて解説します。

認知症についての正しい知識をもつ

認知症がどういった症状をもつ病気なのかを学び、正しい知識を得ることは、認知症の方と向き合ううえで大切な一歩です。認知症にはどういう症状があるのかを知らないと適切な対応が行えません。

認知症により脳の細胞がダメージを受けると、以下のような症状が現れます。

  • もの忘れが多くなる
  • 理解力や判断力が低下する
  • 時間や場所、人がわからなくなる
  • 仕事や家事ができなくなる
  • 言葉がわからない、出てこなくなる
  • 服を着れない、スプーンの使い方がわからない
  • 右もしくは左どちらかのものを認識できない

上記の症状が認知症による直接的な症状です。この症状に加え、性格や心理状況が原因となって起きるものもあります。代表的なものが、ものとられ妄想や徘徊、幻視です。精神的に不安定になると、症状が悪化し、徘徊などの行動が増えてしまう可能性が高くなります。

このような認知症の基礎知識や情報を家族で共有すると、より本人の気持ちと向き合いやすくなるでしょう。

参照:『認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス – 厚生労働省

認知症に関する相談先を調べておく

認知症について悩んだ時や認知症の家族との向き合い方がわからなくなった時のために、相談する場所を予め調べておくと安心です。専門職の方に相談した結果、適切な対応や今後の展望を教えてもらえるかもしれません。

具体的には、次のような相談先があります。

  • かかりつけ医師やもの忘れ外来
  • 市区町村での相談窓口
  • 地域包括支援センター
  • デイサービス
  • 認知症の電話相談
  • 認知症サポーター
  • 認知症カフェ

認知症の方が一人暮らしをするのは、限界があります。症状が進行すると、危険度が高く、見過ごせない場面も増えてくるでしょう。これからどのように過ごしたらいいかをあらかじめ相談することが大切です。

認知症の方やご家族がお互いに辛い思いや不安を解消できずにいるケースが多くあります。そのような悩みや問題を解決するためにも早めの相談が重要です。

参照:『厚生労働省|認知症サポーター

参照:『公益社団法人|認知症の人と家族の会

支援制度を調べておく

介護保険や日常生活自立支援事業など、認知症の方が利用できる支援制度も存在します

介護保険は、高齢者の介護を社会で支える仕組みとして取り入れられました。介護認定を受け、本人に必要なサービス量を判定したうえで利用が可能であり、訪問介護や通所介護、短期入所などの介護保険サービスを利用できます。訪問介護では、一人では難しい家事をサポートする「生活援助」、排泄や食事介助など身の回りのお世話をする「身体介助」などを受けられます。

また、日常生活自立支援事業の利用も検討しましょう。認知症の方や知的障害者、精神障害者など判断力に不安がある方が、地域で自立した生活を送れるように援助を行う支援サービスです。社会福祉協議会に利用を申請すると、定期的な訪問や日常生活費の管理などを行ってもらえます。

認知症一人暮らしは、たくさんの不安を抱えてしまいますが、支援制度の活用は、本人及び家族の精神的な負担軽減につながります。興味のある方は、社会福祉協議会に相談してみましょう。

参照:『厚生労働省|介護保険制度の概要

参照:『厚生労働省|日常生活自立支援事業

参照:『社会福祉法人|ふれあいネットワーク 全国社会福祉協議会

認知症でも入所できる施設が知りたいという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護なら、入居相談員にその場で条件に合った施設を教えてもらうことができるためご希望に沿った施設探しが可能です。

「プロに相談したい」という方は、ご気軽に無料相談を活用ください。

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認知症一人暮らしで受けられるサービス

認知症の方が一人で生活するには、適切なサービスの利用が非常に重要です。介護保険で受けられるものや地方自治体で運営しているサービスなどがあります。利用する前に地域包括支援センターに相談すると、どのような制度が利用できるのか、利用するにはどうしたらよいのかを把握できます。

具体的に、認知症の方が一人暮らしで受けられるサービスは以下の通りです。

  • 介護サービス
  • 地方自治体の支援サービス

それぞれについて具体的に解説していきます。

介護サービス

介護サービスは、介護保険で受けられるサービスです。

具体的には次のようなサービスがあります。

訪問介護(ホームヘルパー) 認知症の方の自宅を訪問し、身体介護と生活支援をしてくれるサービス
通所介護(デイサービス)
  • 介護施設などを日帰りで利用できるサービス
  • 日常生活の支援や食事・入浴などのサービスを受けられる
短期入所(ショートステイ)
  • 介護施設などに短期間宿泊できるサービス
  • 入浴や食事の支援、機能訓練のサービスを受けられる
  • 心身機能の回復や介護家族の負担を軽減が期待できる
訪問入浴介護 ​​看護職員と介護職員が利用者の自宅で入浴介護を行うサービス
​​定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 24時間365日必要なサービスを必要なタイミングで利用できるサービス
  • 定期的な巡回や随時通報への対応など、利用者の心身の状況に応じて、サービスが提供される
  • 介護と看護の一体的なサービス提供を受けられる

介護サービスを利用すると家族が介護できない環境でも、見守りや適切なサポートを受けられるため安心です。

参照:『厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索 – 公表されている介護サービスについて

地方自治体の支援サービス

地方自治体では、地域包括支援センターが力強い存在です。地域包括支援センターは、住み慣れた地域で暮らしを続けられるよう自治体と協力して町をつくっています。相談援助や地域の支援体制づくり、また、介護予防に関する援助など、包括的に支援してもらえます。

さまざまなサービスや制度を紹介してくれるため、疑問点や不安感がある方は、相談にいくと解決できるかもしれません。

また、地域によっては、市町村特別給付金など、在宅生活に必要な支援が提供されています。認知症の方がいる家庭の負担軽減を図る制度です。このような支援サービスが自治体や市町村ごとにあるため、事前に調べておきましょう。

参照:『厚生労働省|市町村による新しい地域づくりの推進(生活支援・介護予防の充実)

参照:『厚生労働省|各地の取組

参照:『社会福祉法人|ふれあいネットワーク 全国社会福祉協議会

参照:『厚生労働省|地域包括ケアシステム

認知症一人暮らし以外の選択肢

現在、認知症の方が一人で暮らせていたとしても、心配や悩み事は尽きません。地域の方に協力してもらったり、サービスを受けたりしても、中々安心できない方も多いと思います。家族が同居できない場合、安心を得るためには施設に入所するという選択肢もあります

本人、家族ともに施設入所に抵抗を感じるかもしれません。しかし、一人暮らしにはどうしても危険がつきまといます。危険な目に遭う前に話し合いをしていきましょう。

認知症の方が利用できる施設は次の通りです。

  • 特養(特別養護老人ホーム)
  • グループホーム
  • 有料老人ホーム

それぞれについて解説します。

特養(特別養護老人ホーム)

特養は、要介護3以上の方が入居できる施設であり、要介護の重い方を中心に受け入れを行っています。入居する施設によって費用は異なりますが、比較的料金が安いため人気があります。ほとんどの施設で看取りを行っており、終身利用ができる点もメリットの一つです。その人気の高さから、入所には時間がかかる場合が多いため、注意しましょう。

参照:『厚生労働省|どんなサービスがあるの? – 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

グループホーム

グループホームは、認知症を発症した方のみが入居できる施設であり、認知症に特化した日常生活の支援を受けられます。要支援2以上の方が入居できますが、集団生活が難しい方の場合、入居を断られるかもしれません。

グループホームでは、5〜9名程度の少人数で生活するユニット型を採用しています。認知症の方は環境や人の変化に弱い一面を持っていますが、ユニット型では、家庭的な環境や顔馴染みの関係を構築しやすく、変化も少ないため、認知症の症状緩和が期待できます。

参照:『公益社団法人|日本認知症グループホーム協会 – グループホームとは?

有料老人ホーム

有料老人ホームとは、食事・介護・家事・健康管理のうち、いずれかのサービスを1つ以上提供している施設です。また、有料老人ホームには種類があり、介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・健康型有料老人ホームの3つに分類されます。

有料老人ホームは、自立した方向けのものから要介護の方に向けたものまで、さまざまな施設があり、その方に合う施設を探す必要があります。

介護付有料老人ホームであれば、医療ケアなども受けられるため、万が一の時に安心です。介護付有料老人ホームは、要介護1以上から入居ができます。そのほかの条件は施設によって異なるため、事前に確認しましょう。

参照:『厚生労働省|有料老人ホームの概要

施設への入所を検討しているという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護なら、見学予約から日程調整まで無料で代行しているためスムーズな施設探しが可能です。

「まずは相談したい」という方は、ご気軽に無料相談を活用ください。

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認知症の一人暮らしを支えるために家族で向き合おう!

認知症の方でも一人暮らしができます。しかし、認知機能の低下により、さまざまな危険がつきまといます。

危険な目に遭う前に認知症の方でも入居できる施設を探したり、地域包括支援センターに相談したりしましょう。

認知症の方の意思を尊重しつつ、双方が安心できるよう、向き合う姿勢が大切です。まずは、一人暮らしについてどう考えているのか、今後どうしていきたいのか、話し合いから始めてはいかがでしょうか。きっといい方法が見つかるはずです。

認知症の方でも一人暮らしできる?

認知症でも一人暮らしは可能です。介護サービスや地方自治体の支援サービス、民間の家事代行サービス、見守りサービスなどを利用できます。認知症の方が安心して一人暮らしを続けるためには、安心できる環境づくりが重要です。詳しくはこちらをご覧ください。

認知症の方が一人暮らしをしている場合、家族はどう対応したらいい?

本人が危険な目に遭わないよう、各種サービスを利用し、環境を整えていきましょう。しかし、一人暮らしの場合、火の不始末や迷子などの不安を完全には払拭できません。どうしても心配な場合は、介護施設への入所を検討していきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

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