認知症の方から、頻繁に電話がかかってくる場合はありませんか?
時間に余裕があるときは相手ができても、仕事中や移動中などは困りますよね。
認知症の方が、なぜ頻繁に電話をするのか?
この記事では、その原因と対策方法などについて解説します。同じ経験をした方の話をもとにしているため、きっと役に立つでしょう。
認知症の方の携帯電話は取り上げるべき?
携帯電話の操作が可能な認知症の方は、認知症になる前から使用していたと考えられます。
他者と自分をつなぐ大切な連絡ツールだった可能性もあるため、それが突然手元から無くなったらパニックになる場合もあるでしょう。
パニックから他の周辺症状が出現し、他者に迷惑をかけたり命の危険に合ったりする可能性もあり得ます。
したがって、認知症の方から携帯電話を取り上げることは退所両方に過ぎず、根本的な解決とはなりません。
認知症の方が頻繁に電話をかけてしまう理由とは?
認知症の方が頻繁に電話をかけてしまう理由はさまざまですが、誰かに何かを話したかったり伝えたかったりする場合がほとんどです。
電話は、もともとそのようなツールの道具なため、認知症の方も元気なころからそう使っていました。
それでは、認知症の方は一体何を訴えたいのでしょうか。
自分が電話をかけたのを忘れている
認知症の症状に、最近の出来事を忘れてしまう短期記憶障害があります。認知症の方が何度も電話してくるのは、嫌がらせをしたい訳ではありません。
前に伝えているのを忘れて、自分が伝えたい内容を伝えているだけなのです。聴いている方は「はぁ?」と思う話でも、伝えている方は必死。
咎めたり叱ったりするような態度で対応はしないでください。叱られた事実は忘れても、モヤモヤが残って周辺症状が強くなってしまう可能性があります。
自分の今の状況に混乱がある
認知症になると、今まで当たり前にできていた行動が急にできなくなる場合も多く見られます。
やり方がわからない・自分がどうしたらよいかわからないと、混乱も少なくありません。
もしかすると、今置かれている状況を把握できず、不安になって電話をかけてきた可能性もあります。
また、認知症の種類や段階によっては症状がまだらに出現するため、現実を理解できる瞬間になったとき、自分の状況にショックを受け電話をかけてくる場合も考えられるのです。
自分の将来に対して不安がある
自分の置かれている状況や過去を思い出せず、漠然とした不安を抱えている可能性があります。
特に認知症の初期の場合は、物忘れがひどかったり何だかおかしいと感じたりするなど、自分が自分ではなくなっていく感覚を感じる場合もあるようです。
- 排泄を失敗したのに片づけ方が分からない
- 冷蔵庫の中に同じものがたくさんある
- 何度も同じ内容の話を言っているような気がする
このような状況に、自分は将来どうなってしまうのだろうと恐怖を感じ、それを解消させるために電話をかける場合も考えられます。
認知症状による妄想が広がっている
認知症には、中核症状と周辺症状があり、周辺症状とは一昔前には問題行動と呼ばれていた症状を指しています。
妄想は周辺症状による症状で、誰かに金を取られた・誰かが嫌がらせをしてくるなどの被害妄想が主です。
そのような現実はなくても、認知症の方は本気でそうだと思っているため、その被害を訴えたくて電話をかけてくる場合があります。
なかには、警察や救急・消防隊に通報してしまう場合も少なくありません。
認知症の方が頻繁に電話をかけてこないようにする対策
認知症の方が頻繁に電話をかけてくるのは、認知症の症状によるものであり、仕方ない部分もあります。
しかし、電話をかけてこられた方は、たまったものではありません。こうも頻繁に電話をかけられたら、つい感情的になってしまう場合もあるでしょう。
認知症の方・対応する方、双方にとって少しでも穏やかな生活になるように、対策案を紹介します。
電話をかけてくる原因を探る
認知症の方は、自分の訴えや不安などがあると繰り返し確認する場合があります。
- 財布がなくなった
- 朝ごはんを食べていない
- 役所からのハガキをどうしてよいか分からない
認知症を患っているからと言っても、その方なりに理由があるのです。
病気のため相手にしなくてもよいと放っておくと、電話の回数が増えたり近所トラブルに発展したりするなど、問題が深刻化してしまう場合も考えられます。話を聴いて原因を取り除けば、訴えが落ち着く可能性があります。
電話の内容をじっくり聴く
そもそも話をしっかり聴くのも大切です。
認知症状から、話がまとまらず支離滅裂になり、正直何を言っているのか分からない場合もあります。
自分がおかしいと自信をなくしている認知症の方は、電話で話をじっくりと聴いてくれたと安心するものです。誰だって、話を聴いてもらうと嬉しいもの。
認知症の方は、話を聴いてもらった事実は忘れてしまうでしょう。しかし、じっくり聴いてもらうと安心感や満足感から心が満たされ、電話が落ち着く可能性が考えられます。
家族から電話をかける
認知症の方からいつ電話がかかってくるか、ドキドキしながら毎日を過ごすのは辛いものがあります。
かかって来てほしくないシチュエーションに限って、電話のベルが鳴るのです。反対に、決まった時間・決まった曜日などにこちらから電話をしてみるのも有効です。
自分から電話をしなくても相手からかけてくれると理解できれば、またかかってきたときに話そうと思うかもしれません。認知症の方から電話が少なくなる可能性も考えられます。
電話で話す内容を工夫する
不安などの原因を取り除けば落ち着く可能性があります。
しかし、そもそも何に対して不安に思っているのか分からなかったり、分かっていても解決ができなかったりする場合もあるでしょう。そのような際は、電話の話題を工夫するとよいかもしれません。
趣味・好きだったもの・ポジティブな話は、認知症の方の気持ちをほぐしてくれる効果が期待できます。楽しい気持ちで電話を終えれば、満足感も得られ穏やかな気持ちになる場合が考えられます。
電話がつながる番号を制限する
頻繁に電話をかける相手が、家族・親族・友達など理解のある方であれば、まだよいといえます。
しかし、緊急電話や近所の方など、その他の番号にかけるようであれば、後々トラブルに発展しかねません。
発信できる番号を制限するなど工夫が必要です。トラブルの種を1つでも取り除き、目指すは認知症の方やその家族の穏やかな生活の実現です。
受発信が登録した番号のみのものもあるため、検討してみるのもよいでしょう。
認知症の方のサポート態勢を整える
電話を頻繁にかける意外にも、認知症の方のまわりで何かトラブルが起きている可能性があります。
認知症の方に尋ねるだけでは、どのようなトラブルがあるかの理解は困難。
特に、家族が離れて暮らしている場合には、日頃から周囲に協力を得られるような態勢があると安心です。
- 近所の方
- よく行く店の方
- 新聞屋や郵便屋
- 民生委員
- 訪問介護やデイサービスなどの介護事業所
- ケアマネジャー
たくさんの目が認知症の方を見守れば、電話だけではなくトラブル自体の回避につながります。
家族のサポート体制を整える
認知症の方が頻繁に電話をかける相手は、家族の場合がほとんどです。
自分の家族のため放ってもおけず、時には無視をして罪悪感を感じ余計落ち込んだ経験もあるのではないでしょうか。
家族が認知症の方にできるサポートとは、第一にプロやまわりに任せる気持ちです。そうすれば、家族の気持ちに余裕が生まれます。
介護の悩みを家族だけで抱え込むと、閉鎖的になり虐待に発展し兼ねません。認知症の方はまわりの環境に敏感です。
プロやまわりに任せれば、一番関わる家族に余裕が生まれ、認知症の方も自ずと落ち着くでしょう。
外部のサポートを活用する
地域の介護の悩みに対応する地域包括支援センター。外部のサポートを全く受けておらず身近に相談者が居ない場合、ここに連絡するとよいでしょう。
主任介護支援専門員・社会福祉士など、介護や福祉の専門家が配置されており、相談に乗ったり、必要なアドバイスを受けたりできます。
その他に、介護保険サービス・認知症に関する電話相談・認知症疾患医療センターなど、外部のサポートを活用すれば家族のレスパイトケアにもつながります。
認知症の方の電話によるトラブル事例
認知症の方の電話のトラブルは、何も頻繁に電話をかけるだけではありません。
高齢者特有のさみしさや認知症の方の特性につけこんでくる卑劣な輩もいるのです。
いつトラブルに巻き込まれるか分かりません。
そのような状況を少しでも回避できるよう、認知症の方に関わる電話トラブルの例を紹介します。
トラブル事例1:110番や119番に緊急通報してしまう
認知症の症状である被害妄想。財布を取られた・ごみを荒らされたなど、実際はそうではないのに自分が被害に遭ったと思い込んでしまう症状を指します。
この症状により警察に連絡してしまったり、救急車や消防車を呼んでしまったりする場合もあります。認知症の方は被害にあったと思い込んでいる訳ですから、通報するのは当然です。
また、被害妄想だけではなく「押」と書かれているボタンがあったため、押したら通報してしまった、なんていう事例もあるようです。考えられる通報先に、予め伝えるのも有効です。
トラブル事例2:テレビショッピングで注文してしまう
高齢になると、1日中家にいて、テレビがつけっぱなしの方もいます。
テレビに魅力的な商品が紹介されていたら、認知症の方は電話で購入し、気が付いたら家の中が商品であふれているなんて場合も少なくありません。
しかし、何かを決める際に、自分だけでは不安な方の契約や手続きを手伝う成年後見制度を利用すれば、認知症の方の判断だけで契約を結べなくなるため安心です。
特に、家族と離れて独居生活を送っている高齢者に対しては、このようなトラブル以外にもメリットがたくさんある制度です。
トラブル事例3:振り込め詐欺の被害に遭ってしまう
高齢になると寂しさや不安を抱える場合が多く、更に認知症ともなれば判断能力等も低下しているため、それをより感じるでしょう。
また一昔前の「オレオレ」と息子等のふりをするのではなく、現在の振り込め詐欺はとても複雑。
認知症ではなくても、騙される場合も少なくありません。家族の役に立ちたい高齢者の心理につけ入り、意外にも簡単に振り込みに行ってしまう方が多いようです。
自分が騙されたと気が付かない場合も、充分考えられます。
認知症の方が使う携帯電話を選ぶポイント
認知症の方の携帯電話を取り上げるかどうかは、その方の状況次第と言えます。
携帯電話を取り上げない場合、どのようなものが好ましいか確認してみましょう。
シンプルで使いやすい携帯電話を選ぶ
今まで使っていたものが、ストレスもなく操作できるため一番よいのですが、ガラケーの場合がほとんど。
今後ガラケーの供給終了を考えると、分かりやすいシンプルなものを選ぶのがよいでしょう。各キャリアから販売している高齢者向けスマホは、文字も大きく分かりやすいためおすすめです。
受発信の制限ができる携帯電話を選ぶ
高齢者向けのスマホでも危険番号からの電話の際に警告が出たり、それに気付かず出た時も音声録音がされたりする機能がついたものもあり安心です。
これらの機能に加え、高齢者が使用するにあたって容易に操作ができ、耐久性もある正常に作動する優良防犯電話の認定を受けているスマホもあります。
GPS機能や見守り機能がついている携帯電話を選ぶ
認知症の方は、外出してもどこに行くか忘れたり帰り方が分からなくなったりする場合があります。
住み慣れた地域であっても同じです。また、徘徊と言って目的もなくウロウロと歩き回る方もいます。
そのような症状のある方には、GPSや見守り機能のついた携帯がよいでしょう。スマホなら専用アプリをインストールし離れていても見守れ安心です。
家族と同じ携帯電話会社と契約する
家族と同じ携帯電話会社で契約すると何かと便利です。
更に家族契約を行い、認知症ではない、例えば子どもなどを主回線とすれば、本当に携帯を取り上げる時、スムーズに対応が可能。
電話を頻繁にかける場合は、家族や身内の場合が多いため、同じ携帯会社なら割引も適用され、通信費の節約にもつながります。
認知症の方には、携帯電話を取り上げるのではなく安心を与えましょう
認知症の方が頻繁に電話をすると、トラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。
そうだといって、携帯電話を取り上げる対応が、認知症の方にとって絶対によいかといえばそうではありません。
取り上げれば電話はかかってこなくても、別の問題が出てくるでしょう。
認知症の方がなぜそのような行動をとっているのか考えて対応すれば、少しずつ落ち着いていきます。
ぜひ、紹介した内容を試して、認知症の方と一緒に穏やかな生活を手に入れましょう。
一概には言えません。その方にとっては、社会とつながれる唯一の手段かもしれません。それがなくなってしまったら、不安な気持ちになりかえって認知症状が強く出る場合もあるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
認知症には短期記憶障害といって、少し前の話でも忘れてしまいます。認知症の方にとっては初めて伝えているつもりなのです。話題を変えたり活動をしたりして、気持ちを切り替えると収まる場合も多いでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。