【ヒヤリハットとは?】介護シーン別の15事例と対応方法を解説

【ヒヤリハットとは?】介護シーン別の15事例と対応方法を解説

自宅で親の介護を始めたときに、親が廊下と床の間のわずかな段差でつまずいたり、スリッパを履こうとして片足を上げてしまい、足がもつれ転倒しそうになったり、といった場面を見たことがありませんか。

また、ひさしぶりに田舎の実家へ帰った際に親が「ちょっと転んだ」といった話を、なんとなく聞いた方もいるかもしれません。

実は多くの高齢者が集まる老人ホームでは、大から小までさまざまなヒヤリハットが日々起こっています。

老人ホームで発生するヒヤリハット事例を知ることで、自宅における注意すべき場所や状況を予測できるでしょう。

今回は、介護現場でヒヤリハットが起きる3つの要因と具体的な15の事例と対応方法を紹介します。よくあるヒヤリハットの事例を知って、家庭内の介護シーンに役立ててください。

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介護におけるヒヤリハットとは?

介護現場におけるヒヤリハットとは、大きな事故や災害は起きてはいないが、ほとんどの方が一歩間違えば負傷するだろうといった、予測できる危険な状況のことです。

例えば「車椅子からベットに移乗するときに、利用者さんの足が引っかかり、危うく一緒に転ぶところだった」といった場面に出会った経験はないでしょうか。

例のように「ヒヤッ」「ハッ」したとした出来事を「ヒヤリハット」と呼びます。

ハインリッヒの法則による労働災害発生率の分析によると、「1件の重大事故で29人が軽傷を負い、300件の事故が無傷だった」と言われています。

ヒヤリハット事例を知ることによって、重大事故の防止にもつながるでしょう。

参照:厚生労働省

 

ヒヤリハットが不安で介護施設への入居を検討される方も多くいらっしゃいます。

ケアスル介護なら、介護施設探しが初めてな方でも相談しやすいよう、プロの入居相談員と電話しつつ施設を探すことが可能です。

施設によっては入居待ちの施設もあるので、早い段階から介護施設・老人ホームを少しずつ探し始めてみてはいかがでしょうか。

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介護現場でヒヤリハットが起きる3つの要因

介護現場で頻繁に、ヒヤリハットが起こるのはなぜでしょうか。

大きく3つの要因に分類できます。

  • 利用者自身の要因
  • 介護者やまわりの介護支援者の要因
  • 介護される環境そのものの要因

それでは、詳しくみていきましょう。

1.利用者自身の要因

介護ケアを必要とするすべての高齢者は、さまざまな状況にあり、どのようなサポートが必要かも皆異なります。

介護者の支えや歩行杖のサポートだけで自力で歩ける方もいれば、車イスに頼る方、1日中寝たきりの方もいます。

また自力でトイレ、食事、手洗いが困難な方の中には、認知症やパーキンソン病などの神経疾患によって、身体の自由が利かない方もいるでしょう。さらに高齢者自身の体調や、服用している薬によっても変化します。

記載したような例を考慮したうえで、利用者が本当はどのような助けを必要とし、何に注意を払う必要があるかを考える必要があります。

2.介護者やまわりの介護支援者の要因

介護支援やまわりの介護支援者の要因によって、ヒヤリハットが発生する場合も少なくありません。

介護支援をする方達は、日々の介護サポートだけではなく、自分たちの生活や家庭もあります。介護も看護も、基本的に365日休まず働いています。

ほかの職種に比べると、日々のストレスや不満は溜まりやすい傾向にあるでしょう。

プラスして、支援する側の私生活などが原因で気持ちに余裕がないときや、体調不良のときは、集中力・注意力の低下などが起こります。結果として、介護事故へつながるケースもあります。

ヒヤリハット抑制には、介護者やまわりの介護支援者のまわりの環境をできる限り整えてあげるとよいかもしれません。

3.介護される環境そのものの要因

以下の例のように、介護される環境そのものに要因があって、事故が起こるケースもあります。

  • お風呂の床に滑りどめマットがなく、転倒した
  • 階段の段差に気がつかず、つまづいた
  • 杖の高さが本人の身体と合わずに、事故が発生した

ヒヤリハットが起こりやすい場所を介護者・利用者様とも情報を共有し、必要に応じて施設の改修や、自宅の改築を検討する必要があるでしょう。

気をつけておきたいのは、介護される環境が整ったとしても、さまざまな要素が絡み、再度悪くなるケースもある点です。介護環境を変えることによって、リスクが高まるケースがあることも心に留めておいてください。

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ヒヤリハットで最も多いのは転倒・転落・滑落!

厚生労働省が平成30年度に発表した資料によると、転倒・転落・滑落が6割ほどと半分以上を占めています。

転倒・転落事故は、椅子やベッドからの立ち上がりや、車椅子への移動、起立訓練中など、さまざまな方面で発生する可能性があるでしょう。

次に多いのが、誤嚥や誤飲などで1割ほどです。「別の高齢者に薬を与えてしまった」「朝食前に与えるべき薬を飲ませなかった」など人為的なミスから起こる場合が多いです。

残りの3割は、送迎中の交通事故や、ドアに手を挟まれたといったことが挙げられるでしょう。

特に1人で大勢の高齢者を見ている見守りや、ほかの利用者を介助している最中に、介護者の見守りが手薄になった状況で多く発生しています。介護者・介護支援者の方は「高齢者はいつでもどこでも転倒するリスクが高い」と理解しておく必要があります。

参照:公益財団法人介護労働安定センター

ヒヤリハット事例15選【介護現場別】

ヒヤリハットがあったときに、落ち着いて対処できる方、そうでない方の大きな違いは、施設内に潜むさまざまなリスクや事例を知っていることです。

さまざまなリスクや実際にあった事例を知ることによって、これから「起こりそう」なことを「見通す力」が養われます。

つまり、何か起こったとしても想定の範囲内ととらえるでしょう。

介護の現場で危険リスクを回避する「見通し力」が身につくと、視野が広くなり、ヒヤリハットや事故を未然に防げる可能性も高くなります。

危険リスクを回避する「見通し力」を養うために、ここでは、ヒヤリハット事例15選を介護シチュエーション別で紹介します。参考にしてください。

1.【トイレ編】トイレから車いすに移動するとき

介護のヒヤリハットの中でも、高齢者が密室になりやすく、見守りが届きにくいトイレの事例を2つお伝えします。

  • 概要:トイレから車イスへ自力で移ろうとして、転倒した。
  • 要因:手すりをにぎって立ち上がったものの、車イスに乗るまでに立位が保てず、手が離れた。
  • 対策:トイレの介助中は離れず、必ずそばで見守る。脚の筋肉強化のためのリハビリを検討する。トイレの手すりを握りやすい形状のものに変更する。

高齢者は骨が弱っているため、転倒事故で骨折などの重傷を負い、そこから寝たきりの状態に陥るケースも少なくありません。

特にふらつきのある高齢者は、転倒リスクが高いため注意してください。

2.【トイレ編】車イスで方向転換したとき

  • 概要:車椅子で方向転換した時に、バランスを崩した。
  • 要因:右麻痺の利用者が、車椅子を半時計まわりに操作した。
  • 対策:右麻痺の利用者は、左腕の自由がきくため「時計回り」で動くよう声かけをする。この動作を繰り返し、身につけてもらうまで見守りを行う。

片麻痺の高齢者は、片側の手足が思ったように動かなくなり、体のバランスを崩しやすい点を頭の片隅に入れておきましょう。

3.【洗面所編】介護者の口腔ケア介助のとき

洗面所でのケアで起こりうる、ヒヤリハット事例を3つお伝えします。

  • 概要:口腔ケアをしていたら、口腔内から血が出てきた。
  • 要因:口の中が見えないまま介助を行い、歯ブラシで口内の内側を傷つけてしまった。
  • 対策:高齢者と目線を合わせて、口腔内が見える位置で口腔ケアをする。

口腔ケアは、高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐために重要な介助の1つです。

高齢者の口腔内は柔らかく傷つきやすいので、歯磨きをする際は注意しましょう。

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4.【洗面所編】飛び散った水で転倒

  • 概要:洗面が終わった高齢者が動いた際に、洗面台の前で転倒した。
  • 要因:水が飛び散り、洗面台の床が濡れていた。
  • 対策:椅子に座って歯磨きをするよう声かけする。床の飛び散った水をまめにふき取る。滑りにくい床材の変更を検討する。足元を明るく照らす。

足元の水で滑ってしまい、転倒したケースです。

足腰が弱ってくると踏ん張りがききづらくなりますので、こまめに床の水をふき取っておくことが重要になります。

5.【洗面所編】顔面などのすり傷

  • 概要:洗面所のケアのときに顔面の傷を発見する。
  • 要因:小脳に関する疾患をもつ高齢者なので、力の加減の調整が難しい。ご本人がタオルで顔を強く拭いた際についた傷だと思われる。
  • 対策:タオルを柔らかい生地のものに変える。洗面所に行く際は、見守りを行う。もし顔を強く擦っていたら、声をかけて介助に入る。

6.【食堂編】誤嚥・誤飲

  • 概要:寝たままでも水を飲める吸い飲みで、水分補給をするときにむせた。
  • 要因:水分を飲ませる際の姿勢がよくなかった、とろみの調整が合わなかったなど。
  • 対策:水分を飲ませる際に適切な位置になるよう、クッション等で体の姿勢を整える。高齢者の嚥下能力の検証を行う。本人が飲みやすい適度なとろみの量を調整する。

食事に時間のかかる方や食べ物がよく口の中に残る方は、誤嚥・誤飲を起こす可能性が高いです。留意しておきましょう。

7.【食堂編】誤薬

  • 概要:認知症の利用者にほかの方の薬を与えた。
  • 要因:薬を利用者に持ち出す際のダブルチェックを怠った。
  • 対策:薬を持ち出す際には、薬袋に書いてある利用者名をほかの介助者と共に必ずダブルチェックする。食事担当介助者を2〜3名決めて、分包箱から一人分ずつ持ち出し、薬を与える。

8.【食堂編】認知症の高齢者の異食行為

  • 概要:ティッシュを口に入れているのを見つける。
  • 要因:利用者本人の手の届く範囲にティッシュの箱が置いてあった。
  • 対策:利用者の手の届く範囲にティッシュや紙、クレヨンなど異食しそうなものをおかない。

異食行為は利用者の喉を詰まらせる可能性があり、特にビニールや薬の包装紙、お菓子の袋などは窒息の恐れがあります。

介護者の目が届かないところで発生している場合も多いため、気をつけましょう。

9.【お風呂・浴室編】服を脱ぐとき

  • 概要:脱衣所でズボンを脱ぐ際に、バランスを崩した。
  • 要因:立ってズボンを脱ごうとしており、近くに手すりも何もなかった。
  • 対策:椅子に腰掛けたあと、ズボンを脱ぐよう声かけする。脱衣所では、正面に手すりがある席へと誘導する。床に足が滑らないマットを敷く。

健康な方なら日常の一部であるお風呂は、体力が衰えてきている高齢者とってはなかなか負担のかかる作業です。

そのため入浴中のトラブルは、高齢者本人が自力で解決できるのは難しいと言わざるをえません。

10.【お風呂・浴室編】高齢者の脱水

  • 概要:入浴後しばらくすると、頭痛がすると言われた。
  • 要因:入浴後、水分をとらなかった。
  • 対策:こまめな水分補給を促す。

浴室内は水分が多く体が潤っていると思う方もいるかもしれませんが、意外と汗を流す方もいます。

汗の量が多いと、体内の水分が奪われて、脱水症状につながります。手遅れになる前にお風呂から上がったら、コップ1杯の水をなるべく飲ませてください。

11.【お風呂・浴室編】シャワーイスを後ろへずらしたとき

  • 概要:シャワーイスを後ろへずらしたときに、後方へ座り込んだ。
  • 要因:体を洗おうと立ったが、勢いよく立ち上がりすぎてシャワーイスごと後ろへずれた。
  • 対策:体を洗うときは、手すりをもってゆっくりと立つよう声かけをする。

シャワーイスは少し足が長い分、転倒しやすいリスクが潜んでいます。

むやみに立ち座りを繰り返す必要はありませんので、シャワーイスに座りながら体を洗うようにするといった対策も有効です。

12.【お風呂・浴室編】高齢者が浴槽内に浸かっているとき

  • 概要:浴槽内でお湯に浸かっているときに、溺れそうになった。
  • 要因:浴槽の手すりをつかんでいなかった。
  • 対策:浴槽内に高齢者がいる場合は、目を離さない。

きちんと入浴しているように見えても、介助者が目を離した一瞬の間に溺れてしまう可能性はとても高いです。

特に浴槽内の手すりを持たずに入浴している高齢者や、入浴中に体全体が浮いてしまう高齢者は溺れるリスクが高いため、用心しましょう。

13.【お風呂・浴室編】浴室から風呂場への移動のとき

  • 概要:浴室から風呂場への移動のときに、滑りかけた。
  • 要因:浴室の床にシャンプーなど流したお湯が流れていて、滑りやすい状態だった。
  • 対策:シャンプーを含んだお湯をすぐ流す。流した後、滑らないことを確認する。滑りにくい床材の変更も視野に入れる。

床のすべりやすさは常に気をかけておきましょう。

転倒事故が割合としてはかなり多くなっています。

14.【廊下編】ほかの高齢者とすれ違ったとき

  • 概要:ほかの高齢者と曲がり角で接触し、ころんだ。
  • 要因:左側から高齢者が歩いてきたので、相手に気づかなかった。
  • 対策:歩くときは、付き添いする。

脳卒中などの脳の病気の症状で、「半空間無視」が起こることがあります。実際には左側は見えていますが、左側が認識できない症状です。

「半空間無視」の症状がある高齢者は、左側で誰かとすれ違った場合に、転倒リスクが高いため留意してください。

15.【廊下編】歩いてるとき

  • 概要:ほかの高齢者と一緒に浴室へ向かう途中、ドアストッパーにつまずいてしまい転倒した。
  • 要因:認知症のため、いつも付き添いをしていたが、ほかの利用者と一緒だったため大丈夫だと判断し、介助者がその場を離れてしまった。入浴の声かけをする介助者が1名で、見守りが不十分だった。
  • 対策:入浴の声かけをする介助者を2名にする。付き添いが必要な高齢者から、目を離さない。ドアストッパーだけではなく、床につまづくようなものがないか確認してから誘導を行う。

ここで紹介したようなヒヤリハットが不安な方は、介護施設への入居を検討れる方を検討してもよいかもしれません。

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施設によっては入居待ちの施設もあるので、早い段階から介護施設・老人ホームを少しずつ探し始めてみてはいかがでしょうか。

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よくあるヒヤリハットの事例を知り家庭内での事故を未然に防ごう

介護現場では、一瞬「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりするケースはたびたびあるものです。大事故にならなかったから「良かった」では、今後同じようなケースがあった場合に、事故を引き起こす可能性が高くなるでしょう。

認知症患者は、「場所が分からなくなる」など認知能力が衰えてきたり、骨が脆くなるなど身体機能が鈍ったりと、どうしても事故が起こりうる要因が多いです。

介護現場におけるヒヤリハットの事例を知ることで、安全性に配慮して介助ができるようになります。場面別で気をつけるポイントを理解して、家庭内での事故を未然に防ぎましょう。

介護事故には、どのようなケースが多いのですか?

介護現場で事故が発生した場合、事業者や施設は自治体に内容を報告する義務があります。

報告された症例の約80%は、ベッドや車いすからの転倒、および歩行中または立位での転倒です。次に多いのは、誤嚥による食物の窒息または肺炎です。

ほかには、体位交換で皮膚に傷を負わせてしまったり、車イスへ移乗のときに怪我をさせてしまったり、といった人為的なミスのケースがあります。

 

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