理想的な介護の国はどこに?

理想的な介護の国はどこに?

理想的な介護の国はどこにあるのでしょうか?私がこれまで介護政策研究の対象にしてきた国々について、介護システムの特徴を光(長所)と影(欠点)の両面から明らかにします。以下記事の内容は、基本的に筆者がこれまでに出版してきた書籍からの引用ですが、データは最新の情報を調べ記載しています。

西下 彰俊 教授
東京経済大学 現代法学部
専門社会調査士
日本老年社会科学会、日本社会学会、日本社会福祉学会、福祉社会学会、北ヨーロッパ学会等
財団法人東京都老人総合研究所(現・地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)、神戸山手女子短大、金城学院大学を経て2004年より現職。金城学院大学在職中、スウェーデン・リンショピング大学テマ研究所客員研究員として1年間留学。
スウェーデン、韓国、台湾、日本の介護政策比較研究をする傍ら、2023年より、韓国、台湾、日本において老老介護をしている高齢介護者へのインタビュー調査を開始。2024年は、当該要介護高齢者のケアマネジャーおよび在宅サービス事業者にもインタビューすることにより、最も適切なケアマネジメントのあり方に関する研究を実施。
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(1)スウェーデン

スウェーデンは福祉国家として有名ですが、実は社会派作家のイーヴァル・ロー=ヨハンソン(Ivar-Lo Johansson)が1949年に出版した写真集がきっかけになって、高齢者ケアが発達するようになりました。この写真集及び同作家が3年後に出版した論説集を西下・兼松麻紀子・渡辺博明の3人で翻訳し2013年に『スウェーデン:高齢者福祉改革の原点』(新評論)として出版しました。ヨハンソンの母親が入所した当時の救貧院には高齢者だけではなく、親のいない児童まで様々な人々が、プライバシーのない狭隘な建物に入れられている現実を写真を通じて告発しました。つまりそれまでは福祉が決して発達していたわけではなかったのです。福祉国家は作家のような専門家の活動を含めて国民と国家が作り上げる社会だと言えるでしょう。

『スウェーデン:高齢者福祉改革の原点』(新評論)

さて、筆者は1997年夏から1年間スウェーデン中部のリンショピング(Linköping)大学テマ研究所に客員研究員として留学しました。その間、スウェーデンの著名な高齢者ケアの研究者にインタビューしたり、各地の「特別住宅」という名の介護施設を訪問し、介護職員の勤務スケジュールをいただいたりしました。留学中のフィールドワークで得た情報をベースに、随分と時間がかかりましたが、2007年に『スウェーデンの高齢者ケア』、2012年に『揺れるスウェーデン』を単著で出版しました。

どの国の介護制度にも光(長所)と影(欠点)があるはずなのですが、それまでのスウェーデンの介護政策研究者は、何故か光だけを紹介するケースがほとんどです。私は留学中からその傾向に違和感を強く感じていましたので、この2冊の書籍では、スウェーデンの影についても多く論じています。

『揺れるスウェーデン』
『スウェーデンの高齢者ケア』

 

その影を3つほどご紹介します。

まず第1に、スウェーデンは地方分権の進んだ国なので、290あるコミューン(市町村レベルの基礎自治体)ごとに介護サービスの種類も、サービス利用時にかかる自己負担額の設定もばらばらであった点を挙げることが出来ます。2000年に私が行った調査では、同じサービスを同一条件で利用したとして、手元にあった10か所のコミューンの自己負担額を計算した結果、何と6倍もの格差がありました。

スウェーデン政府が2002年になり、初めてマックス・タクサ(maxtax)という制度を作り、要介護高齢者がサービス利用した際に支払う自己負担の1か月の上限額をようやく設定しました(西下彰俊,2008,第4章)。そして、その制度は現在も続いています。2024年は、2,575スウェーデン・クローナであり(2024年2月10日現在、1クローナ約14.2円)、日本円で約36,565円です。日本の介護保険では要介護5で上限額一杯までサービスを利用すると標準的な1割負担の場合約3.6万円となります。日本とスウェーデンは、自己負担がほぼ同程度と言えます。なお、上限額は毎年設定されるものの、どのようなサービスにどれだけの自己負担額を請求するかの料金システムそのものは今でも290コミューンでばらばらになっています。

第2に、夏に雇用されるビカリエ(Vikarie=代理人)の存在が挙げられます。スウェーデンは、労働者の権利が保障された国で、介護施設で働く介護職員も労働者ですから5週間の有給休暇を取得する権利があります。6月中旬から2か月ほどが夏休みの期間で介護職員は4週間まるごと有給休暇を取ることが多いです。スウェーデンの介護施設は、全てユニットケアで1ユニットが10名から12名ほどです(過疎地では1ユニット7名のところもあります)。一つの特別住宅という介護施設には、このユニットが6つほど入ることが多いです。

例えば、1つの介護施設(特別住宅)に40人介護職員がいたとします。夏休みの前半1か月を半数の20人が休暇を取り、後半1か月は、残りの20人が休暇を取ります。これだけでは、完全に50%の職員不足になります。そのため、介護施設の施設長が中心となって2か月だけ働いてくれるビカリエをスカウトします。スウェーデンの介護施設では、要介護高齢者をベッドから車椅子に移乗してもらう際(逆の場合も)、介護職員の腰痛防止のため必ず自走式電動リフトを使います。留学中、ある介護施設で、男性ビカリエ2人で男性高齢者を電動リフトで移乗する場面を見ましたが、はらはらしました。聞けば、現場に出る前の研修は3日程度で、リフトは研修で数回操作しただけだったそうです(西下彰俊,2008,第9章)。

日本人の感覚からすると、福祉を専攻する大学生に声をかければビカリエという名のアルバイトが集まると考えがちですが、実際そうはいきません。専攻分野を問わず、高校生や大学生あるいは失業者等を集めるが一般的です。留学中に出会ったビカリエは、リンショピング大学の政治学や文学の学生でした。なお、日本の介護職員の有給休暇消化日数は、介護労働安定センターの2022年調査によれば、平均して7.8日なので、夏休みだけのアルバイトは不要ですね。

第3に、これが最も深刻な問題なのですが、スウェーデンでは、要介護の状態が重度化しなければ、特別住宅という介護施設に入所できない点が挙げられます。在宅サービスも施設サービスも、利用を希望するならば、まずコミューンに申し込まなければなりません。日本のように介護施設に直接申し込むことは出来ないのです。申し込むと、援助判定員(biståndshandläggare=ビストンズ・ハンドレガレ)というコミューンの専門職員が自宅や病院を訪問し、高齢者のADL(日常生活動作能力)や配偶者の有無、配偶者の健康状態、友人、知人の支援体制を1時間ほどかけてヒアリングします。日本のような全国統一の要介護認定システムは存在しません。援助判定員が1人の専門職として特別住宅への入所を措置決定して初めて入所ができるのです。

2006年に制定された「特別費用」という名の罰金制度が出来たために、特別住宅への入所を措置(許可)するハードルが高くなりました。特別費用という制度は、コミューンの援助判定員が入所の措置決定をしてから3か月以内に、当該高齢者が特別住宅に入居できていなければならないという制度です。もし3か月以内というルールが守られなければ、延期の事情や期間により、1万クローナから100万クローナの罰金を、コミューンが国庫に支払うというルールがあるため、援助判定員が入居の措置決定をすることが困難になっています(西下彰俊,2012,第2章)。

世界中でエイジング・イン・プレイス(Aging in Place=生まれた場所や地域で老後を過ごす)のスローガンが拡がり、スウェーデンにおいても在宅ケア重視が強まる中、高齢化は徐々に進行し、認知症高齢者が増えているにもかかわらず、特別住宅の数が全国的に減っているので、なおさら特別住宅に入居できる可能性は減ってきています。

さて今度は、光の部分について、4点挙げます。

まず第1に、スウェーデンにはÄldreguiden(エルデュレガイダン=高齢者ガイド)という全国290のコミューンの在宅介護サービス、施設介護サービス全てを網羅した最強のデータベースを2007年に創設した点を挙げることができます(西下彰俊,2011,pp.492-494)。各サービスの現状や満足度が数字で示され、本人や家族が住んでいるあるいは関心のあるコミューンの介護サービスの全体をこのガイドで比較しながら確認することが出来ます。ちなみに、施設介護サービスに関しては、一般情報5項目、活動とトレーニング3項目、一般評価1項目、影響力と参加4項目、食事2項目、人材と配置5項目が掲載されており、幾つかの特別住宅を選んで同時に比較することが出来ます。なお、比較項目は過去数回、変更されています。

光の2つ目は、スウェーデンにおいて、元気な配偶者(パートナー)が要介護や認知症の配偶者とともに介護施設の同じ部屋に入居することが可能な点です。実は、2012年の社会サービス法改正時に、Parbogaranti(パーボギャランティ=夫婦・カップル同居保障)という権利が明記され保障されています。援助判定員に特別住宅を入居申請する際に、同居を希望していることを伝えることが不可欠です。

光の3つ目は、在宅サービスや施設サービスを利用する高齢者に関して、最低保障額(リザーブド・アマウント)という手元に残す金額が設定されている点です。援助判定員の措置決定により様々な介護サービスを利用していくと手元にお金が残らなくなります。スウェーデンではそれを回避するために、介護サービスを利用する単身高齢者の場合に、2024年については、6,090クローナ(約8.7万円)、パートナーがいる場合には二人で10,061クローナ(約14.3万円)がそれぞれ残るように計算した後に自己負担額が決まる仕組みです(この金額は毎年変わります)。この保障額の制度は、介護の付いた特別住宅に入居する場合も適用されますが金額が少しだけ異なります。スウェーデンでは、経済的なセイフティーネットが徹底しています(西下彰俊,2012,第2章)。

光の4つ目は、スウェーデンでは、子供家族と同居することが基本的にないので、老夫婦二人とも要介護になることもありますが、その場合でもつまり介護者がいない場合でも、援助判定員のサービス措置決定により、在宅生活を継続することができる点が挙げられます。留学中も、老夫婦二人ともホームヘルパーにおむつ交換をしてもらいながら在宅生活を続けておられる様子も学びました。スウェーデンには日本のケアマネジャーとよく似た専門職として援助判定員が各コミューンに数人から数10人にいますが、判定員が高齢者夫婦全体のケアマネジメントを行うのです。

日本の介護保険では、このようなケースはどのようにケアマネジメントされるでしょうか。そもそも老夫婦ともおむつ交換が必要なほど重度化し在宅生活を続けるケースは少ないかもしれませんが、夫婦のどちらかが要介護で、配偶者が要支援というパターンは増えています。日本の介護保険では夫婦別々に担当ケアマネジャーが付きケアプランを作成します。

例えば夫が要介護3だとします。すると要支援2の妻が同居しているのだから、ホームヘルパーに生活援助サービスとしての食事準備がプランに組み込んでもらえないことになります。夫が糖尿病の場合、要支援2の妻がその病気対応の食事が作るのが困難になり、結果的に100%自費でヘルパーを雇うようなケースが決して少なくありません。この老夫婦が生活援助サービスを使えるかどうかは、実は微妙であり、市区町村により判断が異なるようです。厚労省の指針を見ても明確で具体的なことは記載されていません。この老夫婦に対してもう少し融通の利いたつまり生活援助サービスが可能となるようなトータルなケアマネジメントが全国全ての市区町村において、できないものでしょうか。どうもスウェーデンとは根本的なところで違いがありそうです。

(2)韓国

スウェーデンの研究を続ける一方、東アジアにも関心を持ち続けています。韓国は日本の介護保険制度を下敷きにした老人長期療養保険(以下、介護保険と省略します)を2008年にスタートさせました。日本と同じような要介護認定調査を経て、要介護度の等級と介護報酬額が決まります。現在は、最も重度の1等級から5等級まであり、さらに認知支援等級と合計6つの等級が用意されています。自己負担比率は日本と異なり、在宅サービスは15%、施設サービスは20%となっています。

韓国は日本に比べて高齢化率が低い段階で介護保険を始めたために、ホームヘルパーや他の在宅サービスの基盤整備が圧倒的に遅れていました。そこで考案されたのが「家族療養保護士」の制度です。これは、療養保護士(介護の専門職)の国家資格を有する人が、同居別居に関係なく、自分の老親や老配偶者を介護する場合に、1か月20日間、1日60分という条件で勤務する療養保護士派遣事業所から賃金が支給されるという制度です。なお、介護者が高齢者の場合や認知症高齢者で暴力を振るうなど問題行動がある場合は、1か月30日間、1日90分という条件になります(西下彰俊,2022,第2章)。

無償の家族介護が一部有償化できるという、日本にはない制度です。ただし、問題点もあり、本当に家族の介護をしているのかどうか確かめようがありません。決められた日時に、一般のヘルパーさんが来ないと事業所にすぐ電話が入りますが、ヘルパーさんが家族なら誰も連絡しないでしょう。韓国保健福祉部(日本の厚労省にあたります)もこの制度に関しては、条件を厳しく制限しながらも存続させる構えのようです。

韓国の介護保険制度には、参考にすべき制度もがあります。それは、認知症家族休暇制度です。2024年1月から名称が変わりまして、長期療養家族休暇制度となっています。介護保険の要介護度ごとの介護報酬とは別枠で、要介護の高齢者を在宅で介護する家族に支援サービスを提供する制度です。具体的には、介護者に1年間にショートステーサービスを10日間あるいは終日訪問介護を20日間利用できるサービスです。各等級の介護報酬の15%の自己負担となります。

また、不思議な制度もあります。韓国では、要介護高齢者や認知症高齢者が月に20日間、毎回8時間以上、昼・夜間保護サービス(デイサービスを夜間まで続けて利用するサービス)を利用すれば、当該高齢者の介護報酬がかっては1.5倍、2021年1月から1.2倍に拡大するという制度です。家族は、昼・夜間保護サービスを積極的に利用させようとするわけですが、平日5日間連続して(ケースによっては土曜日も)毎回8時間も昼・夜間保護サービスの事業所で過ごすことが、果して本当に、当該高齢者の幸せに繋がっているのでしょうか(西下彰俊,2022,第2章)。昼・夜間保護サービスを普及させるための戦略のようですが、疑問に感じます。日本の介護保険には、あるサービスを頻回利用することで要介護度別の介護報酬額が拡大するような仕組みはありません。

(3)台湾

台湾の介護制度にも7、8年前から関心を持ち続けています。台湾は、スウェーデン同様、税金を財源にサービスを提供し、所得に応じて自己負担がかかる仕組みです。

台湾は、日本同様国家プランを構築することに熱心な国であり、在宅サービスの基盤整備のために、長期介護国家プラン1.0(2007年から2016年まで)を経て、現在長期介護国家プラン2.0(2017年か2026年まで)が進行中です。この国家プランに合わせて地域を包括するサービス供給システムとして、A拠点-B拠点-C拠点3層システムを創設しています。残念ながら、施設介護サービスの充実については後回しになりましたが、現在施設の増設を進めています。

要介護認定の方法は日本や韓国と同様の仕組みです。要介護度は、第1級から最重度の第8級までありますが、第1級は非該当と言うことで長期介護2.0のサービスは利用できません。自己負担比率は、要介護高齢者の所得に応じて、0%、5%、16%の3段階に区分されています。地方自治体の長期介護管理センターに所属するケアマネジャーが要介護認定を行い、A拠点に所属するケースマネジャーが要介護高齢者や認知症高齢者のケアプランを作ります。A拠点は病院、診療所、デイサービス、訪問看護サービスなどを運営するコミュニティ統合型センターです(西下彰俊,2022,第5章)。

台湾の要介護認定では、日本や韓国の要介護認定とは大きく異なる特徴があります。それは全部で71項目ある質問項目のうち、在宅介護者に関する質問項目が18項目もあることです。韓国は3項目ありますが、日本は皆無です。

台湾では、介護者の性別、年齢、就労の有無、仕事への影響、介護期間、精神の健康、身体の健康、介護負担の程度、副介護者の有無など介護者に寄り添った質問を数多くしています(西下彰俊,2022,第5章)。ただ、18項目の結果がどのように等級に反映されるかは分かりません。台湾の介護政策の有力教授数人に聞きましたが、ブラックボックスなので分からないと口を揃えます。明らかなのは、要介護認定を行うケアマネジャーとケアプラン作成を担当するケースマネジャーは、介護者に関する情報を把握した上で、民間の介護者支援組織が展開するサービスなどの情報提供をはじめとする介護者支援の役割を担っていることです。

台湾の介護環境が、日本と著しく異なるのが、近隣アジアからの住み込み型外国人介護労働者の存在です。インドネシア、フィリピン、ベトナム等の20代後半から40代前半の女性が台湾の一般家庭と契約し、更新を重ねて最長で14年間住み込んで、最低賃金水準を下回るほどの低賃金で日夜介護の仕事をしています。全国で20数万の世帯が、国からの補助金もなくこの住み込み型外国人介護労働者を日本円にして月額9万円ほどで雇用しています。台湾で介護施設に入所する場合には、13~15万円ほどかかることから、住み込みの外国人を雇用する世帯が多くなっています(西下彰俊,2022,第7章)。

『東アジアの高齢者ケア』

(4)理想的な介護の国はどこに?

私が関心を持ち続けてきたスウェーデン、韓国、台湾についてその光と影の両面から説明してきましたが、各国の様子から、理想的な介護の国はどこにも存在しないということが徐々に分かっていただけたのではないでしょうか。

最初に紹介したスウェーデンは、実験国家とも呼ばれています。1992年に行われたエーデル改革では、社会的入院を極力減らすための罰金制度を始めました(西下彰俊,2007,第1章)。高齢者ケアと医療の連携では、数年前にSIP(Samordnad individuell plan=調整された個人の退院計画)という新しい制度をスタートさせています。これは、高齢者が病院に入院した時点で、家族、高齢者本人、地区診療所(ボードセントラーレン)の看護師、県立病院(大学病院)の医師、看護師、理学療法士、作業療法士、コミューン援助判定員などが対面であるいはオンラインで一堂に会し、入院した当該個人のために退院計画を調整し社会的入院患者(ベッド占領者)にならないようにする仕組みです(Sveriges Kommuner och Landsting, 2016)。

なお、この仕組みは全ての幼児から高齢者まで全ての年齢の入院患者を対象にしています。スウェーデンは県ごとに予算決算を行うなど医療の仕組みが異なるので、スウェーデン全体で高齢入院患者のために有効なSIPのモデル提示や方法論をいまだ構築できていないようですが、常にチャレンジし前進しようとする姿勢は見習いたいものです。

筆者が強調したかったのは、高齢者介護についてユートピアやパラダイスは残念ながら存在していないということです。隣の芝生は青く見えますが、近づいて細かく観察すると案外青くなかったりします。ですから、それぞれ自国の文化に根ざした理想的な介護システムを、国民が政府とともに創造していくこと以外に方法はありません。この考え方に尽きると思います。

現在の日本の介護保険制度にも様々な問題点がありますが、地域包括ケアシステムの下で、自国の芝生を青くできるように私達一人ひとりが前進する努力を重ねたいものです。

【引用・参考文献】

  • イーヴァル・ロー=ヨハンソン(西下彰俊・兼松麻紀子・渡辺博明訳),2013, 『スウェーデン:高齢者福祉改革の原点』,新評論
  • Sveriges Kommuner och Landsting, 2016,Samordnad individuell plan för äldre https://skr.se/download/18.5627773817e39e979ef38081/1642161204138/5421.pdf(2018年1月10日閲覧)
  • 西下彰俊,2007,『スウェーデンの高齢者ケア』,新評論
  • 西下彰俊,2011,スウェーデンの高齢者ケアに関する複眼的理解のすすめ,日本老年社会科学会編『老年社会科学』,第33巻3号,pp.490-497
  • 西下彰俊,2012,『揺れるスウェーデン』,新評論
  • 西下彰俊,2022,『東アジアの高齢者ケア-韓国・台湾のチャレンジ-』,新評論
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