口腔ケアの手順と必要なもの・機能維持に必要なことを解説します!

口腔ケアの手順と必要なもの・機能維持に必要なことを解説します!

介護が必要な高齢者の口腔内の状態を把握していない方が少なくありません。口腔内を健康に保つと口から食事ができたり、誤嚥性肺炎を予防したりとさまざまなよい効果を得られます。

口腔内を健康に保つための最たる方法が口腔ケアです。家族は口腔ケアを行うとき方法や必要物品がわからないと疑問を持っている方は少なくありません。介護での口腔ケアになるとさまざまな工程があり、工程によって目的が異なります。

介護度によっては自分で口腔ケアを行えますが、寝たきりでは介助者が行わなければいけません。そこでこの記事では、自立した場合と寝たきりの場合に分けて手順や注意点を解説します。

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口腔ケアとは?

口腔ケアは「口の中を清潔な状態を保っていく」ことが目的で、得られる効果は以下の通りです。

  • 口腔機能を維持するだけではなく向上も期待できる
  • 唾液の分泌量が増加し口腔内の自浄作用が向上する
  • 歯肉炎・虫歯・歯周病を回避できる
  • 細菌が繁殖しなければ発熱・感染症・誤嚥性肺炎を予防できる
  • 歯周病を予防すると心臓病と糖尿病の予防になる
  • 味覚が正常になり食欲が亢進する低栄養も改善される
  • 口を動かすと脳への刺激になり認知症予防になる
  • 入れ歯調節や虫歯治療で咬み合わせを改善すると体のバランスが維持できたり、認知症予防につながったりする

口腔ケアでは上記のようなさまざまな効果が得られます。反対に、口腔ケアを疎かにすると虫歯や歯周病だけではなく、糖尿病・心臓病・認知症にり患する可能性があります。そのため、生活習慣の一部として食事後に行いましょう。

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口腔ケアに必要なグッズ

高齢者の口腔ケアに使用するグッズはさまざまな種類があり、特徴は以下の通りです。

種類 特徴
歯ブラシ
  • 高齢者が持ちやすい物にする
  • 麻痺や拘縮があって普通の歯ブラシで握りにくいときは、柄にシリコングリップを付けたり、柄がわっかのようになっているタイプを選んだりすると使いやすい
  • 歯ぐきからの出血がある場合は、毛先が柔らかい歯ブラシにする
  • ヘッドが小さいタイプにすると歯の奥まで磨きやすくなる
  • 360度ブラシが付いているタイプは手首の向きをかえる必要がなく家族も使いやすい
  • 誤嚥予防には吸引ブラシが便利
歯間ブラシ
  • 歯と歯の間に入れやすいサイズにする
  • 大き過ぎると歯ぐきを痛める
  • L字タイプやまっすぐなタイプがある
義歯ブラシ
  • 普通の歯ブラシでは傷がついて入れ歯が痛む原因になる
  • 義歯ブラシは強度が異なる2種類のブラシが付いている
スポンジブラシ
  • 丸や長方形があり使いやすい形を選ぶ
  • 口が大きく開けられない方も使いやすい
舌ブラシ
  • 舌垢を取り除きたいときに便利
  • 毛の有無で選べる
  • 柄が長いタイプは舌の奥まで掃除できる
ガーグルベース(うがい受け)
  • 洗面台に移動できない場合に便利
ガーゼ
  • 口腔内全体の掃除やマッサージができる
口腔用ジェル
  • 水が不要
  • うがいができなかったり水を吐き出せなかったりする高齢者の口腔ケアに便利
コップ・吸い飲み
  • 移動できない高齢者にはコップや吸い飲みを使うとうがいがしやすい
  • 寝たきりの高齢者には吸い飲みが便利

高齢者の状態に合わせて選びましょう。

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口腔ケアを自立して行える方の手順

口腔内の汚れは虫歯や歯周病といった歯の病気だけではなく、心疾患・糖尿病・肺炎などの原因の一つにもなり、口腔ケアは病気にならないためには欠かせない生活習慣です。高齢者になると、口腔ケアを疎かにしてしまう場合も少なくありません。

ここでは、口腔ケアを自立して行える場合の手順を解説します。高齢者は入れ歯を使用している場合多いため、入れ歯の手入れも行いましょう。

口腔ケア前のチェック

口腔ケアを行う前にチェックするポイントがあります。口がどの程度開けられるか、開口状態を確認しましょう。

開口状態を把握すると、使用する口腔ケアグッズを選びやすくなります。開口状態が把握できたら無理のない範囲で開けてもらい、口腔内の状態をチェックし、必要なケアを行いましょう。

チェック場所 チェックポイント
歯の状態
  • 虫歯の有無
  • ぐらつきの程度(歯・差し歯)
  • 入れ歯のサイズ(歯ぐきとサイズが合っているか・ブリッジのゆがみの有無)
  • 歯または入れ歯に欠損の有無
口腔内の乾燥状態
  • 口角・口唇が乾燥していない
  • 口腔内の湿潤状態
  • 頬の内側・口唇・口角が白くなっていないか
  • 潰瘍や窪み、ひきつれなどの有無
口臭・出血の有無
  • 口臭の有無
  • 歯ぐきや頬の内側などから出血していないか
歯垢・歯石の有無
  • 汚れが溜まっているポイントを確認
  • 汚れ具合の程度
  • 歯ブラシや歯間ブラシで落とせるレベルか確認
歯ぐきの状態
  • 張りのあるピンク色の歯ぐきか
  • 触ったときに柔らかくないか
  • 歯との境目は腫れていないか
  • 潰瘍や腫瘍の有無
舌の状態
  • 乾燥して割れていないか
  • 舌垢の有無
  • えぐれ・欠損の有無
  • 舌に歯の痕がついていないか
  • 口内炎の有無

開口すると痛みがある場合は、口腔ケアをせずに痛みの原因を確認してください。

うがい

ブラッシングを始める前に、うがいをして口腔内にある残渣を取ります。誤嚥しないように高齢者の身体状態に合わせて以下のように対策しましょう。

  • 立位が保てるなら無理のない範囲で立って行う
  • 座位なら両足の足底を床に付け椅子に深く座る
  • 寝たきりなら頭側をギャッチアップ

体勢が整ったら、口腔内に水を含み誤嚥しないように注意しながら行います。うがいができない高齢者の場合は、ガーゼやスポンジブラシなどで残渣を掻き出してください。

ブラッシング(歯磨き)

ブラッシングができる高齢者には、残っている機能を少しでも長く維持できるように自分で行うように促しましょう。歯ブラシは45度の角度にし力を入れずに小刻みに動かすと、歯の広い面の汚れや歯ぐきとの境界の汚れが落ちやすくなります。

歯ぐきから出血がしやすいときは、優しくブラッシングします。ただし、出血する部位が多いときは中止をし、拭く程度にしましょう。

舌のお手入れ

舌に白くあるのが舌垢で、広い面積に厚い舌垢が付着していなければ問題ありません。厚くなった舌垢があると、口臭・虫歯・味覚異常の原因になるため除去が必要です。

舌垢を除去するには、舌ブラシやスポンジブラシを使用し、舌の奥から手前、中から外に行います。一度に取り除こうとすると力を入れすぎて舌が傷つき、奥に入れ過ぎると嘔気を催すため少しずつ行いましょう。

入れ歯のお手入れ

入れ歯を使用している高齢者は、入れ歯の手入れも必要です。入れ歯はブリッジ部分に汚れが溜まりやすかったり、入れ歯にも歯垢が付いたりするため口腔内に雑菌が繁殖しやすくなります。

専用のブラシを使用したり、汚れを落とす洗浄液に漬けたりして手入れをします。入れ歯を装着している歯ぐきをきれいにするときは、ガーゼやスポンジブラシが便利です。

うがい

仕上げのうがいの前に体勢を整え、口腔内の汚れを出します。体調が悪いときはガーゼ・スポンジブラシ・吸引するなどをして対応してください。汚れが残っていると、口腔内で雑菌が繁殖する原因の一つになります。

口腔内はさまざまな理由で汚れやすいため、隅々まできれいにしましょう。汚れが無くなったのを確認したら、入れ歯を装着してください。

寝たきりの人の口腔ケア手順

寝たきりで介護度が高い場合、すべての生活シーンにおいて介護が必要です。口腔ケアも例外でなく、寝たきりの高齢者に適した口腔ケアの手順を知らない家族は少なくありません。立位や座位とは体勢が異なるため、さまざまな異なるポイントがあります。

ここからは、寝たきりの高齢者に家族が口腔ケアを行うときの手順を解説します。安全に行うためにもご覧ください。

口腔ケア前のチェック

寝たきりの高齢者も自立して口腔ケアが行える高齢者と同じように、口腔ケア前は歯の状態や口腔内環境を確認しましょう。

チェックするためには、口を開けてもらわなければできません。しかし、過去に行った口腔ケアがトラウマになっていたり、頬の筋肉が固まっていたりすると拒否される場合もあります。口を開けてもらうための方法の一つとして「今から歯磨きをしたり、口の中をきれいにしたりします。その前に口の中を見せてください。」との声掛けは大切です。

一方、筋肉や骨の変化によって口が開いたままで過ごし、乾燥や汚れが酷く口腔内の環境が悪くなっている高齢者もいます。汚れが酷いときは、必要な口腔ケアグッズを準備してください。

寝たきりでも座位が保持できれば座位にしましょう。頭側と足側をギャッチアップし膝を曲げて膝の下にクッションを入れ、ベッドの足側にクッションを置き足が伸びないようにします。頭の下には枕やクッションなどを入れて、顎が引けた状態にすると口腔ケアを安全に行えるようになります。

座位になれないときは、横向きにして唾液が喉に流れないようにすると安全です。高齢者が顔を上に向ける状態で行うと、唾液や水が喉に流れ誤嚥の可能性が高まります。家族は高齢者と同じ目線の高さになるように座るか、ベッドの高さを調節しましょう。

口腔内の保湿

口腔内が乾燥していると汚れが付きやすくなったり、出血しやすくなったりするため保湿は大切です。口腔ケアを行う前に口腔内を湿潤状態にすると、汚れを落としやすくなります。

保湿の手順は以下の通りです。

1.手の甲に保湿剤を適量出す

2.スポンジブラシやガーゼに出した保湿剤を付ける

3.乾燥した部分に優しく保湿剤を塗る

保湿剤はジェル・スプレー・リキッドがあるため、使いやすく誤嚥しにくいタイプを選んで使用しましょう。

口腔清拭

口腔内を清拭するときは、乾いたスポンジブラシやガーゼを使用すると、硬いため口腔内が傷つく原因の一つになります。清拭の前にスポンジブラシやガーゼを濡らしてから絞り、口腔内を拭き取ります。

水分を含んだまま使用すると、水分が喉の奥に流れ誤嚥する危険があるため必ず絞ってください。方向は奥から手前に、歯・頬の内側・歯茎なども拭きましょう。

舌のお手入れ

口を大きく開けられ舌ブラシが使える状態なら、舌ブラシで舌垢を除去してください。方向は奥から手前で、力を入れずに除去します。力を入れ過ぎると、出血や痛みの原因になるため注意しましょう。

終わったら口腔ケア用のウェットティッシュやスポンジブラシなどで拭いて舌のケアは終了です。舌垢を落とすときも舌を保湿しておくと、汚れを落としやすくなります。

入れ歯のお手入れ

入れ歯は専用の歯ブラシを使ったり、洗浄液に漬けたりしてケアをします。口が開いたままの口腔内は乾燥して汚れが付着しやすいため、入れ歯自体の汚れを丁寧に落とすと雑菌の繁殖が予防可能です。洗浄液に漬けたあとは汚れがないか確認し、残っている場合は入れ歯専用の歯ブラシで汚れを落としてください。洗浄液を使用した場合の使い方は、それぞれのメーカーの手順通りに行いましょう。

入れ歯を装着したとき、はまっているか確認します。サイズが合っていなければ、サイズの合った入れ歯にするのも方法の一つです。サイズが合っていない入れ歯をそのままにしておくと、食べにくかったり話しづらかったりと弊害が発生するためです。

保湿ケア

口腔内の清拭を行ったら、仕上げの保湿ケアを行います。最初に行った保湿の目的は汚れを落とすためですが、最後の保湿ケアは口腔内を保湿するためです。口腔内が潤っていれば、傷・口臭・汚れの付着などを予防できます。

口唇が乾燥している場合も保湿をしましょう。口唇の皮が剥ける途中だったりかさぶたが付いていたりする場合は、無理に剥がしてはいけません。保湿のみ行い、自然に治るまで待ちます。

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口腔ケアの注意点

口腔ケアはどのような状態になっても重要です。口腔ケアを家族が行う場合、注意点も把握しておくと危険な状況を回避できます。例えば、以下の3つの内容です。

  • 口腔内に傷や潰瘍などがあるときは中止する
  • 誤嚥しないように体勢を整える
  • 口腔ケアの実施に不安なときはかかりつけの歯科医に相談する

健康やQOLを維持するために行った口腔ケアが原因で体調が悪くなっては本末転倒です。口腔ケアは身近なケアですが高齢者に健康上の不安がある場合、注意しなければならないポイントが発生します。少しでも不安を感じたなら無理せずに、かかりつけの医師に相談しましょう。

機能を維持するために自宅でできること

高齢者の機能を維持するために、自宅で実施できる内容があります。口は食事をするために必要な器官でとても大切です。食べる行為は栄養摂取だけではなく、気分転換にもなります。

食べる行為が無くなると、楽しみが一つ減ってしまい気分が落ち込んでしまう感齢者も珍しくありません。ここでは、一日でも長く機能を維持するために、自宅でできるリハビリを解説します。

口腔(唾液腺)マッサージ

唾液は唾液腺から分泌されています。唾液腺は耳下腺・顎下腺・舌下腺の3つで、唾液の分泌が少ないときにマッサージすると唾液が分泌されやすくなります。それぞれのマッサージの方法は以下の表をご覧ください。

マッサージの種類と順番 方法
1.耳下腺マッサージ
  • エラが始まる位置に親指以外の指を当てる
  • 前に向かってゆっくりと10回まわすようにマッサージをする
2.顎下腺マッサージ
  • 両手の親指の腹で顎の窪む場所に当てる
  • 耳の下から窪む場所までの5ヶ所を1ヶ所につき5回押す
3.舌下腺マッサージ
  • 顎の下にある窪む部分に親指の腹で上にあげるように押す
  • 目安は10回

耳下腺から舌下腺に向かって行いましょう。

口腔体操

口腔体操は「あいうえお」や「パタカラ」と発声して口を意識して大きく動かしたり、喉の筋肉を使ったりする誰でもできる簡単な体操です。「あいうえお」と発声すると、表情筋が鍛えられ腹圧をかけやすくなる効果が得られます。

「パタカラ」体操は、発声のために口や舌を意識して動かし、その結果、唾液の分泌や誤嚥の予防につながります。口腔ケア前や食事前に取り入れましょう。

機能維持につながる口腔ケア

今回は口腔ケアの目的・手順について解説しました。どのような体調になっても口腔ケアは重要です。病院や施設ではスタッフが行いますが、自宅では家族が関わる必要があります。

自立している場合や寝たきりの場合とでは手順やポイントが異なるため、解説した内容を確認してください。高齢者の健康とQOLを少しでも長く維持できるように、丁寧に口腔ケアを行いましょう。

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口腔ケアに関するよくある質問

Q.口腔ケアは毎日したほうがいいの?

A.本来であれば毎食行うのが望ましいですが、寝たきりや意識がない状態などでは難しい場合も多いですので、1日2回などでも構いません。口腔内の状況に応じて検討するしてください。汚染の程度がひどい場合には頻度を多くする必要があります。

Q.口腔ケアは誰に相談すればいいの?

A.介護保険などで医療的なケアを受けている場合には看護師や言語聴覚士(ST)に相談するとよいです。自立して口腔ケアができる方や看護師の介入がない場合には地域の歯科医師に相談するとよいでしょう。

そのほか在宅介護や日常のヘルスケアについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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