老健(介護老人保健施設)の薬は持ち込みなの?入所後の薬のシステムについて徹底解説!

老健(介護老人保健施設)の薬は持ち込みなの?入所後の薬のシステムについて徹底解説!

老健への入所相談で、一定量薬を持ち込みするように言われて戸惑った経験がある方が多くいます。高齢者の健康管理に薬は大切なために、どうしたらよいのか不安に思われるのではないでしょうか。

この記事では、老健の薬のしくみについて詳しく解説します。老健の薬で困ったときの対処法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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所有資格:介護支援専門員、介護福祉士、認知症介護実践者研修修了
専門分野:介護事業コンサルティング

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたく。介護保険施行前より中心メンバーとして、数々の特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。その後、大手介護事業者に入社し、介護付有料老人ホームやサ高住の立ち上げ、複数施設の運営、管理職育成などに関わる。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施設づくり」を積極的にサポートしている。講演・執筆活動も多数行っている。詳しくはこちら

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老健(介護老人保健施設)に入所するときの薬は持ち込みなの?

常用している薬がある方は、老健に入所する際に薬の持ち込みを依頼される場合があります

「薬を持ち込みする」とは、事前にかかりつけ医を受診して、入所後しばらくの期間分薬を処方してもらい、持参して入所する、という意味です。

ではどこの施設でもそうなのでしょうか?

薬が持ち込みかどうかは各老健施設によって異なる

老健に入所する際に、薬を持ち込みするかどうかは、それぞれの老健によって決められています。法律の決まりはありません。

持ち込みの施設もありますし、最初から施設で処方されるところもあります。

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老健(介護老人保健施設)に持ち込みした薬がなくなったら?

老健に持ち込みした薬を飲み切ったら、続きの薬は、老健で処方します。

老健には常勤の医師がいて、医学的な管理や薬の処方を行ってくれます。

しかし、老健で処方される薬は、持ち込みした薬から変更したり、減量したりする場合があります。

老健(介護老人保健施設)に入るときに8割は薬を見直す

老健に入所する際、8割は薬を見直すとのデータがあります。

平成28年の調査では、老健に勤務している医師のうち、入所時の薬の見直しについて、42.1%がほぼ必ず見直す、40.0%が場合によっては見直すと回答しました。8割以上の医師が、老健入所の際には薬を見直す、とわかります。

では、薬を変更する理由はなぜなのでしょうか?

薬を削減・変更する理由

老健入所中の薬を変更したり、減量したりする理由は、主に2つあります。

ガイドラインなどに沿って適正に薬を処方するためと、施設の費用負担が大きいためです。

1つずつ説明します。

薬を適正に処方するため

薬を削減・変更する理由の1つ目は、薬による副作用や健康被害を避け、必要な薬だけを適正に処方するためです。

高齢者は、内蔵機能の低下などから、薬による副作用が若い人より出やすく、問題になっています。

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、服用する薬が、5~6種類を超えると、転倒や薬物有害事象(広い意味での副作用)のリスクが高くなるとして、優先順位の低い薬を中止する(多種類の服用を防ぐ)、薬を減量するなどを勧めています。

調査では、老健の医師の58.2%が「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を参考に、不必要な投薬を減らすようにしていると回答しました。

老健入所後に、処方を見直した理由の調査結果を、表にまとめました。

1位…97.4% 中止しても影響がないと考えられる(有効性が確認できない
2位…94.4% 多剤併用(薬の種類が多い)
3位…93.9% 病状や他の処方薬剤との組み合わせ等により禁忌と判断

ほかにも副作用の回避など、健康面への配慮による変更理由が挙がりました。

施設の費用の負担が大きい

老健入所時に薬を削減・変更するもう1つの理由は、老健側の費用負担が大きいためです。

先ほどの、老健入所後に処方を見直した理由の調査結果では、「高額な薬剤」という理由も、86.3%ありました。

自分で飲む薬なのにどうして老健の費用の負担が大きいのだろう?と疑問をもつ方もいらっしゃるでしょう。これは、老健での薬の支払いシステムによるものです。

次は、老健での薬の支払いシステムについて説明します。

引用元

(全国老人保健施設協会 「介護老人保健施設における薬物治療の在り方に関する調査研究事業 報告書」)

(日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」)

老健(介護老人保健施設)で薬を処方してもらった時の支払方法は?

老健での薬の支払い方法は、基本報酬に含まれる「包括払い」です

入院・入所中の薬の支払いシステムや、老健での支払いについて説明します。

入院・入所中の薬の支払いシステム

入院や入所中の治療や薬の支払いシステムは、「包括払い」と「出来高払い」の2種類があります。

「出来高払い」とは、診察や処置、薬の処方などの医療行為を受けた分だけ支払うシステムです。

皆さんが普段、外来で受診する際の支払いと同じです。検査や、診察してもらった分だけ支払います。

一方、「包括払い」は、入院や入所中の治療に関して支払い金額が一定料金に決まっているシステムです。いくら診察・処置をしても費用は変わりません。

老健(介護老人保健施設)に持ち込みした薬の続き|老健が処方するが切れた後は?

老健は、「包括払い」システムです。

老健に入所してから薬にかかる費用は、月額で支払う基本報酬に含まれます。薬をいくら処方してもらっても、追加の支払いは必要ありません。

高額な薬の処方が必要になると、老健に支払う月額費用の金額を超える場合もあり、老健の負担が大きくなるといえます。

老健(介護老人保健施設)で薬を処方してもらった時の費用は?

では老健が薬を処方した時の費用はいくらなのでしょうか?

実は老健が支払う薬の金額は、皆さんが、外来で病院を受診して支払う費用よりずっと高くなっています。

老健が負担する薬の費用について説明します。

老健(介護老人保健施設)では医療保険が使えないって本当?

老健では、医療保険が使えません。

老健は介護保険の施設です。介護保険と医療保険は、同時に利用できない決まりがあります。そのため、老健入所中の診察や薬は、薬の代金の全額分、老健が負担します。

例えば、もともと1,000円の薬でも、私たちが病院を外来で受診して処方されれば、300円の支払いで済みますが、老健で処方した場合、老健が1,000円分すべて支払わなければなりません。

これは、入所期間中に受ける治療すべてに該当します。外出中や外泊中にうっかりかかりつけ医などを受診すると、治療費には医療保険が利用できず、全額老健に請求されます。

老健入所中は、老健の医師が健康管理をするため、不必要な往診や通院をさせてはいけない決まりです。

万が一病院を受診したい時には、老健の医師に許可をとる必要があります。老健の許可なく受診した費用は、全額自費で支払う場合もあるため、注意が必要です。

薬の費用の上限は施設ごとに異なる

老健で取り扱う薬の費用の上限は、法律では決まっていません。各施設で決められています。

参考までに、平成28年に出された、老健入所時の薬価(服用している薬剤の単価の合計)の報告を見てみましょう。

薬価は、300円未満が63.5%と最も多いですが、1,000円以上の利用者も4.6%いました。

施設ごとに取り扱える薬や金額はさまざまで、入所を考える場合には、その施設での薬について、確認が必要です。

引用元

介護保険法

(全国老人保健施設協会「介護老人保健施設における薬物治療の在り方に関する調査研究事業 報告書」)

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老健(介護老人保健施設)に持ち込みした薬から変更しても影響はないの?

老健に持ち込みした薬から変更したら、何か悪い影響がないのか心配な方もいるでしょう。

調査報告では、老健に持ち込みした薬の変更が、ADL(日常生活自立度)などへ与える影響は、「変化なし」が多い結果でした。

薬の変更の管理や、変更の結果、影響について説明していきます。

薬の変更は医師がしっかり管理する

老健は、常勤の医師がいて、医学管理を行ってくれます。

平成27年の調査報告では、老健の医師の46.6%が1週間に1回以上の頻度で、利用者に定期的な診察をしていると回答しました。

次に、薬の変更結果を見てみましょう。入所時と2カ月後の、薬剤費と薬剤種類数、ジェネリック率の変化を表にまとめました。

入所時 2カ月後
薬の費用(1日あたり) 407.2円 301.9円
薬剤種類数平均 6.1 5.5
ジェネリック率 49.8% 62.8%

入所時と比較して、薬剤の数が減りジェネリック薬を利用する割合が増え薬の費用が減っているとわかります。

しかし、疾患別に薬の増減を調べた結果では、全員一律に薬が減っているのではなく、病気や人によってはむしろ薬の量が増える場合もありました。

老健では、減らせる薬は減らすけれど、医師が定期的に診察をして、その方の状態に合わせて調節しているといえます。

薬を変更した影響

老健で薬を変更した影響に関する調査を示します。

薬剤種類数の増加・減少がADLや認知症自立度に与える影響は、「変化なし」の割合が最も多く、変化も「悪化」より「改善」が多い結果でした。

(ADL:日常生活自立度。起居、移乗、移動、食事、更衣、排泄、入浴、整容など日常生活を送るために必要な動作)

(認知症自立度:高齢者の認知症の程度による日常生活自立度の程度)

また、薬を見直す影響は、悪い影響だけとは限りません。

服用薬剤数が減れば、高齢者で問題の多剤服用による副作用や、服用誤りが減る効果も期待できます。薬の変更の影響については、さまざまな視点で見るのが大切です。

それでも薬の変更が嫌な場合はどうしたらよいのでしょうか?

薬の変更や減量は断れる?

薬の変更がどうしても不安で嫌な場合は断れます。

令和3年度の報告では、老健入所時に86.4%の医師が薬の減量・減薬について本人・家族へ説明していると回答しています。

しかし、説明したうえで本人・家族に反対されており、半数近くの医師が薬の変更に反対された経験を持つとわかります。

また、薬の変更に反対された時には、医師や薬剤師が説明して、理解を促す場合が多いですが、それでも合意が得られない時は、以下のように対応が分かれました。

  • 減量・減薬せずに施設利用…56.3%
  • 施設利用をするかどうかを含め改めて家族と相談…35.5%

薬の変更がどうしても嫌な場合は、老健の医師に相談してみましょう。薬変更の理由や目的などを確認して、判断しましょう。どうしてもお互いに折り合いがつかない場合は、施設の利用自体も、検討が必要かもしれません。

引用元

(全国老人保健施設協会「介護老人保健施設における薬物治療の在り方に関する調査研究事業 報告書」)

(全国老人保健施設協会「介護老人保健施設における薬剤調整のあり方とかかりつけ医等との連携に関する調査研究事業報告書」)

老健(介護老人保健施設)に薬が理由で入れないときがある

次に、高価な薬を利用しなければならない方は、老健への入所を断られる可能性がある点について、説明します。

高価な薬は処方できない

老健では高価な薬は処方できません。

老健で処方する薬の料金は、基本報酬に含まれます。老健の薬の費用に関する2021年の論文では、老健が赤字にならない薬の費用は、約233円/日と算出しました。

つまりこれ以上高価な薬を処方する場合、「入所を受け入れると赤字になる」と意味しています。

入所者1人ずつの薬の費用では、この金額を上回る場合もありますが、老健の安定した経営のためには、全員の平均の費用としては下回る必要があるわけです。

老健(介護老人保健施設)の医療システムは検討の必要性が指摘されている

老健入所者、老健ともに、負担が大きくなる現状のシステムについては、以下の点で、変更の必要性が指摘されています。

  • 老健入所中にも、医療保険が利用できるようにしてほしい
  • 薬の費用を、すべて老健の負担であるのも検討が必要

しかし、高齢化社会が進む日本では、医療費の増大が問題です。老健で医療保険が利用できるようにすれば、国の医療費が増大します。

現状では、老健の負担が大きく、高い薬を利用する方は断らざるを得ない状況ですが、改善する手立てが見つかりにくいといえます。

引用元

介護老人保健施設の投薬コストに関する実態調査

介護老人保健施設の問題点と要望

薬のために老健(介護老人保健施設)に入れないときは持ち込みしたらいい?

薬が理由で老健の入所を断られたら、入所日数分の薬を持ち込みして入所したらよいのでは?との疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

結論として、日数分の薬を持ち込みして入所できるかどうかは、施設の判断によります。

薬のために老健への入所を断られた場合に、まずはできることについて説明していきます。

主治医・老健に相談する

薬のために入所を断られた場合は、まずは主治医や老健に相談しましょう。

老健で取り扱いのある薬に変更しても問題ない、と判断されればそれがスムーズです。詳しい相談が難しい場合は、老健から主治医に相談をお願いしてもよいでしょう。

薬の変更などが難しい場合は、薬の持ち込みを相談する方がいらっしゃいますが、対応は施設によって異なり、難しいかもしれません。

なぜなら老健には常勤の医師がいて、入所中の薬の管理を行う決まりだからです。主治医にも、長期間の処方は断られる場合があるでしょう。

ですが実際には、入所日数分の薬を持ち込みして、入所を許可された、との話を耳にする場合もあります。どのようにして許可されるのか、入所日数はどうなのか、などの詳細はわかりませんが、まったくない話ではないようです。

自宅やほかの施設を考える場合もある

最終的に薬の処方について、ご本人・ご家族と老健とで折り合いがつかない場合は、自宅やほかの施設を探す必要がでてきます

選択肢としては、以下の3つです。

  • 別の老健を探す
  • 別の施設を探す
  • 在宅を考える

薬の金額や種類は、老健ごとの決まりなので、別の老健であれば入所が許可される場合があります。

それでも見つからない場合は、在宅やほかの老人ホームなどを検討しましょう。まずは希望条件と併せて、ケアマネジャーに相談するのがよいでしょう。

また「老健以外にどこの施設に入れば良いか分からない…」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。

ケアスル介護では、入居相談員が施設ごとに実施するサービスや立地情報などをしっかりと把握した上で、ご本人様に最適な施設をご紹介しています。

「身体状況に最適なサービスを受けながら、安心して暮らせる施設を選びたい」という方は、まずは無料相談からご利用ください。

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老健(介護老人保健施設)の薬のしくみを理解して自前の薬を飲み終わったら変更される可能性があると知ろう!

ここまで老健の薬について説明してきました。

老健に入所中の薬は、老健が処方し、老健が全額支払うため、薬を処方すればするほど老健の費用負担が大きくなります。また、高齢者では、薬の多用による健康被害が問題です。

そのため、老健入所時には、薬を削減・減量される場合があります。

薬の変更がご心配な方は、まずは主治医や老健に相談してみましょう。説明を聞き、納得したうえで、入所できるとよいでしょう。

そのほか老健(介護老人保健施設)について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

老健(介護老人保健施設)の薬は持ち込み?に関するよくある質問

Q1 老健に入所してから薬が変わる場合は、教えてもらえるのでしょうか?

薬が変更になる前には、教えてもらえる老健が多いですが、緊急の場合や老健によっては、連絡がなかったり間に合わなかったりする場合があるようです。教えてもらいたい場合は、事前に伝えておくとよいでしょう。

Q2 老健で利用できない薬は法律で決まっていますか?

老健で利用できない薬などの、法的な決まりはありません。老健ごとに決められているため、入所したい老健があれば直接問い合わせるのがよいでしょう。

 

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