老健(介護老人保健施設)の費用は国民年金だけでの支払いは難しい場合がありますが、厚生年金と合わせれば支払い可能なケースはあります。
老健は公的施設であることから入居一時金が無く、月額費用が他の施設と比較して安くなっているため、年金だけで入居できることもあるのです。
本記事では、老健に年金だけで入居できるか、老健の費用を減免する措置があるかどうか、さらにほかの老人ホームの場合は年金だけで賄えるのかどうかについて解説していきます。
老健(介護老人保健施設)の費用は年金だけで払える
老健の費用は、すべての人が加入する年金制度である国民年金だけでは支払いは難しい場合がありますが、会社員や公務員が加入する厚生年金を合わせれば支払いできるケースがあります。
老健でかかる月額費用は居室や本人の負担能力によっても異なりますが、およそ6~17万円程度で収まる場合がほとんどです。
厚生年金と国民年金の両方支給されている人は月20万円程度支給されるので入居できますが、国民年金だけだと5~6万円程度なので入居が難しいことになります。
とはいえ、給付される年金は厚生年金と国民年金の違いや納めた保険料によって異なるので、まずは自分が受け取ることができる保険料から確認していきましょう。
給付される年金額の確認方法
老健の費用を確認する前にまずは自分の年金の支給額を確認しておきましょう。
給付される年金や会社員や公務員が加入する厚生年金と国民全員が加入する国民年金の違いにもよりますが、毎月数万円~20万円程度の場合が多いです。
年金の確認方法は銀行口座の明細を確認することです。年金は2カ月に1度給付されるので、入金額を2分の1することで毎月の入金額を確認することができます。
まだ年金が支給されておらず、将来いくら年金を受け取ることができるのかわからない人は、日本年金機構の「ねんきんネット」を確認することで自分の支給額を確認できます。
厚生年金・国民年金の平均受給額
国民年金とは、日本に在住している満20~満60歳までのすべての人が加入する年金制度です。
自営業の方や専業主婦の方も国民年金に加入しています。
一方で、厚生年金とは会社員や公務員などが加入する年金制度です。厚生年金に加入すると自動的に国民年金に加入していることになるため、会社員や公務員の方は国民年金と厚生年金を両方受け取ることができるのです。
厚生年金 | 国民年金 | |
---|---|---|
2016年度 | 14万5638円 | 5万5373円 |
2017年度 | 14万4903円 | 5万5518円 |
2018年度 | 14万3761円 | 5万5708円 |
2019年度 | 14万4268円 | 5万5946円 |
2020年度 | 14万4366円 | 5万6252円 |
(出典:厚生労働省年金局「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)
ピッタリの施設を提案します
老健(介護老人保健施設)の費用を年金だけで払えない場合の対処法
年金だけで老健の費用を支払えない場合の対処法としては、生活保護の受給や世帯分離などが対処法として考えられます。それぞれの対処法について解説していきます。
- 減免制度を利用する
- 世帯分離をする
- 生活保護を受給する
減免制度を利用する
老健の費用を年金だけで支払うための一つの方法として、減免制度を利用する方法があります。利用できる減免制度として、主に以下6つの制度が挙げられます。
- 老健を利用した際の1か月に支払った自己負担が上限を超えた場合、超過して支払った分のお金が返還される、高額介護サービス費
- 介護保険施設に入所している方で所得や資産などが一定の基準以下の方に対し、負担限度額を超える居住費と食費が支給される、特定入所者介護サービス費
- 同一の医療保険の世帯内で医療保険と介護保険の両方に自己負担が発生した場合、合算後の負担額が決められた上限額を超えた場合に軽減できる、高額医療・高額介護合算制度
- 主に居住費と食費において、所得に応じた減額を受けることができる、介護保険負担限度額認定
- 該当する年の1月1日から12月31日までの1年間で、自分や家族が合計10万円を超える医療費を支払った場合、超過分を所得から控除できる、医療費控除
- 自治体ごとに用意された地域支援事業
各制度の詳細や減免額などについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
世帯分離する
世帯分離とは、一つの家に同居しながらも住民票を二つの世帯に分けること(親と子、夫婦間など)を言います。
例えば以下のような場合です。
同一世帯 | 父親(世帯主)・母親・自分・自分の配偶者・自分の子 |
世帯分離 | ①父親(世帯主)・母親 ②自分(世帯主)・自分の配偶者・自分の子 |
世帯分離をすることによって、一世帯当たりの所得が減るため「高額介護サービス費」 などの減免制度の負担限度額を上げることができるので、結果的に月々の支払額を抑えることができます。
また、介護保険料も所得に応じて負担額が変動するので、世帯ごとの所得を減らすことによって介護保険料も減らすことができます。
ただし、世帯分離をしても、それぞれの世帯に高所得者がいた場合などは、国民健康保険料の支払額が高くなってしまうこともあるため、注意が必要になります。
生活保護を受給する
年金だけで老健の費用を支払えない場合の一つの対処法としては、生活保護の受給があります。
生活保護を受給するには、世帯年収が最低生活費に満たないことが条件となっている他、様々な条件があるため、生活保護の受給をしたい場合は、市区町村の生活支援担当窓口やケアマネジャーなどに相談しながら進めることが大切です。
ピッタリの施設を提案します
年金だけで入れる老人ホームの探し方
年金だけで入れる老人ホームの探し方として、主に以下3つの方法が挙げられます。
- 多床室(相部屋)のある老人ホームを探す
- 立地の悪い老人ホームを探す
- 築年数が古い老人ホームを探す
上記のような特徴を満たしている老人ホームであれば、費用を比較的安く抑えることができますが、それぞれデメリットも存在します。
そのため、以下の記事を参考にしながら、デメリットも考慮した老人ホーム探しをするようにしましょう。
老健(介護老人保健施設)以外で年金で賄える老人ホームはある?
老人ホームの費用を年金だけで支払いたい場合に、老健のほかに支払いができる老人ホームはあるのでしょうか。
ここでは公的施設と民間施設に分けてそれぞれの施設でかかる費用は年金だけで賄えるのかどうかについて解説していきます。
公的施設
上述したように公的施設は民間施設と比較した場合に経済的負担が少ないということから人気がある施設です。
老健のように年金だけで費用を賄うことができる場合もあるので詳しく見ていきましょう。
公的施設には老健を含め3つの種類があります。
- 特養(特別養護老人ホーム)
- 介護医療院
それぞれの施設の費用が年金だけで賄えるのか解説していきます。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、主に要介護3以上の方が入所の対象となる介護施設です。
老健と同じく国からの補助金により安い費用で入所できる方もいることや、介護サービスが充実しており、終身に渡って利用することができる点が特徴として挙げられます。
常勤の医師はいないため、日常的に高度な医療ケアを受けることはできませんが、長期にわたって手厚い介護サービスを受けられることは大きなメリットと言えるでしょう
老健と同じく入居金が必要なく、月額費用は居室のタイプなどによっても異なりますが5~15万円程度です。入居金が掛からないこともあり、年金だけでも支払える可能性が高い施設となります。
ただし、恵まれた環境である分だけ人気が高く、施設によっては入居待ちがあることも多々あります。
都心ではなく地方部であれば、入居待ちがなく入所できる場合もあるため、立地にこだわりが無い場合は地方の特別養護老人ホームも選択肢に入れてみることも大切です。
介護医療院(介護療養型医療施設)
介護医療院とは、急性期(病気になり始めた時期)の治療を終えたものの寝たきりなどで在宅介護が難しい要介護者に対して、入浴・排泄・食事などの日常生活支援から長期的な療養上の世話を実施する施設です。
医師の配置が義務付けられており、他の施設では難しい喀痰(かくたん)吸引や経管栄養などの医療的なケアを比較的安価な費用で受けることができるのが特徴です。
入居金は無料となっていますが、月額費用が9~17万円程度かかるため場合によっては年金だけで費用を賄うことは可能です。
ただし、長期の医療的療養を行うことが目的の施設となるので、日常生活上の介護(食事・入浴など)のみが必要な場合はそもそも選択肢に入らないことも多くあります。
また介護療養型医療施設は、2024年3月に廃止される予定ですので、今後は「介護医療院」という名目に一本化されます。
民間施設※社会福祉法人が運営するものも含む
民間施設は公的施設と比較して種類が豊富で選択肢が広いため、富裕層向けの高額な老人ホームもありますが、逆に生活保護受給者を受け入れている介護施設なども少なくありません。
調査によると、以下で解説する住宅型・介護付きの有料老人ホームでもそれぞれ49.0%、11.3%の施設が生活保護受給者を受け入れていることがわかっています。
※出典 公益財団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」
ここではそれぞれの民間施設の費用と年金だけで賄えるのかについて解説していきます。社会福祉法人が運営するものも含めると、民間施設は以下の5種類あります。
- 住宅型有料老人ホーム
- ケアハウス
- グループホーム
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、介護サービスの提供はなく基本的には食事サービスと緊急時の対応、レクリエーションの提供などをしています。
介護サービスが必要となる場合は外部の介護事業者と個別に契約しますが、施設によって人員体制が異なるので場合によって介護付き有料老人ホームと同程度の体制を整えている施設もあります。
入居金の全国平均は373.2万円、月額費用の平均額は18.9万円となるため基本的には年金だけで費用を賄うのは難しいですが、施設によっては生活保護受給者を受け入れている施設もあります。
ケアハウス※社会福祉法人が運営
ケアハウスとは、自立して生活するのが難しい60歳以上の高齢者を対象にした施設で食事や洗濯などの生活支援サービスを受けながら生活することができる施設です。
助成制度があるため低所得者の高齢者でも入居できることが特徴となっています。
少しの支援で自立した生活ができる方向けの自立型のケアハウスと、すでに介護が必要な方向けの介護型のケアハウスがあり、それぞれで初期費用、月額費用が異なります。
自立型の初期費用は0~30万円程度、月額費用は7~13万円程度で済むので初期費用の支払いができればその後は年金だけで賄うこともできるでしょう。
また、介護型の初期費用は数十万~数百万、月額費用は16~20万円かかるので年金だけで支払うのは少し厳しいと言えるでしょう。
グループホーム
グループホームとは、認知症の高齢者が1ユニット9人までで家庭にいるような環境で共同生活を送り、入浴や排せつ、食事などの介助や機能訓練、レクリエーションなどを受けることができる施設です。
入居の対象となるのはおおむね身辺の自立ができている高齢者で、共同生活を送ることに支障がない人を対象としています。
グループホームの入居金の全国平均は9.5万円、月額費用の平均は12.6万円なので認知症を患っている場合は、厚生年金と国民年金の両方を受け取っている場合は入居することも可能と言えるでしょう。
予算内の施設を探したい、自分に合った施設を探したいという方は、まずはケアスル介護で無料相談をしてみてはいかがでしょうか。
ピッタリの施設を提案します
老健(介護老人保健施設)の費用は年金だけで払えるかのまとめ
老健の費用を年金だけで支払える可能性は十分にあります。
ただし、その場合は厚生年金と国民年金をセットで受給している必要がある他、老健に入所する際に多床室などできるだけ費用の掛からない部屋を選んでおくことがポイントです。
また、年金だけで支払いが難しそうな場合も軽減制度を利用することで毎月の費用を抑えることができるので入居できる可能性を高めることができます。
老健以外でも有料老人ホームなどで所得が低い方向けのプランのある施設もあるので、年金だけで支払える老人ホームを探している場合は該当プランのある施設を積極的に探しましょう。
老健の費用は、満20~満60歳までのすべての人が加入する年金制度である国民年金だけでの支払いは難しい場合がありますが、会社員や公務員が加入する厚生年金を合わせれば支払いできることもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
老健でかかる月額費用は居室や本人の負担能力によっても異なりますが、およそ5~17万円程度で収まる場合がほとんどです。老健は公的機関が運営している老人ホームのため、入居一時金は0円です。詳しくはこちらをご覧ください。