• 認知症
  • 【公開日】2023-02-17
  • 【更新日】2023-05-10

寝過ぎは認知症の発症リスクを上げる?寝すぎにならないためにすべきことも紹介

寝過ぎは認知症の発症リスクを上げる?寝すぎにならないためにすべきことも紹介

年齢を重ねると外出する機会が減り、家での過ごし方を見ていると、やることがなくて寝てばかり……。

昼間に居眠りばかりでは、認知症が進行していないか心配に思う方は多いのではないでしょうか。

本記事では、認知症発症を予防する昼寝の方法や、昼寝以外の認知症になる日中の過ごし方をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科 医長
所有資格:日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医、日本救急医学会認定ICLSコースディレクターなど
専門分野:心臓血管外科、急患科、 脳神経外科、総合内科,、総合内科、整形外科など

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、2012年より国立病院機構大阪医療センターで心臓血管外科医員として従事する。 現在は国家公務員共済組合連合会大手前病院で救急科医長を務める。 専門分野は心臓血管外科をはじめ、急患科、 脳神経外科、総合内科,、総合内科、整形外科など多岐にわたる。 主な研究内容・論文として「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」(執筆者)などがある。詳しくはこちら

所有資格:一般社団法人 薬機法医療法規格協会 薬機法医療法遵守広告代理店認証
専門分野:化粧品や健康食品における広告表現
職業: 薬機法管理者

2003年からヘルスケア情報サービス事業・治験支援事業を行っている企業にて、主にDTC広告の企画営業に携わる。 4年ほど企画営業を担当後、自社のヘルスケアサイトの運営、製薬会社・健康食品メーカーの記事広告の制作を行うが、この時に薬機法(薬事法)についての知識を学び、広告記事の精査を経験。 2017年退社。現在は臨床研究の支援を行う企業にて研究事務局支援に携わる。東京在住。 現在は本業の傍ら化粧品や健康食品の企業の広告等の薬機法チェックを行う。詳しくはこちら

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寝すぎは認知症の発症リスクをあげる?

九州大学の小原知之氏が行った研究によると、睡眠時間が5時間~7時間未満の人々と睡眠時間が10時間以上の人々を比較すると認知症の発症リスクが2.23倍に上昇していることがわかっています。したがって、寝すぎることによって認知症の発症リスクは上がることがわかっています。

ただし、同研究では同様に睡眠時間が5時間未満の人も研究対象としており、5時間以上7時間未満の人々と比較すると認知症リスクが2.64倍となっていることから、適切な時間で睡眠をとることが重要であると言えるでしょう。

参考文献:Tomoyuki Ohara, Takanori Honda, Jun Hata, Daigo Yoshida, Naoko Mukai, Yoichiro Hirakawa, Mao Shibata, Hiro Kishimoto, Takanari Kitazono, Shigenobu Kanba, Toshiharu Ninomiya Association Between Daily Sleep Duration and Risk of Dementia and Mortality in a Japanese Community.Journal of the American Geriatrics Society. 2018 10;66(10);1911-1918. doi: 10.1111/jgs.15446.

認知症の人が常にウトウトしているのはなぜか

加齢による体力の低下やホルモン分泌の乱れによって、睡眠の質は落ちていきます。それにより、夜間の睡眠が浅くなり眠れないと訴える方が増えるのです。

おまけに、日中は静かな環境にいると、夜に眠れていない方の眠気を誘います。活動がほとんどなく座っている時間が多いと、脳を動かす機会が減りウトウトなんていう現象が起こるわけです。

適切な睡眠なら日中は眠くならない

適切な睡眠時間は6〜7時間が目安なのですが、実際は「人による」というはっきりしない答えが正解です。あの有名なナポレオンの睡眠時間は3時間といわれていますし、サッチャー元英首相の場合は1日4時間しか寝ていなかったそうです。

自分にとって適切な睡眠時間だという基準が3つあります。

  • 日中眠くならないこと
  • 頭がスッキリしないと感じないこと
  • 疲労感が残っていないこと

これらがすべて当てはまっていれば、自分にとって適切な睡眠がとれている状態だといえるのです。

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認知症の傾眠傾向について

「傾眠傾向」という言葉を聞いたことがありますか?

傾眠傾向とは、意識障害の一種です。寝過ぎだなと感じていたものが、認知症 や、何かしらの病気によるサインかもしれません。ここからは、手遅れにならないためにも傾眠について詳しくみていきましょう。

傾眠で注意すべき点

傾眠傾向の注意点は、認知症や硬膜下血腫、内臓による疾患が関係している可能性があります。傾眠傾向が起こる要因は、不規則な生活習慣や加齢が原因でおこる寝不足によるものから、頭をぶつけたりして硬膜下に血溜まりができて意識障害を起こしている状態、低血圧による意識障害、もしくは脱水症状や臓器の異常から、脳から休息をとるように体に表れた結果とさまざまです。

また、睡眠は認知症の進行と意識状態に深く関わっています。生活リズムが乱れて睡眠不足になると、日中に寝てしまいます。寝過ぎにより睡眠の質が落ちると、日中も頭がぼんやりしている状態になってしまうのです。それが意識障害につながるので、認知症を進行させてしまうという悪循環が生まれてしまうのです。

意識障害の段階

意識障害の段階は4段階(正常以外)に分類されています。

  • 正常:意識清明
    …意識がはっきりしている状態です。判断も意思疎通も問題ありません。
  • 傾眠
    …ウトウトしていて、刺激がないと眠ってしまう状態です。外部からの軽い刺激で覚醒しますが、放っておくとまた眠ってしまいます。
  • 昏迷(こんめい)
    …大声や強めの刺激でないと起きません。起きてもすぐに眠ってしまう中程度の状態です。
  • 半昏睡(はんこんすい)
    …体をつねるなどの強めの刺激を与えると、目は開きませんが手で払い除けたり、しかめっ面をするなど不快感を回避しようとする状態です。
  • 昏睡(こんすい)
    …強い刺激を与えても、覚醒しません。半昏睡と違うのは、痛みを与えても反応がありません。しかし、排泄や反射があるので脳死とは違う状態です。

認知症の方は傾眠の症状が強くみられるので、注意しましょう。

傾眠により起こる誤嚥や転倒、せん妄のリスク

傾眠傾向がみられたら、起こり得るリスクにも注意しなければなりません。

まずは誤嚥のリスクです。飲み込む力が弱い高齢者は、誤嚥のリスクが高いのです。それに加え、介助者が傾眠に気づかず食事をさせてしまった場合、気管支へ食事が流れ込んでしまい、誤嚥に至る可能性も高くなってしまいます。

傾眠傾向であれば注意力が散漫しています。それにより、足元に注意がいかず、躓いたりして転倒のリスクが高くなります。また、ぼんやりしていてソファーやベッドから転落したりする危険性もあるのです。

傾眠が進行していくと、せん妄になるおそれがあります。せん妄とは、精神機能の障害です。注意力や思考力が低下し、見当識障害、幻覚・幻聴、興奮状態に陥ることもあるでしょう。

認知症を防ぐには傾眠傾向にならない生活を心がける

加齢による身体機能の低下で、十分な睡眠がとれないのは仕方がないことです。しかし、今の生活を見直し日常を意識するだけで、傾眠傾向や認知症を予防することがことができます。

では、実際に何に気をつけていけば予防ができるのかをご紹介します。

水分補給

脱水が原因によって、傾眠傾向やせん妄になることがあります。

水分が足りていないと、脳と体を繋ぐ神経伝達がスムーズに通らなくなります。そうなると、脳に支障をきたすことが多く、傾眠やせん妄のリスクが高くなります。

認知症の有無にかかわらず高齢になるとのどの渇きを感じにくくなりますので、こまめに好きな飲み物を勧めてあげたり一緒に飲む機会を作るのも効果的です。

適度な運動

日中の活動(運動)により、心拍数が上がるので体温も上昇します。体温の変化は、体内時計を正しくさせ、良質な睡眠を導くのです。アミロイドβというアルツハイマー型認知症に関連があると考えられている物質は睡眠中に脳内から血液中に排出されるため、適度な運動をして睡眠の質を上げることは認知症予防につながります。

また、適度な運動はストレスの緩和にもなるため、うつ病のリスクも低くなります。

足腰が弱く、運動が難しいという方には、まずは洗濯物を畳むことやテーブルなどの拭き掃除といった容易にできる家庭的なことからでもよいでしょう。外出ができるのであれば、一緒に買い物や散歩に出かけると、運動にもストレス緩和にもなるでしょう。

日中は行動して、生活にメリハリをつけることが予防のポイントになるのです。

食事の量や時間

食事も原因の一つになっていることがあります。食事後、お腹がいっぱいで眠くなった経験は皆さんにもあると思います。たくさん食べ過ぎると、動けなくなり眠くなるのは、消化と吸収のために、胃や腸へ血液を集中させなければならなくなるためです。また、お米やパン、麺類、お菓子などの糖質が多く含まれる食材を過剰摂取することで眠気の原因になります。

また、食事の時間がその日によってバラバラだと、体内時計が乱れる原因となるので注意が必要です。そして、食事に時間がかかり過ぎると、食事性低血圧を起こし意識障害になってしまうこともありますので、食事時間は30分を目安にするとよいでしょう。

薬の調整

規則正しい生活に、睡眠時間も十分なはずで、その他に心当たりがない場合もあるかもしれません。

もしかすると、日中に内服している薬の副作用に睡眠を促しているものがあったり、夜間に使用している睡眠薬の効果が日中に残ってしまっている可能性も考えられます。

たとえば、認知症の一種であるアルツハイマー病に効果のある「メマンチン」ですが、ふらつきや眠気といった副作用がみられることがあるのです。他にも、睡眠障害を改善するために内服している睡眠薬が身体に合わず、副作用の眠気が朝方に起こることもあります。

生活習慣を改善しても、日中にウトウトしている様子が伺えるならば、薬による副作用を疑い、医師や薬剤師に相談してみるのがよいです。

寝過ぎも寝不足も認知症のリスク

睡眠時間が10時間以上の方は、認知症が進行するリスクがあるとお伝えしてきました。反対に、睡眠時間が5時間未満のショートスリーパーも同様に、認知症のリスクが高まるという研究結果が出ています。

適切な睡眠時間は人それぞれですし、長すぎても短すぎても認知症のリスクがあるならば、認知症防止に効果的な睡眠とは一体どのようなものなのでしょうか。

ここからは、寝過ぎと寝不足による研究のデータの解説と、寝過ぎと昼夜逆転を予防する体内時計の整え方をご紹介します。

寝過ぎは認知症のリスクが2倍になる

九州大学の小原知之氏らの研究で、日本の高齢者を対象にした研究では、10時間以上睡眠をとっている方は、認知症のリスクが2.23倍になることがわかりました。

また、米国でも同様に長過ぎる昼寝は、認知症の発症リスクがあるという結果が出ています。1日に1時間以上の昼寝をする方と、昼寝時間が1時間未満の方を比べると、1.4倍もアルツハイマー病になるリスクが上がったのでした。(※)

脳内に蓄積する不要な物質が蓄積することが原因で、認知症の確率が上がっていることがわかっているのですが、詳しくはまだわかっていないそうです。

※参考文献:Peng Li, et al. Alzheimers Dement. 2022 Mar 17. doi: 10.1002/alz.12636. Online ahead of print.

寝不足も認知症のリスクは2.6倍

反対に、寝不足も認知症のリスクは上がります。こちらも九州大学の小原知之氏らの研究結果で、睡眠時間が5時間未満の方の場合は2.64倍です。また、米国の調査でも、睡眠時間が7〜8時間の人と比較して、認知症の発症リスクが2倍になることがわかりました。(※1)

最近では、夜更かしをする成人も「若年認知症」になるケースが増えてきています。

体内時計を整えることで寝過ぎや昼夜逆転を防ぐ

寝過ぎを防ぎ、認知症のリスクを下げるには、体内時計を整えることが一番の方法です。体内時計を調整するには「メラトニン」というホルモンが大きく影響しています。

メラトニンは、脳から分泌されるホルモンであり、睡眠ホルモンとも呼ばれています。朝日を浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、覚醒状態に切り替わります。その後、15時間前後になると、メラトニンが分泌されて眠気を誘うのです。

よって、メラトニンが昼間に分泌されないためにも、日中に太陽の光を浴びて体内時計を整えていきましょう。

質の高い睡眠で認知症の予防。そのポイントは?

認知症を予防するためには、日中に活動をして生活にメリハリをつけることが重要だとわかったのではないでしょうか。次は、夜間の睡眠を良質にするために工夫することをご紹介していきます。

認知症発症リスクを減らすための昼寝は30分

アメリカのワシントン大学で発表された論文では、認知症の方は午後1時〜3時の間で、眠気が強く現れると報告されています

しかし、短時間の昼寝をすることで反対に認知症予防になるというのです。20〜30分の昼寝は、脳疲労の軽減と機能回復をもたらします。夜寝るまでの、覚醒状態を保つ効果が期待できるため、睡眠周期が整うようです。

実際の研究結果によると、30分未満の昼寝は認知症のリスクを6分の1にまで下げる効果があると報告されています。

夜間の睡眠を良質にするには

寝る30分前は、テレビやスマートフォンなどの刺激的な情報を控えるようにすると、脳がリラックスでき、睡眠モードに切り替わります。そして、睡眠が深くなりやすくなり、スッキリした朝がむかえられるようになるのです。

また、寝心地の悪さは睡眠が浅くなりやすいので、寝る前は照明を落として、静かな環境に整えることが大切です。もし、寝具が合わないようであれば、見直してみるのもよいでしょう。

夜ぐっすり眠るための、日中のオススメ活動内容

身体的機能や活動能力が低下しないように、日中は動くことを意識します。起床したらカーテンを開けて朝日を浴び、服を着替え、バランスのよい食事を規則正しい時間に食べます。ご飯以外の時間は趣味や散歩、家の掃除、レクリエーションなど行うとよいです。

お昼寝をする場合は、疲労回復が目的として30分までにします。すぐに起きることができない人はお昼寝前にカフェインを摂るのも有効ですし、机にうつ伏せになって寝るのがおすすめです。

日常での基本的な動作をこなしていくことが、規則正しい生活習慣につながります。日中は適度な疲労を身体に与え、夜間に眠りやすい環境を作っていきましょう。

レクリエーションの紹介

日中の活動がないという方におすすめなのが、レクリエーションです。レクリエーションには3つの項目があるので、それぞれ興味があることをやるのがよいでしょう。

運動系:運動系は、家庭内にあるものを使ってできます。例えば、トイレットペーパーの芯を使ったテーブルボーリング、箸で豆をつまんで別の皿に移すゲーム、座った状態で腿を交互に上げて時間内で何回上げられるかとさまざまです。一緒にやる人が多いほど盛り上がります。

脳トレ:脳トレは人それぞれに合わせてドリルや迷路、ジグソーパズル、将棋や囲碁などもよいです。脳だけでなく、手の運動にもなります。

創作系:折り紙や切り絵、編み物などがあります。作品を作ることで思い出にもなりますし、できたものを飾ったりして鑑賞するのも楽しみになります。

レクリエーションは、身体機能の低下や認知機能を防止するだけではなく、適度な疲労感を与えるので、夜間の睡眠を促します。

まとめ|認知症の予防には質の良い睡眠を

夜間はあまり眠れず、昼間にウトウトしているのであれば、まずは日常生活を規則正しいものに整えることから始めてみましょう。生活習慣の改善には時間がかかると思いますが、焦らず長い目で対応していきましょう。

一日中、寝ています。日光を取り入れたり、好きなテレビやラジオで刺激を与えても起きません。どうしたらよいですか?

生活習慣の問題でもあるため、すぐに効果は得られません。3か月と長期間、継続して続けてみてください。少し無理やりに感じるかもしれませんが、ベッドの角度を高くして座れるように起こしてあげたりするのがよいです。傾眠であったり、血圧の問題に注意をする必要もあるので、十分に配慮しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

日中に仕事や買い物で家を空けることがあり、その間寝ています。その場合の対策はどうすればよいですか?

静かな環境になると寝てしまう方の場合、火など安全に配慮した上で、洗濯や掃除などの家事をお願いしてできる役割を与えてみるのもよいでしょう。問題がなければ一緒に出かけてみる。できなければ、外出中にサービスを利用するのもよいです。嫌がることは無理に勧めないこともポイントです。詳しくはこちらをご覧ください。

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