「医療費払えない場合はどうしたらいい?」「高額医療費制度があるから大丈夫だよね?」とお悩みではありませんか?
今回は高額過ぎる医療費をどう対処したらよいのかから、非医療従事者が誤解しやすい「高額医療費制度」についても徹底的に解説します。
医療費が払えない場合に活用できる10個の制度
病気や怪我をした場合に、医療費が払えない状況にならないために、公的な制度を利用しましょう。
医療費が払えない場合に活用できる制度は、以下の10個があります。
- 高額療養費制度
- 高額療養貸付制度
- 高額療養委任払い
- 限度額適用認定証
- 傷病手当金制度
- 生活保護制度
- 付加給付制度
- 医療費控除
- 自立支援制度
- 無料低額診療事業
これら10個の制度を1つずつ詳しく解説します。
1.高額療養費制度
高額療養費制度は、1か月分の医療費が自己負担分を超えた場合に利用できる制度です。自己負担の限度額は収入や年齢によって定められ、超えた分は払い戻されます。
対象者 | 医療保険加入者 |
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対象となる医療費 | 1つの医療機関で21,000円以上のみ (同じ医療機関の場合、医科と歯科、入院と外来は区別する) |
上限額 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% (収入・年齢による) |
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
高額療養費制度の対象者は、医療保険加入者です。70歳以上の方は、医療機関にかかわらず自己負担額をすべて合算できます。
高額療養費制度の申請方法は、事前と事後の2パターンがあります。
事前に申請する場合は、加入する公的医療保険で入手可能な「限度額適用認定証」か「限度額適用・標準負担額減額認定証」のどちらかが必要です。医療費を支払う際に、保険証と共に証明証を提示するだけで高額療養費制度を利用できます。
事後に申請する場合は、加入する医療保険によって異なります。健康保険の場合、自己負担額を超えた月に、加入する健康保険機関に「高額療養費支給申請書」を提出します。国民健康保険の場合、自己負担額を超えた月の3~4か月後に、各自治体から郵送される申請書に必要書類を添付して提出します。
2.高額療養貸付制度
高額療養貸付制度は、高額療養制度を利用して支払った自己負担額超過分が、返金されるまで利用できる制度です。医療費の8~9割を無利子で貸付できます。
高額療養貸付制度の対象者は、医療保険加入者です。食事代や保険診療費は対象外となるため、別途自己負担する必要があります。また、高額療養貸付制度を利用するには、医療機関からの許可が必要です。
国民健康保険で高額療養貸付制度を申請する場合は、貸付申請書類を交付し、医療機関で自己負担限度額を支払います。そのあと、必要書類を各自治体の保険年金担当課へ提出します。
3.高額療養委任払い
高額療養委任払いは、高額療養制度で申請する自己負担超過分を、保険者から医療機関に直接支払われる制度です。被保険者の支払い額は医療費の自己負担額のみになるため、負担は大きく軽減されます。
しかし、高額療養委任払いの対象者は、各自治体の国民保険加入者かつ高額医療費の支払い困難者に限定されます。
高額療養委任払いを申請するためには、各自治体の国保年金課で「高額療養費委任払い申請書」の交付を受ける必要があります。すでに医療費を支払っている場合は適用されません。また、自治体により内容や適用される医療機関が異なるため注意しましょう。
4.限度額適用認定証
限度額適用認定証は、高額療養費制度の申請をする際に、自己負担が医療費の限度額のみにできるものです。限度額適用認定証の対象者は、70歳未満の方、70歳以上の非課税世帯等の方です。
限度額適用認定証を申請するには、社会保険加入者の場合、加入している健保で手続きを行いましょう。国民健康保険加入者は、役所の保険年金窓口で申請します。
70歳以上75歳未満の非課税世帯等ではない方は「高齢受給者証」、75歳以上で非課税世帯等ではない方は「後期高齢者医療被保険者証」を提示しましょう。
5.傷病手当金制度
傷病手当金制度は、業務外での病気や怪我の療養によって働けない場合、条件を満たすと利用できる制度です。3日間以上連続して休養したうえで、4日目以降の休養分の傷病手当金が支給されます。
以下の表は、傷病手当金制度の特徴を表しています。
対象者 | 3日間仕事を休み、4日目以降も休業した方 |
---|---|
支給期間 | 支給開始日から最大1年6か月
(同一の病気・怪我の場合) |
支給額 | 1日あたり:直近12か月の平均報酬額÷30日×2/3 |
出典:厚生労働省「傷病手当金について」
傷病手当金制度による支給額は平均報酬額の3分の2で、最大1年6か月受け取れます。1日あたりの支給額は、「直近12か月の平均報酬額÷30日×2/3」です。全額支給されるわけではなく、事業主から傷病手当金より多い給与が支払われている場合、適用されません。
傷病手当金制度には、資格喪失後も1年以上被保険者であった方は継続して受給できる仕組みがあります。
6.生活保護制度
生活保護制度は、生活困窮者の自立のを助長を目的とする制度です。生活保護制度には、日本国憲法の「健康で文化的な最低限度の生活」を保証する役割があります。
生活保護制度が認められると、自治体から医療費の全額が支給される医療扶助が適用されます。通院や入院に限らずすべての医療費に支給されるため、自己負担額はゼロであり、入院時の食事代もかかりません。
生活保護制度を利用するのは最終手段と言えます。そのため、働く余力がないか、貯金や土地など資産になるものはないか、年金や手当のほかに利用できる制度はないかなどの確認が必要です。ほかには、援助を受けられる親族などを探す手段もあります。
やむを得ず、生活保護制度を申請する場合は、地域が所管する福祉事務所の生活保護担当を訪ねましょう。
7.付加給付制度
付加給付制度は、1ヶ月間の医療費の自己負担額を定め、超えた分は払い戻される制度です。
一般的に、医療費は3割が自己負担となっています。しかし、付加給付制度を利用すると、高額医療費制度による払い戻し以外に、追加で支給される仕組みです。そのため、実際の自己負担額が3割未満になる場合もあります。
対象者 | 健康保険組合加入者 |
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対象外 | 全国健康保険協会、国民健康保険 |
付加給付制度は、大手企業が加入する健康保険組合が独自で実施する制度であり、全国健康保険協会や国民健康保険は対象外です。また、すべての健康保険組合が適用しているわけではありません。組合によって名称や制度の内容が異なる場合があるため、加入する組合に確認しましょう。
付加給付制度を利用する際は、事前に申請する必要はありません。健康保険組合が、医療機関が発行する治療報酬請求書をもとに計算し、約3か月後、給与に反映して払い戻されます。払い戻しにも、時間がかかる点に注意が必要です。
8.医療費控除
医療費控除は、1年間の医療費が10万円または総所得の5%を超えた場合に利用できる制度です。
申告者と生計を共にする配偶者、その他の親族までの医療費を合算して適用できます。
以下の表は、医療控除の特徴について表しています。
対象者 | 年間10万円 または 総所得額の5%(総所得が200万円未満の場合)を超えた方 |
---|---|
控除対象 | その年の1月1日から12月31日の間に支払われた医療費 |
控除限度額 | 200万円 |
出典:国税庁「令和4年分確定申告特集」
医療費控除の対象となるのは1月1日から12月31日の間に支払われた医療費です。12月31日の時点で未払いの医療費、 翌年の医療費として計算します。
病気や怪我による通院だけではなく介護・妊娠・出産なども控除の対象です。
確定申告によって、医療費控除が適用されます。年末調整では申請不可となっています。申請時に医療費控除明細書が必要となるため、用意しておきましょう。
9.自立支援制度
自立支援制度は、 精神障害者や身体障害者の治療費の自己負担額を軽減する制度です。
下の表は、自立支援制度の対象者と治療例を表しています。
対象者 |
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対象となる 治療例 |
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対象者は、精神通院医療患者、更生医療患者、身体障害を持つ児童である育成医療患者です。
自立支援制度は、精神疾患を持つ方の薬やデイケア、関節拘縮を持つ肢体不自由な方の人工関節置換術などの治療費に適用されます。ほかには、内部障害者の、ペースメーカー埋込術だけではなく治療の人工透析にも活用できます。自己負担額が、原則1割にまで軽減される仕組みです。
自立支援制度を申請する場合は、各市町村の障害福祉課などを訪ねましょう。申請には、「自立支援医療支給認定書」、「医師の診断書」「世帯の所得状況が確認できる資料」が必要です。自立支援制度は、通院先が都道府県の定めた「指定医療機関」であることが条件です。
10.無料低額診断事業
無料低額診療事業は、 経済的な理由で医療を受けられない方を対象に、無料または低額で診療する事業です。
下の表は、無料低額診療事業の対象者と実施施設数を表しています。
対象者 |
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実施施設数 | 732か所(令和2年時) |
出典:厚生労働省「無料低額診療事業・無料低額老健事業の実施状況の概要(令和2年度実績)」
無料低額診療事業の対象者は、低所得者やホームレスなどの生活困窮者です。無料低額診療事業は、生活が改善するまでの一時的な措置として運営されています。無料診療が受けられるのは、健康保険加入や生活保護開始の1〜3か月が基準です。令和2年時には、全国約732か所で無料低額診療事業が行われています。
また、無料低額診療事業を利用する際は、医療相談員との面談で、活用できる公的制度や社会資源を検討したうえで適用されるかが判断されます。各医療機関によって、利用方法や対象基準が異なるため、事前に確認してから通院しましょう。
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そもそも医療費がなぜ高くなるのか?
ここまで、医療費が払えない場合に活用できる制度を10個解説しましたが、そもそもなぜ支払いが困難なほど医療費が高くなるのでしょうか。
その理由は、以下の2つが挙げられます。
- コロナ禍で医療機関が圧迫しているから
- 公的な保険制度は「治療費にしか適用できない」から
医療費が高くなる2つの原因について解説します。
1.コロナ禍で医療機関が圧迫しているから
医療費が高くなる理由の1つ目は、「コロナが医療機関を圧迫しているから」です。
コロナ禍で入院患者が増え、病院内のベッドがほとんど埋まっている状況です。そのため、大部屋に比べて費用が高くなる、個室や少人数の病室しか空いていない場合があります。個室を利用すると公的保険制度の対象外となるため、差額のベッド代がかかってしまいます。
しかし、差額ベッド代を理由に入院を断ると、転院先が見つからずたらい回しにされる可能性が高いです。少しでも早く入院先を見つけるためには、空いている個室に入院しなければなりません。そのため、結果的に入院費用が高くなってしまいます。
2.公的な保険制度は「治療費にしか適用できない」から
医療費が高くなる理由の2つ目は、公的保険制度が適用されるのは「治療費のみ」であるからです。
高額な医療費を補助してくれる公的な保険制度はいくつかあります。しかし、食費や日用品費などは適用外であり、治療費にしか適用されません。
入院すると診察料や病室の使用料以外にも、入院中の食費や日用品費などが必要です。食費は、厚生労働省より、1日460円の負担を定められています。日用品費には、テレビカード代やクリーニング代、入浴用品費などが含まれます。入院期間が長くなるほど、負担する食費や日用品費も増えます。
入院手術費用のうち「公的保険制度の対象になるもの」とは
医療費が高くなる理由の1つに、「公的保険制度は治療費にしか適用できない」からであると解説しました。
それでは、実際に入院手術の費用に公的保険制度が適用されるものはあるのでしょうか。
公的保険制度の対象になるものは、以下の2つがあります。
- 医療費・治療費
- 入院基本料
この2つについて詳しく解説します。
1.医療費・治療費
医療費・治療費は、病気や怪我によって、医療機関での診察・治療、調剤薬局での投薬などの医療サービスを受けた場合に負担する費用です。公的保険制度があるため、一般的な自己負担は3割となり、全額負担する必要はありません。年齢や収入によって負担する割合が異なります。
下の表は、自己負担額の割合と対象者を表しています。
自己負担の割合 | 対象者 |
---|---|
3割負担 | 70歳未満の方 |
2割負担 | 未就学児 70歳以上75歳未満の方(現役世代並みの収入がない場合) |
1割負担 | 75歳以上の方(現役世代並みの収入がない場合) |
出典:厚生労働省「医療費の自己負担」
70歳未満の現役世代と、現役世代並みの収入がある70歳以上の方は、医療費の自己負担は3割です。義務教育前の未就学児は2割負担となっています。
2.入院基本料
入院基本料は、入院中の診察料や治療費、病室の利用料など病院が提供した医療サービスにかかる費用です。公的保険制度が適用されるため、自己負担は1〜3割です。入院基本料は病院によって異なります。
入院基本料に含まれる「病室の利用料」は、大部屋を利用する場合のみ適用されます。個室や少人数の病室を利用する場合は、大部屋の利用料との差額を負担する必要があります。個室の種類や病室の人数によって費用が異なるため、病院に確認しましょう。
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医療費の相場
病気や怪我で入院が必要になった場合、1日の自己負担額について解説します。
下のグラフは、直近で入院した際にかかった1日あたりの自己負担額を表しています。
出典:人生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
高額療養費制度を利用した場合は、適用後を計算し、治療費・食事代・ベッド代などの別途負担額も含まれた費用です。
自己負担が必要な1日あたりの入院費用の平均額は、約2.3万円となっています。「10,000円〜15,000円未満」の自己負担額の方が、24.2%で割合が最も多いです。
入院日数の相場
病院や怪我などで入院が必要になった場合、どのくらいの日数が必要になるのでしょうか。
次は、入院日数の相場について解説します。
下の表は、直近の入院時の入院日数を表しています。
出典:生命保険文化センター「②直近の入院時の入院日数」
入院日数の平均は、15.7日です。入院日数が「5〜7日」の方が、27.3%と割合が最も多いです。次いで、「8〜14日」の方が約27.1%を占めます。入院日数が30日を超える方は、全体の8.9%です。
まずは高額療養費制度の利用を検討しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
詳しくは2020年頃からはコロナ禍によって医療機関がひっ迫していることが原因です。詳しくはこちらをご覧ください。