食事は摂っているのに、体重が減っていく高齢者がいます。
自然な体重減少は珍しくありませんが、急激な変化は注意信号かもしれません。急激な体重減少は運動能力の低下や疾患の原因にもなり大変危険です。
今回は、体重減少の原因やリスクについて詳しく説明します。注意するポイントや対処法まで解説しているので、最後まで読んで参考にしてください。
高齢者の体重減少とは
体重減少とは半年の間に5キロ以上痩せている状態をいいます。
BMI値(体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)})が18.4を下回ると低体重、低栄養状態となり、この状態が続くと将来的に要介護状態や寝たきりになってしまいます。高齢者の体重減少ではフレイル、サルコペニア、心不全、認知症、神経筋疾患などの基礎疾患が原因でなる場合があります。
年を取ると筋肉量や脂肪が減少して体重も減っていき、栄養不足になると蓄えていた筋肉や脂肪を分解してエネルギーに変えてしまいます。食事をしても消化、吸収が悪いと、体力低下に伴い食事量が減ります。体重が減ることで調子が悪い、疲れやすいなどの症状が出てきます。
どんな症状がでるのか
体重が急激に減少したときには、さまざまな症状が出てきます。体重減少が原因で、病気へ発展することもあるので確認が必要です。特に、食欲がわかない症状があるときは、注意してください。
次のような症状が出てきたときには、病気の原因になる場合があります。
- 発熱
- 嘔吐、下痢、腹痛などの症状
- 頭痛
- 全身倦怠感
- 嚥下障害
- 抑うつ
- 意欲減退
目安となるチェックポイント
高齢者の体重が減少している際には、実は確認できるチェックポイントがあります。
このチェックポイントは、本人ではなくても家族が観察するだけで行えるので、気になるときは7つのチェックポイントを確認してみてください。
- 普段はいている服がゆるくなっていないか
- どのくらいの期間で何キロ痩せたのか
- 意欲がなくなったり、物事の興味がなくなっていないか
- 頻脈、腹痛、下痢などの症状が出ていないか
- 食事量は減ってきていないか
- 精神的なストレスはないか
- 日常の活動が落ちていないのか
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高齢者の体重減少による危険5つ
高齢者の体重減少は明確な危険信号であり、低栄養の状態が続くと介護が必要な状態につながります。また、食事量が減ってきた理由が分かっている場合を除き、原因が分からないのに痩せてきていることは様々な疾患が関わっている可能性もあります。高齢者の体重減少には5つの危険なサインがあるので解説していきます。
危険性1:体力低下
加齢に伴い体力が低下すると、日常の活動量が減って体重減少につながります。体重減少が原因で、少し動いただけでも強い疲労感に襲われることがあります。退職後、外に出る機会が減ってくる方も多くなるため、十分注意してください。
危険性2:感染症への脆弱性
体重が減少してしまうと、免疫機能が低下して感染に対抗する力が弱くなってきます。そのため、感染症や病気にもかかりやすくなります。免疫力が低下することで、感染症を発症すると重症化するリスクがあるため、体重減少を軽視していると命に関わることもあります。
危険性3:疾患への影響
高齢者の体重減少の大きな要因に、がん、消化器疾患、精神疾患があります。がんでは「大腸がん」「胃がん」「肺がん」、消化器疾患は「十二指腸瘍」「慢性膵炎」など、精神障害は「認知症」「うつ」「摂食障害」などが体重減少に関係してくる疾患となります。また、慢性疾患が原因で、体重が減少することがあります。
危険性4:老年期の骨折
体重が減少すると、筋肉量が減り転倒のリスクが高くなります。運動機能の低下により踏ん張りがきかなく、転倒した際の大腿骨骨折により寝たきりになる可能性が高いです。また、カルシウム不足も体重減少と少なからず関係しており、骨粗しょう症を発症すると骨折のリスクはさらに高くなります。
危険性5:精神的影響
高齢になり、伴侶や友人との死別を経験することで、孤独感、生きがいへの喪失が強くなるでしょう。特に、一人で住んでいる高齢者はうつになりやすく、活気もなくなることで食事量が減少してしまいます。精神的ダメージが食事量と体重減少につながり、やがて疾患へとつながる危険性があります。
食べているのに高齢者の体重減少が起こる原因
食事は毎日3食食べているのに、なぜか体重が落ちてくることがあります。しかし、体重が減少している原因は、必ずしも病気とは限りません。
食事の量を増やすだけで体重減少は解決できないので、原因と対応を解説していきます。
加齢による筋肉量の低下
体重減少の原因の1つとして、加齢に伴う筋肉量の低下があります。筋肉量が減ってくると自然と基礎代謝も低下します。また、筋肉量が減ってくると運動をする気持ちがなくなり、運動不足になります。
運動をしないと筋肉量が維持できなくなり、食べものを飲み込む力まで低下します。嚥下機能により上手く呑み込めないと、食事も楽しくありません。
加齢による筋肉量の低下が、体重減少の大きな原因の一つになっています。
疾患が原因
アルツハイマー型認知症や消化器系の疾患になると体重減少が起こってきます。
- 記憶機能低下により食事を忘れる
- 食への意欲低下
- テレビ等の周りの音で食事に集中できない
- 認知機能が落ちてくるため食べ物が分からなくなる
- 箸を使う動作ができなくなる
上記が、アルツハイマー型認知症が体重減少につながる主な原因です。また、食事拒否や食べたことを忘れることもあるでしょう。
消化器系の疾患は、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎が代表的な疾患です。胃潰瘍、十二指腸潰瘍になると食べ物が胃の中に残っている感じが続くため食欲がなくなってきます。
潰瘍性大腸炎になると腹痛や下痢がみられます。下痢が継続してしまうと体重減少につながります。
常用薬の影響
高齢になると慢性疾患を持っていて、日常的に服薬する方が増えます。
健康を維持するために服用している薬が、体重減少の原因になることもあります。
例えば、痛み止めや睡眠薬、骨粗鬆症の薬や抗がん剤などは副作用として食欲不振をきたす場合があります。
常用薬は処方薬が多く、飲み方は医師の指示に従うべきです。ただし、副作用の可能性がゼロの薬はありません。少しでも異常を感じたら、直ぐに病院で相談してください。
社会的背景
高齢者の社会的背景として社会的孤立、経済的困窮などがみられています。高齢化が進み独り暮らしの高齢者が増えている一方、身内の支援が難しい場合があります。
独り身になってしまうと生活すべてを一人で行わなくてはなりません。他者とのかかわりが少なくなって、活気もなくなると、食事への意欲まで失われて少しずつ体重減少へとつながるでしょう。
孤独な生活が、精神的なストレスの原因になっています。
高齢者の体重減少は気にかける
体重減少は、本人では気付かないことが多いです。そのため、気づかないうちに病気になる可能性があります。
ご家族は「歩くスピードが落ちてきた」「食事量が減ってきた」「呑み込みが悪くなってきた」といった、小さな変化を観察してあげてください。何気ない会話の中からでも、体調の変化に気づくことができます。
診察を受ける目安
体重が減少しているときは、受診したほうがいい目安があります。食事は摂っているのに体重の減少が大きく、腹痛、吐き気などの症状がある場合は受診が必要です。
半年で5キロ以上の体重減少があれば、何らかの病気か隠れているかもしれないので受診してみましょう。特に、体重が減少している理由に心当たりがない場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
受診する科は
体重が減少して体調を崩しているとき、まずは消化器内科へ受診してみましょう。
- 食事が取れないため体重が減少してる
- 食事は取っているが体重減少がみられる
- 半年で5キロ以上体重毛落ちた
このような体重減少は、消化器系に異常が起きている可能性が高いです。上記のような症状がある場合は病院へ受診しましょう。
高齢者の体重減少に必要な治療
体重減少がおきているときは、原因を見つけることと治療が重要です。食事はしっかりとれているのか?食事の量やバランスは問題ないのか?咀嚼、嚥下機能は問題ないか?孤立などの社会的背景に問題がないのか確認を行います。
問題があれば医師、ソーシャルワーカーなどの他職種と協力しながら対策していきます。意欲低下がみられる場合は抗うつ薬、漢方などの薬が出されることがあります。体重が減少していても病気が見つからなかった場合は経過観察となります。
高齢者体重減少の予防方法
高齢者への体重減少を未然に防ぐ方法が、いくつかあります。その中でも、特に重要なのが生活習慣です。
生活習慣の乱れは、病気になりやすくなります。運動、食事、睡眠を十分に取ることが重要になってきます。
体重減少が起きないためには普段の生活の見直しや食事への認識が必要です。場合によっては自分の好きなものだけ食べるのではなく栄養があるものも取る必要があります。
適度な運動
高齢者になると、体力低下に伴い筋力も低下して体重も減少します。適度な運動を行うことは、筋力の維持につながり転倒事故の防止にも役立ちます。
運動を行うことで血流が改善され、内臓などの機能も良くなります。体重減少を抑える為にも適度な運動を取り入れてみましょう。
健康的な食生活
高齢になると食事量が低下しますが、そのままでは1日に必要なエネルギーやたんぱく質が不足してしまいます。
高齢者が特に必要な栄養素はたんぱく質です。たんぱく質には筋肉、内臓など身体のあらゆる部分を作る働きがあり、筋肉量の低下防止に役立ちます。
1日のうち体重1キロに対して1グラム取る事が望ましく、たんぱく質を多く含む物には肉、魚、豆腐、乳製品などの食品があります。
定期的な健康診断
高齢者の方は、定期的に健康診断を受けることがおすすめです。健康診断を受けることで体重減少の原因や、病気の早期発見に役立ちます。
体重減少の原因は、加齢や病気などさまざまな要因が重なることが多く、自分で気づけないことも少なくありません。
健康診断を受けることで体重の変動に気づいて、病気の早期発見、早期治療を受けることが可能となるでしょう。
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高齢者の体重減少に家族が出来ること
体重減少は、ご家族が支援を行うことで緩和されます。ご家族が環境を整えて、本人の意志を尊重させてあげるといった配慮が求められます。
しかし、無理に食事を押しつけても、食べる気もなくなり良い結果にはなりません。先ずは、過ごしやすい環境が必要となってきます。
食べたいときに食べてもらう
食欲が落ちてきているときは、無理せず、本人が食べたい時間、食べたい量の食事をしてもらうことが大切です。高齢になるとその日の調子や気分で時間通りに食べられないことがあります。
いつでも食べられるように作り置きをする、レトルトを用意する、などで対応できます。
食欲を高める工夫
高齢者の食事の意欲を高める為には、本人の好きなものだけ食べてもらっても構いません。
毎日好きなものばかり食べていては、栄養の偏りが心配になりますが、食事の意欲を高めることを優先しましょう。
以下のような工夫をすることで、食事への意欲が改善されることがあります。参考にしてみてください。
- 環境の工夫
一人で食事を取ってもらうより、一緒に食事を取るように心がけましょう。 - 五感を刺激する
料理の香りや食事を作る時の音を感じることで、食事への意欲を上げていきましょう。 - きれいな盛り付けを行う
料理を綺麗に盛り付けて、見栄えが良くなると食事への意欲は高まります。
簡単な栄養補給
高齢になると食欲が落ちてしまうことがあります。
食欲が落ちてきているときは咀嚼回数が少なく、のどに引っかからない食べ物で栄養補給したりすることが大切です。
栄養補給時に汁物を準備すると、香りも楽しめて食事への意欲にもつながりおすすめです。
- 簡単に食べられる食事
サンドウィッチ、そうめんなど - 噛む回数が少ない食事
茶碗蒸し、コンポート、ゼリー寄せなど - のどを潤す食事
だしの効いた汁物、ポタージュスープなど
無理強いは逆効果
高齢になると食事量も低下していきます。食欲がない高齢者に、無理に食事をさせるのは逆効果になるでしょう。
無理強いをすると食事への意欲がなくなること、食事をすることがストレスになってしまう恐れがあります。食事を楽しむためにも本人のペースで食事を楽しめる工夫が大切です。
まとめ:高齢者の体重減少はみんなの問題
この記事では高齢者の体重減少の原因や対策法について解説しました。
体重減少は自覚症状がないため、本人の力だけでは解決できません。半年で5キロ以上痩せた場合は何らかの症状が出てくる可能性も高くなります。
体重減少には、定期的な受診による早期発見や生活環境を整えていくことが重要となってくるでしょう。
高齢者に寄り添うことや見守ることが、体重減少で苦しむ高齢者を支えるために大切なことになってきます。
体重減少が起こる原因としては、「加齢による筋肉量の低下」「疾患による影響」などが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
「食べたいときに食べさせる」「食用句を高める工夫をする」「無理強いしない」などの予防法が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。