• 認知症
  • 【公開日】2023-02-15
  • 【更新日】2023-02-14

認知症の方は思い込みが激しい?妄想との向き合い方について解説

認知症の方は思い込みが激しい?妄想との向き合い方について解説

 

認知症になると認知機能が低下するため、思い込みが激しくなってしまいます。認知症の症状とはいえ、思い込みが激しいと対応が難しく、暴力を振るわれる可能性もあります。

この記事では、認知症の方の思い込みが激しくなってしまう理由を解説しています。

具体的に、どのような妄想が出てきてしまうのか、また、どういった対応をしたらよいのか紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

徳島赤十字病院
監修郷 正憲
所有資格:日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT
専門分野:麻酔科、精神科(心療内科)、 脳神経外科、整形外科,、総合内科、口腔外科など

香川大学医学部医学科を卒業後、同年4月より徳島赤十字病院で研修、2013年より正式に従事する。 専門分野は麻酔科をはじめ、精神科(心療内科)、 脳神経外科、整形外科,、総合内科、口腔外科など多岐にわたる。 著書に「看護師と研修医のための全身管理の本」(2022)などがある。詳しくはこちら

所有資格:一般社団法人 薬機法医療法規格協会 薬機法医療法遵守広告代理店認証
専門分野:化粧品や健康食品における広告表現
職業: 薬機法管理者

2003年からヘルスケア情報サービス事業・治験支援事業を行っている企業にて、主にDTC広告の企画営業に携わる。 4年ほど企画営業を担当後、自社のヘルスケアサイトの運営、製薬会社・健康食品メーカーの記事広告の制作を行うが、この時に薬機法(薬事法)についての知識を学び、広告記事の精査を経験。 2017年退社。現在は臨床研究の支援を行う企業にて研究事務局支援に携わる。東京在住。 現在は本業の傍ら化粧品や健康食品の企業の広告等の薬機法チェックを行う。詳しくはこちら

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なぜ認知症の方は思い込みが激しいのか

認知症になると「財布を盗んだんだろ!」「浮気しているんでしょ!」「いじめられる!」と思い込みが激しくなり、身近な方との人間関係トラブルに発展する場合もあります。

懸命に介護をしている家族としては、たまったものではありません。どうして、認知症になると異常に思い込みが激しくなるのでしょうか。

認知症の方の思い込みが激しい理由として以下のようなものが挙げられます。

  • 認知機能の低下
  • 症状に対する苦しみや不安

色々な不安を抱え徐々に思い込みは激しくなり、妄想や幻聴などの症状に繋がっていくケースがほとんどです。

不安を感じているから

認知症になると、日常生活でできない行為が増えます。それだけではなく、時間や場所、大切な家族、そして自分自身すら分からなくなり、精神的に不安定な状態です。

  • 家族に世話になっているが負い目を感じる
  • 自尊心を傷つけられている
  • 認知症になってしまった悲しみを引きずっている

上記のように、認知症の方はさまざまな感情に襲われています。そしてその感情を適切に処理できず、混乱をきたすと思い込み症状が出てくるのです。

思い込み症状になると自分で思い込み症状になっていると判断ができません。周囲のサポートによるケアが必要になります。

認知症の初期症状

認知症を発症している方は、自分で認知症を発症していると気づけないケースが多くあります。「自分は認知症だ」と自分で判断できないため、家族や周囲のサポートが欠かせません。ただ周囲にいる方々が認知症の初期症状を見抜けるとは限りません。

よくある認知症の初期症状として、以下のものがあります。

  • 記憶障害
  • 実行機能障害
  • 見当識障害
  • 認知機能障害

これらの症状を経て、思い込みが激しくなるため、できる限りの早期発見が望ましいでしょう。思い込みは本人にとって事実であり決して否定してはいけません。

ちなみに、厚生労働省が公表した「精神病床における認知症入院患者に関する調査」において、約15%の認知症患者がほとんど毎日妄想を見ていると記載されています。

参照:『精神病床における認知症入院患者に関する調査

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認知症による思い込みの激しさは治る?

あまりにも思い込みが激しいと、介護する家族に大きな負担がかかります。しかし、認知症による思い込みは周囲の努力次第で軽減できる場合があります。

例えば、以下のような対応法があります。

  • 認知症の方の不安をなくす
  • 話に共感しで安心感を与える

思い込みは精神的な不調から症状が悪化するケースが多いです。そのため、思い込みを軽減していくには、できる限り相手に寄り添い、安心感できる環境や関係を築く必要があります。

また、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の場合、思い込みを服薬治療により改善できる可能性もあります。

認知症によって思い込みが激しい時の対応方法

認知症による思い込みは対応が難しく、困っている方も少なくはありません。あまりに思い込みが激しく、心身ともに疲弊している方も多いでしょう。

ここでは、そんな方のために思い込みが激しいときの具体的な対応法を紹介していきます。

適切な対応法を知ることは、本人の安心感だけでなく自身の心的ストレスの軽減に繋がります。もし、本人にあまり効果がなくとも、対応の基本は変わりません。応用した方法を自身で考え、本人にあったやり方を模索するのも一つの手です。

今回ご紹介するのは、物盗られ妄想、見捨てられ妄想、幻覚や幻聴、嫉妬妄想の4つです。もし家族にこのような妄想をする方がいる場合、ぜひ参考にしてください。

それでは、それぞれの対処方法について詳しく解説します。

盗まれた!と訴える場合

「盗まれた!」と訴えるのは物盗られ妄想に分類されます。

特に女性に見られるケースが多い症状で、比較的初期段階であり体が自由に動く時期に「ものを盗まれた!」と訴えます。訴える内容としては以下のように財産関連である場合が多くなっています。

  • 持っていた財布が無くなった・盗まれた
  • 嫁(旦那)が自分の大切なものを盗んでいく
  • 自宅の鍵を何者かに隠された

このように物盗られ妄想が出てしまうのは、認知症による記憶障害が進行している結果である場合と、認知症になっている事実を自分自身が認めたくない気持ちが原因です。

認知症が原因でただどこかにものを置いている事実を忘れているだけでも、盗まれたと認識してしまいます。

さらに、「忘れている」事実を認めたくないがあまりに「盗まれた」と発想が転化してしまう場合も多くあります。

物盗られ妄想の対処方法としては失ってしまったと不安に思う気持ちに寄り添うことが重要です。そして、否定をせず「盗まれた」前提で一緒に失くしたものを探すと、物盗られ妄想は緩和されていくでしょう。

見捨てられたんだ!と悲しんでいる場合

「見捨てられたんだ!」と悲しんでいるのは、見捨てられ妄想に分類されます。

見捨てられ妄想は、比較的初期段階であり判断力がまだ保たれている時期に多く見られる症状です。出現頻度は3~18%と比較的高く、認知症が進行するにつれて自分で判断できなくなるため周囲のサポートが欠かせません。

ただ、サポートをしていると「周囲の人に頼りきりになってしまっている」と自分を責めてしまい負い目を感じる方も多くいます。

そして、見捨てられ妄想は自宅介護よりも施設介護をしている方の方が発出頻度が高くなっています。理由は「家族に見捨てられて施設に入れられた」と感じるからです。

一方で自宅介護でも家族の外出を頻繁に見てしまうと「自分はもうこの家族には必要ない」と感じてしまい、見捨てられ妄想の症状に悩まされてしまうケースがあります。

こういった見捨てられ妄想の対処には、今抱えている寂しさや悲しみを取り除く方法が効果的です。そして、「自分は必要なんだ」と自信を取り戻してもらいましょう。本人に役割を持って過ごしてもらうと、「自分はここにいてもいい」「必要とされている」と感じやすくなります。

幻覚や幻聴がある場合

幻覚は、幻視、幻聴、幻臭、幻触、幻味からなっており、特に「幻視」の症状が認知症患者によく見られます。

例えば、以下のような症状が幻覚に当たります。

  • 知らない子どもが毎晩自分の部屋で走り回っている
  • 蛇がそこら中にいる

幻覚は、神経伝達がうまくいっていない方に起きる症状です。特にレビー小体型認知症でよく見られます。幻覚に悩まされているときの対処方法として、本人には見えていると素直に受け入れることが大切です。

そして、自分には見えていませんが「見えている」設定で話に付き合う必要があります。決して「見えているのはあなただけ」と否定してはいけません。

「蛇がいる!」などと訴える場合は、一旦別の場所に誘導し、箒やバスタオルなどで追い払う仕草をしましょう。そうすると、本人も安心し、症状が穏やかになっていきます。

また、部屋の明るさが関係している場合もあります。幻視は暗い場所で起こりやすいため、影をつくらないよう、室内の明るさを統一しましょう。

浮気してる!と嫉妬されている場合

「浮気してる!」と嫉妬されるのは、嫉妬妄想に分類されます。

嫉妬妄想は見捨てられ妄想と似ており、自分の必要性を感じず「自分にとって大事な人を失ってしまうかもしれない」不安感や恐怖心から発症します。対象者は配偶者・家族がほとんどです。

  • 妻(旦那)が知らない人を連れ込んでいる
  • 夜な夜な浮気をしている

上記のように訴えるケースも多くあります。

嫉妬妄想は、不安感、恐怖心、焦り、悲しさなどさまざまなマイナス感情から生み出される症状です。そのためその感情を埋めていくことが大切です。元々あった信頼関係はほとんどないと判断し、時間をかけて1から信頼関係を築きあげていく必要があります。

また、嫉妬妄想に陥っている間は自分に自信がありません。自信をもう一度持ち直してもらうためにもこちらから愛情表現をしていきましょう。

認知症の妄想とせん妄は違う?意識障害とは

認知症とよく似た言葉に「せん妄」があります。

せん妄は認知症と違い意識障害の一種です。体調不良や服用している薬により急に発症しますが、数週間ほどで落ち着きます。発症している間は頭が混乱している状態であり、その状態が長く続いてしまうと脳の機能が低下し「認知症」を発症する場合があります。

せん妄の主な症状として、以下のものが挙げられます。

  • 注意力の低下
  • 認知機能の低下・障害
  • 感情の起伏変動の激化
  • 生活習慣の乱れ
  • 幻覚・錯覚

認知症の症状と似ており素人が判断することは困難です。また、認知症が発症している状態でせん妄を発症する場合もあり、脳血管性認知症、レビー小体型認知症との併発が見られるケースが多くあります。

思い込みの激しさに疲れないために

思い込みは、不安や恐怖などネガティブな気持ちの表れです。そのため、本人に寄り添った対応が重要だと理解してもらえたかと思います。

ただ、理解はしていても「しんどい」「ずっと対応するのは無理がある」と徐々にサポートしている側は疲れてしまうものです。

適切な対応を取れないと、思い込みが悪化する場合もあり、決して気をぬくことは許されません。かなり過酷な状況で対応を強いられるため、何かしらの対処をしなければ気が滅入ってしまうでしょう。

思い込みの激しさに疲れている方に向けて、思い込みの激しさに疲れないためにどうするべきかをご紹介します。

辛さを一人で抱えない

思い込みが激しい認知症の方の対応をあなた一人でする必要はありません

「自分しかいない」と思い込んでしまい四六時中、認知症の方の対応をしてしまう方がいますが、それは自分の身を滅ぼしてしまうことに繋がります。

先ほどもご紹介しましたが、薬などで症状が改善する場合もあります。そのため、辛さを自分一人で抱え込まずに医師や専門家に相談してください。

また地域包括支援センターでは、認知症に関する相談を受け付けています。

  • こういう症状なんですがどうすればいいでしょうか
  • 私しか対応できないのですがどのようにして時間を確保すればいいでしょうか

このような相談を地域包括支援センターの相談窓口で話すと、精神的にも楽になります。サポートする側の心身を守るためにも専門家に相談することを忘れないでください。

しんどくなったら施設の利用も視野に入れよう

もし専門家やまわりの方に相談しても疲れてしまう場合は、物理的に距離を置くことも検討しなければなりません。

  • 「お金を取られている!」と叫ばれる
  • 何かと否定される
  • 暴力を振るわれる

上記のように、サポートしている方に対して認知症の方が危害を加えてしまうケースも多くあります。危害を加えられても、サポートし続けなければならない状況に耐え続けられる方は少ないです。

逃げ出したくなる気持ちを抑えてサポートするのは、精神的にもよくありません

もし、ほかの方に代わってもらえるなら代わったほうがいいですが、それができないのであればショートステイや介護施設の利用も視野に入れましょう。

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被害妄想による暴力を受けたら?

もし介護をしているときに、被害妄想による暴力を受けてしまったらどうすればいいのでしょうか。

暴力を受けてしまったら、以下のような対応を取りましょう。

  • 物理的に距離を取る(施設を利用する)
  • 感情が落ち着くのを待つ(クールダウン)
  • ケアマネージャーに相談する

一番簡単な方法は物理的に距離を取ることですが、それにより見捨てられ妄想が激化してしまうケースも少なくありません。

また、感情が落ち着くのを待っている間にまた暴力を振るわれる危険性もあるため、あまりおすすめできる方法ではありません。

一番よい方法は家族や医師、そしてケアマネージャーに相談することです。認知症の方の前では言えないような悩みや相談を打ち明けることで心が軽くなるだけでなく、精神的にも回復する場合があります。

また、ケアマネージャーからのアドバイスを受けて「ここはこうすればいいんだ」と新しい対応ができるようになるかもしれません。

専門的な知識を持った方からのアドバイスや助言は非常に重要です。

認知症の方の思い込みが激しいと大変!でも向き合ってあげよう

認知症になると、思い込みが激しくなるケースも少なくはありません。

思い込みの激しさは、認知症の症状だけでなく、不安や寂しさなどのネガティブな感情が原因で引き起こされます。本人の気持ちに寄り添い、安心できるよう対応していく必要が有ります。

しかし、全部一人で抱え込む必要はありません。誰かに相談をしてどのような対応方法が一番適切なのかを考えることが大切です。

いま、あまりの思い込みの激しさに限界を感じているのであれば、ケアマネージャーや医師に相談してはいかがでしょうか。きっとよい方法が見つかるはずです。

 

認知症で思い込みが激しくなる?

認知症の症状により、思い込みが激しくなる可能性があります。そのため、話が通じなくなったり、困ったできごとが増えたりするかもしれません。できるだけ認知症の方の言葉を受け入れるようにしてください。話に共感したり積極的にコミュニケーションをしたり、不安を取り除いてあげるのも忘れないようにしましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

被害妄想が原因で暴力を振るわれました。どう対処すればよいでしょうか?

まずは物理的な距離を取りましょう。そして、家族に相談したり、ケアマネージャーに連絡したり、助けを求めるなども大切です。無理に暴力へ向き合う必要はありません。詳しくはこちらで解説しています。

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