「サ高住は住まいだから住民票を移すべき?」
「住民票を移さないとペナルティがある?」
サ高住へ入居する場合、住民票を移すかどうか迷う方が多くいます。
基本的に住民票を移さなければなりませんが、デメリットもあるため迷う方がいるのでしょう。
ただし住民票を移す場合、住居地特例制度を利用すればデメリットを解消できるケースがあります。
それでは、住民票を移すか移さないのか、どうすればよいのでしょうか。
本記事では、住民票を移すときの要点や移さなくてよいケースについて解説します。
また住居地特例制度の仕組みについても、詳しくまとめました。
住民票を移すメリット・デメリットも知り、本人や家族にとって負担にならない方法を選択しましょう。
基本的にサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)へ住民票を移す
サ高住に住む場合、住民票を移す義務はありません。ただし通常の引越しと同じく、住所が変わった場合は住民票を移すのが基本です。
就職や転勤などによる住所変更については、転出前に転出届を出して転出証明書を受け取り、引越し先では転入してから14日以内に転入届を出すと法律で定められています。正当な理由なく届出をしなかった場合、5万円以下の過料に処される可能性があります。
住民票を移さなくてよい例外のケース
住民票を移さなくてよい例外のケースは、下記のとおりです。
- 転出先の入居期間が1年未満の場合
- 本拠地が変わらない場合(生活拠点が変わらない)
例えば希望の介護施設が満室で空きがなく、サ高住をつなぎの住居として利用するとします。半年間の待機を限度とし、空かない場合は別の介護施設を探して3ヶ月以内に入居するスケジュールなら、サ高住の入居期間は1年未満です。
現住所と同じ市内にあるサ高住に入居する場合も、住民票を移さなくても大きな問題はありません。ただし郵便物は直接届かないため、転送サービスを利用したり、家族が届けたりする必要があります。
【番外編】老人ホームに世帯主が入居したときの住民票
自宅の世帯主が老人ホーム(サ高住)に入居した場合でも、例外のケースを除き、住民票を移してください。世帯主が自宅から抜ける際は、下記のような状態になります。
- 自宅の世帯主が父親だった場合、父親以外の家族が新たに世帯主になる
- 父親は世帯を構成する「世帯員」には入らず、一人暮らしの方と同じ扱いになる
つまり、父親は自宅の世帯主ではなく、老人ホームで「単身者として世帯主」になります。
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サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)へ住民票を移動させるメリット
「サ高住に住民票を移す義務がない」と知ると、メリットがあるなら住民票を移動させたいと思う方は多いでしょう。メリットは以下のとおりです。
- 住民票を移した市町村が発行する高齢者向け割引が利用できる
- 地域密着型サービスが利用できる
- 場合によっては各種保険料が下がる
- 郵便物が直接届く
住民票を移すのは面倒と思うかもしれませんが、条件によっては住民票を移したほうがメリットがあります。
1.市町村発行の高齢者向け割引が利用できる
サ高住に住民票を移すと、市町村が発行する高齢者向け割引が利用できます。自治体が提供している高齢者向け割引は、その市区町村に住民票がある方に限られるからです。
高齢者割引で一般的なのは、公共交通機関のシニア割や公共施設の利用割引などがあります。一般型(自立〜要支援)のサ高住であれば、自由に外出できる人が入居しています。特に本人が外に出たいタイプなら、公共交通機関の移動や公的施設や民間施設の利用で割引を使えたほうがお得です。
反対に住民票を移さないので、前の居住地である市町村が発行する割引は利用できます。ただし生活拠点が変わる場合は、前の居住地で割引を利用できてもさほどメリットはないでしょう。
2.地域密着型サービスが利用できる
サ高住の市町村の地域密着型サービスを利用したい場合は、住民票を移さなければなりません。地域密着型サービスとは、介護が必要な高齢者が可能な限り住み慣れた地域で生活できるように、市町村から指定された事業者が、その市町村に住民票のある要介護高齢者に提供する高齢者向けサービスです。
つまり住民票をサ高住に移していないと、住んでいる地域で、地域密着型サービスによる介護サービスは受けられません。サ高住は、住まいの提供が目的です。介護サービスが併設されていない住居もあり、その場合は外部の介護サービスを利用するため、地域密着型サービスが利用できると便利な場合が多いでしょう。
サ高住に住む方は、地域密着型サービスの中でも下記の通所介護を利用できます。
- 地域密着型通所介護
- 介護予防認知症対応型通所介護
地域密着型通所介護では、食事・入浴・排せつの介助及び機能訓練やアクティビティを受けられます。ただし中重度(要介護3~5)の状態で入居をされているサ高住の場合は、介護サービス事業所が併設されているため、地域密着型サービスを利用する機会は少ないかもしれません。
3.場合によっては各種保険料が下がる
介護保険料や健康保険料は市町村(保険者)によって異なるため、各種保険料が安くなるケースがあります。下記は厚生労働省のデータに基づき、全国における介護保険料の最低料金と最高料金をまとめたものです。
最低料金 | 最高料金 | |
---|---|---|
介護保険料 | 21,400円/年※ | 71,300円/年※ |
※2015年度~2017年度の条例上の保険料基準額
介護保険料は、最低料金と最高料金の自治体で年間49,900円もの差が生まれています。住む地域によっては、保険料が大幅に軽減する可能性があるでしょう。
ただし65歳以上の方の介護保険料は、所得段階によって異なります。所得が多くなるほど支払額が増える仕組みです。詳しい保険料は各自治体に問い合わせて確認してください。
参考:『全国の地域別介護保険料額と給付水準を公表します – 厚生労働省』
4.郵便物が直接届く
住所を移すと、サ高住へ直接郵便が届きます。重要なお知らせを見逃さず、家族の誰かが持っていく手間も省けます。
市町村からの介護保険関係の手続きをはじめ、遅れると支障のある郵便物をすぐに見られるのは大きなメリットです。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)へ住民票を移動させるデメリット
サ高住へ住民票を移すデメリットは、以下のとおりです。
- 前居住地のサービスが利用できない
- 短期間に移動するなら住所変更に手間がかかる
- 郵便物が他人に見られてしまう
- 場合によっては各種保険料が上がる
住民票を移すとデメリットが発生するケースもあるため、十分に注意してチェックしていきましょう。
1.前居住地のサービスが利用できない
住民票をサ高住の地域に移すと、前の居住地で利用していたサービスが利用できなくなります。地域密着型サービスは、その市町村に住民票の登録がある高齢者のみが対象です。そのほかにも、市町村が提供している高齢者向けの割引サービスも利用できなくなります。
ただしサ高住に住む場合、行動エリアが極端に変わる場合(例:距離が離れている)には、前の居住地の地域密着型サービスや高齢者向けサービスを利用する機会は少なくなるでしょう。事情があって前の居住地へ頻繁に行く場合は、デメリットとなります。
2.短期間に移動するなら住所変更に手間がかかる
住民票を短期間に何度も移動させると、非常に手間がかかります。転出先の入居期間が1年未満の場合は住所変更する必要はありません。将来的も見据えて、住民票の移動を検討しましょう。
3.郵便物が他人に見られてしまう
サ高住に住民票を移すと直接郵便物が届くため、下記のような個人情報を他人に見られてしまう可能性があります。
- 家族や友人からの手紙
- 請求関係の封筒
- 市町村からの通知類
- 年賀状や喪中はがき
中身をわざわざ見る人はいないと思いますが、プライバシーが懸念されます。ただしサ高住によっては、個人にポストを設けている住居もあります。気になる方は、資料や見学などで郵便物の受け取りについてもチェックしておきましょう。
4.場合によっては各種保険料が上がる
介護保険料や健康保険料は自治体によって異なるため、各種保険料が高くなる場合があります。
下記は厚生労働省のデータに基づき、全国における介護保険料の最低料金と最高料金をまとめたものです。
最低料金 | 最高料金 | |
---|---|---|
介護保険料 | 21,400/年※ (1,783円/月) |
71,300円/年※ (5,942円/月) |
※2015年度~2017年度の条例上の保険料基準額
介護保険料は、最低料金と最高料金の自治体で49,900円もの差が生まれています。住む地域によっては、保険料の負担が増える可能性があるでしょう。もちろん安くなる場合もあるため、入居先の保険料を事前に自治体へ問い合わせてください。
参考:『全国の地域別介護保険料額と給付水準を公表します – 厚生労働省』
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)へ住民票を移すときの注意点
サ高住へ住民票を移すときは、下記の項目に注意してください。
- 一定の居住期間がないと地域密着型サービスは利用不可
- 「受給資格証明書」の提出が遅れると介護認定調査が必要
- 移動先よりも現居住地のサービスが良い可能性
住民票を移す際は、ただ転入・転出届けを出せば終了ではありません。特に介護保険を利用してサービスを受けている場合は、必要な手続きを忘れずに行ってください。
1.一定の居住期間がないと地域密着型サービスは利用不可
市町村によっては、一定の居住期間がないと地域密着型サービスを利用できない場合があります。例えば、千葉県松戸市では地域密着型サービスの利用について下記の条件を原則としています。
市内地域密着型サービスの利用については、原則として3か月以上松戸市の介護保険被保険者であることを条件とします(住民基本台帳に記載されてから3か月経過していることとします。)。
地域によって条件は異なるため、地域密着型サービスを利用したい場合は各市町村に問い合わせてください。
引用:『松戸市地域密着型サービス事業者指定等に関するガイドラインについて』
2.「受給資格証明書」の提出が遅れると介護認定調査が必要
要介護または要支援認定を受けている方は、受給資格証明書を転入してから14日以内に市町村の介護保険担当窓口に提出してください。受給資格証明書の提出が遅れると、介護認定が引き継がれず、再度介護認定調査を受けなければなりません。
2回目の調査だからといって免除される項目はなく、前の住居で受けた調査と同じ期間と手間がかかります。受給資格証明書の提出期限は必ず守ってください。
3.移動先よりも現居住地のサービスが良い可能性
前の居住地と移動先のサ高住がある市町村で受けられるサービスは、異なります。例えば、現居住地で老人クラブや高齢者向けのスポーツ活動が盛んだったとしても、移動先はそのようなサービスがない可能性もあります。
本人がどのような介護サービスや高齢者向けサービスを必要としているか明確にし、どちらの自治体がよいか比較しましょう。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)へ住民票を移したときに使える住所地特例制度
サ高住へ住民票を移したときのデメリットは、住所地特例制度で解消できます。住所地特例制度とは、対象の介護施設に入居して住民票を移した場合、前居住地の被保険者として介護保険を利用できるものです。
施設所在地の区市町村の財政負担が集中するのを防ぐ目的で設けられた制度で、利用者にとっても下記のメリットがあります。
- 前居住地のサービスを継続して受けられる
- 前居住地の介護保険料が適用される
「転入先の市町村に必要なサービスがない」「前居住地のほうが保険料が安かった」これらのデメリットがある方は、住所地特例制度を検討しましょう。
住所地特例制度の対象施設
住所地特例制度の対象施設は、下記のとおりです。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定を受けていない賃貸借方式のサ高住は対象外)
- 軽費老人ホーム
- 養護老人ホーム
サ高住は、9割以上の住居が有料老人ホームに該当しています。具体的な条件は下記のとおりです。
- 有料老人ホームに該当するサービス(食事、介護、家事、健康管理)のいずれかを提供している
- 地域密着型特定施設に該当しない
両方に該当する場合、介護保険法第13条における「特定施設(対象施設)」として住所地特例制度の対象施設になります。サ高住において住所地特例制度を利用したい場合は、入居する住居が特定施設かどうか確認しましょう。
メリットがあるケース
住所地特例制度を利用してメリットがあるケースは、下記のとおりです。
- サ高住が立地する市町村の介護保険料が高い
- 前市町村と比べて、転入先の自治体が提供するサービスが劣っている
- 前市町村の介護サービスを継続したい
転入先の介護保険料が前市町村より高い場合、住所地特例制度を利用すれば前市町村の被保険者になるため、保険料が高くなるデメリットを解消できます。また前市町村の介護サービスを継続したい場合も、住所地特例制度を利用するメリットがあります。
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迷っているなら現・新居住地域のサービスを比較しよう
サ高住に入居して住民票を移さなかった場合、正当な理由がない限り、市町村にバレてしまうと5万円以下の過料が課せられます。例外のケースを除き、基本的には住民票を移してください。
介護保険料が高くなったり、前市町村の介護サービスを継続したかったりする場合は、住所地特例制度を利用して住民票を移すデメリットを解消させましょう。
それでも住民票を移すかどうか迷うなら、現・新居住地域のサービスを比較するとよいでしょう。「本人に必要なサービスがあるのか」を基準に考えれば、答えが出るはずです。
転入してから14日以内に他市町村が発行した「受給資格証明書」を提出しないと、介護保険が使えなくなります。もう一度介護認定を受けるための申請をし、審査を受けることになるため、必ず14日以内に「受給資格証明書」を転入先に提出してください。詳しくはこちらをご覧ください。
住民票を移すとメリットが大きいのは、介護サービスを受けたい方や各種保険料が前の居住地よりも安くなる方です。サ高住では介護サービスを併用していない場合もあり、通所介護を利用したい方は、住所変更するとその地域で地域密着型サービスを利用できます。なお、住民票を移しても前市町村の自治体の被保険者になれる「住所地特例制度」を利用すれば、前居住地の介護保険料や地域密着型サービスを継続できます。そのため、基本的に住民票を移したほうが総合的なメリットが大きいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。