親の介護などで在宅介護をしている人の中には、他の兄弟からの手伝いが無く親の介護をほとんど一人で行っているという人も少なくありません。
在宅介護だけではなく施設に親を入居させる場合でも、他の兄弟からの経済的な援助が無く費用を工面するのに困っているという方もいます。
家族が主体となって取り組む介護において起る上記のようなトラブルが発展するものとして家族崩壊があります。正式には「機能不全家族」と言われている家族崩壊ですが、家族崩壊が進むと親の介護に手が回らなくなったり場合によっては虐待などにも発展しかねません。
そこで本記事では、介護によっておこる家族崩壊の定義から原因、対処法まで詳しく解説していきます。
介護による家族崩壊とは
介護によっておこる家族崩壊とは、介護者のストレスから介護鬱を発症してしまったり親の介護をするために仕事を辞めなくてはならない介護離職などを原因として起こる家族間の不和や機能不全全般を指す言葉です。
家族崩壊、言い換えると機能不全家族の定義としては家庭内に対立や不法行為、性的・身体的・経済的な虐待等が恒常的に存在する過程を指すとされており、特に以下のような状態が見られる家族を指します。
- アルコール依存症
- ギャンブル依存症
- 薬物依存症
- 経済的なDV
- 性的なDV
- 社会的なDV
- ネグレクト
上記のように介護によって生まれる様々なストレスや経済状況の変化などによっておこる様々な問題を包括的に家族崩壊と呼んでいるのが実情と言えます。
親の介護をしたくないという場合はこちらの記事もご覧ください。
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介護による家族崩壊でよくある5つのケース
介護によっておこる家族崩壊のケースとしては、介護の場合は介護離職をすることによって世帯全体が貧困の状態に置かれていたリ、介護をしていない兄弟からの資金援助が断たれる状態、介護による精神的ストレスから親に対する暴力を働いてしまうようなケースが具体的にみられます。
具体的に説明していきます。
一人の子供に介護を押し付けてしまっている
介護によっておこる家族崩壊のよくあるケースとしてまず起るのは一人に介護を押し付けてしまっているケースです。
兄弟が複数人いて一人の兄弟が何となく介護をずっと続けているような場合に、最初は介護度が軽い状態なので身体的・精神的なストレスは少なかったものの、重度化に伴ってつらくなるような場合があります。
一人の子供に介護を押し付けている場合に、他の兄弟からの援助が無く、コミュニケーション不足が起ることによって家族間の不和に陥るケースがありますが、これは「家族崩壊」が起こっていると言えるでしょう。
したがって、家族崩壊の最初のケースは一人に介護を押し付けることによっておこる家族崩壊と言えるでしょう。
他の兄弟からの経済的な援助が無い
介護によって家族崩壊の2つ目のケースはほかの兄弟からの経済的な援助が無いケースです。
兄弟間で相談して、親の介護担当を一人の子供に決めたとします。その子供は時間的、精神的、体力的負担を負うことになります。それに対して、介護をしていない他の兄弟が、多めにお金を払うなどしてそれを補うべきです。しかし、払っていない場合などで起こりやすく、さらに介護が長引いている場合には、兄弟それぞれの世帯状況から資金援助が途切れるようなこともあります。
他の兄弟からの資金援助が途切れると、介護をしている子供は、時間的な制約からパートなどでしか仕事をしていないケースが多いので結果的に貧困の状況に置かれることがあるのです。
したがって介護による家族崩壊の2つ目のケースとしてはほかの兄弟からの経済的な援助が無い場合と言えるでしょう。
一人っ子で親の介護をしている場合はこちらの記事もご覧ください。
親に対する虐待がある
介護によっておこる家族崩壊の3つ目のケースは子供が介護される側の親に対して虐待行為を働いているケースです。
具体的には肉体的に暴力行為に出てしまっている場合や、意思疎通が難しい親を無視し続けていたリ、食事を十分に与えないなどの状況が親に対する虐待と言えます。
虐待の原因としては、他の兄弟からの経済的な援助が無いことや認知症の方の介護をしている場合に本人と意思疎通が取れないことによるストレスなどが原因として考えられます。
以上のように介護によって家族崩壊が起る3つ目のケースとしては親に対する虐待がある場合などが挙げられると言えるでしょう。
高齢者の虐待について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
介護離職により収入が減っている
介護によっておこる家族崩壊の4つ目のケースは収入が減っているケースです。
具体的には親の介護のために介護離職をしているケースでは、介護者本人の収入が減っているので自分も充実した生活が出来なくなってしまったり、介護によってかかる費用に押しつぶされ貧困状態に陥ることがあります。
実際に厚生労働省の雇用動向調査によると2020年に介護を原因に離職した人は約7.1万人いることがわかっており、男性で約1.8万人、女性は約5.3万人いることがわかっています。(出典:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」)
介護離職をしないために介護休業や介護休業給付金などの支援制度もありますが、そのまま離職するケースが多いのも事実です。介護離職によって世帯収入が減少し、他の兄弟からの援助などを受けることが出来ない場合に家族間の関係性が悪化し介護崩壊が起ることも考えられます。
親の介護で退職を検討している方はこちらの記事もご覧ください。

介護鬱を発症してしまっている
介護によっておこる家族崩壊の5つ目のケースは在宅介護をしている介護者が介護鬱を発症してしまっているようなケースです。
介護鬱とは、介護をしている本人やその家族が介護によって受けるストレスからうつ病を発症している状態のことを指します。介護による身体的な疲れや睡眠不足、ゴールの見えない孤独感などから鬱状態になってしまうことが一般的です。
調査によると在宅介護をしている4人に1人が介護鬱状態にあると言われており※、特に一人で親の介護をしている場合には切っても切り離せない問題と言えるでしょう。(出典:町田いずみ、保坂隆:高齢化社会における在宅介護者の現状と問題点-8486人の介護者自身の身体的健康感を中心に-訪問看護と介護11(7))
以上のように介護によって受ける身体的なストレスや精神的なストレスから介護鬱を発症している場合も家族崩壊が起りかけていると言えるでしょう。
介護による家族崩壊の原因と対処法
介護によっておこる家族崩壊の原因としては以下の4つの原因が考えられます。
- レスパイトケアが出来ていない
- 家族間で介護の話合いが出来ていない
- 介護サービスを利用しきれていない
- 費用の減免制度を利用できていない
それぞれについて解説していきます。
レスパイトケアが出来ていない
介護によっておこる家族崩壊の原因の1つ目はレスパイトケアが出来ていないことです。
レスパイトケアとは、介護にあたっている家族や介護者本人が一時的に介護から解放されるように代理の期間や公的サービスが一時的に介護を行うようなケアのことです。レスパイトは英語で「小休止」などと呼ばれており、一度介護から離れるためのケアを指します。
介護保険サービスにおいてもデイサービスやデイケア、ショートステイなどを利用して一時的に介護から離れるための仕組みが整備されており、レスパイトケアは利用しやすい状況にあります。
また、公的な介護保険サービスを利用する以外にも家族が一時的に介護を変わっている間に旅行に行ったり、趣味の時間を作るなどで介護から離れるのも重要なポイントです。
したがって、介護による家族崩壊の原因の1つ目はレスパイトケアが出来ていないことと言えるでしょう。
ショートステイについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
家族間で介護の話しあいが出来ていない
介護によっておこる家族崩壊の2つ目の原因は、家族間で誰がメインで介護を行うのか、介護を行う以外の家族はいくら介護者に対して経済的な援助をするのか、期間はいつまでかなどの話しあいが出来ていないことです。
突然のケガや病気で入院してから介護が始まった場合などでは冷静に家族間で話し合いができていないケースも少なくなく、それによって一人に負担がのしかかっているということも少なくありません。
具体的に話し合うこととしては以下のテーマがあります。
- 在宅介護を実施するか施設に入居させるか
- 施設に入居するなら何を判断基準にするか(一人で排せつができなくなった等)
- 施設とのやり取りは主にだれがするのか
- 在宅介護の場合はだれが主に介護をするのか
- 複数兄弟いる場合は動いていない人は費用をどのくらい負担するのか
あらかじめ誰がいつまで介護をするのか、具体的にいくら経済的援助をするのかという項目について合意を取っておかないとずるずると長引いてしまうこともあります。
したがって、家族崩壊を防ぐためにも上の観点で話し合いをしておきましょう。
介護サービスを利用しきれていない
家族崩壊が起る3つ目の原因としては、介護サービスを利用しきれていないことが挙げられます。
介護サービスと聞くと一般的には介護保険適用のデイサービスやデイケア、ショートステイや特別養護老人ホームなどのへの入所について考えがちですが、実は介護保険外サービスとして民間事業者や行政機関が取り組んでいる介護サービスもあります。
介護保険サービスとは異なり、全額自己負担となるので費用は高くなる傾向にありますが旅行代行や趣味の付き添い、散歩の付き添いサービスなど様々なサービスが充実しています。
介護によるストレスが原因で家族崩壊が起ることを危惧している場合は介護保険適用サービスだけではなく、介護保険外サービスの利用も検討して家族崩壊を防ぎましょう。
介護保険外サービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
施設サービスの利用を検討したいという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護なら、入居相談員にその場で条件に合った施設を教えてもらうことができるためご希望に沿った施設探しが可能です。
「プロに相談したい」という方は、ご気軽に無料相談を活用ください。
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費用の減免制度を利用しきれていない
家族崩壊が起る4つ目の原因としては、費用の減免制度を利用しきれていないことなどが挙げられます。
特に介護離職や他の兄弟からの資金援助が無い場合に家族崩壊が起きそうな場合においては、特別養護老人ホームなどの公的施設に入った場合に食費・居住費が減免される制度や、世帯ごとの所得額によって介護サービスの自己負担額の上限額を超えた分の費用を返還してもらえる制度などの減免制度を利用できていない場合があります。
介護をしている場合に利用できる減免制度の一覧表は以下の通りです。
減免制度名 | 減免される費用項目 | 概要 | 申し込み方法 |
---|---|---|---|
特定入所者介護サービス費 | 居住費・食費 | 4段階の所得段階ごとに、居住費と食費を減免することが出来る制度 | お住いの市区町村の役所にて申込 |
高額介護サービス費 | 介護サービス費用の自己負担額 | 1カ月の利用者負担額が所得ごとの区分限度額を上回った時に払い戻される制度 | お住いの市区町村の役所にて申込 |
高額医療・高額介護合算療養費制度 | 医療費と介護サービス費用の自己負担額 | 医療費と介護サービスの自己負担額の1年間の支払額が基準を超えた場合は払い戻される制度 | お住いの市区町村の役所にて申込 |
社会福祉法人などの利用者負担軽減制度 | 介護サービスの自己負担額、居住費および食費 | 市区町村税世帯非課税で特定の条件を満たした場合は、利用者負担の1/4が軽減される制度 | お住いの市区町村の役所にて申込 |
医療費控除 | 介護サービスの自己負担額・居住費・食費 | 所定の費用項目は確定申告を行うことで所得税から医療費控除をとして控除を受けることが出来る制度 | 確定申告にて申請 |
したがってこれらの費用の減免制度を利用しきれていないことも介護による家族崩壊の一つの原因と言えるでしょう。
費用の減免制度について詳しく知りたい場合はこちらの記事もご覧ください。
介護による家族崩壊の相談窓口
介護による家族崩壊の相談窓口としては以下の3つがあります。
- 地域包括支援センター
- ケアマネジャー
- 第三者の施設紹介センター
それぞれの窓口について紹介していきます。

地域包括支援センター
まず最初に紹介する相談窓口は地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、介護・医療・保険・福祉などの側面から高齢者を支える総合的な相談窓うちで、地方自治体から委託された民間の事業者が運営しています。設置数としては中学校の学区と同じ数だけ設置されており、家族崩壊などに総合的なテーマについても相談することが出来ます。
利用条件としては、対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者又はその支援に携わっている方となっており、もちろん介護をしている本人も利用することが出来ます。
場合によっては同じような境遇にいる方とのコミュニティに参加したり、ケアプランの見直しのきっかけともなるので現在の状況に耐えることが出来なくなりそうな場合はまずは地域包括支援センターに相談しましょう。
ケアマネジャー
次に紹介する相談窓口はケアマネジャーです。
在宅介護のみならず施設に入った場合も付き合っていくケアマネジャーですが、介護の状況などについて本人以上に詳しくわかっていることがほとんどのため、介護が原因で家族崩壊が起りそうな場合はまずはケアマネジャーに相談しましょう。
ケアプランを見直してくれたり、レスパイトケアとしてショートステイを紹介してくれるなどの対策を打ってくれることがほとんどのため、介護が原因でストレスを感じているという方はまずは相談するのがおすすめと言えるでしょう。
ケアマネジャーの役割について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
第三者の施設紹介センター
最後に紹介する相談窓口は、第三者の施設紹介センターです。
在宅介護をしている場合に費用が足りなくて施設に入れないと考えている方の場合、施設紹介センターに代わりに施設を探してもらうことで生活保護でも入れる施設や相場よりも安い費用で入所できる施設などを紹介してくれる場合があります。
一般的には、特別養護老人ホームなどが最も安い値段で利用できる介護施設となりますが、ユニット型特養(個室タイプ)などの場合は有料老人ホームに入る方が安いという場合もあるので、費用が足りないと思っている方もまずは相談してみるのがおすすめです。
第三者の紹介センターを利用するならケアスル介護がおすすめです。トップクラスの施設掲載数に加えて、ケアアドバイザーが一人一人に対して真摯に向き合ってくれるのでまずは相談してみてはいかがでしょうか。
介護による家族崩壊をどうしても解決できない時は?
介護による家族崩壊をどうしても解決できないという場合は、最終手段として家庭裁判所で決めるという方法もあります。
具体的には家庭裁判所にて「扶養請求調停」を申し立てることが出来、介護に必要な人的負担はどの程度か(生活状況)、親・兄弟の収入を源泉徴収票や所得証明書で確認(経済状況)し、関係者の意見も聞いたうえで調停委員が解決策を提示します。
例えば、「介護をしていない兄弟が親に対して毎月5万円ずつ援助する」などの解決策が提示されるので、双方が合意した場合は調停成立となります。仮に成立した内容の不履行があった場合は強制執行が可能で、財産の差し押さえ等が可能なので最終手段としては民事調停も検討しましょう。
介護による家族崩壊は事前に防ぐのが大切
ここまで介護による家族崩壊について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
介護による家族崩壊は経済的な援助が断たれることや、介護者に対する暴力、介護鬱など介護を取り巻く様々な問題から生じるものと言えます。
家族崩壊を防ぐにはやはり事前にだれがどの程度介護をするのか、費用はどの程度援助するのか、レスパイトケアはどうするのかなど家族だけではなく、時にはケアマネジャーなどの第三者も巻き込んだうえで相談していくことが重要です。
修復不可能な状態にならないように事前に話合いをして介護による家族崩壊を防ぐのがベストと言えるでしょう。
介護サービスや介護費用の減免制度を十分に利用できていない可能性があります。また介護を任せている間にご自身がリラックスできるようケアすることも大切です。詳しくはこちらをご覧ください。
地域包括支援センターやケアマネジャー、第三者の施設紹介センターに相談しましょう。家族崩壊でやむを得ない場合は、家庭裁判所で決める選択肢もあります。詳しくはこちらをご覧ください。