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  • 【公開日】2024-03-27
  • 【更新日】2024-03-27

住み慣れた地域で暮らす認知症高齢者等や家族の見守り支援マップ

住み慣れた地域で暮らす認知症高齢者等や家族の見守り支援マップ
認知症高齢者が増加している現代日本では、各地域で住民同士が支え合い、互助機能を高めていく必要があります。今回はその互助機能を高める方法を見守り支援マップの観点からご紹介いたします。
髙橋 謙一 准教授
日本赤十字秋田短期大学 介護福祉学科
社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員
介護福祉士教育学会・認知症ケア学会など
“東北福祉大学大学院修了(社会福祉学修士)。特別養護老人ホーム認知症等で介護福祉士として
勤務。その後、介護福祉士養成の道へ。専門学校の教員を経て現職。専門は介護福祉学。”

認知症高齢者を地域で見守るためには

地域で生活する高齢者の異変に気付くことがポイントとなります。朝のゴミ出しの際の服装の乱れや、あいさつを交わしたときの様子から変化に気づくこともあります。

認知症高齢者になると、自立して生活する力(自助機能)が低下するため住民同士の助け合い(互助)が必要になってきます。殊に、道迷い高齢者の早期発見・保護のためには地域住民の互助機能が大事になってきますが、「地域」の成り立ちによる住民の意識の違いもあり、互助機能を活かしきれていない地域もあります。

意図的に互助機能を形成し高めていくには「コーディネーター」が必要になってきます。地域包括支援センターでは地域の課題解決に必要な社会資源の開発や地域づくりの役割を担っていますので、地域住民の互助機能の構築に向けてサポートしてくれます。また、ご近所さんの高齢者の様子が「いつもと違う」と感じた際も相談してみることをお勧めします。

見守り支援マップについて

見守り支援マップは認知症高齢者やその家族、支援を必要としている人を公的サービス(公助)や福祉サービス(共助)の利用につなげ、安心して生活するために、住民同士が支え合う力(互助)を高めることを目的にしています。

見守り支援マップ作成は、地区特有の風習等を考慮しながら地域住民のニーズ調査から始まります。住民が抱えている困りごとを共有し、地域資源と照らし合わせ課題解決方法が提案され、マップに反映させます。この過程で気づきやつながりが少しずつ広がり、住民の活動へと発展していく効果があります。

内閣府の調査によると65歳以上の約8割が持家で生活しています。高齢者の心身状況や生活形態は多様です。また、これまでの生活経験で培われてきたこだわりもあります。他者との交流を好む人、そうでない人、さまざまな感情をもちながら地域でその人らしく生活しています。「見守り支援マップ」は認知症高齢者の見守り支援に限らず、地域で生活する人々に地域の情報を「見える形」で知らせてくれます。

インターネット上で「地域支援マップ」を検索すると都道府県単位や、市区町村、地域包括支援センターが管轄する「圏域」を対象に作成されたマップがあります。地域が広ければ掲載する情報量も多く、冊子にしていることもありますが、総じて地域にある社会資源やその情報を可視化しています。

表1 Web上で閲覧できた認知症地域資源マップの掲載項目                           掲載あり〇 掲載なしー
市町村名 A B C D E F G H I J K L M N O P
認知症の説明
SOSネットワーク
災害時の避難所・避難場所
認知症や生活に係る相談窓口
介護保険外の医療施設
福祉施設
協力機関(インフォーマルな支援機関)
地図の掲載
地図に掲載した社会資源の色別
医療/福祉/薬局を除く協力店(商店)等
車いすで利用可能なトイレ
ピトグラムの使用
pdf化されたページ数 2 3 16 15 26 21 1 28 35 36 42 60 13 21 36 8

見守り支援マップは地域で認知症高齢者や支援を必要としている高齢者等を緩やかに見守ることができる要素をもったツールであると考えます。

店舗と人をつなぎ、そこから人と人をつなぐ、その連鎖が繰り返されることにより、自然な形で互助機能が形成されていくのだと思います。実際に、地域内の法人の異なる福祉施設がマップ作成を機に「認知症カフェ」を合同開催して人と人がつながった地域もあります。

しかし、課題もあります。マップに掲載した店舗の閉店や新店舗の開店など、「まち(地域)は常に変化している」ことです。この状況に対し、ホームページ上にアップしている地域支援マップは常に修正を必要としますが、印刷され家々に配付されたマップは現状のままということも少なくありません。

また、認知症高齢者のいる家族のなかには、地域全体で認知症の人を支えることの安心感や取り組みの重要性は理解しているものの、認知症高齢者が家族にいることを知られたくないと抱え込む家族もいますが、地域資源を知り情報を得るメリットはあります。

おわりに

地域で生活するということは「自分が自分らしくいられる」ことなのだと思います。職業人としての経歴や地域で担ってきたことなど、それら全てを背負い喜怒哀楽を表現しながら物語の主人公として生ききることができるのだと思います。

公助や共助は個々人が「安心して」生活することを応援してくれますが、住み慣れた地域で「自分らしく」生活するためには「住民同士の支え合い」が必要不可欠あり、地域資源マップはその一助になるのではないでしょうか。

 

【参考文献】
・地域包括支援センター業務マニュアル 厚生労働省
・広島の地域包括ケア <島嶼・沿岸部型> 東広島市安芸津町
・近代的互助の類型化と互助を警世するための10のポイント 吉田俊之、中村洋
・令和5年版高齢者白書 内閣府
・支え合いマップ作り 社会福祉法人 七尾市社会福祉協議会
・介護をこえて 日本放送協会.2004. 浜田きよ子