超高齢社会に伴い、認知症に関する懸念も年々高まっています。
そんな中、「認知症になりやすい人の口癖はあるの?」「どんな人がなりやすいの?」このような疑問をお持ちの人もいるのではないでしょうか。
この記事では、どのような人が認知症になりやすいのか、少しでも発症を遅らせるにはどうしたらよいのかを解説していきます。認知症への理解を深めることで、早期対応が可能です。ぜひ最後までご覧ください。
認知症になりやすい人の口癖は?
認知症になりやすい人の口癖として以下のようなものがあります。
- 「これだから現代人は〜」
- 「今の若い人は〜」
- 「今に比べて昔はよかった」
- 「世の中がおかしい」
- 「どうせ……」
- 「もうだめだ」
- 「死にたい」
- 「疲れたよ」
- 「忘れたい」
口癖は性格の表れです。
不安になりやすい、抑うつ的、傷つきやすい、敵意を抱きやすい、自意識が強い、このような性格の人は認知症になりやすいと言われています。
なぜこの口癖は認知症になりやすいのか
もちろん、口癖や性格そのものが認知症の原因になるわけではありません。
口癖や性格が認知症になりやすい要因を作ってしまうため、認知症の発症率が高まるのです。では、何が認知症の原因となってしまうのでしょうか。大きな原因は2つあります。
- 脳への刺激不足
- ストレス
どうしてこの2つが認知症の原因となってしまうのか、詳しく解説していきます。
脳への刺激不足
認知症になりやすい口癖や性格を持つ人は、人間関係が希薄になり社会的に孤立しがちです。
人との関わりが減ってしまうと、日常的な脳への刺激が足りず、認知症発症の一因となってしまいます。
また、柔軟な考え方ができず「世の中がおかしい」「今の若い奴らは」「俺は俺、人は人」などの口癖がある人は脳の前頭葉の機能が低下している可能性も指摘されています。
前頭葉は社会に適応し、場の空気を読む機能を担う部位です。
知らず知らずのうちに認知症になりやすい環境を作ったり、脳の機能が低下したりするため、特定の口癖や性格の人は認知症になりやすいと言われています。
ストレス
認知症になりやすい口癖の人は、不安になりやすい、敵意を抱きやすい、抑うつ的、傷つきやすいといった性格の人が多いです。
このような性格の人は、ストレスを感じやすい傾向があります。
ストレスが加わると、コルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。慢性的なストレスに晒されると、このコルチゾールが過剰分泌され、注意力や記憶力の低下、感情の乱れを引き起こしてしまうのです。
また、性格的に他者とのトラブルにもなりやすいため、ストレスを感じる環境を自身で生み出しやすい特徴があります。
認知症になりやすい口癖の人はストレスを感じやすく、ストレスを感じる環境を自分自身で作ってしまうことから、認知症になりやすいと言われています。
口癖以外に認知症になりやすくなる要因
脳への刺激不足やストレス以外にも認知症になりやすくなる要因はいくつかあります。代表的なものが以下の3つです。
- 血液型
- 今までの職業
- 現在かかっている病気
「病気はともかく血液型や職業は本当に関係があるの?」と感じる人も多いかもしれません。
しかし、いずれも科学的な調査のもと証明された内容です。どのような血液型や職業が認知症になりやすいのか、詳しく解説していきます。
血液型
近年、認知症の発症リスクに血液型が関係していることが判明しました。
ある研究によると、性別・人種・地域などの影響を除外し、認知症の発症リスクについて解析したところ、他の血液型に比べ、AB型のみ82%も高いことが判明しています。
認知症以外にも、血液型と特定の疾患には深い関係があることが判明しており、A型であれば胃癌、O型であれば消化性潰瘍になりやすいとされています。
このように、血液型によって特定の疾患の発症リスクが高くなる可能性もあるため、認知症になりやすい1つの要因として、血液型についても把握しておくといいでしょう。
参照:『Kristine S. Alexander et al.,Neurology.83(14) 2014 p1271–1276.』
今までの職業
教師と公務員は認知症になりやすいと言われています。
特に、新たな発見が少ない教科を担当している教師や仕事内容に大きな変化がない職種の公務員は注意が必要です。
そのほかにも安定した民間企業のサラリーマンや肉体労働従事者、レジ打ち、スーパーや倉庫での荷降ろし作業、機械のオペレーターなど単純作業の繰り返しが多い職業は認知症になりやすい傾向があります。
現在かかっている病気
実は世の中には認知症を発症しやすくなる病気が存在します。代表的なものが以下の4つです。
- 高血圧
- 糖尿病
- パーキンソン病
- 歯周病
高血圧や歯周病、糖尿病は生活習慣病とも呼ばれており、特に身近な病気です。すでに発症している人も多いのではないでしょうか。
発症している、発症のリスクが高いとされる人々のために、これらの病気がなぜ認知症を発症しやすいのか、詳しく説明していきます。
高血圧
高血圧はその名の通り、血圧が高くなる病気です。高血圧になると、動脈硬化や脳梗塞、脳出血のリスクが高まります。
脳梗塞や脳出血を起こすと、脳の神経細胞がダメージを受け、脳血管性認知症を発症しやすくなるのです。そのため、高血圧の人は認知症になりやすく、進行しやすいと言われています。
高血圧の人が脳血管性認知症を発症するリスクは、高血圧前症の中年期で2.4倍、老年期で3.2倍にものぼります。
またステージ2の高血圧中年期では10.1倍、老年期で7.3倍と、更に認知症になりやすくなってしまうのです。
高血圧は自覚症状が少なく、軽視されがちです。しかし、高血圧か否かで認知症になるリスクが大きく変化します。認知症に至らずとも、認知機能の低下が徐々にみられるケースもあるため注意が必要です。
参照:『久山町研究から見た認知症の予防』
糖尿病
糖尿病は、血糖値を調整する役割があるインスリンが減ってしまう、あるいはインスリン効果が乏しくなって抵抗性が認められる病気です。糖尿病を抱えている人はアルツハイマー型認知症になりやすいと言われています。
インスリンは、アルツハイマー型認知症の原因物質である「アミロイドβ」の分解をサポートする存在です。糖尿病によりインスリンが減ってしまったり、インスリンに対して抵抗性が強くなったりすると、アルツハイマー病の原因物質の除去に不具合が生じます。
その結果、ゆっくりとアルツハイマー型認知症の原因物質が脳に溜まってしまうのです。また、糖尿病治療の副作用で重い低血糖が発生すると、認知症のリスクが高くなると言われています。
認知症により、認知機能が低下すると糖尿病薬の内服や注射、食事や運動の管理がうまくできなくなり、更に糖尿病の悪化につながる場合があります。その結果、認知症も更に進行してしまうかもしれません。
参照:『2型糖尿病におけるインスリン抵抗性がアルツハイマー病脳のアミロイド蓄積を促進するメカニズムを解明』
パーキンソン病
パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質の1つであるドーパミンが不足し、体の動きに障害が現れる病気です。実は、パーキンソン病を発症した人の約40%が認知症になるといわれています。特に動作が緩慢で、家にこもりがちな人が認知症になりやすい傾向があります。
パーキンソン病に関連した認知症は、レビー小体型認知症とパーキンソン病にともなう認知症の2種類です。近年の診断基準として、パーキンソン病を発症してから1年以内に認知症を発症したら、レビー小体型認知症とされています。1年以上であればパーキンソン病にともなう認知症とされ、パーキンソン病特有の運動症状が強いのが特徴です。
歯周病
歯周病は口の中で細菌が繁殖して歯肉周辺に炎症が起きる病気です。
歯周病により歯を失うと噛む力が弱くなり、噛むことによって脳に与えていた刺激がなくなります。その結果、認知症を発症しやすくなります。
また、2019年にはアルツハイマー病の患者の脳から歯周病菌が見つかったとの報告がありました。その歯周病菌は「ジンジパイン」と呼ばれる酵素を出して、脳の海馬を破壊することがわかっています。
2020年には、歯周病菌が体内に侵入し、認知症の原因物質である「アミロイドβ」の蓄積速度を早めることが解明されました。
歯周病は50歳代以上の約70%がかかっている病気です。歯がなくなる病気と認識されがちですが、認知症やそのほかの疾患にも大きく影響を与えます。適切な治療と毎日のケアが大切です。
認知症を予防するには
ここまで、認知症になりやすい人の口癖や特徴について説明してきました。
「家族が認知症になるか不安」「認知症になりやすい人の特徴はわかったけど、認知症の発症を遅らせる手はないの?」といった悩みや疑問をお持ちの人もいらっしゃるかと思います。認知症になりにくくするには以下の3つが重要です。
- 生活習慣の改善
- 活動量を増やす
- 病気を予防・治療する
具体的に何をしたらよいのかも合わせて説明していきます。
生活習慣の改善
食事や睡眠状況の改善も認知症予防には重大な役割を担っています。食事に関しては、以下の栄養素を取り入れるよう意識してみましょう。
- EPA(エイコサペンタエン酸)
- DHA(ドコサヘキサエン酸)といった多価不飽和脂肪酸
- ポリフェノール、カテキン、ベータカロチンといった抗酸化物質
- オレイン酸
上記を含む、青魚や緑黄色野菜、果物は認知症予防に効果があると医学的に証明されています。アルコールや脂質の多い食事は認知症になりやすいとのデータもあるため、取り過ぎには注意しましょう。
睡眠時間は6〜7時間がベストと言われています。アルツハイマー型認知症の原因物質である「アミロイドβ」は起床中に増加し、睡眠中に減少します。夜まとめて眠れない人は、30分以内の昼寝も効果的です。
睡眠の質も重要です。質のよい睡眠をとると、アミロイドβが脳の血管から排出されると言われています。日中は積極的に活動し、夜間はぐっすり眠れるようにリズムを整えていきましょう。
活動量を増やす
活動には、社会的活動、知的活動、身体的活動の3種類があります。
社会的活動は地域社会と関わる活動、知的活動は脳トレなどの知能を鍛える活動、身体的活動は体を鍛える活動です。これらをバランスよく生活に取り入れていく必要があります。
高齢になると「運動は苦手だし、人と関わるのは面倒」といった人も増えてきます。しかし、週に数回散歩を行い、誰かに挨拶するだけで社会的活動と身体的活動は可能です。
料理は工程も多く、より効率的に行うには頭を使う必要があるため、知的活動に分類されます。
このように、特別な活動を行わずとも、十分な刺激になります。足りていない活動はどれか、追加できそうなものはないか確認してみましょう。
病気を予防・治療する
先ほど認知症になりやすい病気を紹介しましたが、これらの既往歴がある人は治療を忘れずに行いましょう。定期的な健康診断や人間ドックも非常に重要です。
中でも、血糖値が高い状態を放置してしまうと、糖尿病だけでなく、認知症やがん、フレイルなどのリスクが高くなります。
日本生活習慣病予防協会は高血糖が継続し、悪影響が出ることを「血糖負債」と名付け、注意喚起を進めています。血糖負債の蓄積防止は認知症発症予防として非常に重要といえるでしょう。
そのほかにも、高血圧や歯周病などの生活習慣病は、日常の見直しによって予防できます。それぞれの病気によるリスクを正しく理解し、予防と治療に努めましょう。
認知症を疑ったら
もし、家族が認知症かもと感じたら躊躇わずに医師に相談しましょう。早期発見と治療を行うことで、症状の進行を緩やかにできます。
- もの忘れ(記憶障害)
- 時間・場所がわからなくなる
- 理解力・判断力が低下する
- 仕事や家事・趣味、身の回りの世話ができなくなる
日常生活に支障をきたすような上記の症状が現れた場合は、早めに受診してください。また、これらの認知症の症状に伴って以下のような言動が見られる場合があります。
- 一人になると不安になったり寂しがったりする
- 憂うつでふさぎこむ、趣味や好きなものに興味を示さなくなる
- 怒りっぽくなる
- 誰もいないのに、誰かがいると訴える(幻視)
- 自分のものを誰かに盗まれたと怒る(もの盗られ妄想)
- 外出しても家に帰れなくなってしまう
加齢による症状と認知症の症状は見分けにくいですが、本人が物忘れを自覚しているか、物忘れは全体的かを意識してみると判断しやすくなります。
また、認知機能の低下により、以前よりも反応が乏しくなり、抑うつ傾向になるため、顔つきが変化する場合があります。
生気を失ったように瞼が下がり、全体的に表情が乏しくなった場合は注意が必要です。
認知症になりやすい人は早期対応が重要
認知症になりやすい口癖や性格、既往歴などを紹介しました。認知症発症の大きな原因は脳への刺激不足とストレスです。
病気に関しては自分ではどうにもできないかもしれませんが、生活習慣や考え方は変えられます。もし、家族が将来危ないと感じたら、早期対応を行っていきましょう。
認知症の発症を遅くできるかもしれません。まずは生活習慣の見直しから行ってみてはいかがでしょうか。
「これだから現代人は〜」「今の若い人は〜」「どうせ……」「もうだめだ」「死にたい」「疲れたよ」「忘れたい」と言った言葉です。不安になりやすい、敵意を抱きやすい、抑うつ的、自意識が強い、衝動的、傷つきやすい、このような性格の人は認知症になりやすいと言われています。詳しくはこちらをご覧ください。
認知症かもと思ったら躊躇わずに医師に相談しましょう。認知症は早期発見・治療を行うことで症状の進行を緩やかにできます。詳しくはこちらで解説しています。