ソーシャルワーカーへの相談方法や相談できること

ソーシャルワーカーへの相談方法や相談できること

ここでは医療や福祉の分野で相談という方法で支援を担う、医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker、略称:MSW)について解説をします。

上原 正希 教授・所長
星槎道都大学 社会福祉学部・地域連携推進センター
社会福祉士・精神保健福祉士・介護支援専門員
日本福祉図書文献学会(理事)・日本ソーシャルワーカー協会(常任理事)・北海道ソーシャルワーカー協会(会長)
東北福祉大学大学院を修了。介護老人保健施設で介護職員・支援相談員、医療機関で医療ソーシャルワーカーの勤務後、新潟青陵大学での勤務を経て、現在に至る。小樽市立高等看護学院などで社会福祉の講義も担当している。大学では「地域福祉と包括的支援体制」などの科目を担当。                 主な研究テーマは社会福祉学(ソーシャルワーク)である。
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1. 医療や福祉の分野で働く社会福祉専門職

高齢者や障がい者などへの支援を担う社会福祉専門職は、大きくわけて2種類存在します。

1-1. 「介護」という方法で支援を担う社会福祉専門職

介護の専門職をケアワーカーと言い、活用する技術をケアワークと言います。介護福祉士や介護職員初任者研修修了者が、利用者の食事や入浴の介助などの支援を担います。

1-2. 「相談」という方法で支援を担う社会福祉専門職

相談の専門職をソーシャルワーカーと言い、活用する技術をソーシャルワークと言います。社会福祉士や精神保健福祉士という資格取得者が、利用者や家族などの相談に応じ、福祉サービスの情報提供や助言などの支援を担います。ソーシャルワーカーという名称は、相談の専門職の総称であり、勤務場所で名称が変わります。市役所ではケースワーカー、特別養護老人ホームでは生活相談員、病院では医療ソーシャルワーカー、病院でも精神科では精神科ソーシャルワーカーと言われたりもします。

ここでは病院で相談という技術を活用し、支援を担う医療ソーシャルワーカーについて触れます。

2. 病院で働く医療ソーシャルワーカーとは

2-1. 医療ソーシャルワーカーは、どんな相談にのってくれるのか

病気になると患者も家族も、心理的・経済的な悩みや課題が出てきて、治療や療養に専念ができません。よって悩みや課題を解決するため、相談に応じ、支援をする制度や施設などの社会資源の情報提供や助言、連携をはかり、よりよい社会生活を送れるように支援を担うのが医療ソーシャルワーカーです。

具体的には厚生労働省が、「医療ソーシャルワーカー業務指針」として、医療ソーシャルワーカーの仕事を、6つに整理をしています。

① 療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助:病気や手術が不安なので、どうにかしてほしい。

退院援助:医者から退院を促されたが、まだリハビリを継続したいので、転院先を探してほしい。

社会復帰:職場に復帰予定だが、スムーズに復帰できるように職場の上司と調整をしてほしい。

受診・受療援助:手術の説明が難解で理解できなかったので、再度、医者に説明してほしい。

経済的問題の解決、調整援助:医療費の支払いが大変なので、活用できる制度を教えてほしい。

地域活動:同じ病気で悩んでいる患者や家族が語り合える場所が欲しい。

医療ソーシャルワーカーは、患者や家族の相談を受けたり、他の病院からの紹介患者の受け入れや、他の病院への患者の紹介などの調整業務を担ったりもしています。医療従事者が患者や家族を支えるためのチームを形成するための会議を開催したり、外部の他機関とのネットワークづくりにも関わっています。

2-2. 医療ソーシャルワーカーは、どこにいけば会えるのか

患者や家族が「相談をしたい」、「悩みを聞いてほしい」となったとき、病院のどこにいけば、医療ソーシャルワーカーに会えるのかというと、病院によって多少名称は異なるものの、医療相談室地域医療連携室という部屋にいくと会うことができます。案内板で確認したり、受付で聞くと場所を教えてくれます。また、入院時に配布される入院のしおりにも掲載されている場合があります。手術後でベッドから離れることができず、医療相談室にいけない場合は、看護師にお願いすると、部屋まで医療ソーシャルワーカーが訪問をしてくれ、対応をしてくれたりもします。

相談は無料で、話した内容は守秘義務という秘密を漏らさないという約束事がありますので、安心して相談をしてください。

医療ソーシャルワーカーと同じく、相談や調整をするケアマネジャー(介護支援専門員)という専門職も存在します。ここでは、医療ソーシャルワーカーとケアマネジャーの違いについても触れておきます。

3. 相談と調整をするケアマネジャーと医療ソーシャルワーカー

3-1. ケアマネジャーはどこにいて、どんな仕事をしているのか

ケアマネジャーは、特別養護老人ホームなどの入所施設と、地域で生活をしている高齢者を支える居宅介護支援事業所にいます。

入所施設のケアマネジャーは、施設の専門職と連携し、入所者の身体・精神面などを考慮しながら、これからも施設で健康に楽しく生活していくためには、どうしたらよいのかなどのケアプラン(計画)を作成し、そのプランを元に各専門職が支援を行います。プランナー(立案する人)の役割を担っています。

※ケアプランとは、介護が必要な人それぞれの状態を見極め、サービスや援助の方法をとりまとめたプラン、介護の計画のことです。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、自宅で福祉サービスを利用しながら生活を継続したいという病院に入院患者がいたら、医療ソーシャルワーカーは居宅介護支援事業所のケアマネジャーに連絡をとり、病院に訪問してもらったりして、本人や家族、専門職から聞き取りを行い、掃除と入浴の支援を入れたいと希望があれば、地域のホームヘルパーやデイサービスの事業所と調整をし、各サービスを必要な理由や週何回必要かなどを記したケアプラン(計画)を作成し、各事業所と調整をする役割を担います。

3-2. ケアマネジャーと医療ソーシャルワーカーの仕事の違い 

ケアマネジャーと医療ソーシャルワーカーは、患者や家族の悩みごとの相談を受け、調整をするという観点では共通している点もありますが、しかし、その業務は異なります。

ケアマネジャーの対象者は、主に高齢者の介護が必要な人やその家族からの相談に応じ、個々のニーズに適した、介護が必要な人それぞれの状態を見極め、サービスや援助の方法をとりまとめた介護サービス計画書と呼ばれるケアプランの作成や見直しをおこなう専門職です。

医療ソーシャルワーカーの対象者は、病院で身体的・精神的・経済的にハンディキャップを抱える高齢者や障がい者、ひとり親家庭、生活困窮者など幅広い人からの医療・介護・福祉などに関する相談に専門的知識を活かして、その人に必要な支援サービスの調整や生活をしやすくするための住民や制度への働きかけをおこなう専門職です。

患者からの相談に医療ソーシャルワーカーからケアマネジャーにつなぐこともあれば、ケアプランをケアマネジャーが作成し、医療ソーシャルワーカーが調整役となって、各機関と連絡を取り合うこともあります。以下にそれぞれの対象者、業務、勤務する場所、資格などについて、表として整理しました。

種類 医療ソーシャルワーカー ケアマネジャー
対象者 ・身体的、精神的、経済的にハンディキャップを抱える子どもから高齢者まで幅広い ・65歳以上で介護保険の要介護または要支援と認定された人もしくは、40歳から64歳で16種類の特殊疾患を有し、要介護または要支援状態と認定された人
業務 ・日常、社会生活に支障のある人の社会福祉の相談にのり、相談・調整・援助をとおして解決に導く ・介護を必要とする人がサービスを受けられるようケアプランを作成し、介護保険サービス事業者と連絡調整の業務を担当する
勤務
場所
行政、社会福祉協議会、社会福祉施設、介護施設、障害者施設、児童福祉施設など 居宅介護支援事業所、介護施設など
資格 社会福祉士・精神保健福祉士(国家資格) 介護支援専門員(都道府県が認定)

※筆者作成

4.医療ソーシャルワーカーとのケアマネジャーとの連携 -事例-

医療ソーシャルワーカーとケアマネジャーの連携について、時系列にそって説明をします。

Aさん男性(65歳)と妻(63歳)の老夫婦で生活をし、子どもはいないとしましょう。

4-1. 病気の発症

自宅の長椅子で夫とテレビを見て会話をしていたら、Aさんのろれつが回らないことに妻が気づき、翌朝、病院(脳神経外科)を受診。検査も含め入院となった。

4-2. 病状について、難解な説明への不安

担当病棟の看護師長から「医師から病状や手術について説明をしたい」という電話が自宅にあり、妻は一人で説明を聞くこととなった。説明が一通り終わったのち、手術の同意書という書類が渡され、近日中に提出するように言われた。理解できたことは脳梗塞という病衣名、しかしそれ以外の説明は難解で理解はできず、入院費の支払いも不安で、妻はAさんのベッドの横で途方にくれていた。そんな姿を病棟の看護師が見ていて声を掛けた。妻は看護師に不安を伝えたところ、医療相談室があることを教えられ、妻は訪問することとした。

4-3. 医療ソーシャルワーカーとの出会いと支援

医療ソーシャルワーカーは妻の相談内容を聞き、「病状と手術の理解不足に伴う不安」と「入院費の不安」の2つの課題を解消しなくてはいけないと考えた。1つ目の課題は、医療ソーシャルワーカーが看護師長に事情を説明し、医療ソーシャルワーカーも同席のもと、再度わかりやすく医師から説明してもらうこととした。2つ目の課題は、所得に応じて入院費が軽減される高額療養費制度について説明をし、手続きを促した。その結果、妻の不安は軽減され、同意書にもサインをし、無事手術も終了した。

4-4. 医者から退院の許可で不安が再燃

手術後1カ月後、医師よりAさんと妻に対し、「退院に向けた準備をするように」という話がなされたが、妻は「手助けがないと難しい」と伝え、医師より「医療相談室に行くように」と促された。

4-5. 医療ソーシャルワーカーからケアマネジャジャーへバトンをつなぐ

妻は医療ソーシャルワーカーに退院の件を話した。まずは福祉サービスを利用するために介護保険の申請をすることを説明した。また、リハビリの継続や入浴介助、妻のレスパイトケア(介護する人の癒し)の理由から、デイケアの利用が良いのではないかと目安をつけ、Aさんと妻の内諾を得て、Aさんの入院から現在までの病状などをまとめ資料を、ケアマネジャーに情報提供を行った。

4-6. ケアマネジャーとの出会いと支援

後日、病院の会議室で、Aさんと妻、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーを含めた病院スタッフ同席のもと会議を開催した。各々の意見が出され、やはりそこでも、デイケアの利用がのぞましいとなり、ケアマネジャーが、どこのデイケアを週何回利用するかなどの計画を立案することとなった。

4-7. 自宅復帰へ向けた最終確認

退院を1週間前にして、医療ソーシャルワーカーとケアマネジャー、Aさんと妻、デイケアスタッフがAさん宅に集まり会議を開催した。退院の日が設定されていることから、デイケアの利用開始日を確定させ、利用開始にあたり準備することが確認された。

まとめ

医療ソーシャルワーカーは、高齢者や障害者の介護をはじめとして、難しい家庭環境下にある介護問題や生活困窮に関連することなど、日常生活を送るのが難しい対象者に対し、社会福祉制度や各種サービス、法律、行政や福祉、医療など、あらゆる分野の幅広い知識を身につけ支援する必要があります。

また、さまざまな患者や家族が不安を感じていることに対して対応を行い、患者が治療や療養に専念できるように、患者の抱えるさまざまな問題の把握・整理・解決を行います。

医療ソーシャルワーカーは、患者や家族など、「個人を支える」ことと、その患者や家族が住み慣れた地域で生活が継続できるように福祉サービスを調整したり、地域で支えてもらえるような仲間を形成する、「個人を地域で支える」社会を構築するのも医療ソーシャルワーカーの役割になります。

【参考・引用文献】

  • 日本医療ソーシャルワーク研究会「医療福祉総合ガイドブック〈2023年度版〉」医学書院,2023
  • 日本医療ソーシャルワーク学会「地域包括ケア時代の医療ソーシャルワーク実践テキスト(改訂版)」 日総研出版,2021
  • 上原正希「医療ソーシャルワーカーの業務における制約について」新潟青陵大学紀要 7 (7), 2007
  • 上原正希他「医療現場における社会福祉援助技術のあり方についての一考察 : 地域連携機能の枠組み強化への予備的研究」新潟青陵大学紀要 8 (8), 2008
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