• くらし
  • 【公開日】2024-03-12
  • 【更新日】2024-03-12

老人福祉センターとは

老人福祉センターとは

老人福祉センターは、老人福祉施設の1つで、無料または低額な料金で、老人に対して各種の相談に応じたり、健康の増進、教養の向上、及びレクリエーションの便宜などを総合的に供与する施設であり、市民と高齢者の親睦の場でもあり、また憩いの場でもあります。なお、類似の施設として、老人憩いの家や老人休養ホームなどがあります。
今回はその老人福祉センターについて、利用方法含めご紹介いたします。

藤田 了 准教授
大阪国際大学 人間科学部 人間健康科学科
社会福祉士/精神保健福祉士/介護福祉士/主任介護支援専門員
日本社会福祉学会/日本地域福祉学会 など
奈良県内の社会福祉法人で介護職、ケアマネジャーとして相談業務に従事。その後、大阪府内の株式会社にてケアマネジャーとして勤務し16年現場の業務に従事する。
奈良保育学院を経て2017年より大阪国際大学にて勤務。研究関心は、介護保険制度下におけるケアマネジャーの業務の在り方や課題について現場の目線で研究を続けている。
関西福祉科学大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程満期退学。

老人福祉センターの基本情報

老人福祉センターには、機能や規模に応じて「特A型」「A型」及び「B型」の3つの種類があります。

特A型・A型

A型は、地域の老人福祉活動の拠点となるもので、「生活相談・健康相談」「生業及び就労の指導」「機能回復訓練の実施」「教養講座等の実施」「老人クラブに対する援助」等を行います。これらに「保健・健康増進部門」を強化したものが特A型となります。

B型

比較的小規模で事業内容も限られ、「各種相談」「教養講座等の実施」「老人クラブに対する援助」などを行います。

 

老人福祉センターの数は、厚生労働省によると全国に、「特A型」214施設、「A型」1,245施設、「B型」437施設、3種類合計で1,896施設となっています。

また、老人福祉センターは、他の福祉厚生機能と共に一棟の中におさめ総合福祉センター化している場合(併用設置)と、老人福祉センター機能のみで独立している場合(独立設置)とがあります(林1968)。

老人福祉センターの特徴やできること

老人福祉センターは、高齢者のいきがいづくりや、社会参加を支援するための地域における身近な施設です。

老人福祉センターで実施されている具体的な活動内容については、地域ごとの老人福祉センターにおいて様々です。各種教養講座や生涯学習の開講、地域交流の機会として様々なイベントや行事の開催、健康に関する相談や体力の維持・向上を目的とした健康体操や機能回復訓練等の実施、各種行事、高齢者の運営によるサークル活動や同好会の他、老人クラブへの支援協力などを行っています。

老人福祉センターでの活動は、年齢やこれまでの経歴、また性別などを問わず誰でも気軽にできる活動を通して、地域社会での「つながりを作る」ということを目的のひとつとし、高齢者の社会参加につながるといえ、地域で生活する高齢者の交流の場の拠点として老人福祉センターの役割は重要であるといえます。

具体的な活動内容の例

  • 各種講演会・講習会・教養講座・生涯学習
    転倒予防講座、介護予防教室、認知症予防講習会、健康体操教室、太極拳教室、絵手紙教室、ヨガ教室、脳トレ教室、スマホ講座
  • 交流の場の提供・レクリエーションの実施・行事の開催
    ボッチャ、花いちもんめ、車いすバスケットボールの観戦、演芸会、クリスマスパーティー、新年の集い、初詣、歩こう会
  • サークル活動・同好会
    カラオケ、フォークダンス、手芸、フラダンス、銭太鼓、読み聞かせ、英会話、俳句、コーラス、書道、卓球、民謡、詩吟、生け花、囲碁将棋、歴史クラブ
  • 機能訓練・健康相談
    保健師や看護師等による血圧測定や健康相談、理学療法士や作業療法士等による機能回復訓練や指導、栄養士等による栄養相談、歯科衛生士等による口腔ケア相談
  • その他
    車いすの貸出、新聞や図書の閲覧、浴場(公衆浴場法第2条第1項による許可を受けた場合)

利用方法について

老人福祉センターは、老人福祉法において「無料又は低額な料金で、老人に関する各種の相談に応ずるとともに、老人に対して、健康の増進、教養の向上及びレクリエーションのための便宜を総合的に供与することを目的とする施設とする。」とされています。対象者を地域に住む高齢者としており、多くの老人福祉センターでは、地域に住む60歳以上の人を対象者としています。

利用にあたっては、各老人福祉センターに直接申し込みをします。通常、利用登録を必要としている老人福祉センターが多いようです。また、年齢については、特別な場合において、60歳未満でも利用できる場合もあります。さらに利用料金についても、実費(食費や交通費等)が発生する以外は無料又は低額な料金としている老人福祉センターが多いようです。

老人ホーム等の施設との違いについて

老人福祉センターは、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設に入所をして食事、入浴、排泄、その他様々な介護を受ける「施設(入所)介護サービス」ではありません。また、デイサービスやホームヘルプサービス、訪問看護や訪問入浴など在宅で食事、入浴、排泄、その他様々な介護を受ける「在宅(居宅)介護サービス」でもありません。その為、老人福祉センターの利用にあたっては、介護保険制度の各種サービスを利用するために必要である「要介護(要支援)認定」を受ける必要はありません。

老人福祉センターは、地域の高齢者の方々が健康で明るい生活を送るための様々な相談に応じたり、健康の増進や教養の向上、レクリエーションや交流の場などを総合的に供与する施設です。そのような性質上、介護が提供される施設ではありません。その為、介護サービスの提供はありません。老人福祉センターを利用するに際し介護が必要な場合は利用者側で対応する必要があります。

老人福祉センターと高齢化の現状

皆さんもご承知の通り、わが国は諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています。高齢期における生活は、健康状態や社会環境に大きく影響を受け、生活困難が生じやすいということも指摘されています。

65歳以上の人口は、1950年以降一貫して増加し、2012年に3,000万人を超えました。2042年には約3,900万人とピークを迎えるといわれており、その後も75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されています。現在のわが国の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は29.0%に達しています。

65歳以上の者のいる世帯については、2019年では、世帯数は約2,558万世帯と全世帯(約5,179万世帯)の49.4%を占めています。

1980年の世帯構造では、三世代世帯の割合が一番多く、全体の半数を占めていましたが、2019年では夫婦のみの世帯が一番多く約3割を占めており、単独世帯と合わせると約6割となっています。65歳以上の一人暮らしの者は、男女ともに増加傾向にあり、1980年には男性約19万人、女性約69万人であり、65歳以上人口に占める割合は、男性4.3%、女性11.2%でしたが、2015年には男性約192万人、女性約400万人、65歳以上が人口に占める割合は、男性13.3%、女性21.1%となっています。

高齢期の暮らしを支える社会保障制度の1つである公的介護保険制度は2000年にスタートし23年が経過しました。介護が必要な高齢者の暮らしを支える制度として着実に機能しているといえます。民間活力の導入によりサービスや質の向上への取り組みがなされ、福祉施策も大きく変化し、「福祉」を取り巻く状況はめまぐるしく変化しています。

そのような状況の中、老人福祉センターの設置数は、特A型は2001年・2002年の270施設、A型は1999年の1,627施設、B型は2012年・2013年の450施設がそれぞれ最多であり、それ以降やや増減はあるものの概ね減少傾向にあります。老人福祉センターの目的としている、老人に関する各種の相談機能や健康の増進のための機能等について、様々な制度や政策が整ってきているとも捉えられます。

終わりに

今後、さらなる高齢化が進展していくとされており、高齢者の一人暮らしの世帯も多くなっていくと予測されています。高齢者対策としては、介護予防や機能回復訓練の拠点が求められています。また、突然の事故や病気により、たちまち介護が必要になることも考えられます。

高齢者が住み慣れた地域でいきいきと暮らしていく為には、介護の状態にならない介護予防の視点と、介護が必要な状態となる前から生きがい活動や交流の場を通じて地域の福祉・介護・医療・健康など様々な情報を得ることも非常に大切になってくるといえます。

老人福祉センターが地域で生活する高齢者にとって時代の変化に合わせた必要としている需要に応えるためのツールの1つとして機能することを期待します。

 

【引用・参考文献】
・ワムネット「老人福祉センター」https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kourei/handbook/service/c078-p02-02-Kourei-06.html(令和6年3月7日閲覧)
・厚生労働省「令和4年社会福祉施設等調査の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/22/dl/soukatsu.pdf(令和6年3月7日閲覧)
・林金之「老人福祉センターの建築計画に関する研究第1報」愛知工業大学研究報告4(1968)239-244頁
・大阪市港区老人福祉センター「老人福祉センター」http://www.minatoku-shakyo.com/senior_center/(令和6年3月7日閲覧)
・松井圭三、今井慶宗編著「現代社会福祉要説」ふくろう出版(2021)
・内閣府「令和5年版高齢社会白書」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/s1_1_1.html(令和6年3月7日閲覧)
・ミネルヴァ書房編集部「社会福祉小六法2023[令和5年版]」ミネルヴァ書房(2023)
・藤田了、名定慎也、今井慶宗他「老人福祉センター行財政の研究」大阪国際大学紀要国際研究論叢第32巻,第1号(2018)