親の介護をしている人の中には、兄弟間の役割分担ができていない方や兄弟が親の介護をかたくなに拒んでいるという方も少なくないと思います。
親の介護は経済的にも介護者の身体的・精神的な負担もかかるのでやはり兄弟がいる場合は役割分担をして負担を軽減したいところです。
本記事では、親の介護をしている人の中で親の介護を私ばかりしているという方に焦点を当てて、体験談から兄弟と分担する方法まで解説していきたいと思います。
親の介護を私ばかりしているという方は介護者の約20%いる
第一章では、親の介護を私ばかりしているという方は全介護者のうちどの程度いるのか、男性・女性間の違いがあるのかについて解説していきます。
他に介護を分担してくれる家族がいない人は19.8%
長崎大学が実施したアンケート調査によると「ほかに介護を分担してくれる家族がいない」と回答した人は全体の19.8%いることから、全体の約20%の人が親の介護を一人で行っている方ということがわかります。(出典:長崎大学「介護状況の把握に関するアンケート調査結果 」)
親の介護を分担せずに一人に任せっきりになってしまっている理由として考えられるのは、他の兄弟が遠方に住んでおり物理的に距離が離れているため介護をできないケースや、介護が必要になった親と面と向き合って介護をするを受け入れることが出来ないという理由が考えられます。
例えば、昔親から虐待を受けていたという方や成人後も私生活に介入され続けたなど、俗的な言葉で「毒親」と呼ばれるような方を介護するようなケースであれば他の兄弟が支援をしてくれず、私ばかりが介護をしているというケースも少なくありません。
物理的な理由や精神的な理由から親の介護の分担ができておらず、親の介護を私ばかりしているという方は全体の約20%いることがわかります。

男性よりも女性の兄弟に任せっきりになることが多い
厚生労働省が介護者に対して実施したアンケート調査によると、「姉妹がいる」と回答した人がほぼ毎日介護をしているのは全体の37.5%の方に限られますが、逆に「兄弟のみがいる」(男兄弟しかいない)と回答した方でほぼ毎日介護をしている人は48.6%となっており、自分以外に女性がいる場合と男性しかいない場合では女性に任せっきりになることが多いことがわかります。(出典:厚生労働省「平成 24 年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 」)
女性に介護が任せられる理由としては、女性の方が家事や子育てをする割合が多いことで、男性の方がフルタイムで仕事をしている方や給与を多く得ている人の割合が多いということが背景にあります。
仕事が忙しいという理由で女性の兄弟に多く介護を負担させることになってしまったり、あるいは介護職の方に女性が多いことからも性別に関係なく利用者が女性のスタッフを望んでいるということからも、社会全体の価値観として介護をするのは女性という考えを持っている方が多いのかもしれません。
以上より、男性よりも女性の兄弟に任せっきりになることが多いことがわかります。

経済的援助をするのは男性が多い
一方で、厚生労働省の同調査によると、姉妹がいると回答した人に比べて男兄弟がいる方の方が費用を負担していないと回答している人の割合が多く、姉妹がいる方は37.9%、兄弟がいる方は50.7%が負担していないと回答しているのです。
したがって、兄弟がいる場合は仕事をフルタイムでしている分金銭的な援助をしている割合も多く、実際に介護をするのは女性で男性の兄弟は金銭的な援助をするというのが一般的な役割分担となりつつあるのかもしれません。
兄弟がいて親の介護を私ばかりしているという方は、経済的援助も含めて役割分担ができないかなども検討してみましょう。
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親の介護を私ばかりしているという方の体験談
続いては、親の介護を私ばかりがしているという方の体験談を紹介していきます。
体験談①兄との二人兄弟で介護を私ばかりしているという方
親の介護を私ばかりしているという方で最も多いケースとして考えられる、男兄弟との二人兄弟で自分だけ介護をしているという体験談です。
結局、私がいつも動いています。私ができないことは兄夫婦にお願いするのですが、出来ない・ムリ。とハッキリ言われ、その度にものすごく悲しくなります。
お願いする時もすごく申し訳ない気持ちでお伺いをたてて、そうしていること自体、悲しいのですが「今回はムリだけど次、また何かあったら言ってね」ではなく、全く無理だと言われるので本当にツラいです。
(yahoo知恵袋より引用)
こちらの体験談では、兄がキーパーソンであるにも関わらず自分だけが介護をしているというケースです。連絡が取れなくなるケースなどで親の介護を私ばかりしているという場合も少なくありません。
体験談②姉妹間で親の介護の負担が私ばかりになっているという方
2つ目の体験談では二人姉妹で介護をしていて親の介護の負担が私ばかりに来ているという方の体験談です。
以前は隣の県に住んでましたが、6年前に引っ越してきました。隣の県に双子の妹が居ます。彼女は家を出てる大学生の子が一人いるだけで夫と二人暮らしです。
…..私の悩みというか、もやもやした気持ちは同じ姉妹なのに、どうしても私ばかりに負担がくることです。今までも少なくとも週1回は顔を出して、買い物や話し相手をしてきたのに、妹は短時間とはいえ週に5日の仕事を持ってるためふた月に一度くらい、昼から数時間の訪問でお茶を濁してます。私は週に3日くらいの勤務ですので、時間的に余裕があるものの、妹は家族も少なく泊まりで来ても支障はないはずですが、それはしません….
(yahoo知恵袋より引用)
こちらの例では物理的に介護者本人が親の近くに住んでいるという理由から、ほとんど同じ状況であっても多少距離が離れている姉妹に介護を任せられてしまっている例です。
こういったケースでは実際に介護をしないのであれば、経済的な援助をしてもらえないかなどについても検討してみましょう。

体験談③弟との役割分担ができておらず親の介護を私ばかりしている例
三つ目の体験談では姉と弟の二人で親の介護をしているという方の体験談です。
こちらの体験談においてもやはり物理的な距離があることを理由に加えて、女性の兄弟がいることから介護を任せっきりにされている体験談となります。
しかも、弟との介護となるので経済的援助をしてもらうのも難しくなってしまうので、将来母親の介護が必要になった場合はどうするかなどについてもあらかじめ話を握っておくことが必要でしょう。
親の介護を私ばかりではなく分担する方法
親の介護を私ばかりではなく分担する方法としては以下の4つのポイントを押さえておくことが重要です。
- 兄弟間で親の介護についての本音を話し合う
- 経済的援助・生活介助など具体的にできることをすり合わせる
- キーパーソンを決める
- キーパーソン以外の役割を決める
兄弟間で親の介護についての本音を話し合う
親の介護を私ばかりではなく分担する方法としては、先ず兄弟間で親の介護について本音で話し合うことが重要です。
というのも、親の介護を他の兄弟に押し付ける兄弟の原因としては、力が衰えている親を受け入れることが出来ないという度量の無さなどが原因であることも多く、それらの介護を押し付ける理由によって分担の方法が変わってくるからです。
例えば、上記の親の生活介助が難しいという場合は施設の入居金を代わりに支払うなどの経済的にバランスをとることもできます。
したがって、親の介護を私ばかりしているという場合に分担する方法の一つは、兄弟間でまず親の介護についての本音を話し合うことです。
経済的援助・生活介助など具体的にできることをすり合わせる
兄弟間で役割分担をする際の二つ目のポイントは、経済的援助や生活援助など具体的にそれぞれの兄弟で何が出来るのかをすり合わせることです。
というのも、どうしても遠距離に住んでいる場合や経済的な援助ができない場合だと話し合いをしても、物理的・経済的にできないという結果になるのであらかじめ何が出来るのかすり合わせるのが重要です。
例えば、遠距離に住んでいるが仕事をフルタイムで行っている男兄弟に対して経済的援助を求めたり、施設に入るときの費用の援助を求めたりするなどが分担方法として考えられます。
したがって、親の介護を私ばかりがしているという方はまず経済的援助・生活介助などのできることを具体的にすり合わせることから始めましょう。
キーパーソンを決める
兄弟間で役割分担をする3つ目の方法は、兄弟の間でキーパーソンを決めることです。
というのも、施設に入れる際やケアマネージャーとやり取りをする際に必ず必要になるのがキーパーソンです。また、兄弟間で親の介護をしている場合にどうしても実際に介護を押し付けられがちなのもこのキーパーソンです。
必ずしも介護をする必要はなく、親の状況を把握していてケアマネージャーや施設の担当者とのやり取りを円滑に進めることが出来る方をキーパーソンにするようにしましょう。
キーパーソン以外の役割を決める
最後に、兄弟間で役割分担をするポイントとして挙げられるのはキーパーソン以外の役割を決めることです。
というのも、上述したようにキーパーソンはそれだけで親の介護を押し付けられてしまったりする傾向にあるので、それ以外の兄弟が何をして援助をするのかなどを明確にしておくことが重要です。
重要なのはキーパーソンだからと言って介護を押し付けられないように最初から何を指せるのか議論しておくことです。兄弟間で私ばかりが介護をしているという状況にならないように、あらかじめ兄弟間で議論をしておくようにしましょう。
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親の介護を私ばかりしているという方の相続はどうなる?
親の介護を私ばかりしているという人の相続はほかの兄弟よりも多くもらえるのでしょうか。本章では相続について解説していきます。
一人で介護をしても多く相続してもらえる法律はない
親の介護を他の兄弟と比較して一人で行ったとしてもそれだけで多く相続してもらえるという法律はありません。
というのも、介護した分の財産を多くもらうには「寄与分」として他の兄弟よりも多く貢献したことを認めてもらう必要がありますが、寄与分の判断をするのはほかでもなく介護をしていない兄弟となります。
したがって、他の兄弟が認めない限り寄与分として多く相続してもらうのは法律的にも現実的にも難しいというのが実情なのです。したがって、親の介護を私ばかりしているからと言って将来の相続に期待するのは難しいでしょう。
介護の分を多く相続するには遺言状を書いてもらうのが確実
親の介護を私ばかりしているという方がより確実に多くの相続をしてもらうには、遺言状を書いてもらうのが確実です。
介護をしている人に取っては親に対して遺言状を書いてもらうのは気がひけるかもしれませんが「親の責任として書いてほしい」などと勇気をもって伝えることで遺言状を書いてもらうことも選択肢の一つです。
したがって、寄与分から他の兄弟よりも多くを相続するのは現実的ではないので、遺言状を書いてもらうのが確実であると言えるでしょう。
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「親の介護を私ばかりしている」と感じる機会が増えたら、介護体制の見直しを
本記事では「親の介護を私ばかりしている」と感じたときの対処法について解説してきました。
「他の兄弟が遠方に住んでいる」「子育て中である」など、さまざまな理由で兄弟のうちの誰かに負担が集中することがあります。しかし、お互いに状況は変わります。想像していたより負担が大きかったということも考えられます。今の状況をふまえて話し合うことが大切です。
また、「私ばかり……」と感じるのは、他の兄弟のせいではなく、自分自身が知らず知らずのうちに無理をしているサインの可能性もあります。渦中にいると冷静に自分の状況を見極めるのは難しいもの。同居介護の場合はショートステイなどを利用し、いったん親と距離をとってみるのも一案です。
親も子もお互いが無理なく暮らしていけるよう、自分たちの家族にあった介護体制を探ることが大切なのです。
長崎大学が実施したアンケートによると「親の介護を私ばかりがしている」と感じてしまう方は、介護をしている方の約20%いらっしゃいます。詳しくはこちらをご覧ください。
理由としては以下のような点が挙げられます。①ほかの兄弟が遠方に住んでいるため介護ができない ②長男だから・長女だからという押し付け ③子供の世話があるため介護ができない詳しくはこちらをご覧ください。