親が要介護状態となってしまい、急に退職を余儀なくされてしまうケースは少なくありません。その際、「失業保険は受け取れるだろうか」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。
親の介護など特定の理由がある場合は、「特定理由離職者」として失業保険が受給できます。ただし、対象となるためには諸条件を満たしていなければなりません。
そこで、本記事では介護にともなう失業保険の受給条件や手続き方法、失業保険以外の救済制度について解説していきます。
金銭的な不安をできるだけ排除し親の介護に専念できるよう、本記事を活用してもらえると幸いです。

親の介護で退職したら失業保険は受け取れる?
親の介護で退職した場合も失業保険(失業給付)の受け取りは可能です。失業保険は退職理由を考慮して支給を決定するため、「親の介護」のような理由は給付の対象となっています。
また、失業保険には退職理由によって支給の開始日などが優遇される制度があります。親の介護が必要といった退職理由は優遇制度の対象となる可能性が高いです。
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失業保険(失業給付)を受け取るための基本条件
失業保険は退職者全員が受け取れる給付ではありません。受け取るには雇用保険に一定期間加入している必要があります。
加入期間は「退職日を含めた過去2年間で12ヶ月以上」が原則です。ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者は、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可能です。
パートやアルバイトであっても「就労時間が20時間以上」「31日以上の雇用が見込まれる」の条件を満たしている場合は雇用保険への加入義務があります。
ただし、自営業やフリーランスの方は雇用保険に入れないので、失業保険は受け取れません。
失業保険が受け取れる方
失業保険を受け取るには、雇用保険の加入期間以外にも以下の条件を満たしている必要があります。
- 再就職する意思がある
- 就職活動を積極的に行なっている
前述のとおり、失業保険は生活費に関する心配を少なくし再就職に専念できるように用意された制度です。そのため、再就職する意思がない方は給付を受け取れません。
「再就職する意思がある」と判断する材料は、ハローワークに通い仕事を探しているかどうかです。そのため、失業保険を受給するには積極的に再就職の意思を表す必要があります。
失業保険が受け取れない方
以下に提示している条件のいずれかに該当する方は失業保険を受け取れません。
- 雇用保険に未加入
- 退職日を含めた過去2年間で、雇用保険の加入期間が12ヶ月未満である
- 何らかの事情によりすぐに求職活動が行えない
失業保険は、すぐに再就職できる方が対象です。そのため、病気・ケガ・環境の変化などによりすぐ再就職できない場合は給付対象から外れてしまいます。
失業保険(失業給付)の受け取り開始日は2パターンある
失業保険の受け取り開始日には以下の2パターンがあります。
- 資格取得から7日後にもらえるパターン
- 資格取得から7日+3ヶ月後にもらえるパターン
開始日を決める基準は退職理由です。退職理由によって「自己都合離職者」か「特定受給者」に分けられます。選別の基準や受給までの流れについて見ていきましょう。
資格取得から7日後にもらえるパターン
自分の意思と関係なく退職に至った場合は「特定受給者」と判断され、受給資格を取得してから7日後に失業保険が受け取れます。会社の倒産や会社からの解雇により退職を余儀なくされたケースが該当します。
退職後にハローワークで失業保険の申し込みを行い、受給資格が認められた日から7日の待機期間を経て支給が開始される流れです。
資格取得から7日+3ヶ月後にもらえるパターン
自分の意思で会社を退職した場合は「自己都合退職者」として扱われます。この場合、資格を取得してから7日+3ヶ月後から支給が開始されます。自分の意思による退職とは「他社に転職したい」「家庭の事情で退職したい」といった理由などです。
ただし、自分の意思で退職した場合でも「親の介護」といった正当な理由があれば、「特定理由離職者」に振り分けられ、資格取得から7日後に失業保険の受給が可能です。「特定理由離職者」についてはのちほど解説していきます。
給付期間は失業理由や雇用保険の加入期間によって異なる
失業保険の給付期間は、失業理由や雇用保険の加入期間によってある程度決められています。最低給付期間は90日となっており、自己都合退職者は最高で150日間、特定受給者と特定理由退職者は最高で330日間の受給が可能です。
また、特定受給者および特定理由離職者に限っては、退職時の年齢も給付期間に関係してきます。
特定理由離職者とは?優遇されるポイントは?
特定理由離職者とは、自己都合退職でありながら「正当な理由により退職せざるを得なかった」と認められた方が対象となるものです。通常の自己都合退職者と比べて、以下のような優遇が用意されています。
- 通常設けられている給付制限がつかない
- 離職の日以前1年間に、雇用保険の加入期間が6ヶ月以上あればよい
特定利理由職者となった場合は、通常設けられている2ヶ月間の給付制限がありません。また、雇用保険の加入期間も離職の日以前1年間に、1年以上から6ヶ月以上へと短縮されるのが大きなポイントです。
給付期間の延長も可能で、給付期間が終了したあとも30日以上働けない状況である場合は、最長で3年間の延長申請が行えます。
特定理由離職者としてみなされる正当な理由7つ
特定理由離職者としてみなされる正当な理由として、以下の7つがあげられます。
- 期間が定められている雇用形態であり、契約の延長が行われなかった
- 心身の不調により就労が難しくなった
- 妊娠・出産の理由で退職したのち、再就職が難しく受給期間の延長措置を受けた
- 家庭事情の急変による退職
- 単身赴任による家族との別居生活を続けるのが難しくなった
- 住所が変わり、通勤が困難となった
- 早期退職優遇制度などの利用により退職した
親の介護で退職する場合は、「4.」の理由が該当します。
特定理由離職者を証明するために必要な書類
特定理由離職者を証明するためには以下の書類が必要です。必要書類は前項の『正当な理由』で解説した番号に該当するよう紹介しています。
- 労働契約書、雇入通知書、就業規則など
- 医師の診断書など
- 受給期間延長通知書など
- 扶養控除等申告書、健康保険証、医師の診断書など
- 転勤辞令、住民票の写し、扶養控除等申告書、健康保険証など
- 住民票の写し、住居の強制立ち退きなど、住所変更を余儀なくされた理由を証明できるもの
- 希望退職募集要項など
なお、ハローワークは離職票に書かれている退職理由コードを参照して特定理由離職者かを判断します。そのため、退職理由と離職理由コードに整合性があるか確認するのが大切です。
失業手当の計算方法(日額)
特定理由離職者の失業手当(日額)は以下の計算方法で算出できます。
- 退職日から過去6ヶ月間に支払われた給料の合計÷180=賃金日額
- 賃金日額×給付率=失業手当(基本手当)
過去6ヶ月に支払われた給料にボーナスは含まれません。ただし、時間外手当や通勤手当は合計して計算します。給付率は以下をご参照ください。
| 賃金日額 | 給付率 |
| 2,657円〜5,029円 | 80% |
| 5,030円〜12,379円未満 | 80%〜50% |
| 12,380円以上13,669円(29歳以下) 15,189円(44歳以下) 16,709円(59歳以下) | 50% |
60歳以上は賃金日額の基準が異なるため、お近くのハローワークに確認すると確実です。また、基本手当は上限が決まっているため、賃金日額が高くても給付額は限られています。
参照:
厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和4年8月1日から~」
介護休業給付とは?親の介護にむけた準備に活用可能
介護休業給付とは、親の介護のため一時的に休業した方に対して支給される給付金です。失業保険と同じく雇用保険に加入している方が対象となっています。
給料の67%が支給され、最大93日間受け取りが可能です。3回に分割しての受け取りもできます。仕事をしながら親を介護するための体制を整えるための期間として有効です。
介護休業給付を受けられる会社員の条件
介護休業給付の対象となるには以下の条件に当てはまる必要があります。
- 雇用保険に加入しており、家族を介護するために介護休業を利用している
- 介護休業を開始した日から過去2年間のあいだに、11日以上給料が支払われた月が12ヶ月以上ある
契約社員など雇用期間が決められている方は、上記の条件に加えて以下の条件も必要です。
- 同じ会社で1年以上勤務している
- 介護休業の開始予定日から93日+6ヶ月後まで雇用契約が結ばれている
どちらの場合においても、介護休業を取得する際に退職が決まっている場合は支給の対象になりません。
対象となるための正当な理由
介護休業給付を受け取るには、以下の理由により休業する必要があります。
- 介護休業をする理由が、疾病や負傷などの身体的・精神的な理由により、家族が常に介護が必要な状態になったため
- 会社に休業期間を提示し、実際休業を取得していること
「常に介護が必要な状態=要介護認定」ではありません。介護が必要な状態と認められれば受給は可能です。
対象となる家族の範囲
介護休業給付の対象となる家族の範囲は以下をご参照ください。
- 配偶者
- 両親
- 子
- 配偶者の両親
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
配偶者には事実婚の方も含まれます。また「子」の定義は「法律上で親子関係のある子」とされているため、養子縁組した子どもも介護休業給付の対象です。
対象外となってしまう条件
介護休業給付は、以下の条件に当てはまった場合、給付の対象から外れてしまうため注意しましょう。
- 介護休業給付中に退職した
- 介護休業給付中に11日以上出勤した
また、同じ家族を介護するといった理由で配偶者や兄弟が介護休業を取得するのも可能です。家族同士で協力しあって介護が行えます。
ただし、介護休業給付中であっても健康保険料、厚生年金保険料、住民税の支払いは継続しなければならないため、この点は注意が必要です。
介護休業給付の給付額
介護休業給付の給付額は平均賃金の67%です。支給額には上限が決められているため、平均賃金が高くても478,500円より多くは支給されません。反対に下限は79,710円となっています。
介護休業のあいだも会社から給料が支払われている場合は、金額に応じて給付額が変動します。もしも「休業を開始する前の給料×80%」が支払われている場合、介護休業給付は支給されません。
参照:厚生労働省・ハローワーク
介護休業給付を受給している間の給料
介護休業中の給料に法的な決まりはありません。そのため、給料を支払うかは会社の判断となっています。なかには有給休暇を休業取得日にあてて給料とする会社も少なくありません。
介護休業中も健康保険料や住民税の支払いは継続されるため、取得時には会社や家族としっかり話し合いを行いましょう。
手続きの方法
介護休業給付を利用する際には、以下の手続きが必要です。
<休業前>
- 休業開始予定日と終了予定日を決める
- 休業開始予定日の2週間前までに「介護休業申請書」会社に提出
<休業後>
介護休業が終了してから2ヶ月の間に以下の書類を用意して提出する
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 介護休業給付金支給申請書
- 本人・対象家族のマイナンバー
- 介護を要する家族との関係が証明できるもの(住民票など)
介護休業の申請書は会社によってフォーマットが異なります。担当部署に確認して書類をもらいましょう。休業後の手続きは基本的に会社で行われるため、休業取得者は書類を用意し提出するだけで問題はありません。
親の介護にともなう退職には3つのリスクがある
親の介護にともなう退職には以下3つのリスクが潜んでいます。
- 収入がなくなるため金銭面での不安が増える
- 長期離職によって復職への意欲低下や不安の増強が懸念される
- 社会から隔絶される危険性がある
それぞれのリスクについてみていきましょう。
1.収入がなくなるため金銭面での不安が増える
親の介護で退職した場合、会社からの給料はなくなってしまいます。しかし、家賃や光熱費などは変わらず支払わなければなりません。介護の費用や親の病院代なども追加されてしまうため、今まで以上に出費がかさむ可能性は大きいです。
生活ができる程度に貯蓄していた方であっても、貯金額が目減りしていく現状に不安を覚える方も少なくありません。
2.長期離職によって復職への意欲低下や不安の増強が懸念される
親の介護による退職期間が長期に渡った場合、新しく就職しようといった意欲が低下する危険性があります。また、仮に再就職できたとしても親の介護が前提の勤務形態となってしまいます。
退職時の年齢が高齢であるほど転職先も限られてしまうため、不安の増加も懸念材料です。転職先の給料が転職前を下回るといった事態も起こり得るでしょう。
3.社会から隔絶される危険性がある
会社で働いている間は、社員とのコミュニケーションが発生します。しかし、退職後は基本的に介護が必要な親との会話が主となる可能性は高いです。関わりが限られてしまうため、社会から隔絶されたような気持ちになってしまう危険性があります。
さらに、慣れない介護による疲れや精神的な負担の増加などで介護うつを発症する危険性も少なくありません。
親の介護で退職する際に利用できる雇用保険の制度2つ
親に介護が必要になった際や、親の介護が理由で退職する場合には、以下2点の雇用保険制度が利用できます。
- 失業保険
- 介護休業給付
2つとも雇用保険加入者に適用される制度です。仕事をしない期間、一定額の給付が受け取れます。
1.失業保険
前述の通り、失業保険は雇用保険に加入している方が受給できる給付です。雇用保険への加入期間・退職理由・退職時の年齢などを加味して給付額や給付期間が決定されます。
基本的に雇用保険への加入が1年未満の方は利用ができません。ただし「親の介護」といった理由がある場合は離職の日以前1年間に、加入期間が6カ月あれば給付の対象と認められます。
2.介護休業給付
介護休業給付とは、親の介護が必要になり休業した際に給付が受け取れる制度です。前述の通り、雇用保険からの支給となっています。
そのため、雇用保険に加入できないフリーランスや自営業の方は給付が受け取れません。給付期間は最大93日で、3回まで分割で休業できます。
親の介護で退職する前に知っておきたい制度
在職中であっても、以下の制度を利用すれば退職する前に親を介護する体制を整えられます。
- 介護休暇
- 短時間勤務等の措置
- 所定外労働の制限
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
介護と仕事を両立させるために用意された制度ですので、親の介護が必要になった際に活用可能です。
失業保険の受給期間が終わる前にしておくべきこと
失業保険はいつまでも受けられる給付ではありません。そのため、給付が終わるまでにはある程度介護ができる環境を整えておく必要があります。環境を整えるため、以下の項目に取り組んでおきましょう。
- 介護サービスを検討する
- 家族同士の協力体制を整える
介護サービスには、利用者や家族のライフスタイルに合わせてさまざまな形態が用意されています。就労に向けて要介護認定を受けておき、どのようなサービスが必要かを検討しておくとよいでしょう。
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親の介護で退職する際は失業保険などの制度を活用するのが大切
親の介護で退職しなければならない場合は、失業保険の「特定理由離職者」に該当するため、長期間の給付が可能です。給付開始までの期間も短く退職中の最低限の生活費を心配する必要もありません。
日本には介護をする家族のためにさまざまな制度が用意されています。制度をうまく活用して、なるべく金銭的な心配を無くした状態で介護に向き合いましょう。
要介護認定を受け、介護サービスの利用を検討してみるのがよいでしょう。介護サービスには1日から利用できるデイサービスや、自宅にヘルパーが来てくれる訪問介護などがあります。退職を決意する前に、まずは介護サービスを利用しながら仕事が続けられないかを模索するほうが金銭的な心配は少なくなるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
週に20時間以内であればアルバイトなどの副業も可能です。ただし、待機期間中(資格取得から7日間)にアルバイトをした場合は、受給資格がなくなってしまうため注意しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。