生命保険文化センターが平成30年度におこなった「生命保険に関する全国実態調査」によると、高齢者1人当たりの介護費用は総額500万円ほどかかると言われています。
それもそのはず、介護用ベッドの購入やバリアフリーを考慮した自宅のリフォーム、介護施設の利用料など介護費用がかかる場面は多く、長期間の介護になればより多くの費用がかかります。
そういった理由から、親の介護をするにあたって経済的な負担を感じている人は少なくなく、「介護費用を安くしたい」「介護費用を安くする方法を知りたい」という悩みが出るのも当然でしょう。
そんな悩みを解決すべく、この記事では税金の控除によって親の介護費用を安くする方法をご紹介します。
各種控除を利用して、親の介護費用を安く抑える
控除とは、一定金額を差し引くという意味があり、対象者は控除を受けることで納税額の負担を抑えることができます。
さまざまな控除がありますが、介護費用に関わる控除は以下の3つです。
- 医療費控除
- 扶養控除
- 障害者控除
ここからは、控除の種類ごとに概要・対象者・控除額・手続き方法等について詳しく見ていきましょう。
また「金銭的な余裕はないけど老人ホームに入居したい」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
ケアスル介護では、低価格の料金プランを備えた施設や生活保護を受けている方でも入居できる施設など、ご本人様・ご家族様のニーズにぴったりな施設のご紹介を実施しています。
「幅広い選択肢から後悔しない施設選びがしたい」という方は、まずは無料相談をご利用ください。
ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します
親の介護費用を安くする方法①医療費控除
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に、納税者本人または同一生計にある配偶者や親族に支払った医療費の合計が一定金額(10万円)を超えた場合に受けられる控除のことを指します。
なお、1月1日から12月31日の間に支払っている必要があり、未払いの医療費は控除の対象外となるので注意が必要です。
医療費控除の対象
病院での診療費や入院費、医薬品にかかる費用などさまざまな費用が対象となる医療費控除ですが、ここでは介護費用に焦点をあて、その対象となるサービスや費用について紹介します。
以下の3つの項目に分け、対象になるものを確認していきましょう
- 施設サービス
- 居宅サービス
- その他
施設サービス
医療費控除の対象となる施設サービスは以下の通りです。
対象施設 | 控除対象 |
---|---|
指定介護老人福祉施設(特養) |
|
指定地域密着型介護老人福祉施設 | |
介護老人福祉施設 |
|
指定介護療養型医療施設 | |
介護医療院 |
この表に記載のない、施設での日常生活費やその他費用(レクリエーション費用)は医療費控除の対象にならないため、注意が必要です。
また、上記施設を利用した際に発行される領収証には医療費控除の対象となる金額が記載されることになっているので困ったときは確認してみましょう。
居宅サービス
医療費控除の対象となる居宅サービスは以下の通りです。
対象となる居宅サービス | 左記サービスと合わせて利用する場合のみ対象となる居宅サービス |
---|---|
|
|
対象となるサービスが多く、サービスの組み合わせにより扱いが変わるケースもあるため、分かりづらいと思う方もいるでしょう。
そういった方は、居宅サービスを利用した際にサービス事業者から発行された領収証を確認してみましょう。
施設サービス同様、領収証には医療費控除の対象となる金額が記載されているため、領収証を確認することで医療費控除の対象に含まれるか把握することができます。
領収証は大切に取っておくことをお勧めします。
その他
その他で医療費控除の対象となるものとして、おむつ代や交通費が該当します。
おむつ代が医療費控除の対象となるケースは以下の通りです。
- 傷病により6か月以上にわたり寝たきりであり、医師の治療を受けている
- 治療を担当している医師が発行する「おむつ使用証明書」があること
なお、おむつ代の医療費控除を受けるのが2年目以降である場合には、「おむつ使用証明書」に代わり、市区町村が主治医意見書の内容を確認した書類もしくは主治医意見書の写しでも問題ありません。
交通費については、医療費控除対象の施設を利用する際にかかるものは医療控除費の対象として扱われます。
ただし、付き添いで利用した場合や自家用車でのガソリン代など、通常必要と判断されなければ対象外になるケースもあるので注意が必要です。

医療費控除の金額
医療費控除の上限額は200万円となっています。
控除額の計算式は以下の通りです。
【実際に支払った医療費の合計額】-【保険金などで補填される金額】-【10万円】= 控除額(200万円まで)
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額となります
医療費控除の手続き方法
医療費控除は、年末調整の対象外であるため確定申告によって申請しなければなりません。
医療費控除を申請する際は、確定申告書と医療控除の明細書が必要となり、どちらの書類も税務署の担当窓口で受け取るか国税庁のホームページから印刷することで入手可能です。
それらの書類に必要事項を記入し、税務署に提出することで申請は完了します。
還付金は、申請から1か月で支払われることが多いです。
指定の銀行への振り込みもしくはゆうちょ銀行や郵便局で直接受け取る、どちらかの方法で受け取りましょう。
親の介護費用を安くする方法②扶養控除
扶養控除とは、両親や子どもなど親族を扶養に入れている場合に受けることができる、所得税の控除のことを指します。
控除額には38万円・48万円・58万円の3つの区分があり、扶養対象者の年齢や同居・別居の違いにより変化します。
扶養控除の対象者
扶養控除を受けるには、その年の12月31日時点で以下の4つの条件を満たしている必要があります。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)であること
- 納税者と同一生計(同居・別居は問わない)であること
- 年間の収入が決まった金額以下(65歳以上では給与のみの場合103万、年金のみの場合158万円)であること
- 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと。または白色申告者の事業専従者でないこと
納税者と同一生計であることとありますが、生活費の仕送りも同一生計の対象となるため、別居状態であっても問題ありません。
扶養控除の金額
扶養親族として認定を受けた場合、区分に応じて以下の金額が控除されます。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
老人扶養親族(70歳以上) | 同居老親等以外のもの | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
扶養親族が70歳以下である場合は「一般の控除対象扶養親族」に該当し、38万円の控除を受けることができます。
一方、扶養親族が70歳以上である場合は「老人扶養親族」に該当し、納税者と扶養親族の方が同居しているかどうかによって控除額が変化します。
扶養親族と納税者が別居状態にある場合は控除額が48万円となり、同居状態にある場合は58万円となります。
なお、扶養親族が病気の療養のため長期の入院状態にあっても同居に該当するものとして扱われますが、介護施設等へ入居している場合は施設が居所と見なされ、別居に該当するものとして扱われるため注意が必要です。
扶養控除の手続き方法
納税者が会社員である場合は、会社が行う年末調整の際に申告書を提出することで手続きが完了します。
自分で確定申告を行う必要はなく、会社の担当部署が手続きを行ってくれますが、扶養控除は個々の状況によりさまざまであるため、申告書に必要事項を記入し会社に提出する必要があります。
また、納税者本人が個人事業主である場合は、毎年2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。
扶養親族の名前や続柄、控除額等の必要金額を記入し税務署に提出しましょう。
ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します
親の介護費用を安くする方法③障害者控除
障害者控除とは、同一生計にある配偶者や被扶養者が障害者であると認定された場合、受けることができる所得控除になります。
一見、介護とは関係ないように思えますが、障害者手帳の交付を受けていない65歳以上の方で、申請により身体の障害または認知症の状態が一定の基準に該当すると市区町村に認定された場合、「障害者控除対象者認定書」が交付され障害者控除を受けることができます。
つまり、身体の衰えや認知症の発症によって介護を必要としている方も障害者控除を受けることが可能なのです。
障害者控除対象者認定書の申請方法については、後の項で詳しく紹介します。
障害者控除の対象者
障害者控除は、障害者手帳の交付がない方でも「障害者控除対象者認定書」の交付により、受けることが可能です。
障害者控除対象者認定書の交付を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 障害者手帳の交付を受けていない方
- 満65歳以上の方
- 認知症及び身体の障害が一定の基準に該当する方
障害者控除の対象条件は地域や自治体によって要件が異なる場合があるため、お住まいの市区町村のHPをご確認ください。
また認知症及び身体の障害については、介護保険の認定調査資料を基に審査が行われ、その症状の度合いにより認定区分が異なります。
認定区分には「障害者」と「特別障害者」の2つがあり、控除額も異なります。
認定基準は以下の通りです。
認定区分 | 認定基準 |
---|---|
障害者 | 身体障害者(3~6級)に準ずる |
知的障害(軽度・中度)に準ずる | |
特別障害者 | 身体障害者(1・2級)に準ずる |
知的障害者(重度)に準ずる |
なお、障害者控除認定と要介護認定は判断基準が異なるため、要介護認定を受けた方が必ずしも障害者控除の対象になるとは限りません。
まずは、市区町村の担当窓口にご相談することをお勧めします。
障害者控除の金額
障害者控除の金額は以下の通りです。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
障害者 | 27万円 | |
特別障害者 | 同居老親等以外のもの | 40万円 |
同居老親等 | 75万円 |
扶養親族が障害者の区分にある場合の控除額は、同居・別居関係なく27万円となります。
一方、認定区分が特別障害者に該当する場合の控除額は、同居しているかどうかで金額が大きく異なるため、注意が必要です。
障害者控除の手続き方法
障害者控除の手続き方法は、扶養控除の手続き方法と変わりません。
会社員の方は、会社が行う年末調整の際に申告書を提出をする必要があり、個人事業主の方は確定申告の際に申請する必要があります。
しかし、障害者控除の手続きの際には、障害者控除対象者認定書のコピーや交付日の記入が求められるため、障害者控除対象者認定書を事前に入手しておく必要があります。
障害者控除対象者認定書の申請の際に必要なものは以下の通りです。
- 申請書
- 申請対象者の介護保険被保険者証
- 窓口に来庁する方の本人確認書類
申請書は、市区町村の担当窓口で受け取るもしくはホームページから印刷し入手しましょう。
書類入手後は、書類に必要事項を記入し市区町村の担当窓口へ提出することで、申請完了となります。
なお、市区町村によって必要書類が異なる場合があるため、まずは市区町村の担当窓口やホームページから確認しましょう。
親の介護費用を安くする方法④還付申告
ここまで、3つの税金控除について紹介してきましたが、知らなかったという方もいらっしゃるでしょう。
ですが、5年以内のものであればさかのぼって申請することが可能なのでご安心ください。
これを「還付申告」と言い、還付申告書を税務署へ提出することで申請が完了します。
税法による規定には、控除漏れがあった年の翌年から5年間は還付申告書が提出可能とされており、確定申告期間外での提出も問題ありません。
また、還付金が振り込まれるまでの時間は1~2か月であることが多いですが、確定申告期間中は業務量が増えるため多少の遅れが生じることもあります。
還付金の受け取りは、預金口座への振り込みもしくはゆうちょ銀行や郵便局に出向いて受け取る方法があります。
控除以外で親の介護費用を安く抑える方法
ここまで、税金の控除によって介護費用を安く抑える方法を紹介してきましたが、その他にも介護費用を安く抑える方法はあります。
その他の方法を紹介していきます。
世帯分離
世帯分離とは、住民票に登録されている1つの世帯を2つ以上の世帯に分けることを指します。
世帯分離によって両親が非課税世帯になった場合、介護保険負担限度額認定を受けられるため、介護費用を抑えることが可能です。
介護保険負担限度額認定とは、特別養護老人ホーム(特養)やショートステイを利用する際の居住費・食費の上限が定められる制度になっており、特養の場合は15万円の費用を5万~10万円に抑えることができます。
世帯分離について詳しく説明している記事はこちらになります。


高額介護サービス費
介護サービスを利用する際は、自己負担割合に応じた利用料を負担する必要がありますが、1か月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えた場合に超過分が払い戻しになる制度を「高額介護サービス費」と言います。
負担限度額は条件によりさまざまですが、一般的には44,400円が多いとされています。
ただし、手すりの設置や段差解消等の住宅改修費、特定福祉用具の購入費は対象外となるため注意が必要です。
介護保険料の減免制度
災害などの特別な事情により保険料を支払うことが困難な場合は、介護保険料の減免制度を利用することができます。
主な条件は以下の通りです。
- 世帯の生計中心者が災害により、住宅・家財に著しい被害を受けた場合
- 世帯の生計中心者の収入が、前年度と比較して著しく減少した場合
- 世帯全員が市民税非課税であり、収入額が著しく少ない場合
なお、市区町村によって条件が異なる場合があるため、しっかりと確認するようにしましょう。
ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します
まとめ
この記事では、税金の控除によって親の介護費用を安く抑える方法についてご紹介しました。
親の介護費用は、基本的に年金で賄えるのが理想です。
しかし、施設費用やリフォーム代等を合算すると高額になってしまうこともあります。
その際は、控除の申請を行い負担額を抑えるように努めましょう。
5年以内のものであっても申請可能なので、過去の費用を振り返ってみてもいいかもしれませんね。
医療費控除・扶養控除・障害者控除の3つがあります。医療費控除は確定申告時、扶養控除・障害者控除は年末調整時もしくは確定申告時に申請可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
控除対象者によって異なりますが、医療費控除は最高200万円、扶養控除は38~58万円、障害者控除は27~75万円の控除を受けることが可能です。詳しくはこちらをご覧ください。