介護施設にはさまざまな種類があり、代表的なものだと、次の5つがあげられます。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 介護型ケアハウス
これらの施設は介護保険サービスに含まれているため、保険を適用して利用が可能です。介護保険に含まれる施設サービスは、少ない自己負担額で利用できる点が魅力です。施設ごとの違いや介護保険についての理解を深め、利用者に合ったサービスを見つけましょう。
介護保険サービスの施設サービスとは
まずは介護保険における、施設サービスとはどのようなものかを知っていきましょう。介護保険は満40歳から加入が義務付けられており、加入者は生涯保険料を支払います。この保険料や公費を財源として運営している制度が介護保険制度です。
介護保険制度によって、少ない費用で介護サービスを利用でき、その1つに施設サービスがあると考えましょう。また、介護保険が適用できる施設は、建設や運営などに補助金が下りることや、税制優遇が受けられる点からも安価で利用できます。
介護保険サービスを利用するには要介護認定が必要
介護保険に加入している全員が、保険適用のサービスを利用できるわけではありません。施設サービスを含めた介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定は、市区町村の役場にて申請を行い、利用者の状態や市の職員による聞き取り調査の結果、かかりつけ医の意見書などの情報を参考に、要介護度の認定が決まります。
介護認定は要支援1~2と要介護1~5があり、基本的にはいずれかの認定を受けた65歳以上の人が、介護保険サービスを利用できると考えましょう。ただし、特定の疾病によって要支援や要介護の認定を受けている場合は、40歳から64歳までの人でも保険の適用が可能です。
- 末期がん
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦じん帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 多系統萎縮症
- アルツハイマー病
- 脳血管性認知症
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭さく症
- ウェルナー症候群など
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性網膜症
- 脳出血
- 脳梗塞
- 進行性核上性麻ひ
- 大脳皮質基底核変性症
- パーキンソン病
- 閉塞性動脈硬化症
- 関節リウマチ
- 肺気腫
- 慢性気管支炎
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護認定を受けることで、介護保険サービスを利用できますが、サービスによって対象者は異なります。そのため、認定が要支援か要介護か、またそのレベルに応じて、利用できる施設が変わることも理解しておきましょう。
介護保険サービスの自己負担額
介護保険を適用してサービスを受けることで、少ない自己負担額で出費が抑えられます。自己負担の割合は1~3割と人によって異なり、所得の少ない人ほど自己負担割合も少なくなると考えましょう。
本人の合計所得 | 年金収入+その他の合計所得金額 | 自己負担割合 |
220万円以上 |
単身世帯:340万円以上 2人以上世帯:463万円以上 |
3割 |
220万円以上 |
単身世帯:280万円以上340万円未満 2人以上世帯:346万円以上463万円未満 |
2割 |
220万円以上 |
単身世帯:280万円未満 2人以上世帯:346万円未満 |
1割 |
160万円以上220万円未満 |
単身世帯:280万円以上 2人以上世帯:346万円以上 |
2割 |
160万円以上220万円未満 |
単身世帯:280万円未満 2人以上世帯:346万円未満 |
1割 |
160万円未満 | – | 1割 |
単身世帯から2人以上世帯かで所得の要件は違ってくるため、この点も確認が必要です。
特別養護老人ホーム
終身利用が可能な特別養護老人ホームは、長期間にわたって介護を受けられることが特徴です。また、24時間介護や簡易的な医療ケアが受けられることや、費用が安い点も魅力でしょう。ただし、入居対象となる基準は厳しいため、詳細な特徴やサービス内容まで把握しておくことが大切です。
入居対象者
基本的には65歳以上で要介護3以上の人が、特別養護老人ホームの入居対象者となります。ただし、特定の疾病によって要介護3以上の認定を受けている人は、40歳から64歳までであっても入居は可能です。
また、要介護1~2の人も、精神障害や知的障害がある、認知症が進行しているなどで1人で暮らすことが難しい場合は、特例として入居できる場合があります。
他にも独居で家族や周辺の介護サービスによる支援が見込めない人や、家族や親族からの虐待を受けている人も特定として特別養護老人ホームへの入居が可能です。
サービスの内容
施設で提供されている主なサービス内容は、次の通りです。
- 介護サービス
- 日常支援
- 医師や看護師による健康管理
- 看取り看護
入浴や排せつの介助や食事の提供といった、基本的な介護サービスが提供されています。また、レクリエーションやイベントなどの、日常支援が積極的に行われていることも覚えておきましょう。
他にも医師や看護師による健康管理が受けられ、容体が悪化した際にも素早く対応してもらえます。施設によっては最期の瞬間を迎える看取り看護やターミナルケアを実施していることもあり、これが終身利用が可能な理由です。
介護老人保健施設
高齢者の在宅復帰を主な目的とした施設が、介護老人保健施設です。いわばリハビリに特化した施設であり、3~6ヶ月と短期間の入居で、在宅への復帰を目指します。医師や看護師のほか、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などがいることも特徴であり、リハビリサービスの体制が充実しています。
入居対象者
65歳以上で要介護1以上の人や、65歳未満で特定の疾病によって要介護1以上と認定された人が、入居対象です。基本的には医療サポートを必要としない、軽度な症状の人が対象になると考えましょう。
施設によって医療サポートの体制は異なり、もし夜間にたんの吸引といった行為が必要な場合は、施設によっては受け入れができないこともあるため注意が必要です。
サービスの内容
在宅復帰を目指すためのリハビリはもちろん、簡易的な医療ケアや介護サービス、日常生活の動作サポートなどのサービスが提供されています。
介護サービスとしては入浴や排せつの介助、食事の提供などがあげられます。居室の清掃やベッドのシーツ交換といった日常生活のサポートをすることもあり、リハビリや医療以外の面でも利用者を支えることがポイントです。
介護老人保健施設は在宅復帰を目標としているため、入居期間は3~6ヶ月と短く、終身利用ができない点は覚えておきましょう。
介護療養型医療施設
介護や医療ケア、リハビリなどのサービスを提供していることが、介護療養型医療施設の特徴です。介護サービスの提供をしているものの、基本的には医療機関としての性質を持っているため、主に医療ケアが必要な人が入居する施設と考えましょう。
入居対象者
65歳以上で要介護1以上の人は、介護療養型医療施設の入居対象となります。また、65歳未満でも、特定の疾病によって要介護1以上の認定を受けているなら、入居の相談は可能であり、場合によっては受け入れてもらえることもあるでしょう。
介護療養型医療施設では、感染症などの治療の必要がないことや医学的な管理が必要といった詳細な条件もあるため、利用したいなら施設に問い合わせて相談してみることが大切です。
サービス内容
医療機関としての位置づけである介護療養型医療施設では、医療ケアや生活介護、リハビリなどのサービスが中心となっています。あくまで医療的なアプローチでケアを行うため、精神面の充実を図るレクリエーションやイベントなどはあまり実施されていません。
入居者の身体的なケアに重きが置かれているため、レクリエーションなどで社会的なつながりを得たい人、さまざまな人との交流を楽しみたい人には適さない施設です。
介護医療院
介護療養型医療施設と同じく、医療という名称がついた介護医療院では、医療よりも生活の場の提供という位置づけが強いです。
医療ケアも実施されていますが、それよりも高齢者が長期的に療養できる生活施設という立ち位置であり、介護療養型医療施設とは特徴が大きく異なります。
入居対象者
65歳以上で要介護1以上の人、あるいは65歳未満で特定疾病によって要介護1以上の認定を受けている人は介護医療院の入居対象です。要介護1から入居でき、医療ケアも受けられるため、医療的なサポートを必要とする人に向いています。
サービス内容
たんの吸引や点滴などの医療ケアはもちろん、生活支援や介護サービスなども提供されています。入浴や排せつの介護から食事の提供まで、介護サービスの提供は介護療養型医療施設よりも手厚い場合が多いでしょう。
また、医療や介護のケアだけではなく、生活の場の提供という側面もあるため、レクリエーションやイベントも積極的に実施されています。
終末期をいかに穏やかに過ごすかを考える、ターミナルケアや最期の瞬間を看取る看取り看護に対応している施設もあり、高齢者の生活の質を維持、あるいは向上させる取り組みにも積極的です。
介護型ケアハウス
比較的安価で利用できることが、介護型ケアハウスの特徴です。ケアハウスにはさまざまな種類があり、介護サービスが付帯しない一般型や介護サービスも提供されている介護型があります。同じケアハウスでも、施設によって特徴や入居者の基準、サービス内容は異なるため、この違いは知っておきましょう。
入居対象者
一般型と介護型で、入居対象者は異なります。一般型の場合は、生活に不安がある60歳以上の高齢者であり、要介護や要支援などの認定がなくても利用可能です。また、介護型の場合は、要介護1以上で65歳以上の高齢者となっています。
他にも身の回りに生活の世話ができる人がいないことや身寄りがないこと、ケアハウスでの共同生活に対応できる心身状況であるなども、入居の条件として加味されることがあります。
サービス内容
主なサービスは食事の提供や入浴、排せつの介助、レクリエーションやイベントの実施などがあげられます。介護型の場合は、より手厚い介護サポートを受けることができ、要介護認定されている人でも安心して利用できるでしょう。
一般型の場合で介護が必要なケースでは、外部のサービス事業者と契約する必要があり、ケアハウスの利用料金以外にもコストがかかることは理解しておきましょう。
また、リハビリなどのサービスを提供しているケアハウスもあり、ただ高齢者が暮らせる場を提供するだけではなく、心身機能の向上を目指している点も覚えておくことが大切です。
施設サービス以外の介護保険サービス
介護保険サービスに含まれるのは、各種施設サービスだけではありません。他にも次の2つの介護サービスが、保険を適用して利用可能です。
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
これらの利用対象も、原則として65歳以上で要介護や要支援の認定を受けている人となります。もちろん、65歳未満でも、特定の疾病によって介護認定を受けているケースでも、サービスの利用は可能です。
居宅サービス
自宅に住んだまま受けられることが、居宅サービスの特徴です。居宅サービスには訪問介護やデイケア、デイサービスといった通所のサービスのほか、短期間利用できるショートステイなどがあげられます。
自宅で家族だけで介護をするとなると、家族の負担は大きくなりやすいです。また、知識や技術がないことで介護される側も不便やストレスを感じてしまうことも少なくありません。
介護する人とされる人の両方が疲労していくケースも多く、共倒れになるリスクも高いため、必要に応じて居宅サービスを利用することは大切です。居宅サービスなら、慣れた場所に住み続けることができ、サービス利用者に負担がかかりづらいです。
また、介護の一部を家族で担うことにより、施設を利用するよりもコストを削減しやすいことも、メリットといえるでしょう。
地域密着型サービス
現在住んでいる地域で介護保険サービスが受けられる、地域密着型も魅力は多数あります。住み慣れた場所でサービスを利用できることから、利用者に精神的な負担がかかりづらいです。
また、その地域で顔なじみのスタッフやサービス利用者ができることも多く、交流が深まることもあります。通所サービスや施設利用を通じて仲良くなれるケースもあり、アットホームな環境で介護保険サービスを利用しやすい点が地域密着型の魅力です。
それぞれの介護施設の特徴を知って施設サービスを活用しよう
ひとくちに施設サービスといっても、種類はさまざまです。施設ごとに特徴も異なるため、違いを知ってどれがもっとも利用者に適しているかを考える必要があります。
また、介護保険で利用できるサービスは、施設サービスだけではありません。他にも選択肢があるため、地域包括支援センターのケアマネージャーなどと相談しながら、どれを利用すると良いのかを考えることがおすすめです。
介護保険が適用できるサービスは、自己負担が少なく、金銭的なメリットは大きいです。サービスごとの違いを正しく把握し、保険適用でコストを抑えて、より良い施設サービスを選びましょう。