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  • 更新日:2022-06-27 12:11

老健の費用が払えないとどうなる?5つの対処法を解説!

老健の費用が払えないとどうなる?5つの対処法を解説!

介護老人保健施設(通称老健)の費用が払えなくなった時は、通常2カ月の猶予期間があったのち3週間以上の予告期間をもって退去となります。言い換えると、2カ月程度であれば老健の費用を支払えなくなってもすぐに退去させられることはなく、その後3週間の予告期間(猶予期間)があったのちに退去することとなります。

介護老人保健施設(老健)は公的な介護保険施設であるため、入居一時金などの初期費用は不要です。月額費用としては生活費(食費・居住費など)と介護サービス費用が掛かりますが、夫婦が利用する2人部屋や個室の場合は自己負担額である生活費が高くなることもあります。

今回は老健の費用が払えなくなった時にどうなるのか、対処法について解決していきます。介護老人保健施設(老健)の費用について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

老健の費用が払えなくなったらどうなる?

介護度の進行によって介護サービス費用が高額となってしまった場合や、不動産や株式資産などの資産状況の悪化などの原因で老健の費用が支払えなくなったらどうなるのでしょうか。第一章では、老健の費用が払えなくなった場合にどうなるのかについて解説していきます。

本人が支払えない場合は身元引受人に請求される

老健の費用は通常入居者本人に請求されますが、本人が老健費用を支払えない場合は身元引受人(連帯保証人)に請求されます。

身元引受人は配偶者や子供になることが一般的で、身元引受人(連帯保証人)も支払うことができなくなった時は以下のような流れで退去に向けて進んでいきます。

すぐに退去させられることはない

老健の費用が払えなくなってもすぐに退去させられることはありません。

というのも、老健に入居する際の契約書には契約解除の要件として「利用料の支払いを2カ月以上滞納した時」などの条件が付与されていることが多く、かつその場合にも「3週間以上の予告期間をもって契約を解除することができる」という内容であることがほとんどだからです。

※参考(日本弁護士連合会公開「介護老人保健施設サービス利用契約」より引用)
第13条 乙は、甲が次の各号に該当する場合には、3週間以上の予告期間をもってこの契約を解除することができます。
一 甲が正当な理由なく、第6条記載の利用料の支払いを2ヵ月以上滞納したとき
二 甲の行動が、他の利用者の生命または健康に重大な影響を及ぼすおそれがあり、乙において十分な介護を尽くしてもこれを防止できないとき
三 甲が重大な自傷行為を繰り返すなど、自殺をするおそれが極めて大きく、乙において十分な介護を尽くしてもこれを防止できないとき
四 甲が故意に法令違反その他重大な秩序破壊行為をなし、改善の見込みがないとき

なお、有料老人ホームなどでは滞納してから予告期間までが3~6か月など少し長めに設定されていることもありますが、入院してから自立するまでの移行期間に入居する老健では1~2カ月と猶予期間が短いことに注意しましょう。

また、老人ホーム全般の内容について理解したい場合はこちらの記事もご覧ください。

老健の費用が払えなくなった時の相談先と対処法

老健の費用が払えなくなった時はケアマネージャーへの相談をしましょう。何らかの事情で費用が払えなくなると焦ってしまい、状況が悪化してしまうこともあるので信頼できる人に相談をすることが一番です。

ケアマネージャーに相談することで特別養護老人ホームや今後支払いができる有料老人ホームなどを紹介してもらえることもあるので、なるべく早く相談することが大切です。

また、老健で入居している居室が個室である場合は特別室料が加算されている場合もあるので、多床室(相部屋)に入居することができないかなどを施設の方に掛け合ってみるのも一つの手です。

また、相談する以外の老健の費用が払えなくなった時の対処法としては以下の5つの対処法があります。

  1. 減免・助成金制度を利用する
  2. 世帯分離をする
  3. 費用の安い老人ホームに移る
  4. 生活保護を受給する
  5. 必要資金を作る

大きく分けて、助成金などを利用した支払額を減らす方法と給付制度や資産の売却などの支払いできる金額を増やす方法があります。第3章からはそれぞれの対処法について詳しく解説していきます。

老健の費用が払えなくなった時の対処法①減免・助成金制度

老健の費用が払えなくなった時の対処法として減免・助成金制度などの利用が考えられます。具体的に、老健の費用が払えなくなった時に使える制度としては以下の3つあります。

  1. 特定入所者介護サービス費
  2. 高額医療・高額介護合算制度
  3. 自治体独自の助成制度

それぞれの制度について詳しく解説していきます。

特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費とは、所得の低い人を対象とした介護保険サービスです。所得が低い方の居住費と食費については、所得に応じた自己負担の限度額が決められており、それを超過した分は「特定入所者介護サービス費」として介護保険から給付されるのです。

利用の流れとしては、

  1. 市区町村に申請
  2. 介護保険負担限度額認定証を交付してもらう
  3. 老健施設に提示

の流れで利用することができます。

特定入所者介護サービス費を利用できる施設

特定入所者介護サービス費はすべての介護施設で利用できるわけではありません。当然、老健も対象となっており老健を含めて利用できる施設は以下の5つの施設となります。

  • 介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)
  • 老人保健施設サービス(老健)
  • 介護医療院
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養会議(医療型ショートステイ)

老健を退所したあとに入所する可能性がある施設で利用対象であるかどうかもチェックしておきましょう。

特定入所者介護サービス費を利用できる人の条件

特定入所者介護サービス費を利用できる条件は以下の3段階に分かれています。

利用者負担段階 所得の状況 資産の状況 ※
第1段階 ・市民税が世帯非課税で、老齢福祉年金を受けている

・生活保護を受けている

・境界層に該当(負担の低い基準を適用すれば、生活保護を必要としない状態になる)

単身:1000万円以下夫婦:2000万円以下
第2段階 ・市民税が世帯非課税で、課税年金収入額、その他の合計所得金額、非課税年金収入額の合計が年間80万円以下

・境界層に該当(負担の低い基準を適用すれば、生活保護を必要としない状態になる)

単身:650万円以下夫婦:1650万円以下
第3段階① ・市民税が世帯非課税で、課税年金収入額、その他の合計所得金額、非課税年金収入額の合計が年間80万円超120万円以下

・境界層に該当(負担の低い基準を適用すれば、生活保護を必要としない状態になる)

単身:550万円以下夫婦:1550万円以下
第3段階② ・市民税が世帯非課税で、課税年金収入額、その他の合計所得金額、非課税年金収入額の合計が年間120万円超

・境界層に該当(負担の低い基準を適用すれば、生活保護を必要としない状態になる)

・利用者負担段階第4段階で、「特例措置」が受けられる

単身:500万円以下夫婦:1500万円以下
第4段階(非該当) ・本人は市民税非課税だが、世帯内に市民税を課税されている人がいる

・本人または配偶者(別世帯を含む)が市民税課税

負担限度額の対象外

また、それぞれの段階ごとで負担限度額は以下のように異なってきています。(日別)

段階 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 従来型個室(特養等) 従来型個室(老健・療養型等) 多床室(特養、老健・療養型等) 食費
第1段階 820円 490円 320円 490円 0円 300円
第2段階 820円 490円 420円 490円 370円 390円(600円)
第3段階① 1310円 1310円 820円 1310円 370円 650円(1000円)
第3段階② 1310円 1310円 820円 1310円 370円 1360円(1300円)

※厚生労働省「サービスにかかる利用料

※()内の費用は短期入所生活介護または短期入所療養介護を利用した場合の額

介護保険料の減免制度

介護保険料は40歳になったタイミングで強制加入となり、支払い義務が発生しますが一定の条件を満たすと保険料の減免措置を受けることができます。

保険料の減免を受けることで老健に住んでいる間の費用や老健を退所した後の費用も減らすことができるので積極的に利用しましょう。また、減免を受けるための条件は市区町村によっても違ってくることがあるので、各役所の窓口で確認してみましょう。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、1カ月に支払った利用者負担(自己負担)の合計が負担限度額を超えたときは超えた分を払い戻してもらえる制度です。

課税所得によって上限額が決まってきているので、自分の上限額を確認してみましょう。

対象者区分 負担額上限
課税所得690万円(年収約1160万円)以上 140.100(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)以上~課税所得690万円(年収約1160万円)未満 93000円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 44000円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税世帯 24600円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税世帯かつ合計所得金額および課税年金収入額の合計が80万円以下の人 24600円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税世帯かつ合計所得金額および課税年金収入額の合計が80万円以下の人 15000円
生活保護受給者 15000円

※厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額」より作成

なお、高額介護サービス費は一度申請を行うと2回目以降は該当するたびに支給されます。申請に関しては2年間の時効が設けられているので、さかのぼって申請する場合は注意しましょう。

高額医療・高額介護合算制度

高額医療・高額介護合算制度とは、医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日から翌年の7月31日まで)の医療保険と介護保険の自己負担額の合算額が著しく高額であった時に自己負担額を軽減できる制度です。申請をすることで負担額の一部を払い戻してもらうことができます。

対象者は年齢や所得などによって以下のように定められていますので、自分の年齢・年収の自己負担限度額(年間)を確認してみましょう。

70歳以上※1 70歳未満※1
年収約1160万円以上 212万円 212万円
年収770万~1160万円 141万円 141万円
年収370万~770万円 67万円 67万円
一般 年収156万~370万円 56万円 60万円
市町村民税世帯非課税 31万円 34万円
市町村民税世帯非課税 31万円 34万円
市町村民税世帯非課税(所得が一定以下) 19万円※2 34万円

 自治体独自の助成制度もチェック

国が整備している介護保険料の減免制度のほかにも各自治体で独自に減免制度を整備しているところもあります。

例えば、東京都の小平市では小金井市介護福祉条例施行規則第11条の規定に基づき、独自の介護保険料の減免制度を整備しています。もちろん制度を利用するための条件を満たす必要がありますが、対象となっている場合は利用しない手はありません。

自治体で減免制度があるかどうか、お住いの自治体の担当窓口に問い合わせてみましょう。

老健の費用が払えなくなった時の対処法②世帯分離

世帯分離とは、一つの家に同居しながらも住民票を二つの世帯に分けること(親と子、夫婦間など)を言います。例えば以下のような場合です。

同一世帯 父親(世帯主)・母親・自分・自分の配偶者・自分の子
世帯分離 ①父親(世帯主)・母親 ②自分(世帯主)・自分の配偶者・自分

上の表のように世帯分離をすることによって、一世帯当たりの所得が減るため「高額介護サービス費」 などの減免制度の負担限度額を上げることができるので、月々の支払額を抑えることができます。また、介護保険料も所得に応じて負担額が変動するので、世帯ごとの所得を減らすことによって介護保険料も減らすことができます。

介護保険サービスを利用した際も同様に各世帯の所得額によって1~3割負担が決まるので、毎月支払う介護保険サービスの自己負担額も減らすことができるのが特徴です。

一方で、デメリットとして国民健康保険料の支払いなど、それぞれの世帯で支払いが必要になる保険料などもあるので合計でどちらが得がシミュレーションしておく必要はあります。また、子供が会社から扶養をもらっている場合は世帯分離をすることで扶養手当が入らなくなることもあります。

世帯分離には費用が抑えられる場合もありますが、世帯分離をしたせいで支払額が結果的に増えることもあるので家族ともよく相談して検討しましょう。

老健の費用が払えなくなった時の対処法③費用の安い老人ホームを探す

対処法として、費用の安い老人ホームを探すのも一つの手段です。具体的には費用の安い老人ホームの探し方のポイントは以下の3つあります。

  1. 立地の悪い老人ホームを探す
  2. 多床室(相部屋)のある老人ホームを探す
  3. 医療法人や社会福祉法人が運営している老人ホームを探す

立地の悪い老人ホームを探す

賃貸アパートや賃貸マンションなど一般的な賃貸住宅と同じように、老人ホームも駅からの距離や交通アクセスなどの立地条件によって居住費などが変わってきます。

地方よりも都心が、駅から遠い老人ホームより近い老人ホームの方が安くなるので、老人ホームの検索サイトなどで様々な施設を比較検討して選びましょう

一方で、立地の悪い老人ホームはご家族がきづらいなどの事情もあり、結果的に交通費がかかるということもあるので頻繁に面会をする可能性がある場合はトータルのコストを考えて探すようにしましょう。

多床室(相部屋)のある老人ホームを探す

個室よりも多床室の方が居住費が安くなりますので、老人ホームを選ぶ際は多床室のある老人ホームを探しましょう。

多床室では個室と違い2~4人で一人の部屋を使うことになるので、老健などと同じように病院と近いイメージです。プライベートを確保するために仕切りがあることが多く、個室よりも費用が安くなるのが特徴です。

一方で多床室を利用するのにもデメリットがあります。

  • 他の人のいびきや生活音がストレスになる
  • 気が合わない人と同じ部屋になることもある
  • プライベートの時間を確保しづらい

被介護者が神経質な場合は費用面を重視するあまりストレスをためてしまうこともあるので、入居する方と相談しながら多床室に住むかどうかは検討しましょう。

医療法人や社会福祉法人が運営している老人ホームを探す

医療法人や社会福祉法人は国や自治体からの援助を受けているため、比較的費用が民間の介護施設と比較してリーズナブルなことが多いです。

老人ホームの中でも介護付き有料老人ホームなどよりも特別養護老人ホームなど公的機関が運営している施設の方が費用が安いことが多くありますので、要介護度3以上などの制限はありますが老健からの移動を検討している場合は公的な介護施設も検討しましょう。

老健の費用が払えなくなった時の対処法④生活保護を受給する

年金だけで暮らしていて生活が厳しい場合や頼れるご家族がいない場合は生活保護の受給も検討する必要があります。

生活保護を受けるには世帯収入が最低生活費に満たないことが条件となっている他、「資産の活用」「能力の活用」「あらゆるものの活用」「扶養義務者の扶養」などあらゆる条件を満たす必要があります。

生活保護を受給したい場合は市区町村の生活支援担当窓口やケアマネージャーなどに相談して進めましょう。なお、生活保護を受給していても介護保険サービスを享受することはできるので、詳しくは以下の記事をご覧ください。

老健の費用が払えなくなった時の対処法⑤必要資金を作る

老健の費用が払えなくなった時の最後の方法としては、自宅などの資産を活用して必要資金を作ることです。具体的に資金を作る方法としては、以下の3つの選択肢があります。

  • リバースモーゲージ
  • マイホーム借り上げ制度
  •     

  • 保有する資産の売却

それぞれについて解説していきます。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは、所有している自宅を担保にして金融機関から融資を受けることができるサービスです。住宅を担保にしているので、本人が死亡した後に自宅を売却することによって融資を返済する仕組みとなっています。

自宅を手放す必要が無いという点から家族が住み続けることができる点はメリットですが、子供などに資産を相続することができないのがデメリットと言えるでしょう。

リバースモーゲージには、各自治体や社会福祉協議会などの公的機関が実施しているリバースモーゲージと金融機関が提供しているリバースモーゲージの2種類あります

公的機関が実施しているリバースモーゲージは利益追求が第一の目的ではないため金利負担も軽く、自治体にいよっては無利息で提供している自治体もあります。一方で、融資した金額は生活資金に充てることが決められているため、融資した金額を投資目的などで使用することはできません。

民間の金融機関が提供しているリバースモーゲージは、公的機関に比べて金利が高いのが特徴ですが対象年齢が低いことや、早期退職者も利用しやすいというメリットもあります。また、資金の利用先は投資目的以外であれば原則自由となっています。

マイホーム借り上げ制度

マイホーム借り上げ制度とは、一般社団法人移住・住み替え支援機構(JTI)が運営している制度で50歳以上シニア世代が自宅を貸し出すシステムです。通常の賃貸とは違ってJTIが借り上げて一般の人に転貸するという仕組みになっているので、終身に渡って貸し出すことができます。

1人目の入居者が決定して以降は、空室が生じても空室時補償賃料が支払われるので一般の賃貸よりも空室時の輸入は安定することになります。一方で賃料は通常の8割程度まで下げられるほか、10~15%の手数料がかかるため、一般の賃貸よりも収入は少なくなります。

一部の自治体でも同じような制度を運営しているので、利用する場合はJTIの窓口や自治体の窓口に問い合わせてみましょう。

保有する資産の売却

将来のことを考えて、不要な資産や今後使う想定のない資産は売却を進めていくのも1つの手です。
「いつか使うかもしれない」と思ってはいるが、そのまま使わずに相続・放置されてしまう資産は数多くあります。

そのため、今保有する資産を一度見直し、不要なものは思い切って老健の費用に充ててしまうのもよいでしょう。

また、場合によっては自宅を売却して売却金を老健の費用に充てる事も1つの方法です。家を売る方法について知りたい方はこちらの記事が参考になります。

老健の費用が払えなくなる前に資金計画を立てよう

ここまで老健の費用が支払えなくなった時の対処法について解説してきました。老健だけではなく、老後に施設に入る際などは事前に費用などを想定した上でライフプランを練っておくことが重要です。

自分ひとりで資金計画を練ることができない場合はケアマネージャーなどに相談するようにしましょう。その施設のケアマネージャーや地域包括支援センターのケアマネージャーなどに相談することで、より良い施設を紹介してもらえます。また、利用者に合ったケアプランも作成してもらえるため、これをもとに適切な施設を判断し、費用面でも無理のない介護保険サービスを受けましょう。