医療的なケアを必要としている重度の要介護者の在宅介護は、家族にかかる負担がかなり大きくなります。
また、要介護者の医療ニーズに応える在宅サービスが地域によっては不足していることがあり、状態に見合った充分なケアが受けられない場合があります。
このような場合の有料老人ホームの施設入居についても、設備や看護師配置などが充分でないとして施設側から断られてしまうこともあります。
要介護度が比較的重度で、医療ケアの必要もある高齢者が長期に渡って手厚いケアを受けられる施設が、「介護療養型医療施設(療養型病院)」です。
介護療養型医療施設は一体どんな施設なのか、特徴やメリットデメリット、費用や手続きのやり方までを確認しましょう。
介護療養型医療施設(療養型病院)とは?
介護療養型医療施設(療養型病院)は介護保険施設であり、医療法人が運営している施設となります。
主に痰の吸引や経管栄養など日常的に医療ケアが必要な高齢者を対象とした施設で、医療ケアやリハビリテーションの提供だけではなく、食事の提供や入浴、排せつの介助などの介護サービスも受けることができます。
医療機関が運営していることから、看護師など医療従事者の配置が充実しており、医療・介護の両面において安心の環境と言えるでしょう。
一方で、食事・入浴・排泄といった基本的な介護サービスはあるものの、レクリエーションや買い物・洗濯・掃除などの生活援助サービスはあまり充実していません。
実態としてのイメージは、老人ホーム・介護施設と言うよりは病院に近いと言えるでしょう。
介護療養型医療施設(療養型病院)の設備
介護療養型医療施設内の設備は、ほぼ病院の入院病棟と同じと考えてよいでしょう。
居室は、入院病棟の複数人部屋と同じような作りになっていることがほとんどです。個室や半個室(ユニット型個室)もありますが、多床室が多くなっています。
トイレや浴室などは共同で、他には食堂兼共同リビング、家族が来たときに利用できる談話室、機能訓練室、診療室などがあります。
介護療養型医療施設(療養型病院)の入院期間の目安
介護療養型医療施設は継続した治療を目的とする施設なので、一般病床と比較すると長期間の入院が可能です。
2022年9月のデータでは、一般病床の入院期間の平均が16. 1日と半月ほどであるのに対して、療養病床は122. 6日と4ヶ月ほどになっています。場合によっては1年以上入院される方もいます。
一方、介護保険の施設では、特別養護老人ホームは看取りまで対応可能な施設で長期間の入居が前提となっています。そのため、平均で4年近く入所しています。
また、介護老人保健施設の入所期間は平均1年弱ですので、介護療養型医療施設の入院期間は両施設の中間になります。
参照:厚生労働省「病院報告(令和4年9月分概算)」「介護老人保健施設 (参考資料)」
介護療養型医療施設(療養型病院)の新設廃止について
医療依存度の高齢者から頼りにされてきた介護療養型医療施設ですが、残念ながら2012年から新設が廃止され、政府は現在2024年にこの施設の全面廃止に向けて動きだしています。
介護療養型医療施設は設立当初、一定期間充実した医療・介護サービスを提供し、体力が回復した時点で別の老人ホームや自宅への転居を想定して作られました。
しかし、想定を超えて入所期間が長期になる人が多くなり、医療費や社会保障費の負担が増大する結果となりました。
既存の介護療養型医療施設は、介護老人保健施設か、今までの介護療養型医療施設の問題点を解決した「介護医療院」という新しい施設のどちらかに方向転換することになります。ぜひ今後の流れも注意して見守りましょう。
また介護療養型医療施設を探している方は、ケアスル介護での相談がおすすめです。
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介護療養型医療施設(療養型病院)のメリット・デメリット
介護療養型医療施設の特徴を押さえたところで、具体的なメリットとデメリットを見ていきましょう。
介護療養型医療施設(療養型病院)の3つのメリット
介護保険が利用でき、医療サービスも充実している介護療養型医療施設は現在の高齢化社会にとって重要な受け皿となっています。
そんな介護療養型医療施設の大きなメリットは、以下の3つです。
- 医療ケアの充実度が高い
- 入所の際に入居一時金といった初期費用がかからない
- 入居者は最期まで安定したケアを受けられる環境で過ごせる
医療ケアが充実
介護療養型医療施設は、法律としては医療法と介護保険法で規定されており、介護保険が使える病院というイメージです。
病院なので、当然医師や看護師からの医療ケアの手厚さや細やかさは他の老人ホームや公的介護施設と比べても群を抜いています。
法律によって医療従事者の手厚い配置が義務付けられており、医師や看護師のほか、薬剤師、栄養士、作業療法士、理学療法士なども常駐しています。
普段の健康管理も医師や看護師に診てもらえ、手術や治療後に医療ケアの必要な方、胃ろうや尿管カテーテルの必要な方など、医療依存度の高い高齢者でも長期的に安定したケアが受けられます。
また、病院と併設しているケースも多く、突発的な体調の変化や容体が悪化した場合には、すぐに適切な医療ケアが受けられることも大きなメリットです。
初期費用がかからず比較的安価
一般的に、有料老人ホーム施設に入居する場合は、初期費用として入居一時金と、月額利用料の二つがかかります。
しかし、療養型施設の場合は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設と同じく「介護保険施設」に分類されるため、基本的に全国どこの地域の介護療養型医療施設であっても入居時費用は0円となっています。
入居一時金が必要な有料老人ホームは全体の約7割もあると言われている中で、初期費用が0円というのはかなり安価な部類に入ってくると言えます。介護療養型医療施設は、どんな経済状況の方にとっても利用しやすいと言えるでしょう。
ターミナルケアや看取りもできる
介護療養型医療施設は、元々は利用者の医療ケアが必要でなくなった段階で転所するのを目的として作られました。
しかし、そもそも医療依存度も介護度も高い利用者が転所するまで回復する事例も少なく、またそのような状態の重い人の在宅介護も家族にとっては大きな負担となり、結局は終身の入所で最期の時を介護療養型医療施設で過ごすケースも多くなっています。
また、平成27年4月に「看取り介護加算」の要件が改定されたこともあり、介護療養型医療施設を含めた介護施設で看取りやターミナルケアを積極的に行うところが多くなりました。
そのような背景から、現在の介護療養型医療施設では、十分に研修を受けた医療従事者からターミナルケアが受けられるようになっています。
利用者が最期まで環境を変えることなく、十分な医療ケアや介護サービスを受けられるのは大きなメリットと言えます。
介護療養型医療施設(療養型病院)の4つのデメリット
医療サービスも介護サービスも受けられ、重度の要介護者や認知症の人でも受け入れが可能で、いいことづくしに見える介護療養型医療施設ですが、その一方で医療機関ならではの不自由さや物足りなさを感じる面もあります。
レクリエーションの乏しさや、ほとんどの部屋が入院時の大部屋のような多床室であること、また料金に関しても他の公的介護施設に比べると割高であることや、その人気さと利用者の特徴から待機時間が長めであることは、施設へ入所を検討する際に注意したいデメリットです。
他の公的介護施設に比べると割高
介護療養型医療施設は、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)と同じ「公的施設」です。
国や地方自治体などの公的機関が運営母体となっているため、福祉サービス的な側面も強く、特に費用面では民間施設と比べて安価になっているため、さまざまな経済状況の方も入所しやすいです。
その中でも介護療養型医療施設は医療サービスが手厚く、医師や看護師など医療従事者からほぼ24時間、必要な医療ケアを受けられるため、特別養護老人ホームなどの他の公的施設の料金と比べると割高になります。
特別養護老人ホームの月額利用料は8.8〜12.9万円であるのに対し、療養型施設は約9〜17万円となっています。毎月かかる金額なので、慎重に検討することをおすすめします。
レクリエーションが少ない
医療サービスは申し分ないものの、病院と同様で、介護サービスの充実度は他の介護施設と比べるとやや物足りなさを感じるかもしれません。
食事や入浴、排せつの介助など生活に必要な介護は受けられますすが、洗濯や買い物代行などは行っていません。
また、利用者が重度の要介護者であったり、寝たきりであったりすることが多いため、レクリエーションやイベントなど利用者が純粋に楽しむことを目的とした娯楽的なサービスなどもあまり積極的には行っていません。
ほとんどが多床室
介護療養型医療施設のほとんどは、病院の入院病棟のような印象が強いです。生活のための設備よりも、医療サービスや健康管理のための設備が充実しています。
居室も、相部屋(多床室)であることが多いです。プライバシーの配慮という点でも、難しい面があるでしょう。
しかし、施設によっては「個室」や半個室のような「ユニット型個室」がありますが、病院でいう差額ベッド代と同様の特別室料が加算され、費用は高くなります。
個室にこだわりがある場合は、個室がある介護療養型医療施設を探してみましょう。
待機期間が長め
介護療養型医療施設の利用者は、医療依存度が高い場合が多く、また要介護状態も重く、重度の認知症であるケースも多いです。
そのため、一旦入所すると一定の期間の医療・介護ケアののち、そのままターミナルケアに移行することが多いです。
必然的に入所から退所までの期間が長くなるため、部屋の空きが出るまでに数ヶ月以上は待つことになります。
更に、介護療養型医療施設の新設廃止が決まっため施設数も激減しています。現在でも稼働している介護療養型医療施設では定員の9割以上が埋まっている状態ですので、入所を希望する場合は各施設に待機人数や期間について問い合わせ、早めに準備を始めることをおすすめします。
介護療養型医療施設を探している方は、ケアスル介護での相談がおすすめです。
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介護療養型医療施設(療養型病院)の入所基準
介護療養型医療施設への入所基準は、要介護1以上の、長期療養が必要な、65歳以上の高齢者とされています。
しかし実際の利用者の平均要介護度は4以上となっており、現実的には要介護度が低い人は入所しづらい状態です。
逆に、要介護度や医療依存度が高い場合は、優先的に入所させてもらえる可能性があります。
また、介護療養型医療施設はあくまで「療養」を目的としており、積極的な治療を行う病院施設ではありませんので、現在治療を必要としていないことも条件になっています。
その他、共同生活を前提としているため、伝染病にかかっていないことなども基準になっています。
細かい基準などは、各施設に個別に確認することをおすすめします。
介護療養型医療施設(療養型病院)の費用
介護療養型医療施設は、初期費用は0円ですが、入所後に月額利用料として約9〜17万円かかります。内訳は、居住費、食費、日常生活費、介護サービス費となっています。
相部屋ではなく個室を希望した場合や、家族の世帯収入・課税状況、医療加算の状況によっては、費用が高くなることもあります。また、医療設備が整っていることから、老健や特養など、他の公的介護施設と比べると割高となっています。
介護サービス費
介護サービス費は介護保険が適用されます。
介護保険は、要介護認定を受けた人が介護サービスを利用した際にその費用の1部を国や自治体が負担するという制度で、利用者の自己負担額は収入によって1〜3割と定められています。
利用者の自己負担割合がどのくらいであるかは、「介護保険負担割合証」に表示されていますので、介護サービスを利用する際は確かめてみましょう。
食費・居住費
食費、居住費は原則として全額自己負担となります。
しかし、介護療養型医療施設の利用者には「特定入所者介護サービス費」という制度が適用され、所得や資産が一定以下の人は、自己負担上限額を超えた場合に減免される仕組みになっています。実際にどれくらいの金額が減免されるかは、要介護度のレベルや医療サービスの内容、部屋のタイプや入院の期間によっても変わってきますので、施設側に確認しましょう。
日常生活に伴う別途費用
別途費用としてかかるものは、日常生活に使う生活用品、テレビやラジオ、書籍、ゲームなどの娯楽品、おやつなどの嗜好品の費用、洗濯や買い物代行費、理美容費などがあげられます。
また、介護療養型医療施設ではレクリエーション費用はは有料になってくる場合が多いです。その他、診断書等の文書作成費用なども別途費用になります。
介護療養型医療施設(療養型病院)の入所手続き・流れ
療養型施設を利用する際の大きなポイントは、施設探し、見学、そして最後の契約の3つです。
情報収集
介護療養型医療施設への入所をご検討される方は、心身共に様々な疾患を抱えていることが多いです。
医療ケアの面でも、介護サービスの面でも、利用者のニーズに合ったサービスを最期まで受けられるかを意識して情報収集をする必要があります。
探すに当たっては、どんな生活を希望するのか、予算や立地などを含めた条件を明確に整理しましょう。
また、ケアマネジャーやかかりつけ医と相談し、インターネットだけではなく地域の口コミなども参考にしながら複数のリソースからの情報収集をおすすめします。
施設見学候補となる介護療養型医療施設を見つけたら、実際に見学に行きましょう。
できれば複数の施設を見学して、比較検討することをおすすめします。施設の雰囲気や、スタッフの対応、利用している方々の様子などを確認することは、利用者本人に合った施設かどうかを判断する重要な材料となります。
また、ベッドや共同スペースの清潔さなども確認したい点です。
更に、事前にショートステイなどの利用ができれば実際に入所したときの様子を体験することができます。可能かどうかを確認してみましょう。
申し込み・契約
介護療養型医療施設の入所申し込みは、各施設と直接行います。入所を希望する施設に必要書類とともに申込書を提出すれば申し込み自体は完了です。
その後、施設スタッフ、医師、行政担当者などを含めた委員会によって入所のための審査が行われます。
要介護度や、利用希望者の医療依存度、資産や収入面だけではなく、施設側の待機時間や稼働状況も含めて総合的に判断が下され、入所の可否が決まります。
介護療養型医療施設は入所しづらい状況であるのが現状ですので、希望する場合は、複数の施設に申し込みをすとよいでしょう。
介護療養型医療施設を探している方は、ケアスル介護での相談がおすすめです。
ケアスル介護なら、5万件を超える介護施設のなかから、入居相談員にその場で条件に合った施設を教えてもらうことが可能です。
介護療養型医療施設選びで失敗したくない方は、ぜひケアスル介護で相談してみてはいかがでしょうか。
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介護療養型医療施設(療養型病院)は医療ケアを受けながら長期療養できる施設
医療ケアが必要な高齢者は、要介護度も高くなる傾向になり、在宅介護だけでは難しい場合が多くあります。
介護療養型医療施設では、医療の専門家が医療ケアを提供し、長期に入所できる施設になりますので、本人や家族の肉体的な負担が減るだけではなく精神的にも安心できる施設と言えるでしょう。
すでに2024年には廃止が決定している施設ではありますが、特養など他の施設の待機中にも頼りになる施設です。利用を検討をしている方はぜひ早めにケアマネジャーやかかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。
主に痰の吸引や経管栄養など日常的に医療ケアが必要な高齢者を対象とした施設で、医療ケアやリハビリテーションの提供だけではなく、食事の提供や入浴、排せつの介助などの介護サービスも受けることができます。看護師など医療従事者の配置が充実しており、医療・介護の両面において安心の環境と言えるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
介護療養型医療施設は2012年から新設が廃止され、政府は現在2024年にこの施設の全面廃止に向けて動きだしています。今後は介護老人保健施設か、今までの介護療養型医療施設の問題点を解決した「介護医療院」という新しい施設のどちらかに方向転換することになります。詳しくはこちらをご覧ください。