高齢者が利用できる介護や福祉施設はさまざまあり、その1つとして軽費老人ホームというものがあります。軽費老人ホームはケアハウスと呼ばれる介護施設であり、施設への入居やさまざまなサービスが受けられます。
また、他の介護施設よりも費用が安い点も魅力であり、経済状況が苦しい人でも利用しやすいです。軽費老人ホームの利用にかかる費用や施設の特徴などを知り、どのような人に向いているのかを把握していきましょう。
高齢者向け施設のケアハウスとは
まずは軽費老人ホームがどのような施設なのか、基本的な知識から身につけていきましょう。軽費老人ホームはケアハウスと呼ばれる高齢者向けの施設であり、生活支援や介護ケアなどさまざまなサービスが低価格で受けられる点が特徴です。
ただし、軽費老人ホームにはさまざまなタイプがあり、種類によって特徴は異なります。タイプごとのサービス内容や入居の条件などの違いを知り、軽費老人ホームがどのようなものかを理解していきましょう。
3タイプ
軽費老人ホームにはA型とB型、C型の3つがあります。このうちC型がケアハウスと呼ばれており、近年ではこのタイプが主流となっています。A型とB型は2008年に新設が廃止されており、その数は年々減っていることも覚えておきましょう。
新設はないものの、既存の施設なら利用は可能です。A型とB型それぞれは生活支援サービスのみの提供となっており、介護サービスは利用できません。
また、A型は食事の提供がありますが、B型は食事の提供がないと考えましょう。C型はケアハウスとなるため、サービス内容は充実しています。
ケアハウス(C型)への一本化
軽費老人ホームは2008年にA型とB型の新設が廃止されただけではなく、既存のものの改築や新設はすべてC型のケアハウスに一本化される予定です。そのため、今後軽費老人ホームという言葉が指すものは、ケアハウスになると考えましょう。
サービス内容
サービス内容は施設のタイプによって異なり、軽費老人ホームC型に該当するケアハウスでも、一般型か介護型かによる違いがあります。一般型の場合は食事の提供や洗濯、掃除のサポートといった日常支援がサービスとして提供されています。
医療機関とは提携しているものの、介護や医療ケアは施設のサービスとしては含まれていません。そのため、介護や医療のケアが必要な場合は、別途外部サービス事業者と契約する必要があります。介護がこれらのサービスに加えて、入浴や排せつの介助やリハビリなど、介護サービスが付属することが特徴です。
入居の条件
ケアハウスへの入居の条件は、一般型か介護型かによって異なります。一人暮らしに不安があり、家族に援助を求めることが難しい人といった点は共通していますが、年齢の要件や身体的な要件は違います。そのため、これらの違いを把握しておくことが大切です。
施設のタイプ | 年齢の要件 | 要介護度 | 認知症への対応 | 収入や資産 |
一般型 | 60歳以上 | 自立から軽度の要介護度 | 非対応 | 少ない人が優先 |
介護型 | 65歳以上 | 要介護1~5 | 一部対応 | 少ない人が優先 |
一般型の場合は60歳以上で、自立から軽度の要介護度の人が入居できます。認知症には非対応であり、入居してから要介護度が上がると、退去しなければならない場合もあるため注意しなければなりません。介護型の場合は要介護1~5の65歳以上の人が入居可能です。
認知症の対応をしていることもありますが、施設によって異なるため事前に確認が必要です。介護サービスが受けられる介護型では、重度の要介護度で入居し続けることができます。
看取りに対応している施設もあるため、施設で最期を迎えることも可能です。入居の条件については、詳細部分が施設によって異なります。そのため、入居前に条件は細部までチェックしておきましょう。
ケアハウスの申し込み方法
実際にケアハウスを利用する場合に備えて、申し込みの方法を知っておきましょう。
- 施設の情報を収集する
- 施設に直接申し込みをする
- 入居申込書を提出する
- 施設職員による訪問や面談を受ける
- その他必要書類を提出する
- 入居審査を受けて入居
最初に入居する施設の情報収集を行います。情報収集はネットで調べる以外にも、地域包括支援センターでケアマネージャーに相談して、紹介してもらうという方法もあります。
希望する施設が見つかったなら、施設に直接申し込みを行い、この際に入居申込書を提出しましょう。その後施設の職員による訪問調査や面談などが行われ、次の書類を提出して審査となります。
- 住民票
- 健康診断書
- 所得証明書
審査の結果、入居が可能と判断されたなら入居のための荷物の整理などを行い、施設に移動して利用開始となります。
費用について
実際に施設を利用する際に備えて、どれくらいの費用がかかるのかを知っておくことが大切です。かかる費用としては初期費用と月々の費用などがあげられます。また、利用するサービスによってかかる費用は変わるため、この点についても理解を深めておきましょう。
初期費用
軽費老人ホームの場合でC型、つまりケアハウスの場合は初期費用として保証金や入居一時金がかかることが多いです。
この費用は一般型か介護型かによって異なり、一般型は0円から30万円程度が、介護型は数十万円から数百万円程度が相場となっています。A型とB型の場合はこれらの費用はかからないため、初期費用なしで入居できることも特徴です。
保証金や入居一時金について
入居時に支払う保証金や入居一時金は、退去時に返金されることもあります。保証金は居住費などの費用を滞納した場合や、退去時の原状回復費などを差し引くものであり、これらを支払って残った分が返金の対象です。
入居一時金は施設運営の資金として徴収されているものであり、施設ごとに償却期間や償却率が異なります。償却が完了するまでに退去する場合は、そのときに残っている分の返金を受けることが可能です。
例えば入居一時金を500万円支払い、償却率が10%の場合は、契約時点で50万円が償却されたことになります。償却期間が3年とするなら、1年に150万円ずつ償却され、3年以内に退去すると残った分が返金されます。
上記のケースで考えるなら、3年以上施設に入居し続けて退去した場合は、一時金の返金は受けられないと考えましょう。
月々の費用
軽費老人ホームを利用するにはさまざまな費用がかかり、月々のコストとしては次のものがあげられます。
- 居住費
- サービス提供費
- 食費
- 水道光熱費
- おむつ代などの日用品費
- レクリエーションやイベントなどの娯楽費
施設に入居するには家賃の支払いが必要であり、これは居住費が該当します。また、生活支援のサポートを受ける対価として、サービス提供費がかかると考えましょう。
食事サービスが提供される施設では、1食ごと、あるいは1日単位で食費が計上されます。水道光熱費も利用者の負担となることが多く、これもコストに含まれることは理解しておきましょう。
おむつ代や理美容にかかる費用など、日常生活でかかるコストは利用した分の実費精算となります。他にもレクリエーションなどでかかる娯楽費も、月々のコストに含まれることは覚えておきましょう。
介護型の場合は介護サービスが受けられるため、これも月々のコストに含まれます。費用は施設によって異なるもの、A型だと6~17万円、B型だと3~4万円、ケアハウスだと一般型で7~13万円、介護型で16~20万円程度が相場です。
一般型で介護保険サービスを受ける場合
介護サービスの提供がない一般型は、介護ケアが必要な場合だと外部のサービス事業者と契約して、介護保険サービスを利用します。この場合は、サービスを利用した分だけ費用がかかるため、ケアが不要な人は別途費用はかかりません。
介護型で介護保険サービスを受ける場合
施設で介護サービスが受けられる介護型の場合は、費用は定額です。ただし、施設の設備や職員の体制によって費用は異なるため、この点には注意しなければなりません。介護保険サービスの自己負担割合は1~3割であり、所得によって負担割合が変わることも覚えておきましょう。
介護保険サービスの負担額が上限を超えてしまったとき
もし介護保険サービスを利用して自己負担額が限度額の上限を超えてしまった場合は、高額介護サービス費制度を利用することで、超過分の返金が受けられます。制度を利用するには市区町村の役場で申請が必要であるため、必ず行いましょう。
一時的に自己負担は増えますが、申請によって超過分は返金されるため、介護保険サービスの利用にかかるコスト負担は軽減できます。
収入によって徴収額が異なる
自治体からの助成を受けている軽費老人ホームでは、実際にいくらの費用を支払うかが収入によって異なります。収入が少ない人は費用の減額を受けられることもあり、より少ない自己負担でサービスの利用が可能です。
ただし、収入が多い人は自己負担額が増えるため、この点には注意しなければなりません。また、そもそも収入が多いと軽費老人ホームへは入居できなかったり、優先度が低いとして入居を後回しにされることもあるため、これも覚えておきましょう。
ケアハウスと有料老人ホームの比較
軽費老人ホームのC型、つまりケアハウスと有料老人ホームではどのような違いがあるのかを知っておくことは大切です。それぞれの違いを把握しておくことで、施設の比較がしやすく、どちらを利用すると良いのかが判断できます。
有料老人ホームにもさまざまなタイプがあり、住宅型や健康型、介護付きといったものがあります。それぞれの特徴を知り、ケアハウスとの違いを比較することで、より高齢者に合った施設を見つけましょう。
サービス内容や運営事業者などが異なる
ケアハウスと有料老人ホームでは、提供されているサービス内容と運営事業者が異なります。ケアハウスでは生活支援から介護サービスなどが提供されています。有料老人ホームの場合は、住宅型や健康型は生活支援や見守りのサービスが、介護付きではこれらに加えて介護保険サービスの利用が可能です。
また、運営事業者はケアハウスは社会福祉法人や医療法人、民間企業などですが、有料老人ホームは民間企業のみとなっています。運営事業者が違うことで、施設としての性質が異なる点も理解しておきましょう。
費用の比較
ケアハウスと有料老人ホームは、費用面でも違いがあります。どのタイプを利用するかによっても異なりますが、有料老人ホームだと月額10~40万円程度の費用がかかることが多いです。ケアハウスもタイプによって違いがありますが、平均すると6~17万円程度です。
そのため、より安価で利用できることがケアハウスの魅力であり、自治体からの助成を受けるなど、公的な性質が強いことが、低価格で利用できるポイントといえます。
また、入居の際にかかる一時金も有料老人ホームのほうが高いことが多く、不要な場合もありますが、高いと数千万円から1億円以上かかることもあります。
都市型軽費老人ホームの場合
従来の老人ホームとは違い、新しく生まれたものが都市型軽費老人ホームです。都市型軽費老人ホームは居室の要件や人員配置の基準などがケアハウスよりも緩和されたものであり、より少人数での利用となる点が特徴です。
費用面での違いを見ると、都市型軽費老人ホームでは入居一時金は不要であるため、安い初期費用で入居できる点が魅力といえます。ケアハウスでも入居一時金が不要なケースはありますが、実際にはかかる施設が多いため、初期費用を抑えたいなら都市型軽費老人ホームの利用を検討すると良いでしょう。
ケアハウスのメリット・デメリット
ケアハウスにはメリットとデメリットの両方があるため、これも把握しておきましょう。メリットは低価格で利用できる点であり、低コストでさまざまなサービスが受けられます。
デメリットは一般型だと要介護度が上がると退去しなければならない点があげられ、身体状況の変化によっては、その後の入居先を探しておかなければなりません。
また、介護型の場合は終身利用が可能ですが、人気が高く、待期期間が長いことも多いです。数ヶ月で入居できるケースもあれば、1年以上かかることもあり、地域によって待機期間が異なる点もデメリットといえます。
比較的安価で利用できるケアハウス(軽費老人ホーム)
ケアハウスに一本化される軽費老人ホームは、安価でさまざまなサービスを利用できる点が魅力です。コストが低いため、老後資金に不安がある人でも利用しやすく、収入次第では利用費が減額されることもあります。
ただし、ケアハウス以外にも選択肢はさまざまあるため、別の介護施設やサービスとも比較し、どれがもっとも良いのかを考えておくことも大切です。適したサービスは人によって違い、どれを利用するかは事前に情報を収集して比較検討する必要があります。
軽費老人ホームのそれぞれのタイプのサービスや費用の違いを正しく把握して、より良い介護施設への入居を目指しましょう。