介護老人保健施設(老健)は、長期入院からの在宅復帰などを目的として、専門的なリハビリテーションや医療ケアを受けることができる施設です。
公的な介護施設のため、比較的低価格な料金ながら、手厚い医療・介護サービスを利用できることが魅力となっています。
しかし、退院したあと施設に入所することで、環境の変化に不安を覚える方も少なくありません。
「病院はいつでも安心だったけど、施設でもしものことがあったときは心配……」
「急な体調不良やけがをしたとき、対応してくれる人はいるのかな?」
そんな方々のお悩みにお応えするため、本記事では介護老人保健施設(老健)の人員配置基準、スタッフそれぞれの役割、ほかの老人ホームとの違いまで、詳しく解説していきます。
介護老人保健施設(老健)の人員配置基準を一覧表で解説!
介護老人保健施設(老健)の人員配置基準を一覧表で表すと、以下のようになります。
職種 | 配置基準 | 定員100人あたりの配置数 |
---|---|---|
医師 | 常勤1人以上(100対1以上) | 1人 |
看護師 | 入所者3人に対して、看護師もしくは介護職員が1人以上 看護師・介護職員の総数の7分の2程度 |
9人 |
介護士 | 入所者3人に対し、看護師または介護職員が1人の割合 看護師・介護職員の総数の7分の5程度 |
25人 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 | いずれかの1人以上 | 1人 |
支援相談員 | 1人以上(100対1以上) | 1人 |
栄養士 | 定員100人以上の場合、1人以上 | 1人 |
薬剤師 | 実情に応じた適当数 (300対1を標準とする) | 0人 |
調理員、事務員、その他従業者 | 実情に応じた適当数 | 適当数 |
介護・看護職員は入所者3人につき1人
介護老人保健施設(老健)では、介護・看護職員と入所者の割合を3:1で設置することが定められています。
最近では介護職員に加え、看護師も24時間常駐している施設も増えてきており、手厚いケアを受けながら安心して生活することができます。
また、一般的な老人ホームと異なり、介護老人保健施設(老健)では医師や看護師の常駐が義務付けられています。
日ごろからの健康管理はもちろん、急な体調不良やけがをした場合も万全のサポート体制と言えるでしょう。
リハビリ専門のスタッフが常駐している
介護老人保健施設(老健)は、専門のスタッフによるリハビリテーションを受けられることが魅力です。
「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」のいずれかの資格を持つ職員の常駐が義務づけられていることは、介護老人保健施設(老健)の大きな特徴として挙げられます。
「歩く・立つ」などの生活に必要不可欠な基本動作から、食事や入浴の日常動作、失語症や聴覚障害に対してのアプローチといった幅広いプログラムで、基礎運動能力の回復を図っています。
スタッフが入所者一人ひとりの身体状況をしっかりと見極めながら、週2回以上の頻度できめ細やかなリハビリを受けることができることは、大きなメリットです。
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介護老人保健施設(老健)の人員配置基準①人員の仕事内容について
本項では介護老人保健施設(老健)に所属する職員の、仕事に内容の詳細について解説していきます。
前項の一覧表と同じく、解説する職種は以下となります。
- 医師
- 看護師
- 介護士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語療法士
- 支援相談員
- 栄養士
- 薬剤師
- その他
医師
医療の責任者として、入所サービスやショートステイ、通所リハビリなどで訪れる高齢者の健康を支えるスタッフです。
診断や治療、患者の状況を把握した上で看護師やリハビリ職への指示を行っており、チームを統率するマネージャーのような業務をこなします。
入所者に安心の生活を提供するため、看護・介護・リハビリの役割の理解はもちろん、診察や緊急時の対応、場合によっては看取りをおこなうなど多岐に渡ります。
看護師
入所者の健康管理や、日常的な処置が必要な医療行為など医療面のサポート全般を担当するスタッフです。
体温や脈拍、血圧などのバイタル測定をはじめ、医師の指導のもと投薬やインスリン投与、たん吸引といった幅広いケアを提供します。
看護師は医師だけではなく、介護士・リハビリ職と密接に連携し、入所者の体調や生活リズムやしっかりと管理しています。
日常的な健康管理から、高度な医療ケアまで、きめ細やかなサポートで、入所者の健やかな生活を守る役職です。
介護士
入所者の生活を、「身体介護」「生活援助」「余暇活動」など、あらゆる面から支援するスタッフです。
具体的な内容としては、食事や入浴、排せつの介助のほか、洗濯や掃除といった援助、レクリエーションの企画・運営などが挙げられます。
24時間常駐していることも多く、夜間に入所者の体調が急変した場合はオンコールシステムにより、迅速・的確な対処をします。
介護士は介護のプロフェッショナルであるとともに、入所者にもっとも近い位置でサポートを提供し、入所者の心のパートナーとして心豊かな暮らしを支えています。
理学療法士
リハビリの専門職として病気やケアなどで身体に障害が出た際に、「歩く・立つ・座る・寝返りを打つ」などの日常生活に最低限必要な基本動作の機能回復・維持を行うスタッフです。
理学療法士は入所者ひとりひとりについて、医学的視点から身体能力や生活習慣を見極め、在宅復帰に向けて適切なプログラムを作成します。
関節可動域の拡大、麻痺の回復、痛みの軽減など運動機能に直接改善する治療法から、動作練習・歩行練習などの能力の向上を目指すリハビリテーションまで、幅広い療法で自立した生活を支援します。
実際に障害を抱える方はもちろん、自立した方の介護予防や健康増進、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病に対する指導、スポーツ現場など活躍の場は多岐に渡ります。
作業療法士
リハビリの専門職として、「食事・入浴・着替え・排せつ」などの、より具体的な日常動作の機能回復を目指すためのサポートを行うスタッフです。
作業療法士は、日常の基本動作を発展させた応用的動作や社会適応動作のリハビリテーションを行っています。
運動や手工芸、仕事や遊びなどを取り入れる場合もあり、リハビリテーションの行い方は、対象者(患者様)一人ひとりが必要とする作業によってさまざまです。
これまで当たり前だと思っていた日常的な動作が突然できなくなる人もいるため、ショックに対してのメンタルのケアも作業療法士の大切な仕事となっています。
言語聴覚士
リハビリの専門職として、失語症や聴覚障害、嚥下障害など言葉によるコミュニケーションができない方に対して、きめ細やかなリハビリテーションを提供するスタッフです。
1人ひとりによって異なる症状の対処法を見出すための検査や訓練、指導を実施したり、場合によって医師の指示のもと、嚥下訓練や人工内耳の調整なども行います。
保健・福祉機関、教育機関など幅広い領域で活躍しており、ことばや聴こえに問題を抱えている方はもちろん、本人の家族にもあたたかく寄り添います。
ことばによるコミュニケーションに問題がある方に専門的サービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門家です。
支援相談員
一般的に「生活相談員」に該当するスタッフです。「支援相談員」とは、介護老人保健施設(老健)の独自の呼称です。
施設利用で必要な窓口業務、入所者やその家族の日常的な相談、地域との連携業務、関連機関との連絡・調整などを担当しています。
在宅復帰に向けて不安なことや悩みがあれば、気軽に相談することができ、入所者やその家族にとって大きな支えとなることも多いです。
介護制度について分からないことや、サービスについての費用面など気負わずに相談してみると良いでしょう。
栄養士
入所者の健康のため、食事の面から栄養ケア・マネジメントを担うスタッフです。
具体的には日々の献立の作成や、食材の発注・調理、一人ひとりの身体状況に合わせてソフト食や刻み食の対応などを行います。
季節のイベント時には、旬の食材を使用した特別メニューを用意するなど、余暇活動の面からも健康にアプローチしています。
食が細くなりがちな高齢者のため、美味しく・楽しい食事を大切に、元気の源を提供しています。
薬剤師
常駐する医師や看護師と連携し、入所者の身体状況に適した調剤・薬の受け渡しを行うスタッフです。
入所する高齢者は何かしらの薬を飲んでいるケースがほとんどのため、今までの薬の服用履歴や生活習慣を加味しながら業務を行います。
薬の受け渡しは基本的に入所者に手渡しではなく、担当の看護師に渡すことになっていますが、場合によっては入所者と直接顔を合わせ、服薬指導をすることもあります。
その他
入所者の身体状況に最適な介護プランを作成する「ケアマネージャー」は、1人は常勤である事が必要なほか、食事の調理を行う「調理師」、専門資格を持つマッサージ師などが所属していることもあります。
その他で所属するスタッフは施設によってさまざまなため、入所の前によく確認してみることをおすすめします。
介護老人保健施設(老健)の人員配置基準②夜間の体制について
厚生労働省が定めた人員配置基準は日中の時間帯での基準であり、入所者が寝静まる夜間などは、体制が変化します。
結論から言うと、一般的に夜間の人員配置基準は、入所者20人に対してスタッフが1人以上となっていることが多いです。
次項では時間帯による体制の変化について、ポイントを解説していきます。
すべてのスタッフが24時間常駐ではない
前述のとおり、介護老人保健施設(老健)をはじめ、老人ホームは時間帯によって人員体制が変化します。
介護老人保健施設(老健)では、夜間帯は入所者20人に対してスタッフが1人以上となっていることが一般的です。
24時間常駐しているのは、基本的に介護職員のみですが、最近では看護師が24時間常駐している施設も増えてきています。
数字のみから考えると、もしものことがあった場合など、体制に不安を感じる方もいるかもしれません。
しかし、昨今ではケアコールシステムや見守りセンサーを筆頭とするICT機器の導入が進み、緊急時もより迅速・的確な対応が可能となっています。
介護老人保健施設(老健)では、入所者に安全かつ安心な生活を提供するために、夜間も適切な人員配置を行っていますので、ご安心ください。
配置人数は時間帯によって変わる
介護老人保健施設(老健)では、では入所者の活動時間に合わせて、スタッフのマンパワーが必要になります。
したがって、ほとんどの施設では人員の適材適所を行うため、効果的なシフトを組んでいます。
以下はシフトの例です。
- 早出 午前7時00分から午後16時00分
- 中出 午前8時30分から午後17時30分
- 遅出 午前10時から午後19時
- 夜勤 午後17時から翌朝9時
入所者が起床する7時ごろから少しずつスタッフが出勤し、リハビリや食事、入浴などが多い10~16時がピークとなり、夜にかけて徐々にスタッフが少なくなっていくという体制が一般的となります。
具体的にどの時間帯にどんなスタッフが常駐しているのかは、施設によって異なるため、入所前に確認してみると良いでしょう。
介護老人保健施設(老健)の人員配置基準③ほかの老人ホームとの比較
「介護老人保健施設(老健)の人員配置基準は手厚いみたいだけど、ほかの老人ホームと比べるとどこが違うの?」
そんな疑問を感じる方々のために、次項では公的な老人ホームである「特別養護老人ホーム(特養)」、民間で充実した介護サービスを提供する「介護付き有料老人ホーム」との比較を行います。
特別養護老人ホーム(特養)との違い
特別養護老人ホーム(特養)との違いをまとめると、以下の表のようになります。
職種 | 介護老人保健施設(老健) | 特別養護老人ホーム(特養) |
---|---|---|
医師 | 常勤1人 | 1人(非常勤可) |
看護職員 | 9人 | 3人 |
介護職員 | 25人 | 31人 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 | いずれか1人 | ー |
※ 表内の人数は利用者100名に対する必要人員です
医師・看護職員の割合が多い
介護老人保健施設(老健)は介護・看護職員と入所者の割合が3:1で設置することが義務付けられています。
同じく国や自治体が運営する特別養護老人ホーム(特養)と比較すると、医師・看護師の割合が多いことが分かります。
また医師に関しては介護老人保健施設(老健)では、常駐が義務付けられていますが、特別養護老人ホーム(特養)では非常勤が認められています。
そのほか利用者の多い介護老人保健施設(老健)では、薬剤師が常駐していることも多いです。
リハビリや日々の健康管理をはじめ、医療面でより手厚く、安心の環境と言えるでしょう。
リハビリ専門のスタッフが常駐している
介護老人保健施設(老健)では、特別養護老人ホーム(特養)と違い、リハビリ専門スタッフの常駐が義務付けられています。
ここで言うリハビリ専門スタッフとは、「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」の資格を持つもののいずれかです。
入所者の在宅復帰を支援するため、リハビリ専門スタッフは一人ひとりの身体状況に合わせたプログラムを作成します。
「歩く・立つ・座る」などの日常動作や、「食事・着替え」などの日常動作の機能回復をはじめ、幅広い療法で入所者の自立した生活をサポートします。
専門的なアプローチで、手厚いリハビリテーションを受けられることは、介護老人保健施設(老健)の大きな特徴・魅力と言えるでしょう。
介護付き有料老人ホームとの違い
介護付き有料老人ホームとの違いをまとめると、以下の表のようになります。
職種 | 介護老人保健施設(老健) | 介護付き有料老人ホーム |
---|---|---|
医師 | 常勤1人 | – |
看護職員 | 9人 | 3人 |
介護職員 | 25人 | 31人 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 | いずれか1人 | ー |
※ 表内の人数は利用者100名に対する必要人員です
医師・看護師の配置人数が多い
介護老人保健施設(老健)は、介護付き有料老人ホームと比較しても、医師・看護師の配置人数が多いことが分かります。
介護付き有料老人ホームには、医師の配置義務がありません。看護師の配置は義務づけられていますが、介護老人保健施設(老健)の方がより手厚い配置となっています。
介護付き有料老人ホームは民間が運営しているため、実際のスタッフの数は施設によって異なりますが、医療・看護体制に関しては、介護老人保健施設(老健)の方が充実している場合がほとんどです。
リハビリ専門のスタッフが常駐している
介護老人保健施設(老健)では、「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」のいずれかの常駐が義務付けられています。
一方、介護付き有料老人ホームには、上記のスタッフの常駐は義務ではありません。
介護付き有料老人ホームは、介護や生活環境の面では充実していますが、介護老人保健施設(老健)ほどリハビリに特化している施設は少ないです。
やはり、リハビリ専門のスタッフが常駐していることは、介護老人保健施設(老健)の大きな特徴と言えるでしょう。
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まとめ
介護老人保健施設(老健)の人員配置基準は、医師・看護師の配置人数が多く定められていることや、リハビリ専門スタッフの常駐が義務付けられていることが特徴です。
ほかの介護施設と比較しても、医療面やリハビリテーションの面が充実しており、長期入院から入所する際も安心の環境と言えるでしょう。
スタッフの体制は時間帯によって変化しますが、24時間いつでも安心の見守りサポート・緊急時も万全の対応が可能です。
入所者の在宅復帰に向けて、介護老人保健施設(老健)のスタッフは密接に連携し、一人ひとりの健やかな生活を支援しています。
そのほか介護老人保健施設(老健)について、さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
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介護・看護職員は入所者3人につき1人配置されていることや、リハビリ専門のスタッフが常駐していることが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
一般的に夜間の人員配置基準は、入所者20人に対してスタッフが1人以上となっていることが多いです。看護師の24時間常駐を行っている施設もあります。詳しくはこちらをご覧ください。