「費用が安い」ということで有名な公的介護保険施設である特別養護老人ホーム(以下、特養という)ですが、
- 特養はメリットばっかり強調されるけど、デメリットはないの?
- 費用が安いのは魅力的だけど、うちの親は特養に向いているの?
など、特養のデメリットについて気になっている方も少なくないと思います。
そこでここでは特養のデメリットに焦点を当てて解説していきます。入居前に特養のメリットだけではなくデメリットも両面知ってから安心して入居しましょう。
特養(特別養護老人ホーム)のデメリット6選
特養のデメリットは以下の6つです。
- 入居待ちが長い
- 要介護3以上しか入れない
- ユニット型は費用が高い
- 手厚い医療ケアは受けられない
- 所得によって費用が変わる
- 重度の認知症の場合入居できないこともある
特養のデメリットについて詳しく解説していきます。
入居待ちが長い
特養のデメリットの一つ目は入居待ちが長いことです。
厚生労働省の調査によると2015年の入居待ち人数(入居待機者)は約52万人でしたが、入居条件を要介護1から3に上げたことによって2019年には29万人に減少していますが、それでも依然として入居待ちは数カ月から数年にわたることもあります。
※特養が多い都市(例えば相模原市など)や過疎地では、待機者がゼロの特養もあって、最近は短期間で入所できるところも増えています。
入居待ちが多い理由としては、やはり終身に渡って利用できることや民間の有料老人ホームと比較して費用が安い点が主な理由と言えるでしょう。
中には特養の入居待ちをしている間に民間の介護付き有料老人ホームや老健に入居して、空きが出たら特養)に入居するという人も少なくありません。
入居待ちの間に他の有料老人ホームに入居する方もいるくらいに特養の入居待ちは長いので、1点目のデメリットはやはり入居待ちの長さにあると言えるでしょう。
要介護3以上しか入れない
特養のデメリットの2点目は、要介護3以上の認定を受けた人しか入れないことです。以前は要介護1から入居することが出来ましたが、入居待ちが多いことが問題となり、要介護3以上に入居条件が引き上げられました。
ただし、要介護1・2の方でも
- 家族がおらず、介護者がいない
- 深刻な知的・精神的障害を抱えている
- 家族による虐待を受けている
等の事情がある場合は特例で入所することが可能です。
とはいえ、基本的には要介護3以上の方しか入居することが出来ず、また、入居中に要介護3未満になると退居しなければならないため、入居・居住条件が厳しいことがデメリットと言えるでしょう。
ユニット型は費用が高い
特養の中でも多床室型(2人部屋・4人部屋タイプ)の特養ではなく、入居者9人~10人程度を1ユニットとして小単位での個別ケアを行っているユニット型特養は費用が高くなる傾向にあります。
というのも、ユニット型の場合、個室での生活になりますので個室の室料を負担しなければなりません。加えて、多床室型と比較すると職員も厚く配置されていますので、その分、施設に入る介護報酬も高く、結果として利用者の負担分が増える仕組みになっているからです。
例えば、生活保護を受給している方を例に多床室型の特養に入居した場合とユニット型に入居した場合の費用を比較します。介護保険サービスの自己負担額を2万5000円として計算すると、多床室型の特養に入った場合は3万4000円となります。一方でユニット型の場合は5万8600円となり、2万円以上の費用の差があることがわかります。
したがって、「特別養護老人ホーム(特養)=費用が安い」のイメージがある方も少なくないかと思いますが、ユニット型特養)の場合は民間の介護施設とさほど変わらない費用が掛かるのです。
- 関連記事特別養護老人ホーム(特養)とは?費用から老健との違い、入所の裏ワザも紹介カテゴリ:特別養護老人ホーム更新日:2023-09-11
手厚い医療ケアは受けられない
特養の4つ目のデメリットは、手厚い医療ケアを受けることが出来ないことです。
というのも、特養には「嘱託医」という医師の配置基準がありますが、嘱託医は必ずしもずっと特養にいるわけではなく月に1~2回診察に来る場合が一般的です。
ですから、緊急対応が必要な場合や常時医療ケアを受けることはできないのです。
特養でも日々の薬の管理や、血圧・体温の管理などの看護師が対応できる医療ケアはできますが、緊急の場合は近隣の病院に搬送するケースが一般的です。
したがって、特養は要介護3以上の方を受け入れているにもかかわらず、特養内では重度の医療ケアには対応することが出来ないというデメリットがあるのです。
所得によって費用が変わる
メリットでもありデメリットともいえる要素ですが、特養の費用は所得によって大きく変わるのが特徴です。
具体的には、特養では「負担限度額認定」という軽減制度を利用することが一般的ですが、負担限度額認定は以下の5段階に分かれています。
段階 | 所得の状況 | 預貯金の合計 | ||
---|---|---|---|---|
区分 | 年金収入+合計所得金額 | 単身 | 配偶者あり | |
第1段階 | 生活保護者等または世帯全員が老齢福祉年金受給者 | – | 1000万円以下 | 2000万円以下 |
第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税 | 80万円以下 | 650万円以下 | 1650万円以下 |
第3段階(1) | 80~120万円 | 550万円以下 | 1550万円以下 | |
第3段階(2) | 120万円超 | 500万円以下 | 1500万円以下 | |
第4段階 | 上記以外の人 |
そして、多床室型の特別養護老人ホーム(特養)に入所した場合の段階ごとの費用は以下の通りです。
所得段階 | 費用 |
---|---|
第1段階 | 3万4000円+生活費(1~2万円) |
第2段階 | 4万7800円+生活費(1~2万円) |
第3段階 | 6万5200円+生活費(1~2万円) |
第4段階 | 約11万円+生活費(1~2万円) |
※介護サービスの自己負担額を25,000円として計算
上の表のように第1段階と第4段階では7万円近く毎月の費用が異なっていることがわかります。したがって、所得が高く第4段階とされる人にとっては費用が高くなることもあるのがデメリットと言えるでしょう。
重度の認知症の場合入居できないこともある
特養のデメリットの6つ目は、重度の認知症を患っていて暴言や暴力などで周囲の入居者に迷惑をかける可能性がある場合は入居することが出来ない可能性があることです。
というのも、特養は集団で生活する施設であるため、他の入居者に迷惑をかける人がいる場合他の入居者の生活に支障を来してしまうことになるからです。
例えば、認知症であることがあらかじめわかっていて症状も重い場合は、入居時の「入所判定会議」で入居を断られるケースがほとんどなのです。
認知症の場合でも周囲に迷惑をかけたりしない場合や徘徊の可能性もそこまで高くない方は入居できることもありますが、周囲に危害を及ぼす恐れがある場合は入居することは難しいことに注意しましょう。
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特養(特別養護老人ホーム)はデメリットだけではない!メリットは?
ここまで特養のデメリットに焦点を当てて紹介してきましたが、特養もデメリットだけではありません。メリットも確認することによって入居者に合った老人ホームを選びましょう。
多床室型は費用が安い
1つ目のメリットは多床室型は費用が安いことです。
上述したように多床室タイプの特養では、食事や入浴などの時間は決まっていて、1部屋に4人、または2人が居住する相部屋タイプの施設となります。
ユニット型の個室と比べて室料が安くて済むことと利用者3人に対して介護職員1人の配置ですので、ユニット型に比べると介護サービス費用も安くて済みます。
住民税非課税ではない第4段階の世帯であっても、介護サービスの自己負担額を2万5000円とすると毎月約11万円で入居することが出来るので、民間の介護施設と比較するとやはり安い費用で利用ができます。
したがって、費用を抑えたいという場合はユニット型の特養ではなく多床室型の特養に入居して費用を抑えるのもポイントです。
24時間体制で介護を受けられる
特養の2つ目のメリットは、24時間体制で介護を受けることが出来る点です。
特養では、夜間でも利用者20~25人に対して夜勤の介護士を1名配置する基準ですので基準夜間であっても入居者の介護を行うことが可能です。
夜間に排せつを行わなくてはならない場合でも安心して入所することが出来るのが特養のメリットと言えるでしょう。
看取りまで行ってくれる
3つ目のメリットは看取りまで行ってくれることです。
看取りとは、病院に入院して無理な延命治療などを行わずに高齢者が自然に亡くなるまでの過程を見守ることで、入居者の天寿を全うするためのお手伝いをすることです。
実際に厚生労働省の調査によると、特別養護老人ホームのうち約60%が「個別に計画を立てて看取りを行っている」と回答しており、約15%が「看取りは行っているが、看取りの計画は立てていない」と回答しており、全体の約75%が看取りを行っていることがわかっています。(出典:厚生労働省「施設、在宅での看取りの状況に関するデータ」)
特養は看取りを行ってくれるため、転居の必要が無く終身に渡って利用することが出来るのがメリットと言えるでしょう。
地方部や特養(特別養護老人ホーム)が多い地域では入居待ちなく入所できる
特養のデメリットでもある入居待ち期間ですが、実は地方の特養や特養が多い地域であれば入居待ち期間が短く、申し込みから1~2カ月で入居することが出来ます。
1~2カ月は入所判定にかかる時間なので実質待ち時間0で入居することが出来るのです。
ユニット型の特養)も比較的早く、待ち期間なく入所できる場合もあります。
というのも、上述したようにユニット型の特養は、多床室型と比べると費用が高く設定されているので経済的理由から敬遠される場合もあり、それによって空ベッドがあるケースも少なくありません。
したがって、地方にある特養や特養が多い地域、またユニット型の特養は比較的短い期間で入所することが出来るのがメリットと言えるでしょう。
特養(特別養護老人ホーム)に向いている人
次に、特養に向いている人について紹介していきます。入居者が特養)に入るべきか迷っているという方は向いているかどうかを以下の3つの観点で確認しましょう。
費用を抑えたい人
まず、毎月の月額費用を抑えたい方は特養に向いていると言えるでしょう。
老人ホームの中でも民間の介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームの場合は豪華な設備があったり、充実したサービスを受けることが出来る場合もありますが、何よりも費用の安さを重視したい場合は特養が向いていると言えるでしょう。
もちろん費用だけで特養に入所するかどうかを決めることはできませんが、特養の入居条件を満たしている上で、費用を抑えたい場合は特養)に向いていると言えるでしょう。
重度の医療ケアを必要としていない人
次に特養に向いている人は、常時重度の医療ケアを必要としない人です。
特養では嘱託医が定期的に診察に来ますが、施設に診察に来るのは月に1~2回が一般的です。、ですから、急な受診が必要になった場合特養で対応することは少なく、基本的には近隣の提携している病院に搬送されるケースが一般的です。
常に重度の医療ケアを必要としている場合は介護医療院などへの入居が向いていると言えます。介護医療院では医師や看護師の配置基準も特養より手厚く、より病院に近い医療を受けることが出来ます。
したがって、常時医療ケアを必要としていない人は特養に向いていると言えるでしょう。
終身に渡って入居したい人
最後に、特養に向いている方は終身に渡って入居したい人と言えるでしょう。
特養では看取り介護も行っているので、「終の棲家」とも呼ばれています。終末期に病院で治療を受けながら最期を迎えたり、他の施設に転居することが嫌だという場合は特養が向いていると言えるでしょう。
もちろん場合によっては医療的ケアが必要になり結果的に病院などで最期を迎える可能性もあるかもしれませんが、本人や家族の意思として終身に渡って過ごしたいという方は特養に向いていると言えるでしょう。
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特養(特別養護老人ホーム)のデメリットのまとめ
ここまで特養のデメリットから始め、向いている人・向いていない人についてまとめてきました。
特養は公的介護保険施設で費用が安いことがメリットと言われていますが、以下のようなデメリットがあるのも事実です。
- 入居待ちが長い
- 要介護3以上しか入れない
- ユニット型は費用が高い
- 手厚い医療ケアは受けられない
- 所得によって費用が変わる
- 重度の認知症の場合入居できないこともある
したがって、特養は費用が安いからと言ってそれだけで入居すると入居後に後悔したりする可能性もあるので注意しましょう。
特別養護老人ホーム(特養)のデメリットは以下の6つです。①入居待ちが長い②要介護3以上しか入れない③ユニット型は費用が高い④手厚い医療ケアは受けられない⑤所得によって費用が変わる⑥認知症の場合入居できないこともある詳しくはこちらをご覧ください。
特養のメリットとしては、①多床室型は費用が安い②24時間体制で介護を受けられる③看取りまで行ってくれる④地方部やユニット型の特別養護老人ホーム(特養)は待ち時間なく入所できるなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。