老人ホームに入居するときは、一般の賃貸住宅を契約するときと同様に保証人が必要です。
しかし近年では、保証人になってくれる方が見つからない高齢者も増えています。「保証人はどこまで責任を負うのか?」「親族がいないので保証人が見つからないときはどうすればいいの?」「保証人がいらない老人ホームってあるの?」と思う方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、老人ホームの入居時に必要な保証人の役割、条件、保証人が見つからないときの対処方法などを解説しています。頼める保証人がいないため不安に思っている方はぜひ参考にしてください。

老人ホームに入るには保証人が必要!その理由を解説
老人ホームを利用する際に保証人が必要な理由は、ホーム側が高齢者の生活におけるリスクを避けるためです。老人ホームは高齢者が生活する場所なので、さまざまな事態が発生するリスクが高くなります。
状況の変化から体調を崩したり、怪我をしたりして入院や死亡に至る可能性が高いのが通常です。認知症で金銭管理が難しくなってしまった場合は、月額利用料や日用品などの生活費の支払いが滞ってしまうリスクも想定できます。
また、入居者間のトラブルがあった場合や、ホームに不利益をもたらす事態を引き起こしてしまった場合など、老人ホーム側の対応だけでは処理しきれなくなったときのリスクに備える必要もあるのです。
保証人と身元引受人の違い
老人ホームでは、不測の事態に対して責任を負う者として「保証人」や「身元引受人」を区別せずに呼ぶ場合があります。厳密には役割が違うため理解しておきましょう。
「保証人」は、支払い債務の連帯保証や身元保証が役割です。医療が必要になったときや入院の手続き、利用者間トラブルなどの保証をする者を「身元保証人」、支払い債務などの金銭的な保証を「連帯保証人」と分けて呼ぶ場合もあります。
対して、「身元引受人」は入居者が亡くなったあとの対応を行い、身元を引き取る者をいいます。老人ホームに入居する高齢者は、いつこのような事態が起こるかわからないため、身元引受人の役割は大切です。
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老人ホーム入居時の保証人はどんな役割がある?
老人ホーム入居時の保証人に求められる役割は、ホームにより異なる場合もあり契約時に確認が必要です。前述した通り、保証人と身元引受人の役割を分けている場合もありますが、一般的な役割は以下の通りになります。
- 月額利用料などの支払いが滞った場合に債務を負う
- 生活上で必要な各種手続き・判断・意思決定を本人に代わって行う
- 事故・急変・死亡したときなどの緊急連絡先となる
- 逝去時の各種手続きや身柄の引き取りを行う
これらの役割について詳しくみていきましょう。
【役割1】月額利用料などの支払いが滞った場合に債務を負う
保証人の重要な役割の一つは、月額利用料などの支払いが滞った場合の債務を負う点です。老人ホームへ入居した際にかかる、入居金・月額利用料・日常生活費などの費用は決して安いものではありません。
費用の支払いをするのは本人ですが、万が一支払いが困難になってしまった場合は保証人が責任を負います。入居者が高齢のため、認知症や判断能力の低下で金銭管理が難しくなってしまう場合も考えられます。
本人に資産がある場合は代わりに手続きなどの対応を行い、資産がない場合は代わりに支払いを求められるケースもあるでしょう。
有料老人ホームなどでは、入居金や月額利用料がかなり高額なホームもあります。そのため、老人ホーム側としては経済的保証をする人物を決めておくのは重要です。
【役割2】生活上で必要な各種手続き・判断・意思決定を本人に代わって行う
入居者に代わり、生活上で必要な手続きや判断などの意思決定を行うのも保証人の役目です。老人ホームなどの介護施設では、ケアマネジャーにより入居者のニーズに応じたケアプランが作成され、プランに基づいたサービスが提供されます。
本人の判断能力が低下している場合は本人に代わってプランについて意思決定をします。
また、高齢者は病気や怪我による入院のリスクも多いものです。入居者の心身の状況により手続きができない場合は保証人が代わりに行います。
ほかにも、年金や保険などの行政手続き、支払いのための銀行手続きなど高齢者には細かい手続きのサポートが必要です。
【役割3】事故・急変・死亡したときなどの緊急連絡先となる
保証人は、事故・急変・死亡したときの緊急連絡先としての役割もあります。老人ホームは入居者に緊急事態が起きたときはただちに保証人に連絡しなければいけません。
緊急時は入居者本人が、病気や怪我による心身の状況の悪化により、自己判断が困難になってしまうケースがあります。緊急事態にコミュニケーションが取れなくなってしまった場合に、治療方針などの意思決定を本人に代わって行うケースもあるため、重要な役割を担います。
【役割4】逝去時の各種手続きや身柄の引き取りを行う
利用者が亡くなられたときに、身柄を引き取るのも保証人の役割です。老人ホームを退去する際は、荷物も引き取り、退去手続きや支払いの精算をしなければいけません。
居室の原状復帰が必要なケースも考えられます。身柄を引き取ったら、本人の希望に添って葬儀の手配なども行います。
老人ホームの保証人になるための条件とは
これまで説明してきた通り、保証人にはさまざまな役割があり責任は重大で、誰でもなれるわけではありません。本人に代わって意思決定や金銭的な保証も必要なため、親族が保証人になるのが一般的です。
契約するときに収入を証明できる書類が必要な場合や、高齢の保証人は認められないなど条件が設定されており、保証人として相応しいかどうか審査されます。
老人ホームの保証人は何人必要?
老人ホームに必要な保証人の人数は、老人ホームによりますが1名としている施設が多数です。しかし、保証人と身元引受人の役割を明確に分けている老人ホームであれば、それぞれ1名ずつ立てなければいけない場合もあります。
1名に設定されている場合は、保証人としてすべての役割を担う必要があります。老人ホームによって違ってくるので、契約時に内容をしっかり確認しておきましょう。
老人ホームの保証人が頼めないときの対処法
それでは、保証人が頼めない場合はどのように対処すればよいのでしょうか。
- 保証人がいらない老人ホームを根気強く探す
- 保証人サービスを行っている会社とあらかじめ契約しておく
- 後見人制度の利用が可能な老人ホームを選ぶ
親族がいる場合でも、高齢の親族しかいない場合や、家族に負担をかけたくないと考える方もいます。3つの対処法を参考にしてください。
【対処法1】保証人がいらない老人ホームを根気強く探す
一つ目の対処法は、保証人がいらない老人ホームを探す方法です。ただし、保証人がいらない老人ホームは数に限りがあります。保証人がいらない老人ホームの数が少ないうえ、単身高齢者の増加により競争率も高くなってしまいます。
見つかったとしても希望のサービス体制ではない場合や、近隣では見つけられずなじみのない遠方に引っ越す必要が出てくる可能性もあり、選択肢が狭まってしまうのがデメリットです。
【対処法2】保証人サービスを行っている会社とあらかじめ契約しておく
保証人が立てられない場合、保証人の役割を代行する保証会社に頼む方法もあります。保証会社は、民間企業やNPO法人が運営しており、サービスを有料で提供しています。
保証会社は高齢者に必要なサポートについて理解しているので、万が一のときにも安心して任せられるのがメリットです。サポート内容や費用を確認して納得感が得られれば、契約しておくのも一つです。

行ってくれるサービスの形態や費用は異なる
保証人サービスは、運営会社によりサービスの形態や費用が異なります。保証会社で行うサービスの一例は以下のようなものがあります。
- 入院時の手続き
- 役所、銀行などの各種事務的な手続き
- 介護サービスに必要なケアプランの同意
- 緊急対応窓口
- 老人ホームの月額利用料などの支払い管理
- 財産管理のサポート
- 支払いが滞った場合の連帯保証
- 死亡時の身柄の引き受けや葬儀の手配など死亡後の対応
- 買い物、通院などの日常生活支援
これらのサービスがすべて行われているわけではなく、保証会社によってサービス内容や費用が大きく異なるので、自分に必要な保証サービスが用意されているか確認しておきましょう。
死後事務委任契約で亡くなったあとの整理も第3者に依頼できる
死後事務委任契約とは、死後に必要な事務手続きなどを、生前に第3者に依頼する契約です。亡くなったあとの事務手続きには以下のようなものがあります。
- 関係者への連絡
- 行政手続き
- 葬儀の手続き
- 老人ホームや病院の支払い手続き
- 税金や公共料金の解約
- 賃貸借物件の明け渡し
- 相続の手続き
本来なら家族がしてくれるであろう手続きを、死後事務委任契約によりあらかじめ依頼しておけます。法的に適切な手法で書かれていなければ、法律上の効力がありません。
しかし、死後事務委任契約をしておけば、死後の手続きについて生前に契約を結べます。身元保証サービスの中に、死後事務委任契約をサポートする内容が組み込まれていれば安心です。
なお、死後事務委任契約については、民間企業やNPOだけでなく、社会福祉協議会等が担っているところもありますので、お住まいの市区町村役場に確認されるとよいでしょう。
出典: 福岡市 亡くなった後の手続きを代行します 死後事務委任契約
費用がサービスに見合っているか必ずチェックする
身元保証サービスは民間企業や、NPO法人等が運営している有料サービスです。サービスが手厚いのがメリットですが、契約内容によって高額になる場合もあるので、契約費用がサービス内容に見合っているか必ずチェックしましょう。
身元保証会社を選ぶときは即決せず、複数の会社を比較して選ぶと失敗が防げます。前述している通り運営会社により行ってくれるサービスの形態や費用が異なります。自分の要望をしっかり保証会社に伝え、必要なサービスだけを選択し、必要がないサービスは契約しないようにするのだが大切です。また、保証会社が倒産してしまった場合など、予期せぬトラブルなどが発生したときにどのような補償をしてくれるのかも確認しておきましょう。
契約する保証会社が決まったら、生涯を通して支払い可能かを検討します。例えば、平均余命などから自分が保証会社を使う可能性がある期間を想定し、どれくらいの費用がかかるかを計算しておきましょう。
【対処法3】後見人制度の利用が可能な老人ホームを選ぶ
保証人が立てられない場合、成年後見人でも可能としている老人ホームもあります。成年後見人とは認知症などが理由で判断能力が低下した方に対して、財産管理や生活上で必要な手続き、生活環境の調整などを本人が不利益にならないように支援する法定代理人です。成年後見人制度を利用するときは、家庭裁判所に申し立てをすれば後見人を選任できます。
ただ、あくまでも家裁の選任によりますので、成年後見人等候補者の方が、必ずしも選任されるとは限りません。
後見制度は「法定後見」と「任意後見」の2種類!その違いとは
成年後見人制度は大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
すでに判断能力が不十分な方が利用できる「法定後見制度」と、判断能力が十分なうちに、任意後見人を選んでおける「任意後見制度」です。
「法定後見制度」は判断能力の不十分な方に対して、親族や市区町村長などの申し立てで、家庭裁判所により後見人が選任されます。後見人に与えられる権限は、財産管理や生活全般に関する事務手続きなどの代理権です。本人の判断能力の程度により「後見」「保佐」「補助」の3段階に分けられ、与えられる代理権の範囲が異なります。
「任意後見制度」は判断能力が不十分になったときに備えて、自分で後見人を選んで契約をしておける制度です。任意後見人を選ぶときも、法定後見人と同様に家庭裁判所に申し立てを行います。
なお、ご本人以外の方の請求により任意後見監督人選任の審判をするには、ご本人の同意を得る必要があります。(ただし、ご本人が意思表示できないときは必要ありません。)
出典: 任意後見制度とは(手続の流れ、費用) | 成年後見はやわかり
成年後見人は身元保証人の役割が担えない
成年後見人は身元引受人や身元保証人の役割を担えません。成年後見人は本人に代わって財産管理や手続きを行うのが役割です。
後見人が保証人になってしまうと、自分が自分の身元を保証する状態になってしまいます。そのため、身元保証人の役割を果たせる人物を別に設定しなければいけない場合もあるので注意が必要です。
成年後見人がついているのですべて安心とはならないのです。
ただし、最近では成年後見人でも緊急時の駆け付け支援などを行っているケースや、老人ホーム側も成年後見人がいるなら保証人は不要にしているケースもあるため確認してみましょう。
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老人ホームの保証人になりたくない方必見!利用できる制度やサービスをご紹介カテゴリ:老人ホームへの入居更新日:2023-02-07
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老人ホームに入るなら保証人について理解を深めて早めに対策が必要
高齢になると誰しも、体力や認知能力の低下で人の手助けが必要になる可能性が出てきます。いずれ、老人ホームを終のすみかにすると決断するときがくるかもしれません。
単身高齢者が増えている現代では、さまざまな支援体系が増えています。最後をどのように支援してほしいかを考え、しっかり伝えておくのが大切です。万が一のときはいつくるかわかりません。早めに対策し安心できる老後に備えましょう。
老人ホームの保証人に関するよくある質問
Q1:亡くなったときに身元保証人がいない場合はどうなりますか。
A1:もしも身寄りがいない方が亡くなった場合、「行旅死亡人」と呼ばれ、法律で自治体が対応するように定められています。警察や行政が親族を探し、見つからなければ最後は無縁墓地に納骨されるのが通常です。このような事態が起きないように老人ホームでは身元保証人や身元引受人を定めます。
Q2:入居後に保証人を変更できますか。
A2:変更可能です。保証人が役割を果たすのが困難となったときは速やかに新しい保証人を立てなければなりません。
〈引用元〉
身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定 が困難な人への支援に関するガイドライン
みずほ情報総研株式会社 介護施設等における身元保証人等に関する調査研究事業