アパシーとうつ病の違いは?アパシーの家族との具体的な接し方を解説

アパシーとうつ病の違いは?アパシーの家族との具体的な接し方を解説

「介護中の家族が無気力そうに過ごしているのが気になる…」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。

ここで、アパシー(無気力・無関心)の症状や認知症との関係、介護するうえで大切にしたいことなどについて詳しくご紹介していきます。

この記事を最後まで読み終えてもらえれば、アパシーの高齢者との適切な関わり方が分かります。

アパシーに関する知識を介護に活かしたい方は、ぜひ参考にしてください。

医療ライター
専門分野:医療・介護系全般
職業: 医療ライター

大学卒業後、医療専門新聞社である株式会社薬事日報社に入社。 約13年間、新聞記者として厚生日比谷クラブを始めとする記者クラブに所属し、厚生労働省や日本医師会、日本薬剤師会、医療現場、大学、関連学会などを取材して歩く。 2013年にフリーランスの医療ライターとして独立。独立後は医療・介護現場を幅広く取材しつつ新聞や雑誌、書籍、ウェブサイトなどで執筆。 これまで取材してきた医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は500人を超える。主な執筆媒体は「プレジデント」「ドクターズマガジン」「マイナビメディカルサポネット」「We介護」など。 共著は「在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期」(世界文化社)。現在、自分自身も2人の娘を育てながら認知症の母を介護中。詳しくはこちら

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アパシーとは無気力や無関心が主な症状

アパシーは、認知症や脳血管障害の症状の1つとして出現することが多く、何事に対しても「無気力」「無関心」となり、興味を持てなくなる状態です。

無関心なので、「辛い」「苦しい」という感情も乏しく、状態の改善への意欲が湧きにくい特徴があります。

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アパシーとうつ病の違い

アパシーはうつ病と混同されたり、間違われることがあります。しかし、うつ病とアパシーには、明確に違いがあります

そこで、うつ病とアパシーの違いについて、それぞれの特徴を踏まえてご紹介していきます。

自傷行為の有無

アパシーの方には自傷行為はみられませんアパシーの方は、基本的な症状として、無関心がありますので、自分に対する苛立ちや焦りなども感じにくい傾向にあります。

一方、うつ病の方は重度の場合、「自分に対する苛立ち・焦り」などから、自傷行為を起こすことがあります。

無気力そうに過ごしている高齢者に自傷行為がみられたら、うつ病を疑いましょう。

病気や症状への自覚

アパシーの方は、無気力で意欲を持てないでいる状況を理解していないケースがほとんどです。

うつ病の方は、自分自身で無気力な状態であることを理解しています。また、病気や症状への自覚に関する違いは、治療にも影響を及ぼす場合があるので注意してください。

病気であると自覚しているうつ病の方は、積極的に治療を行うのに対しアパシーの方は治療に前向きに取り組むことは少ないです。

感情の起伏の有無

アパシーの方は、無気力・無関心の影響で、自分の感情にも鈍感な傾向にあります。そのため、急に落ち込んだり、元気になったりといった感情の起伏があまりみられません。

しかし、うつ病の方は、気分に波があります。1つの出来事をきっかけに、気分が落ち込んだり、元気になったりと変化がみられます。

アパシーである家族の介護に悩んでいるという方は、ケアスル介護での相談がおすすめ。

ケアスル介護では、入居相談員が条件にあった施設を探してくれるので、施設選びで間違えたくないという方は、まずは無料相談をしてみましょう。

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アパシーと認知症にはどんな関係がある?

認知症のタイプによって、アパシーとの関連に違いがあります。

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 脳血管性認知症

上記の認知症について、アパシーとの関係を、ご紹介します

認知症との関係を知ることで、アパシーの理解が深まり、介護にも役立ちます。

アルツハイマー型認知症は中期以降に症状が出やすい

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いとされています。タンパク質が脳に蓄積し、海馬と呼ばれる「新しい記憶」を担う機関が萎縮することによって、認知症を発症します。

アルツハイマー型認知症では、中期以降にアパシーを発症することが多くなります

認知症状が顕著になり、日常生活にも支障が出始めるこの時期に、同時にアパシーを発症すると、より自立が困難になっていきます。

レビー小体型認知症は初期から症状がみられる

アルツハイマー型に次いで2番目に多いのが、レビー小体型認知症です。同じく脳にタンパク質が溜まり、認知機能の低下を招きます。

特徴的な症状として、実際には存在しないものが見える「幻視」や、体の動きに異常を呈する「パーキンソン症状」などがあります。

レビー小体型認知症の場合、初期〜中期の早い段階でアパシーがみられることが多くあります。

しかし、1日の中で気分の変動が大きく、朝は活発なのに対し、夜は無気力状態となることも珍しくありません。他の認知症でよくみられるアパシーとは症状の特徴が異なるため、区別がつきづらいです。

脳血管性認知症は症状の現れ方に個人差がある

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの、脳血管障害を起因とします。症状はほかの認知症と変わりませんが、急な悪化と寛解を繰り返すような、症状の変動が激しい認知症です。

脳の損傷部位によって、できる部分とできない部分の差があることから「まだら認知症」とも呼ばれています。

症状の個人差が大きく、アパシーもはっきりとした発生時期などはありません。脳血管性認知症でアパシーの症状が現れている方には、変化する症状に振り回されすぎず、落ち着いて対応することが大切です。

アパシーの高齢者を介護するうえで大切なこと

「身内がアパシーを発症した」「訪問すると無気力状態な人がいる」身の回りの方がアパシーを発症してしまった時に、どのように接するべきか、迷ってしまうと思います。

この項では、アパシーを発症した方と接する中で、大切なことをご紹介します。

接し方に悩みがある方にとって、参考になると思います。

指示を押し付けない

アパシーの高齢者と接する際は、介護者の考えを押し付けないようにしましょう。

「〜をしなさい」「〜はやめなさい」といった言葉をかけて、行動するように無理に促しても、無関心の方には逆効果です。

不快な気持ちになり、かえって行動しようとする意欲を失ってしまうかもしれません。

また、「どのようにしたいのか」アパシーの高齢者の気持ちに耳を傾けることが大切です。無関心の中でも、やってみたいことを、一緒に取り組むことから始めましょう。

生活の中での目標を作る

目標作りは、意識して取り組みたいことの1つです。

病気を発症して仕事を離れざるを得なくなったり、趣味に取り組むことができなくなってしまったせいで、アパシーを発症することもあります。

これらの、やりがいや楽しみは、生活の中での「目標」とも言えます。そのため、小さなことでも大丈夫なので、以下のような目標を作りましょう。

  • 早寝早起きの規則正しい生活
  • 毎日花に水をあげる

目標は手軽に取り組めるように、簡単なもので構いません。共に目標を立てこなしていくことで、やりがいや達成感を得ることが大切です。

必要以上のサポートは危険

必要以上のサポートは、自立心を奪ってしまう危険性もあります。過剰なサポートには注意しましょう。

着替え、食事、入浴などの「基本的なことは、自分で行う」「出来ないようであれば、サポートするといったように、まずは自分でやってみることが大切です。

過剰なサポートをすることで、本来できたことも出来なくなってしまう可能性があります。

あくまでできない部分をサポートする意識で介護を行うと、お互いの負担を少なくすることができます。

規則正しい生活リズムを整える

アパシーの方には、生活リズムを乱してしまう方もいます。その都度声かけを行い、生活リズムを整えるよう、意識付けをしてあげましょう。

生活リズムがずれることで、身体能力や認知機能低下を招き、要介護度をあげる要因にもなりかねません。

また、アパシーで生活習慣が乱れてしまうと、栄養不足も進行し慢性疲労や無気力が悪化する可能性が高いため、生活リズムを正すことは非常に大切です。

毎朝〇〇時には起きましょう」「〇〇時になったらご飯を食べましょう」といった目標を決めて遂行してもらうことで、徐々に生活リズムを取り戻していきましょう。

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アパシーの主な治療法

「アパシーの特効薬はあるのか」「アパシーにはどんな治療法があるのか」このような疑問をお持ちの方に向けて、アパシーに対する治療法をまとめました。

治療としては、以下のような選択肢があります。

  • 心理療法
  • 薬物療法
  • 生活習慣の改善

3つの方法を、具体的にご紹介します。治療法の具体的な内容を知りたい方は、参考にしてください。

心理療法

心理療法では、単に医者と話すだけでなく生活の中での目標を決めるなど、具体的なサポートも行います

アパシーは、環境の変化による目標の喪失も1つの原因といわれています。目標を決めて達成することで、無気力・無関心といった、症状の改善を試みます。

目標を達成するためには、家族の協力が不可欠です。受診をすることで終わりではなく、症状の改善ができるように、家族でサポートしましょう。

薬物療法

薬物療法もアパシーの症状を和らげる治療法として、有効な手段の一つです。

認知症と合併してアパシーが出ている場合、根本の原因となっている認知機能の回復や維持を目指し、抗認知症薬を使うことがあります

また、脳血管障害などが原因としてある場合は、脳代謝賦活剤が用いられます。脳代謝賦活剤は脳に酸素を多く取り込み、糖代謝を促進させることで、脳の働きを取り戻します。

しかし、薬物療法では副作用が生じるリスクがあるので、服用開始後に症状の悪化や体調の変化といったトラブルが生じた場合、できるだけすぐに医師に相談しましょう。

生活習慣の改善

生活習慣の改善は、最も基本的な治療です規則正しい生活をすることで、外部からの刺激を受けやすくなります。

  • 早起き
  • 食事、就寝の時間を決める

これらを意識することは、とても大切です。

早起きして日光を浴びることで、セロトニンの分泌を促します。

セロトニンには、精神を安定させて脳を活性化させる、睡眠の質を高める働きがあるので、朝日光を浴びるだけでも、生活習慣の改善に近づきます。

食事や就寝に関しても、声かけをして規則正しい生活を送れるようサポートしましょう。次第に、疲れも取れやすくなり、アパシーの症状改善に繋がります。

介護者がアパシーになった場合の対処法

アパシーを発症するには、介護される側に限りません。介護をしている側が、様々な理由からアパシーを発症することもあります。

ここからは、介護者がアパシーを発症した場合、あるいは、関心が低下しているなど、アパシーに近い症状がある場合に心がけるべき、具体的な対処方法をご紹介します。

介護に対してのストレスを感じている方は、小さなことからでも、変化させてみてはいかがでしょうか。

訪問サービスを利用する

介護負担が大きい場合には、訪問サービスの利用を検討しましょう。

訪問看護や訪問入浴、訪問リハビリなど、利用者のニーズに合わせたさまざまなサービスを利用できます。

訪問サービスをうまく利用することで、介護者の負担を減らし、継続的な介護が可能です。

もしも要介護認定の申請をしていない方は、管轄の役所に問い合わせを行い、介護保険利用の準備を行いましょう。

また、訪問サービスを利用していても介護の負担が大きい場合は、ケアマネージャーに相談し、サービスを受ける回数を増やして、家族の介護負担を減らすなどの方法を検討しましょう。

身内の介護は責任感の強い人ほど、アパシーのような精神疾患に陥りやすい傾向にあるので、介護の負担は1人で抱え込まずに相談しましょう。

デイサービスやショートステイを利用する

「無気力な状態となってしまい、介護が難しい」「何もする気になれない」といった状態が続くようであれば、デイサービスやショートステイといったサービス利用も検討しましょう

介護者は、自宅での1人の時間が作りやすくなるため、介護の中でのよい息抜きになります。

要介護者と同居している方にとって、気を抜いて過ごせる時間はあまりありません。

日中のわずかな時間でも、自らの手を離れることによって、落ち着く時間を過ごすことができます。

また、要介護者にとっても、社会と関わりを持つよい機会となります。介護が必要になると、頻繁な外出は難しく、社会との関わりも極端に減ります。

他の利用者やスタッフとの交流を通じて、ストレス解消や、認知症予防などの効果もあります。

デイサービスなどの施設を探したい方は、ケアスル介護での相談がおすすめ。ケアスス介護なら、関東最大級の掲載施設があるため、様々な条件から施設を探すことができます。

幅広い選択肢から施設を選びたいという方、まずは無料相談をご利用ください。

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症状が辛ければ医療機関の受診を検討する

無気力・無関心といったアパシーの症状を自覚している場合には、医療機関の受診も検討しましょう

アパシーは自分では気が付きにくいといった特徴があるため、第3者に相談して、具体的なアドバイスをもらうことが大切です。

精神科医などの専門家に相談し、心理療法・薬物療法といった適切な治療法を上手に組み合わせながら、改善を目指していきましょう。

また、心理療法や薬物療法では、改善を期待できない場合もあります。忙しい介護生活の中でも心に余裕をもてるように、息抜きの時間を確保しましょう。

社会との関わりを増やす

介護が忙しく、気がついたら要介護者としか顔を合わせておらず、社会との関わりが減っていることはよくあります。

介護が終わってしまった際も、喪失感から精神バランスを崩す危険性があります。そのため、社会との関わりを持ち、介護を忘れることができる時間を作ることが大切です。

誰かに会って話を聞いてもらうだけでも、ストレスを解消することができます。

介護に対する悩みや不満がある時には、たまには友人にあって話を聞いてもらったりすることも大切です。

また、介護に時間をとられて、長く続けていた趣味ができていない方は、自分の趣味に没頭する時間を作ることで、リラックスした時間を過ごしましょう。

のんびりできる時間を設ける

真面目に介護を行っている方ほど、自分の時間を犠牲にしてしまいます。

しかし、自分の時間を犠牲にすることによって、息抜きや気分転換ができず、次第に精神的に追い込まれていく方もいます。

介護者の心身の不調は、要介護者が適切な介護を受けにくくなる場合があるため、望ましい状況とはいえません。

そのため、自分の介護を見直して「やりすぎかも」と感じる部分は、手を抜いてみてもよいでしょう。

介護に取り組む方は無理をしすぎず、のんびりする時間を作ることも大切です。

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介護者も要介護者もアパシーに陥るリスクがある!早めに対処しよう

アパシーは無気力・無関心な状態が続く状態を指し、うつ病ではありません。

認知症の方の場合、認知症の種類によって症状の特徴や、症状が現れるタイミングが異なるので注意してください。

アパシーの高齢者には、生活の中での目標を作ったり、規則正しい生活リズムを整えたりといったサポートを心がけましょう。

また、介護者もアパシーに陥るリスクがあるので、介護サービスの活用や医療機関の受診など早めに対処することが大切です。

アパシーは若者でも発症することがある?

アパシーは年齢関係なく発症の可能性があります。スチューデントアパシーと呼ばれる、学生がアパシーにかかるケースも珍しくありません。真面目に勉強に取り組んでいる人ほど、プレッシャーや挫折を起点として、無気力になることがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

アパシーで受診する場合は心療内科と精神科どっち?

アパシーで受診をする場合、基本的には精神科になります。精神科はうつ病なども担当分野になっているので、うつ病と見分けがつかない場合でも、精神科を受診するようにしましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

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